リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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眠気に耐えつつ更新だぜ!
地元の友人に今後のファンタジー設定を語ったらだめ出しをくらっちまった。
でもあえて書くw

青い大群

の後書きにすでに書かせていただきましたが、一部設定を変更した。

ギルドナイトにランクがあったのをやめて、ハンターの方にC、B、A、S、Gの順にランクがある設定となりました。

詳しくは青い大群の後書きをご覧戴ければ幸いです。

ちなみにレウス戦までいきませんでした。
これも入れると最長になりそうで……

今後地元友人にだめだしを喰らった設定が入ってくる。
設定の一部変更という見切り発車。
結構長い。
最大の見せ場の戦闘はなし

それでもいいと思われる銀河なみに心の広い方ならばお読みくださいませ……


俺は、ハンターになる!

~レーファ~

 

 

イャンクックの討伐に向かったジンヤさんだったけど、誰もが考えられないほどの短時間で村に帰ってきていた。

最初は討伐に失敗したのかと思われたんだけど、一緒に付き添いに行ったリーメさんがイャンクックの討伐には成功したと行った。

何でも、ジンヤさんが持っていた細い剣でイャンクックの首を切ったとか言っていたけど……本当なのかな?

村のみんなは誰も信じていなかった……。

けどそんなことの真偽はどうでもよかった。

イャンクック以上の問題が発生してしまったのだから。

 

 

飛竜種、リオレウス。

 

 

その赤い外殻と、炎の弾を吐き出すその火竜は、別名『空の王者』と呼ばれて恐れられており、飛竜の中では様々な地域に姿を現すため、一番恐れられている。

そのリオレウスが表れたと聞き、村はイャンクックが表れた時以上の戦慄が駆け抜けた。

 

 

『空の王者』

 

 

その異名通り、リオレウスはほとんど空を飛んでおり、攻撃するチャンスがほとんどなく、仮にあったとしてもそのあまりにも強固な鱗は、大剣だけでなく、ハンマーですらはじき返すほどの堅さなのだ。

火球は防具など何の意味もなさず、ハンターを丸焦げにしてしまう。

しかもその爪には猛毒が含まれていて、軽く触れただけでも死に絶えるほどの毒性。

その大きさに似合わない俊敏で力強い動き、その口に生えた刃のように鋭い牙は、大剣すら噛み砕く。

 

 

イャンクックレベルならまだ村で対応できるけど、完全な飛竜種ともなるともうとてもではないが手に負えない。

リーメさんの話だと、遠くの方に飛び去っていったというので、森と丘に巣を構えているわけではなさそうだけど、それでもリオレウスが出る可能性がある場所になんて仕事に行きたいと思う人はいない。

もう最悪、借金する覚悟でギルドに依頼するしかないみたいな話になったけど……でもやっぱりお金もない。

お姉ちゃんに頼んでも、秘密裏に行うしかなく、その分時間がかかってしまう。

とりあえず森と丘での仕事を後に回して他の仕事を優先してお金を貯めるという結論になった。

 

 

そうしている間、ジンヤさんはお父さんにお願いしてお父さんの工房を借りてひたすら見たこともないような方法で武器を鍛造していた。

その姿はもう本当に鬼気迫る感じで……話しかける事も憚られるくらいで……。

さすがのお父さんも、ほとんど不眠不休で鉄を叩いている姿を見て、息をのんでいた。

でもそれでもおとうさんは興味深そうに、ジンヤさんの鍛造している姿を見つめていた。

それに構わずジンヤさんはただひたすらに鉄を叩き続けていた。

 

 

イャンクック討伐の日から十日ほど経った、ある日。

珍しく早起きできた私は、裏庭の薪割り場に、ジンヤさんの姿を見つけた。

 

 

……何? あのバカみたいに長い細い金属の……剣?

 

 

窓から密かに覗くように見てみる。

ジンヤさんは、今まで見たこともないような奇妙な格好をしていた。

下はスカートみたいな感じなんだけど、でもそれにしても足首辺りまであるのはいくら何でも長すぎるし、それに中央でズボンみたいにきちんと分かれている。

上は後ろ姿だからわからないけど、帯みたいな紐で、体を縛っている。

 

 

ジンヤさんの目の前には、薪がいくつも立てかけられており、それに相対するように、ジンヤさんはその場に立っていた。

 

 

ザァァアァァ

 

 

風に揺られて木々が葉を揺らして音を立てている。

いくつかの葉が落ちていき、ジンヤさんの目の前を通り過ぎたその瞬間に、ジンヤさんからもの凄い威圧感が放たれた。

 

 

右手に握っている細長い奇妙な鉄の剣が一瞬ぶれる。

その直ぐ後に、立てかけられていた薪が、何分割にもなって倒れて、乾いた木の澄んだ音が辺りに鳴り響いた。

 

 

な、何?

