リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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ピンポンパンポ~ン

お知らせです

……前回よりもさらに長くなっちゃったw げへw

……すいません冗談抜きで長くなりました。

後ひょっとしたら最後の方書き直すないし、書き足すかもしれません(まだ長くする気か!)
それでもよろしければ読んでみてください

あ、後今回誤字脱字のチェック出来ませんでした。そこら辺はどうにかフィーリングしてください!

途中で切れるかもしれません……読者様が。長すぎて……

楽しんでいただけたら……嬉しいです(無理かも……)


青い大群

~刃夜~

 

 

夜が明ける少し前。

俺は一人でユクモ村の塀を飛び越えてすぐそばの林へとやってきていた。

適当に作った木刀を片手に、俺は今日も朝練を開始した。

 

 

俺がレーファを助けた日から早一週間。

俺はユクモ村で平和に暮らしていた。

 

 

俺は何でか知らないが現実世界から、この世界へと迷い込んだ。

目覚めた所は森林の中。

そこ、森と丘、と呼ばれる場所で恐竜もどき……ランポスと言うらしいが……に襲われていた女の子、レーファを助けた。

その子が助けてくれたお礼にと、自分の村へと招待してくれたんだが、格好が異様だった上に何でもモンスターを一撃で吹っ飛ばすのは異常なことだったらしいく化け物扱いされました。。

それでもどうにか耐えようとしたのだが、耐えることが出来ず暴走。

んで村から出ようとしていたらレーファが俺を庇ってくれて、んでもってその親父さんで、リオスさんの家に厄介になることになったのだった。

あらすじ説明終了。

 

 

娘の命の恩人であっても遊ばせているわけにはいかず、もちろん、俺としてもただ飯ぐらいをするつもりはないので仕事の手伝いをしている。

午前はレーファの畑仕事を手伝い、午後は工房での力仕事に精を出し、夜はレーファがつきっきりで俺の語学講座を開いてくれていた。

言葉が通じないのは不便以外の何物でもないので、俺は本気で必死になって勉強した。

その甲斐あってか、挨拶程度の簡単な日常会話ならば話せるようになっていた。

 

 

 

そんなことを考えつつも、俺は一振り一振り、魂を込めて木刀を振り下ろす。

森の中で、生命と大地の息吹を感じながら、ただひたすらに……。

やがてだいぶ日が昇ってきたところで、俺は本日の朝練を終了して、そばの小川で水浴びをして、汗を流した。

 

 

「あ~冷たい。が、気持ちがいいな」

 

 

水の冷たさに思わず声が出てしまう。

そうして持ってきていた布で軽く水を拭く。

そして持ってきていた水を入れるための瓶に水をいっぱいに入れると、それを器用に担ぎ、人が起き出す前に塀をひとっ飛びで跳び越えた。

別に見せてもかまわないんだが、騒がれても厄介なので秘密にしていた。

それに、レーファの家族や、村長以外は、俺のことを未だに怖がっていた。

この前叩きのめした阿呆どもには憎まれていると言ってもいい。

が、気にしてもしょうがないので気にしない。

 

 

だって別にどうでもいいし

 

 

畑から少し歩くと、家が増えてきて、そのうち比較的大きな家が見えてくる。

 

 

『リオス武具屋』

 

 

道に面した大きな入り口の上の壁には、でかでかとそうかかれた看板が掛けられている。

といってもまだ俺は文字を解読するまでには至っていないので、レーファに教えてもらったのだが……。

 

 

俺は店の入り口とは違う、道に面していない入り口から中へと入り、先ほどの水の入った瓶を台所へと運ぶ。

台所から出るとちょうど起きてきたところなのか、リオスさんが夫婦の寝室から出てくるところだった。

 

 

「リオスさん、お早うございます」

 

「お早う、ジンヤ君」

 

 

軽く頭を下げて挨拶をすると、リオスさんは微笑を浮かべながら返事をしてくれた。

 

 

挨拶を交わしたのはがっしりとした体格の五十代前後の男。

茶色と白髪の交じった髪を後ろで一つに縛り上げている。

髭はそんなに濃くはない。

肌の色は若干黒い。

身長もほとんど俺と同じくらいだ。

名前はリオス。

俺がお世話になっているこの家、リオス武具屋の店主だ。

 

 

リオスさんは挨拶だけ交わすと、そのまま工房へと歩いていった。

炉に火を入れに行ったのだろう。

 

 

何でもリオスさんは相当有名な鍛冶士らしい。

またギルドと呼ばれるハンター達を管理する組織から直々に何かを依頼されたらしい。

 

 

ハンター

 