 

 

もはや怪奇現象といってもいいようなその現象だけど、ジンヤさんはそれを全く気にせずに、ちょうどいい大きさに切られた薪を工房の中へ運び、次の薪を立てかけていた。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

ふむ……まぁ当然重いんだが……夕月のおかげで問題なく気を込められるか……

 

 

完成の余韻に浸っていたのも束の間、俺は完成した狩竜を、これまた気を込めながら綺麗に研いだ。

研ぎ終わると、俺は柄も作っていない完全にむき出しの状態で、裏庭に設置した薪を狩竜を振るって割り……というよりも斬って今朝の仕事兼、試し切りを行っていた。

持ってきていた上下の袴を着て、たすきで裾をまくっている。

薪の切断面を見る限り、研ぎにも特に問題ないらしく、冗談抜きで俺が鍛造した太刀なのか不安になるほどの出来映えだった。

未熟な俺のせいで砕けてしまったにもかかわらず、夕月はなお俺に忠誠を誓ってくれた……。

 

 

いや、もう夕月じゃないな。狩竜だったな

 

 

全てが夕月で出来ている訳じゃない以上、こいつはもう夕月じゃない。

狩竜だ。

そう思うと、それに呼応して、狩竜が気を微弱に発光させた。

 

 

さて……作ったまではよかったが、ある意味でここからだ大変だな……

 

 

無論鍛造するのが一番大変だが、はばきと鞘、柄を作るのも実は結構大変だったりする。

特に鞘。

刀は完全なオーダーメイド品だ。

当然刀身の形が全く一緒になることなんてあり得ない。

そのため鞘も完全に手作りになる。

 

 

普通に鞘を作るとなると……どう考えても戦闘中に邪魔になる……。だとすると、折りたたみ式の鞘にせざるを得ないから、計二本必要になるな

 

 

刃渡りで七尺四寸だ。

つまり鞘はそれ以上の長さになってしまう。

そんな長い棒を背負ったまま戦闘を行うのはいささか面倒だ。

折りたたみギミックを搭載した物を作るのが妥当だろう……。

鞘を戦闘中放り出すということをしてもいいが、それはほとんどあり得ない選択肢だ。

 

 

狩竜を工房に置いて鞘の制作に入ろうとしたのだが……振り向くと、そこにレーファがいた。

 

 

「おはようレーファ」

 

「おはよう……ジンヤさん」

 

 

若干を顔を引きつりながら俺に挨拶してくる。

それはそうだろう。

命を生み出す鍛造なので、その風景は異様な光景になる。

特に鏡とか使ってみたことはないが、リオスさんの鍛造風景を見ると、刀の鍛造は異常だろう。

 

 

まぁ俺の世界でも世界に類を見ない造り方だったので、異世界ならばなおさらか……

 

 

さらに言えば俺の身だしなみもひどいはずだ。

ここ数日、まともな人間の生活を送っていない。

髭も結構伸びている。

だが、はばき、鞘に柄を作って、狩竜を保護しないと安心できない。

何せ異常とも言える武器だから下手をすると村のさらし者になる可能性もある。

無論そんなことをさせるつもりはさらさらないが、用心に越したことはない。

 

 

俺はレーファに対して挨拶だけすると、工房に持ってきてあった、鞘に使える木を鑿《のみ》で丁寧に慎重に彫り始めた。

 

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

あいさつもそこそこに、ジンヤさんは胡座をかいて座ると、長い木を手に持ち、鑿《のみ》で木を削っていく。

ある程度削ると、それを細長い剣に合わせて微調整をしてる。

となるとあれは間違いなくあの剣の入れ物なんだと思う。

でもそれは今まで見たこともない不思議な剣だった。

ジンヤさんが最初に持っていた剣をさらに長くした剣。

あんな細さと薄さで、どうして折れないのか……。

不思議でならなかったけど、それを聞くのは憚られた。

その横顔があまりにも真剣で……。

 

 

「すごいな……」

 

 

奇妙な寂しさに包まれながら、ジンヤさんのを見つめていると、工房の入り口からお父さんの声が小さく聞こえてきた。

 

 

「お父さん……」

 

「おはよう、レーファ」

 

 

お父さんは私に微少を浮かべながら私に挨拶をしてくる。

私はお父さんに近寄ると、お父さんは腕を組み直し、再度ジンヤさんへ目を向けた。

興味深そうに、なにより真剣にお父さんはジンヤさんの仕事風景を眺めていた。

お父さんの気持ちは何となくわかった。

お父さんの娘として生まれて、お父さんの姿をずっと見てきたけど、こんな造り方をする剣を見たことがない。

私でさえ少し気になるのだから、同じ鍛冶士としてお父さんはその気持ちはなおさら強いと思う。

それさえも気にせず、ジンヤさんは今度は何か小さな金属片を片手に何かを作り出した。

それをちょうど剣の刃と取っ手の境目あたりに装着する。

それで終わりかと思い、私は工房に足を踏み入れてジンヤさんに声をかけようとしたけど、今度は、取っ手の部分にも木を当てて、何かを作ろうとしていた。

 

 

まだ完成じゃないの!?

 

 

手間の多さ、異様な形状、そして武器とわかっていてもその姿が綺麗だって思ってしまう、引き込まれてしまうような造形。

本当に今まで見たこともない不思議な武器だった。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

レーファとリオスさんが興味深そうにこちらを見ているが、俺はそれどころではなかった。

夜月や夕月、花月、水月と同じように、俺の気しか反応しないように鞘に呪詛にも似た気を込めながらの作業を行っているので、正直大変だ。

しかも急ピッチで作業を進めているのではっきり言って死ぬほど疲れている。

リオスさんやレーファがぞんざいに扱うとも思わないが、しかし刀身を保護しておかないと狩竜自信が危ないし、切れ味がないに等しい大剣などと同じ扱いをすると大けがをしてしまう可能性がある。

とりあえず保存用の白鞘を作るにとどめて俺は寝ることにした。

柄とはばきも作り終え、俺は一日爆睡した。

丸一日近く。

震える手で俺のことは一日放っておいてほしいと、黒板に絵を描いて伝えるのも億劫だった。

ついでに言うとレーファがすごく怖がっていた。

そして次の日、再び明け方近くに起きた俺は、自室で蝋燭の火をともし、静かに気を込めながら狩りに使うときの鞘を作る。

鞘が出来たら今度は折りたたみのギミックを作る。

鞘が大きすぎるので七分割して折りたためるようにして、折りたたんだ鞘を固定できる特別製のシースも布で作る。

大きさが大きさなので、持ち運ぶときは手で持っていた方が安全だろう。

夕月に使っていた下げ緒と柄巻は二つを綺麗につなげて、狩竜の柄巻として使用する。

目釘も使えるように穴をうまく空けた。

鞘と鍔に関してはどうしようもないので、部屋に置いておく。

鍔は加工すれば何となるが、これは自戒として保存しておくことにした。

鍔と柄、そして鞘が主が亡くなって、嫌に寂しい雰囲気を放っている気がする。

 

 

鞘もはばきも、そして最後の研ぎも終えると、俺は工房へと降りて、最終的な仕上げとして、茎《なかご》(柄で覆っている部分)の表に銘を刻んだ。

 

 

『狩竜』

 

 

それを刻み終えると、全ての行程が完了し、ここに狩竜が真に完成した。

 

 

「全ての竜を斬り捨てる……よろしく頼むぞ……狩竜、我が相棒よ」

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

 

「ハンターになりたい」

 

 

ジンヤさんが作っていた武器が完成したと同時に、ジンヤさんは私とお父さんにそう言ってきた。

その言葉に私は呆気にとられてしまう。

お父さんはこの前からジンヤさんと何か相談していたから、驚きもせずに静かにイスに座っている。

そしてどうしてかは知らないけど、リーメさんも私の家にジンヤさんが呼んでいて、私同様驚いていたけど、それを聞いてどこか嬉しそうにしていた。

 

 

「リーメ」

 

「は、はい!?」

 

 

どうしてこの場に呼び出されたかわかっていないリーメさん……私もだけど……が、突然ジンヤさんに呼ばれて驚きながらも返事をする。

ジンヤさんはそのリーメさんに向かって頭を下げた。

 

 

「え?」

 

「森と丘で、さきに帰って悪かった」

 

「そ、そんな」

 

 

どうもジンヤさんは前回リーメを一人にして帰ったことを気にしていたみたい。

リーメさんは特に気にしていなかったみたいで慌てていた。

それが終わると、今度はリーメさんが飛び上がるほどの言葉を、ジンヤさんは言ってきた。

 

 

「リーメ、俺をリーメの子分にしてくれ」

 

「「…………………………………え、え? えぇぇぇぇぇぇぇえ!?」」

 

 

この台詞には、リーメさんだけでなく、私も驚いてしまった。

 

 

 

 

~リーメ~

 

 

ジンヤさんの突然のお願いに、僕は思わず驚きの声を上げてしまった。

クックすら一撃で、それも斬って倒してしまうほどの腕を持ったジンヤさんが僕の子分!?

あまりの驚きのお願いに、僕はてんぱってしまいっぱなしだった。

 

 

「落ち着け、リーメ」

 

 

そんな僕を、リオスさんが落ち着けてくれた。

どうやらリオスさんはジンヤさんのお願いの意味を理解しているらしい。

僕が落ち着いてからジンヤさんがさらに説明してくれた。

 

 

腕が確かだとしてもそれを知っているのはユクモ村の僕らだけ。

しかもクックを倒したことをその目で見ているのは僕だけだ。

当然ギルドはジンヤさんの腕前なんてわかりはしない。

そんなジンヤさんがハンターになったとしても最低限の講習は受けないといけない。

そこで僕の出番。

前回のクック討伐を僕の手柄にして、ハンターランクを一段階上にして、飛竜討伐可能ランクへと押し上げ、飛竜討伐のクエストを僕に受注させて、ジンヤさんがそれに着いていく形であのときのレウスを討伐したいらしい。

幸いにもこの前ジンヤさんが討伐したクックの死骸はその場に残ったままだった。

レウスが森と丘に住み着いていないのと、この前ランポスをほとんど倒してしまったので死骸を食べるモンスターがいなかったみたい。

密漁扱いされても困るので、村のみんなで必死に死骸を村に運んできていた。

僕もその一人だ。

 

 

確かによほどの特殊なクエストでない限り、ランクに関わらず同伴者を連れて行くことは可能だ。

しかも村で既に講習を受けていると言えばドンドルマで直ぐにハンターとして働くことが出来る。

 