読んで字のごとし狩人。

この世界に生息する、大小様々なモンスター達を狩り、街や村の平和を担う人間達。

モンスターは主に、牙獣種、鳥竜種、飛竜種、古龍種などに分類される。

最後の古龍っていうのは伝説らしいが。

ランクはCから始まり、B、A、S、G、とランク付けされている。

 

 

ギルドナイト

 

ハンター達のエリートの集まりで、そこに属するにはG級クラスのハンターでないと所属することが許されないらしい。

 

 

リオスさんはそんなハンター達の使う武器防具を制作する仕事をしている。

武器は様々な物があるが、分類は

大剣、片手剣、双剣、ランス、ガンランス、ハンマー、狩猟笛、ライトボウガン、ヘビィボウガン、弓に分けられる。

首都とも言える大きな街、ドンドルマでは、何でもガンランスのような機構を搭載した斧剣を開発しているらしいが、まだできあがっていないらしい。

 

 

この世界の工房がどんな構造をしているのか興味はあったが、工房は鍛治士にとっては神聖な場所だ。

興味本位で入っていい場所ではない。

 

 

「刃夜さん、おはよう」

 

 

そうして若干後ろ髪を引かれる思いで、工房の方を見つめていると、再び寝室のドアが開き、穏和な女性が出てきて俺に挨拶してきてくれた。

 

 

「ラーファさん、おはようございます」

 

 

話しかけてきた女性はラーファさん。

レーファの母親だ。

身長は俺よりも低いが、レーファよりは高い。

といっても彼女はまだ成長期にあるので、追い越す可能性もあるが。

普通体型。

髪の色は、とても薄い紫色だ。

こちらはリオスさんと違って肌は白い。

レーファも肌の色は白かったので母親譲りなのだろう。

 

 

ラーファさんは工房の方を指さす。

リオスさんが既に工房に入っているのか聞いているのだろう。

俺はそれに対して頷くと、ラーファさんはやれやれ、と言った溜息を吐いた。

 

 

ギルドからの依頼。

内容はわからないが、レーファが大変そうにしているお父さんを見るのがつらい、と愚痴を言っていたのを思い出す。

言葉がわからないので完全に理解できなかったが、レーファがこの前絵で補足説明してくれたので、どうにか事情はわかった。

 

 

世話になっているお礼に、何か手伝ってあげたくなるが……相当な腕を持っているリオスさんに俺程度が助言など片腹痛い

 

 

自嘲気味にそう内心でつぶやく。

そう思っていると、ラーファさんが今度は上、天井を指さした。

それに対しては俺は今度は首を横に振った。

ラーファさんも既にその答えは予想していたらしく、苦笑いを浮かべる。

そうしてそのまま俺に何かを告げてくる。

その言葉は既に何度も聞いているので、何を言っているのかは聞き取れなくとも意味はわかる。

了解の意を伝えるために、俺は不承不承頷くと、ラーファさんは台所へと向かう。

朝食の準備をするのだろう。

俺はそれを何となく見届けてから、階段を上って二階へと上がっていく。

二階は宿舎のようにドアがいくつも並んでいるだけのシンプルな構造だ。

廊下を突き進み、端の方にある部屋の前で立ち止まった。

無駄だとは思ったがとりあえずノックする。

 

 

「起きろ、レーファ」

 

 

完全に部屋の主、レーファが寝ていることを前提で話しかける。

反応なし。

どうやら今朝もまだ気持ちよさそうに寝ているようだ。

 

 

「やれやれ」

 

 

何でか知らないが、俺が朝早起きを自主的にしていることを知ったラーファさんはあろう事か愛娘の目覚まし役に俺を指名してきた。

朝は忙しいのであまり時間を取られたくないらしい。

特にレーファは結構寝起きが悪い。

そのため朝食の時間が遅れることがしばしばあったそうだ。

 

 

その時ニヤニヤ笑っていたが、あれはどういう意味だったのだろう?

 

 

そう思うが全く意図がわからない俺には首を傾げることしかできない。

まぁそんなどうでもいいことは心底どうでもいい。

俺は一切の躊躇無くドアを開け放つ。

最初こそ着替えなどを警戒していた俺だが、それらは一切いらぬ心配だということは、一週間近く生活していれば無意味だということは直ぐにわかる。

思春期と言えなくもない女の子の部屋に入るのは不躾かもしれないが、この後の労働のことを考えると無駄にする時間はあまりない。

中はカーテンで締め切ってあるので大分薄暗かった。

まだ夜が明けて直ぐくらいだ。

日もあまり出ていないので当然といえば当然だが……。

 

 

「レーファ、起きろ」

 

 