 

いいことずくめなんだけど……僕がジンヤさんの手柄を横取りしているみたいで嫌だった。

 

 

「村長さんはこの話をご存じなんですか?」

 

「すでに私から話を通している。ジンヤ君は腕前としては問題ないからな。だが、やはり基本的な知識のサポート役をこちらからつけておかないと色々と危ない。この村でジンヤ君を敵視してないハンターはお前しかいない。私からのお願いとしてジンヤ君のサポート役を受けて欲しい」

 

 

そこら辺の手回しは既に終わっていたみたい。

リオスさんまでも僕にお願いしてきた。

さすがにここまで言われてしまっては断りづらい。

僕も本当に嫌ってわけじゃない。

それに仮に僕がクックを倒したと言うことになっても、僕自身が飛竜の討伐を行わなければいいだけの話。

 

 

「わかりました」

 

 

僕はジンヤさんに向けて返事をした。

するとジンヤさんは僕に腕を差し出してくる。

僕は、それをおずおずとしながら握ろうとしたけど、いったんその手を止める。

 

 

「?」

 

 

差し出した手を握ろうとしないジンヤさんが不思議そうな顔をして、僕を見つめてくる。

そんなジンヤさんに僕は一つお願いをした。

 

 

「ジンヤさんが僕に見せてくれたあの剣。あんな感じの武器を僕にも作ってください」

 

 

言い回しが悪かったのか、ジンヤさんにはっきりとは伝わらなかったみたい。

僕はジンヤさんから黒板を借りて絵を描いて見せた。

さすがにそれで僕が何を言っているのかわかったみたい。

ジンヤさんは驚きながらこういってくれた。

 

 

「造るの大丈夫。森と丘、ごめんの気持ちで作るのいい。が、リーメに使えるか疑問。無理。使うの難しい」

 

「それでもいいんです! その剣を使いこなせるようになって見せます! 僕はジンヤさんと同じ剣が欲しい!」

 

 

造るという意味じゃなく、使えるか不安という意味での拒絶とわかって僕は俄然欲しくなった。

前はジンヤさんに近づきたい、少しでも強くなりたいと思った。

けど今は違う。

 

 

レウスに剣を折られたあの時、ジンヤさんはその場で茫然自失になってしまった。

それほどにあの武器を大切にしていたんだと思う。

 

 

僕の感じていた疑問。

ハンターの武器というか物の愛着とかがないのが僕はいやだった。

いや、そもそもその武器や、防具、そしてそのモンスターを倒すことが目的になっている……そんなハンター達が僕は嫌いだった。

確かにモンスターは恐いし、村なんかが栄えるためにはどうしても倒して……殺さないと自分たちが死んでしまう。

けど彼らだって生物なんだ。

遊びで殺していいとは思わない。

生き物をただ愉悦のためだけに倒してしまうこと……。

僕はそれが嫌だった。

 

 

でもジンヤさんは違うと思った。

村の全員が襲いかかってもあしらえる、クックでさえ一瞬で倒してしまうほどの腕前なのに、ジンヤさんは僕らがジンヤさんのことを囲んであからさまに危険視しても、争いごとを嫌うように僕らに交戦の意志はないって告げてきた。

でも僕らはそれを侮って露骨に笑って見せた。

それでも怒らなかった。

レグルさんが武器を叩きつけて怒ったけどあれはしょうがないと思う。

そして、それから戦ったけど、誰一人傷つけなかった……。

その高貴さが、気高さがかっこよかった。

自分の力を誇示しないその精神。

武器防具を自慢のように作り出しているハンター達とはどこか違う。

僕はそこにあこがれたんだと思う。

 

 

僕の真剣さが伝わったのか、ジンヤさんはやれやれといった感じに肩を竦めたけど、再度僕に手を差し出してきた。

 

 

「特訓する。俺が教える。厳しいぞ?」

 

 

片言だけど、ジンヤさんがそういってくれたのが何よりも嬉しかった。

僕は差し出されたその両手を握ると決意が伝わるように腕に力を込めた。

 

 

「お願いします!」

 

 

喜びながら僕はジンヤさんに向けてそういう。

その僕の気持ちにジンヤさんは応えてくれたのか、静かに微笑んでいた。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

リーメにお願いした二日後。

俺はハンターとして正式に登録すべく、首都ドンドルマへと向かう竜車に揺られていた。

歩きでもよかったのだが、クックの死骸を運ばなければいけなかったので、こうしてのんびりと竜車に揺られている。

そのクックもドンドルマで売るらしく、商売をするために村人の一人……俺はまだ名前を知らん……が竜車の操縦をしてくれている。

村でハンターになることも可能らしいが、それだと数日の手続きがかかるらしく、手っ取り早く行くならば、ドンドルマで直接登録した方が早いと言われ、俺は村長に竜車を出してもらい、リーメとともに向かっている。

 

 

二日後にしたのは、狩竜の性能実験がまだきちんと完了していなかったからだ。

いきなりの実戦投入とか普通あり得ないから……漫画やアニメじゃあるまいし。

無論家でも太刀の訓練は行っていたのだが、ここまでの超大な野太刀を使うことは初めてだったので、一日狩竜を振るいまくっていた。

非常に悪いとは思ったが、無害なアプトノスを一瞬で一刀両断して、切れ味、耐久力、そして使い勝手ともに文句なしのことを確認した。

鱗こそそこまで強靱ではないが、そこそこの大きさを誇る肉と骨を切断できれば文句なしだ。

ちなみにそのアプトノスは後でスタッフがおいしくいただきました。

ごちそうさま。

 

 

正直ここまで完成度が高いとは思っていなかった。

今はなき相棒に感謝である。

そのままクエストになってもいいように、最強装備でドンドルマへと赴いている。

 

 

気を込めた普段着。

その内ポケットに仕込んだスローイングナイフ。

左腰に夜月と花月、後ろ腰に水月。

村長が選別としてくれたお役立ちアイテム一式。

 

 

そして、新たなる相棒……狩竜。

 

 

立て掛けることは長くて無理だったので、斜めにして竜車の幌につるしていた。

リーメはなんかドンドルマに行くのは二度目らしく、首都に着く前からカチンコチンに固まっていた。

リーメは前回同様ハンターシリーズ防具に、フロストエッジと呼ばれる片手剣。

そして今回はさらに、大剣のボーンブレイドというのを背中に背負っていた。

何でも飛竜種にもなると、片手剣では対抗出来ないらしい。

 

 

そもそも片手剣のハンターは、サポート役という役割が主な存在理由。

確かに、多少程度しか重くない切ると言うよりも殴るといった感じ剣で、あの飛竜に対抗できるとは思わない。

そもそもこの世界の武器を見ている限り、斬るといった考えの武器が存在していない気がする。

大剣はほぼ完全に棍棒みたいな感じで切れるのは本当におまけ程度。

ハンマーと狩猟笛? は完全に打撃武器。

ランスは突く武器、ガンランスはそれに銃を足しただけ。

遠距離武器に関しては言わずもがな。

片手剣と双剣は大剣よりも切れるが、大剣よりは切れる、という感じの武器。

現在開発中と噂のスラッシュアックスとやらだが、これもほとんど重さを利用した打撃武器のような物みたいだ。

 

 

まぁ普通は斬ることに執着しないわな……殴るだけで生物ってのは死ぬわけだし。刃物で物を斬るっているのは技術がいる……

打刀を造ってほしいとリーメが言ったが、正直使いこなせるだろうか……

 

 

まぁとりあえず造って特訓してやるとは言ったので、義理は果たさないと男が廃るという物。

リーメが諦めるまではたとえできが悪くても面倒を見なければ。

ここで俺は完全にリーメのことを甘く見ていて、実は意外にも強かったりするのだが……それがわかるのはまだ先である。

 

 

竜車に揺られて三時間。

俺とリーメは首都ドンドルマ、別名「ハンターの街」へとたどり着いたのだった。

 

 

 

 

~???~

 

 

レウスがユクモ村付近の森と丘にも出現した

 

 

その報告が上がってきたとき、ギルドが騒然とした。

幸い死傷者は出なかったらしいが、人里近くにモンスターが現れるのは珍しい。

しかも最近立て続けに竜種の活動が活発化している。

ギルドも連日して竜の討伐を行っているが、それ以上に数が多い。

いままでの武器では時間がかかってしまうために新たな武器が必要。

スラッシュアックスは開発が難航しており、時間がかかりそうだった。

そこで私のつてで、鍛冶士として有名なリオスさんに新たな概念を持つ武器の製造を依頼したけれど、さすがのリオスさんでも難しいらしく、未だに完成の目処は立っていないらしい。

日々凶暴に、そして個体を増やしていくモンスター達に私たちギルドとしても頭を抱えていた。

 

 

そんな時だった。

あの男が……奇妙な剣を携えて、私の前に現れたのは……。

 

 

『ここが集会所兼ギルドね……やかましいところだな』

 

 

ドンドルマの集会所、酒場の入り口から、妙に明瞭に、しかし全く理解が出来ない言葉を話す声が聞こえてくる。

私は訝しげに思いながらも妙に気になってしまってそちらへと目を向けた。

 

 

「なんだあれ?」

 

「あの細長い棒、武器か? ランスの新種? しかも腰に下げているのも細長いな? あんな棒で殴ったらすぐに折れるんじゃないのか?」

 

「いやその前に格好を見ろよ。服装も異様だけど、あいつ髪の色がおかしくないか? 黒色だぜ?」

 

「首とかから見える肌も色がおかしい感じがするんだが、俺の気のせいか?」

 

 

突如乱入したその男を、酒場にいるハンター達が口々に様々に勝手なことを言っている。

私も素直にそう思った。

 

 

なんだあの男?

 

 

見たこともない、見た目防御力もなさそうな格好。

腰回りには片手剣にしてもえらく細長い棒のような物を複数装備している。

黒い目に黒い髪。

肌の色も白でも黒でもないとても曖昧な色。

その身に纏う雰囲気もそこが計り知れない。

だが、それら全てが霞んでしまうしまうほどの異様な物をあの男は手にしていた。

 

 

ランス並みに長い、だが、腰回りの棒に似てとても細長く湾曲している、謎の武器……。

 

 

……強い

 

 

ぱっと見る限りでは、あまり強そうにも見えない。

だが、その立ち振る舞いには全く隙がなかった。

そうしてその男に注目していると、ずいぶんと小柄な男がその男をカウンターへと誘導しようとしていることに私は気づいた。

 

 

リーメじゃない!?