夜目の利く俺にとってはこんな暗闇、昼に等しい。

迷いなく窓際のベッドの傍へと歩み寄り、部屋の主に呼びかける。

 

綺麗な薄い紫色に輝く肩まで掛かった髪が、布団の上で無駄に綺麗に広がっている。

肌の色はラーファさんと同じ白い色。

しかしラーファさんよりも少し肌の色の白さが甘い。

恐らくこれはリオスさんの肌の色が多少混ざったのだろう。

顔は間違いなく童顔だ。

しかしそれも当然。

聞いてみたところ、なんとまだ十四歳らしい。

この年の子供にしては背が低いように思える。

 

 

「んんぅ、むにゃ……」

 

 

部屋の主、レーファは、それはもう幸せそうにおねんねしていました。

蓑虫のように布団にくるまっている。

 

 

「ふふ、ジンヤしゃん……」

 

 

どうやら俺が夢にでも出てきているようだ。

どんな夢なのか少し気になったが、幸せそうな寝顔をしているので悪い夢ではないだろう。

目覚まし係を任命された当初は、どうやって起こそうか悩んでいた俺だったが、こいつの寝起きの悪さは既に承知済みだ。

 

 

 

「起きろ」

 

 

俺はくるまっている布団を掴むと、情け容赦なく引き抜いた。

 

 

「んにゃ? ……きゃぁぁ!」

 

 

ビターン!

 

 

最初こそ戸惑いの声を上げていたレーファだが、床に落ちると、随分と痛々しい音を立てているが、意外と頑丈なレーファは何度かこの起こし方をしても普通に問題なかったりする。

 

 

「い、いたい……」

 

「起きたか?」

 

「う~~~~~、ジンヤさん、ひどい!」

 

 

既にレーファも、俺が起こしに来ることになったのは最近の事でわかっている。

痛そうに打ち付けた箇所を手で抑えながら怨めしそうな目線を俺に向けてくるが、俺には冷ややかな表情を返してやる。

 

 

「起きろ」

 

 

反論を許さぬ態度でずばっと一言で告げる。

 

 

……本当のこと言うとこれくらいしかしゃべれないからなんだけどね

 

 

「レーファ! 早く起きなさい! ご飯抜きにするわよ!」

 

 

最初は不機嫌そうにこちらを睨んでいたレーファだが、下からラーファさんが何事か叫んでくる。

それを聞くとレーファは慌てて起き出した。

俺はラーファさんが叫んだ時点で、身を翻して部屋から出て行こうとしていた。

 

 

小娘の着替えを見る程欲求不満なわけないし

 

 

「ジンヤさん」

 

 

そうして俺が部屋から出ようとすると、後ろからレーファが俺の名前を呼んでくる。

俺は首だけ後ろを振り向くと、ようやく頭も起きて立っているレーファが、笑顔でこう告げてくる。

 

 

「おはようございます」

 

「おはよう、レーファ」

 

 

これがここ最近の俺の朝飯前の日課だった。

 

 

 

 

それから、下の台所で俺はリオス一家のご飯をありがたくいただく。

噛み応えのある丸いパンに俺とリオスさんは豪快にかぶりつき、魚介の入った塩スープを食す。

さらにはご丁寧にサラダまで用意されているので、それらも残さず食した。

食事は生活の基本。

怠るのは馬鹿のすることだ。

それでも礼儀として行儀悪く食すことはない。

そうして皆が食べ終わると、静かに目を瞑ってお辞儀をする。

日本のいただきます、ごちそうさまみたいなものなのだろう。

俺は一人だけ顔の前で手を合わせると同じように静かに黙礼した。

 

 

「ごちそうさま」

 

 

最初こそ奇異の目で見られていたが、すぐに慣れてくれた。

レーファの家族はずいぶんと肝の据わった家族だと思う。

今はリオスさんのお古と思われる衣装を着ているが、最初の普段着はこの世界では異様の一言に尽きると言うのに。

 

 

でも正直、ハンターの装備で町中歩いてる方がよっぽどあれだと思うんだけどね……

 

 

この村にもハンターは幾人かいるので、何度か道ばたで見かけたのだが、大剣背中に背負ってたり、西洋槍と大型盾背負ったりとか、ハンマー持ってるのはスルー。

いや、まぁそれがこの世界での常識なんだからそうなんだろうけどね……。

食事を終えると、レーファがラーファさんに何かいろいろと言われている。

本日のお仕事を伝えられているのだろう。

いつもの通り午前は農業で午後は火事場の薪割りだと思っていたのだが、ラーファさんがいったん台所へと引っ込むと、背中に背負う大きな籠をレーファに渡した。

 

 

今日はいつもとは違うのか?