 

 

思わず声を上げてしまいそうだった。

ユクモ村で私よりも年下でよく虐められていて、よく助けてあげた世話のかかる弟のような存在の、リーメだったのだから。

 

 

ということはあの男がレーファの話していたランポスを素手で倒す男?

 

 

それがわかった瞬間に、私はレーファの言っていたことが正しかったのだと感じてしまった。

この男ならばランポスくらい素手で倒してしまえると……。

ハンターとしての私が、そう判断したのだった。

 

 

そのリーメは緊張しながら歩いて受付へと向かっていく。

人見知りというか騒がしいのが得意じゃないのは相変わらずみたいだ。

私が見ていることにも気づいていない。

 

 

「お疲れ様です。リーメさん♪」

 

「え? 僕のこと覚えているんですか?」

 

「はい、職業柄人の顔は覚えておかないと」

 

「そ、そうなんですか……ありがとうございます」

 

「いえいえ、お仕事ですので♪ それで今日は?」

 

「今日は僕のランク更新の申請と、この人、ジンヤさんのハンターの加入の手続きをお願いします。基礎講習はすでに終了しています。これは僕の村の村長の公認書です」

 

 

リーメがそういいながら、村長の公認書を差し出す。

それを受け取ると、受付嬢はざっと内容を確認してすぐに顔を上げた。

 

 

「確認させていただきました。リーメさんはBランクでしたよね? この次はAとなりますので、竜種討伐の証がいるのですけど……」

 

「はい、持ってきています。すでにそちらのギルドにモンスターの市場での売買の申請に向かっています。討伐したのはイャンクックです」

 

「わかりました、申請を確認しますので少々お待ちください。そしてジンヤさんでしたか? 申し訳ないのですがお待ちの間この書類を書いていただけませんか? それではいったん失礼します」

 

 

受付嬢が奥へと引っ込む。

ジンヤと呼ばれていた男は受付嬢が何を言っているのかわかっていないのかその場に呆然としていた。

それをリーメが指でペンを動かす仕草をすると、その書類に向き直るけど、文字が書けないのか、会話しながらリーメが書類を書いていた。

 

 

「クックを討伐した? あの子供みたいな男がか?」

 

「しかも装備しているのはハンター装備にボーンブレイド、フロストエッジ……。ほとんどそこまで強力な武器じゃないぞ?」

 

「いや、案外後ろの男が討伐したんじゃ?」

 

「おいおい、話を聞いてなかったのか? あの男は今日ハンターになるんだぜ? クックを討伐できるわけがない。それも文字が書けないような阿呆な田舎者に…」

 

 

見た目での勝手な憶測と判断で、その場のハンター達はみんなリーメのことを侮辱している。

そしてリーメに書類を記入してもらっているその男も。

リーメには悪いけど、リーメに対するクックを討伐できないという評価には、私も同意見だった。

 

 

リーメはとても優しい子だった。

人のことを傷つけるような子ではなかったし、何よりもそんな度胸もない。

ほとんど採取や採掘のクエストばかり行っていたはずなのだ。

今の見た目を見ても劇的な変化をリーメがしたとは思えない。

 

 

そうなるとやはり……あの男が?

 

 

嘲笑が聞こえていないのか、それとも無視しているのかわからないが、後ろの異様な男は全く意に介していないようだった。

入ってきた時と同じ自然体でその場に静かに起立している。

そうして私が一人、考えていると、記入を終えたリーメが他の受付嬢に書類を受け渡し、ギルドカードの作成依頼を行っていた。

 

 

ギルドカードは、そのハンターがギルド公認のハンターであるという証で、基本的にモンスターを討伐することが出来る権利を得る。

ギルドカードにもランクがあり、紙、木、マカライト鉱石、金、プラチナとランクが上がるごとに変化していく。

普通、素材の剥ぎ取りが不可能なモンスターも、ギルドに加入することによって権利が与えられる。

無論ギルドの決まり事を守っての契約だが……。

 

 

「はいかしこまりました。こちらジンヤさんのギルドカードはすぐに発行いたしますので少々お待ちください。リーメさんのもすぐに終わりますので」

 

 

二人目の受付嬢も後ろの方へと引っ込むと、男はリーメに対してお礼を言っていた。

 

 

「ありがとうリーメ」

 

「いえ。僕もジンヤさんの役に立てて嬉しいです」

 

 

ずいぶんと発音がおかしい。

聞き取りにくい上に、発音の仕方が変だ。

しかしリーメはそれを特に気にした感じはしない。

いつもこんな感じの会話をしているのだろう。

 

 

そうして話していると、最初の受付嬢がこちらへと、リーメと謎の男のギルドカードを持って戻ってきた。

 

 

「お待たせしました。お二人のカードをお持ちしました、リーメさんはこれでAランクに、ジンヤさんはこれでハンターの仲間入りです!」

 

 