 

 

その二人のやりとりを訝しげながら見ていると、すぐにレーファがこちらに来た。

最近のレーファの必需品ともいえる小さな黒板と、白墨を手に、なんか人っぽいのと、恐竜モドキと思われる絵を三匹描いた。

人型自分をレーファは交互に指さしている。

 

 

レーファを助けた時の絵か?

 

 

ちょっとファンシーな絵になっているが十分伝わる。

俺は何度も頷くと次にすぐそばにキノコやら薬草やらを書き始め、それを籠に入れるような仕草をしてみせる。

 

 

今日はどうやらこの間のランポスとやらの恐竜モドキがいたあの森に採取に行くみたいだな……

 

 

それにも俺は頷くと、今度はレーファがランポスと俺を交互に指さし、パンチを繰り出したり、なんか防御しているような仕草をする。

つまり俺には護衛役としてついてこいと言うことなのだろう。

俺はそれにも頷いた。

ランポスごとき怖くも何ともない。

 

 

レーファが若干の不安要素ではあるが、まぁ最悪抱き抱えて逃亡すれば問題あるまい

 

 

俺がきちんと本日の仕事の趣旨を理解したことを把握すると、レーファは嬉しそうに微笑んで、台所に入っていく。

すると、二つの籠を渡して来た。

どうやら相当な量の採取を行わなければいけないようだ。

ラーファさんが顔を出すと、笑顔で何か言ってくる。

この感じだとよろしく、と言ってきているのだろう。

居候だし、特に問題もないことなので、俺は頷いて返事をした。

弁当とおぼしき物が入ったランチボックスをレーファは受け取ると、満面の笑みでこちらに近づいてきた。

 

 

「ジンヤさん。今日はよろしくお願いします!」

 

「お~わかった」

 

 

俺にあわせて簡単な、しかもゆっくりと発音してくれたおかげでどうにか言っていることがわかった。

それから互いに準備を行い、約三十分ほど後に、俺とレーファの二人は、森と丘へと出かけた。

 

 

 

 

村の正門(門番が超睨んできた。全く相手にしなかったけど)から村を出発し、二時間ほど歩くと、木々が生い茂る自然豊かな、森と丘へとたどり着いた。

前も思ったことだが空気がうまい。

排気ガスなんぞ全く出ない世界だからな。空気が汚れることもないのだろう。

アプトノス、と呼ばれる草食竜の親子が、水浴びをしたり、草を食べていたりする。

なんでか異様に癒される。

それを横目に流しつつ、レーファがちょっとした崖を登る。

身長が低いせいでひどく苦戦している。

俺は一息でそれを飛び越えて上ると、手を引っ張り上げて上るのを手伝う。

 

 

「あ、ありがとう。ジンヤさん」

 

「あぁ」

 

 

今回の目的が採取というのならば、特に大げさな装備は必要ないと思い、俺は脇差しの花月と、スローイングナイフ数点を持ってきていた。

脇差しだからそこまで邪魔にならない。

正直ランポス程度なら得物もいらないんだが。

投擲武器はあると便利なので持ってきた。

 

 

レーファを引っ張り上げると、俺は先を促した。

この森には実質初めて来たような物なので、俺はどこに本日の目的の薬草やキノコがあるのかわからない。

それはもちろんレーファもわかっているので、俺を先導するようにゆっくりと森の中へと入っていく。

鼻歌を歌いながら……。

 

 

ピクニック気分かよ

 

 

まだまだ子供だと言うことを再確認した気分だ。

十四ではそれも当然だが……。

俺はレーファに聞かれないように小さく嘆息すると、はぐれないようにその後をついて行った。

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

お母さんに頼まれて、私はジンヤさんと一緒に森と丘へとやってきていた。

何でも薬草とネンチャク草、アオキノコに特産キノコを大量に採取してきてほしいみたい。

何に使うかはわからないけど、村長から直々に頼まれたみたいだから私は分と、思わず気合いを入れてしまう。

そんな私を見ながら、ジンヤさんは苦笑していた。

馬鹿にはしてないみたいだけど、おもしろい物を見ている感じの表情だったので、私は不機嫌そうな顔を向けるとジンヤさんはさらに大声で笑ってしまった。

 

 

む~ジンヤさんのバカ

 

 

私は本当に少し不機嫌になると、ジンヤさんを置いてずんずんと、森の中へと入っていく。

ジンヤさんも遅れずに私の後ろをついてきてくれた。

工房の薪割りなんかの力仕事を手伝ってくれて、お父さんはジンヤさんの体力に舌を巻いていた。

薪割り三人分を、三分の一の時間で割り終えてしまって、本当にお父さんは驚いていた。

あんなに驚いた表情をしたお父さんの顔を見るのは初めてだった。

他にも、涼しい顔で私の畑仕事を手伝ってくれたり、ジンヤさん一人で数人分の仕事量を片付けてくれて、お父さんもお母さんもとても喜んでいた。

そうジンヤさんのことを思いながら歩いていると、最初の目的地へとやってきた。

 

 

ジンヤさんに助けてもらった……場所

 

 

一週間前、ランポスに襲われていた私を助けてくれたジンヤさん。

今でも信じられないけど、ジンヤさんはランポスを一人で、それも素手で倒していた。

ジンヤさんの背中はとても印象に残っている。

頼りがいのある、とても大きい背中。

 

 

でもそれ以上に……ランポスに襲われて死にそうになったことが恐ろしかった。

 

 

本当に食べられて……死んでしまうかと思った。

本当に怖かった。

初めて感じた、死の恐怖。

もしもジンヤさんが通りがからなければ、私は今頃……。

 

 

そんなことを想像すると、とても寒くなってしまった。

それに耐えきれず、私は思わず自分で自分の体を抱いていた。

 

 

ランポスの鋭い牙も、爪も、なによりもあの貪欲な殺意が……怖い

 

 

ポン

 

 

そうしていると、頭に何かが優しく乗せられた。

後ろを振り返ると、そこには優しい笑顔を向けてくれている、ジンヤさんがいた。

ジンヤさんは右腕で私の頭を撫でながら、安心させるようにこう言ってくれた。

 

 

「大丈夫だ……」

 

 

優しい声で、はっきりとジンヤさんはそう言ってくれる。

自分がいるから安心しろって、言ってくれていた。

その笑顔を、ジンヤさんの自信に満ちたその態度が、なによりも、ランポスを簡単に追い払ったジンヤさんの姿を見ている私は、とても落ち着くことが出来た。

大丈夫と思ってはいたのだけれど、やっぱり怖かったみたい。

 

 

「……うん」

 

 

私は顔を真っ赤にしながらも、信頼していると伝わるように祈りながら、笑顔でジンヤさんを見上げた。

それに対してジンヤさんは仕方がないとでもいうように、大げさに肩を竦めると、私の頭を軽く叩き、さっさと仕事を始めるぞとでも言うように、キノコが生えている地面にしゃがみ込んだ。

 

 

……ジンヤさんのバカ

 

 

まるで相手にされないことに若干不機嫌になりつつも、私はジンヤさんのそばへとしゃがみ込むと、今日取りに来た薬草とアオキノコ、特産キノコを摘んでジンヤさんへと見せる。

ジンヤさんは少しの間それらを見つめると、頷き、同じ物を自分が背負った籠へと入れていく。

最初は間違った薬草やキノコを入れてしまうか心配したけど、その必要はないみたい。

お日様もだいぶ真上に近づいている。

お昼までもうそろそろだということに気づいて、私は作業に集中した。

最初は周りを気にしながら作業をしていたけれど、それに気づいたジンヤさんがそばへとやってくると、自分の胸を力強く叩いた。

 

 

「俺を信じろ」

 

 

まだあまり言葉が通じないけれど、ジンヤさんは簡単な単語はもう話せるようになっていた。

発音はちょっとおかしいけど。

でもその態度は本当に堂々としていて……。

 

 

この間と同じように私は胸が高鳴った。

それを悟られないように、必死になって抑える。

そうしていると、反応しない私を訝しんでジンヤさんが私の目の前にしゃがみ込むと、その大きな手で私のおでこに手を当てて来た。

 

 

っ!?

 

 

思わず小さな悲鳴を上げそうになってしまった。

そんな私には目もくれず、ジンヤさんは空いている方の手で自分のおでこに手を当てる。

熱があるのか心配してくれているのだろうけど……。

 

 

む~~~~~

 

 

あまりにも、あまりにもわかってくれないジンヤさんが憎らしくなってしまう。

すると突然黙りだした私をのぞき込むようにジンヤさんが私の顔を見つめてくる。

その顔に、私は思いっきりこういってあげた。

 

 

「ジンヤさんの、バカ~~~~~!」

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

とりあえず、午前で集められるだけ目的の品を集めた俺とレーファは、お昼時になるとほぼ同時に、泉のある場所へとやってきて木の根元に籠を置くと一息つくことにしたのだが……

 

 

何でか知らないが、レーファがものごっつ不機嫌なんですけど……

 

 