リーメがそれを男に渡す。

男は実に素っ気なくそれを受け取ると、懐に収めている。

そうしてリーメに対して何か言うと、リーメもそれに頷いて応えると、再度受付嬢と向き合う。

 

 

「早速なんですけど、飛竜の……リオレウスの討伐依頼は来ていませんか? 左目にナイフが埋まっている飛竜なんですけど……」

 

 

その言葉に、受付嬢は呆気にとられ、さりげなく会話に耳を傾けていたその場のハンター達はこらえきれなくなったように爆笑した。

 

 

それもそのはず。

クックは確かに竜種だが、鳥竜種に分類される。

ランクが上がって飛竜も討伐できる権限はあるが、いきなり空の王者の異名を持つレウス討伐を行うなんてことはあり得ない。

出来ないと言ってもいいくらいだ。

しかもリーメの武器はとても飛竜の鱗を破壊してダメージを与えられるような武器じゃない。

 

 

だけど、私は後ろの男……ジンヤの存在が気がかりで仕方がなくて、笑うことが出来なかった。

その時だった。

集会所のドアがけたたましい音とともに開かれたのは。

 

 

「緊急クエストの依頼です! 誰か私の街の近くに巣を作った隻眼のリオレウスを討伐してください!」

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

 

ずいぶんとまぁ不愉快な視線を浴びせられていますね~

 

 

入ったその瞬間どころか、ドンドルマに入ってすぐに奇異の目線を送られている俺としてはもう慣れたと言ってもよかった。

まぁそう見られるとわかっていながら帽子とか装備しなかった俺が悪いんだけどね?

何で帽子を装備しなかったのかって?

嫌いだからだよ、帽子が。

 

 

「ジンヤさん、あそこに行きましょう」

 

 

言語をまともに話せない俺にもわかるように、指で行き先を告げながらリーメがそうカウンターを指さす。

俺はその言葉に逆らうことなく、リーメの後についていく。

 

 

リーメが何か受付の女の子と話しているが、俺には全くわかません!

 

 

というわけで俺は静かにリーメの手続きが終えるまで脇に佇んでいる。

その間露骨に指さされたり、嘲笑などが俺に向けられてくるが聞こえなかったし面倒なので俺は完全に黙殺した。

 

 

前回同様、全ての人間が阿呆ではないみたいだが……

 

 

俺は相手に悟られないようにさりげなくこちらを冷静……いや若干困惑気味? に、観察してくる女をちらっと見た。

 

 

鉄と何かの鉱石を混合した鉱石の鎧をベースに、薄い緑色の鱗を各所に無駄なく使用し、さらには貴婦人よろしくスカートが膝下あたりまでを覆っている。

その鎧にはこの間のレウスと同等の気を感じた。

それがモンスターの素材から作られているならば、この女は相当なレベルの腕を有しているのだろう。

雰囲気もそこそこ出来る感じだ。

背中に背負っているのはこれまたずいぶんと大きな西洋槍、ランス。

 

 

いや、取っ手近くに回転式弾倉がある。となるとあれはガンランスか

 

 

女が装備しているランスっぽい武器にはリボルバー拳銃のような回転式の弾倉がついていた。

零距離グレネード発射装置だ。

この攻撃はちょっとした爆弾のようなものらしく、モンスターにもかなり有効な武器で愛好家は多いらしい。

が、複合兵装の欠点として強度があまりなく、かつ重い。

グレネードの弾も持ち運びしないといけないのでかさばる。

オートマチック式の拳銃みたいな弾倉ならば携帯も容易だと思えなくもないが……。

 

 

どちらにしろ弾が大きいんだから大して違いはないか……

 

 

しかし女が使っている武器は上等な得物なのか、これにも他の連中とは違い、モンスターの強い気を放っていた。

よく見ると、刃っぽい部分が緑色っぽい魚の鱗の集合体? のような物で出来ている。

そこから一番よく気を感じる。

 

 

そうして女を品定め(嫌らしい意味ではない)をしていると、リーメが俺に何かペンで物を書くような仕草をする。

書類制作が必要らしい。

当然、言葉も満足に話せない俺が、文字なんぞ書けるわけもない。

 

 

「リーメすまん。書いてくれ」

 

「わかっています」

 

 

申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、リーメは嫌な顔一つせず、というよりもむしろ嬉しそうにしながら書類にさらされとずいぶんと綺麗な絵(文字が読めないので絵か見えない)を描いていく。

それの記入が終わると、二人目に話していた受付の女の子がそれを受け取ると、先ほどの女の子同様、奥へと引っ込んだ。

 

 

「ありがとうリーメ」

 

「いえ。僕もジンヤさんの役に立てて嬉しいです」

 

 

満面の笑みでこう言ってくれた。

本当になんか俺の役に立つのが嬉しいらしい。

 

 

……なつかれた?