先ほどのやりとりからど~もご機嫌斜めのようだ。

そこまで変なことした覚えはないのだが……。

今も昼食を取っているが、こちらを見ようともしない。

別に不快ではないが何となく気になってしまう。

が……。

 

 

多感な年頃だしな

 

 

俺は思春期ということを考慮して、特に気にせず自分の分の食事、サンドウィッチを平らげる。

それを隠れて横目で見ている(バレバレ)レーファは、俺が何もしないとさらに不機嫌になってしまった。

体ごとそっぽ向いてしまう。

そんな仕草を見ていると、家にいる妹のことが脳裏に浮かんだ。

 

 

そういえば、みんな元気にしてんのかな……

 

 

裏家業で海外へと出張して、その帰り道だった。

この世界へと来てしまったのは。

 

 

連絡する手段なんぞありはしないが、どうにか無事だということだけでも伝えたいが。

思わずネガティブな気持ちになってしまう。

どうにか生きてはいるし、海外遠征なんぞ珍しくもなかったのだが……。

 

 

こうして一生あえないかもしれないと思うと、やはり寂しいな……

 

 

大の字に寝転がって木の葉越しに空を見つめる。

皮肉とでも言うべきなのか、空だけは、俺の世界も、この世界にも差違はなかった。

 

 

タッタッタッタ

 

 

そう感慨にふけっていると、とても小さな音だが、俺の耳ははっきりと、複数の足音をとらえていた。

もちろん気配も。

相手に悟られないように注意しながら俺は意識を周囲の状況把握に努めた。

 

 

ランポスが……六頭か……

 

 

こちらを囲むような配置で、静かに、だが着実にこちらを仕留めるために、包囲陣形を敷いてきている。

確かに数だけを考えれば有効な方法だが。

 

 

ま、獣ごときがわかるわけないか……

 

 

俺は静かに起き上がると、相手との位置的に、レーファにもっとも近いやつをたたけるように、重心を静かに移動させる。

そして内部の気を圧縮し……まるで弾丸が発射されるかのような速度と動作のなさで、ランポスへと逆に襲いかかった。

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

態度に出して不機嫌と、訴えているにも関わらず、ジンヤさんは特に何も私に対して行動を起こしてくれず、そのまま大の字になって寝っ転がってしまった。

 

 

……ジンヤさんのバカ

 

 

本日何度目かわからないジンヤさんへの悪口を心の中で言うが、当然伝わるわけもなく、ジンヤさんはそのままだった。

その無反応に私はさらに不機嫌になってしまう。

意識して恨みがましい視線をしながら横になったジンヤさんをさりげなく見つめてみる。

 

 

……え?

 

 

そこには、この一週間で一度も見せたことがないような、とても悲しそうな笑みを浮かべているジンヤさんがいた。

寝転がったまま手を空へとつきだして、その手をじっと見つめていた。

 

 

どうしたんだろう?

 

 

どんな感情を抱いているかはわかっても、何をそんなに悲しんでいるのかは私にはわからない。

どうにかしてあげたいけれど……言葉が通じないから、話を聞いてあげることすら出来ない。

命を救ってくれた人なのに……とても私に優しくしてくれる人なのに……。

 

 

そう思い悩んでいると、突然ジンヤさんが纏う《まと》雰囲気が変わった。

普段の優しいジンヤさんから……レグルお兄ちゃんがジンヤさんの武器入れを叩きつけた時と同じ雰囲気に……。

静かに、そして本当に……まるで起き上がり方のお手本とでもいうような個性のなさでジンヤさんはむくりと起き上がった。

 

 

「ジ……」

 

 

何が起こっているのかわからない私は言葉も通じないことを忘れて、ジンヤさんに話しかけようとした。

 

 

ダンッ!

 

 

しかし私がジンヤさんの名前を呼び終える前に、ジンヤさんは突然爆発したかのような音を発しながら私の後方、木々が生い茂っている、見た目何もないところに飛び込んでいった。

 

 

ゴキャ

 

 

ここからは何も見えないけれど、何かをへし折った音が響いてくる。

その音に私は思わず、悲鳴じみた声を上げてしまう。

 

 

な、何?

 

 

何が起こっているかわからない私は、ただ、恐怖で震えるしかない。

そしてそのすぐ後に、もう一つ何かをへし折るような音が、今度は左の方から響いてきた。

 

 

「ギュアァァァ!」

 

「ギュア! ギュア!」

 

 

後ろの茂みに気を取られていると、反対方向から複数の声が上がった。

その声はつい最近……一週間前にこの森で聞いた……。

 

 

ランポス!?

 

 

私のその予想は違えることなく現実の物となった。

木々の茂みから四頭のランポスが私目掛けて襲いかかってきた。

私はこの間の恐怖が蘇ってきて、体が動かなくなってしまった。

動かないといけないことは十分にわかっているけれど、まるで金縛りにあってしまったかのように私の体は、石になってしまったかのようにすくんで動けなかった。

 

 

「こ、こないで……」

 

 

ランポスの鋭い牙が、爪が……なによりもあの貪欲な殺意が、私の脳を恐怖で塗りつぶしていく。

 

 

ヒュン! ヒュン!

 

 

私が悲鳴を上げる寸前、後ろの茂みから何かが高速で通り抜ける音が耳に響き、それが何かを考え終える前に、それらはランポスの体へとめり込むと、その箇所から鮮血を吹きだたせていた。

 

 

「ギュルアァァァ!」

 

「ガアァ!」

 

 

その何かがめり込んだランポス達は、苦しそうにうめくと、倒れ込んでしまう。

けどまだ一頭残っていた。

それらは仲間がやられたにもかまわず、私に向かって突進してくる。

 

 

ズダン!

 

 

「てめぇの相手は、この俺だ、恐竜モドキ!」

 

 

後ろからさっきよりも大きな爆音が響くと、その次の瞬間には私の目の前を通り抜け、一週間前と同じように私を庇うように、ジンヤさんが飛び出してきてくれた。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

素早く、後ろに隠れていたランポス二頭を左右の拳を使って一撃で首の骨を折る。

すると仲間がやられたことに気づいた他のランポス達は、仲間がやられて焦ったのか、本能のままに飛び出してくると、俺よりも弱い相手、レーファを襲い始めた。

 

 

チィ!

 

 

レーファがいなければ全く問題ないが、世話になっている人の愛娘を殺させるわけにも、傷つけるわけにもいかない。

四頭がレーファを襲いきる前に倒すのは距離から言って少々厳しい。

物思いにふけってしまったために若干反応が遅れてしまったのが痛かった。

 

 

だが、愛刀夜月、夕月がなくとも、この程度ならば何とでもなる!

 

 

俺は懐に忍ばせていたスローイングナイフを右手で三本掴み、抜き放つと同時に一挙動作で、投擲する。

投げたそのナイフにはむろん気を込めて高速でランポスへと迫ると、突き刺さるのではなく、ランポスの内部へと完全にめり込んだ。

 

 

「ギュルアァァァ!」

 

「ガァァ!」

 

 

ナイフが当たった三頭は、悲鳴を上げてその場に倒れ込んだ。

完全に内蔵へと達しているのだ。

もう立ち上がることはない。

最後の一頭は、捨て身の覚悟なのか、さらに速度を上げてレーファへと駆け寄っていく。

 

 

まずい、あの速度と距離ではナイフで射貫いても、レーファに突進される可能性が……!

 

 

そう判断した瞬間には、俺はレーファの前に躍り出ていた。

 

 

「てめぇの相手は、この俺だ、恐竜モドキ!」

 

 

なんとか間に合い、俺は前回のレグルの大剣を吹き飛ばした時と同じように気を込めたアッパーを放とうと、右拳を引いて気を込めようとした。

だが……。

 

 

まずい、俺の後ろにはレーファが……

 

 

先週の恐怖で先ほど震えていたレーファ。

本物の死を体験しかけた小娘に、血が吹き出るような殺し方をするわけにはいかない……。

 

 

弱めに攻撃して吹き飛ばすだけにとどめるか……それともレーファを抱いていったん距離を……

 

 

これが致命的な隙となった。

しかも気を体内に中途半端に溜めてしまったために、体を覆うように展開することも、攻撃に転化するために気を込めることも出来ず、右肩をランポスに噛みつかれた。

 

 

「がっ!」

 

 

普段ならば気壁を展開しているため、この程度の攻撃なんぞ喰らうことはあり得ないのだが、自分の未熟さが故に、攻撃にも防御にも転じることが出来なくなり、結果として恐竜モドキの噛みつきを体に受ける羽目になってしまった。

しかも今日はリオスさんのお古を来ているため、衣服に全く気が込められていない。

普段着ならば大量に気が込めてあるので鎧にもなりうるもだが……。

右肩を中心に焼け付くような感覚が全身を駆けめぐり、鮮血が吹き出した。

 

 

「ジンヤさん!」

 

 

後ろでレーファの悲鳴が上げる。

優しいレーファのことだ。

これも自分のせいだと思いこんでしまうに違いない。

俺が帰郷の念に駆られて油断しただけだというのに……。

 

 

不覚!