 

 

特に特別扱いした覚えはないんだが……なんか妙に好かれているというか、尊敬の眼差しを向けてくるのですが……。

こいつの後ろに左右に揺れる尻尾が見えるのは幻覚ではない気がする。

 

 

そう思っていると、最初の女の子が、二つのカードのような物を持ってこちらにやってきた。

 

 

『お待たせしました。お二人のカードをお持ちしました、リーメさんはこれでAランクに、ジンヤさんはこれでハンターの仲間入りです!』

 

 

それを受け取ると、リーメは俺に俺のギルドカードとやらを差し出してくる。

 

 

……読めん!(涙)

 

 

差し出されはしたけど……そこに書かれている内容は俺には全く読めなかった。

読めないので嬉しさも九割減、というよりもこんな紙切れ不要なら今すぐ捨てている。

 

 

「リーメ、レウスを」

 

「はい」

 

 

正直他のことなど今の俺にとってはどうでもいいのだ。

あいつに勝たねば、俺は、前には進めない。

 

 

リーメが何事か口走ると、その場が爆笑の渦に包まれた。

 

 

それもそうだろうな

 

 

俺はもうわかりきっていたことなので溜息しか出てこない。

ま、こういうやつらに限って実力はほとんどないんだからほっとけばいい話。

リーメはそれが耐えられなさそうだったが、俺は頭を軽く叩いてやった。

 

 

その時、こちらに慌てて駆けてくるような気配を感じ、俺は入り口の方へと視線をやる。

するとその予想に違えることなく、一人の男が飛び込んできたのだった。

 

 

 

『緊急クエストの依頼です! 誰か私の街の近くに巣を作った隻眼のリオレウスを討伐してください!』

 

 

……まぁ、当然何を言っているのかなんてわからないけどね

 

 

 

 

~???~

 

 

転がり込むように集会所に入ってきた男は、入ってきたその瞬間に大声でそう言った。

その言葉に、再び集会所が喧噪に包まれる。

 

 

「リオレウス討伐? おいおい、ほとんどギルド専属討伐対象ともいってもいい飛竜だろ?」

 

「俺らでは少々無理だな。まだ死にたくないしな」

 

 

先ほどまで喧噪に包まれた集会所が途端に静かになった。

誰もがリオレウスを恐れて顔を上げないで目立たないに声を潜めている。

 

 

軟弱者! それでも男か恥を知れ!

 

 

私はそう大声で叱咤したくなったが、それを言ってもどうしようもない。

私はそれを受けようと、声を上げようとしたが、先にリーメが動いた。

 

 

「僕が……僕らが受けます!」

 

 

その声は震えていたけど、決意に満ちた力強い声だった。

男も、リーメがそういうのと同時に、転がり込んできた男に一歩近づいた。

誰もが、鼻で笑っていたけど、その男はそれを感じ取ったのか、リーメに縋るように頭を下げた。

 

 

「お願いします……」

 

 

そのまま受付嬢に、詳細を記した紙を渡すと、三人がそろってすぐに出ようとした。

その時私はリーメ達に声を掛けていた。

 

 

「待て!」

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

「待て!」

 

 

さすがにこれだけ簡単な単語は聞き取れた。

俺たち三人は、急ぎ足で外へと向かおうとしていた足をいったん止め、声を掛けてきたやつの方を向いた。

 

 

やはりお前か……

 

 

声が女性の声をしていた時点で何となく想像は出来ていた。

そしてそれは違えることなく、俺を監視していた女がそこにいた。

 

 

「フィーアさん!?」

 

 

驚くことに、リーメがこの女のことを知っていた。

名前こそわかったがその後親しそうに話しているところを見ると、そこそこ仲はいいらしい。

そしてその様子を観察していたが、どーもリーメが下の立場らしい。

この女が強気なこと、リーメが弱気なことを差し引いても、それでもリーメの方が下っ端に感じる。

まぁ年も女の方が上のようだしそれも当然かもしれないが。

半ば追い詰められるように会話をしていると、リーメが俺に向き直ってこう言ってきた。

 

 

「フィーアさん、一緒にレウス。大丈夫?」

 

 

どうやらついてくるらしい。

 

 

どういう魂胆かは謎だが、まぁリーメの保護役がいたほうが俺としても都合がいいか……

 

 

俺は頷くと、狩竜を握りしめる。

砕けてしまった夕月を玉鋼に戻し、新たな命を与えた野太刀、狩竜。

これほど初陣にふさわしい相手はおるまい。

 

 

言い訳はしない。前回、俺は確実にあの飛竜に負けた……だが、心まで敗れたつもりはない!

 

 

男の先導に従い、リーメがついて行く。

俺もその後に続いた。

 

 

さぁ、狩竜よ。第二幕にして、終幕を始めよう!

 

 

それに応えるように、狩竜が嘶き《いなな》のごとき微細な振動を、俺に返してくれるのだった。

 

 

 

 




レウス戦一歩手前にて終了。
今回は見せ場とも言える戦闘が全くありませんので、物足りなかったかもしれません

その分、次のレウス戦闘で頑張りますので……お待ちいただけましたら幸いです


次章「決着(仮)」

さ~あ今度こそレウスと決着がつくのか!?
どんどん予告に意味がなくなっている気がするけどそれでもまだ書きたいので書く自己中作者!


何かご感想、ご意見などがございましたら戴けると幸いです

評価と、お気に入り登録増えすぎだよ!?
怖いってw
いや嬉しいですけどね……
それでも怖いチキンな作者w

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