 

 

俺の未熟さが、この子に一生消えない傷を抱えさせてしまったことを、俺は悔やんだ。

トラウマになってしまっても、この子に罪の意識を持たせないことを優先すべきだった……。

 

 

後悔先に立たずだが……まずこいつをどうにかするか……

 

 

さすがに肉食系の恐竜。

顎の力はすさまじく、気を張り巡らせていないただの肉体に容赦なく牙がめり込んできた。

途中で筋肉を締めて、どうにか内臓に達せさせることはなかったが、それでもだいぶ内部に牙がめり込んでしまった。

しかもそれだけに飽きたらず、前足のかぎ爪で容赦なく連係攻撃を仕掛けてくる。

それは両手で爪を掴んで回避するが、爪を掴んでこちらが牙をどうにも出来ないとわかると、さらに顎に力を加えてきた。

まさに火事場の馬鹿力。

 

 

「ジンヤさん!」

 

 

何度目かわからないレーファの絶叫が上がる。

別に絶体絶命的な状況ではないが(もしもこれをじいさんと親父に見られていたら、帰っても噛み傷よりもひどく、七割五分殺しされるだろうが。今の状況よりもそっちの方が怖い……)、レーファがそんなことわかるはずもない。

ここで安心させるように笑顔を向けたらかえって逆効果だろう。

俺は爪を掴んでいる拳に気を送り込み力を込める。

肩に噛みつかれてる部分にだいぶ気を使用してしまっているが、爪を砕くぐらい造作もない!

 

 

バキャ!

 

 

「ギュアァ!」

 

 

爪を砕かれた衝撃で、ランポスが驚いて牙を抜いて後ろにのけぞる。

その空いた口に、俺は右拳に集中的に気を込めながらも、右腕全体を気で覆いつつ、右拳をランポスの口内へとたたき込み、喉を通り抜け、胃まで拳をねじり込ませた。

 

 

「グ!」

 

 

口の中に肩まで入った状態だ。

当然ランポスは苦痛を訴えるように顎に力を加えようとするが、肩まで入ったことで口が開ききっている。

噛みつくことも出来ない。

 

 

「油断したとはいえ俺に一撃を加えるとは、見事だ。俺の血を冥土の土産に飲ませてやるから、閻魔大王に自慢でもしてこい!」

 

 

伝わるはずもないだろうが、俺はそう言い放つと、拳に溜めていた気を敵の胃の中で爆発させた!

 

 

ボン!

 

 

腹が一気に風船がふくらんだと思えるほどの膨張を起こす。

気をうまく内部のみで爆発するように調整した。

見た目だけ見れば外傷らしい外傷は、ランポスにはない。

俺はランポスから腕を引き抜く。

俺自身の血と、ランポスの血が入り交じって右腕は真っ赤になっていた。

 

 

「ッ!?」

 

 

それを見てレーファが目を見開き、口に手を当てる。

それはそうだろう。

これほどの多量の血を見ることなど、普通に生きていればありはしない。

レーファはそのまま、ふらっと傾くと、倒れ込むように意識を失った。

 

 

逆効果だったか……すまん、レーファ……

 

 

見たくもない物を見せてしまった。

しかも妹と大して年齢差がないまだ子供の少女に……。

俺は肩の痛みも忘れて、歯を食いしばる。

故郷恋しさに、自分を庇ってくれた少女に深い傷を負わせてしまった……。

 

 

「くそ!」

 

 

このまま暴れ回りたくなるほど自分に対して怒りを感じてしまう。

しかし噛みつかれた傷を放置するわけにも行かないので、俺は手当を開始することにした。

 

 

そばの泉で血を綺麗に洗い流す。

筋肉を締めてこれ以上出血しないようしておく。

洗い終わると、俺は午前に摘んだ薬草を拝借することにした。

歯で噛み、それを左手でよく揉んで、傷口へ当てていく。

薬草で傷を覆い尽くすと、その上に気を込めた左手を当て、細胞を活性化させて、表面だけでも傷口を塞いだ。

 

 

まだ全力では動かせないが、村に帰って気の治療に専念すれば夜ぐらいにはあらかた消えるな

 

 

リオスさんやラーファさんには悪いが、午後の仕事は中止するしかない。

俺は三つの籠をどうにかして担ぐと、左腕一本でレーファを抱きかかえ、村へと足を向けた。

 

 

ん?

 

 

微かな殺気を感じて、俺は後ろを振り向く。

そのまましばらく、注意深く観察したが特に異常は感じられなかった。

 

 

「……気のせい、か?」

 

 

眉間にしわを寄せながらそう思わず呟いてしまう。

が、いつまでもそうしている訳にはいかない。

レーファのことも気がかりだ。

俺は再びレーファを抱きかかえ直すと、村へと向けて走り出した。

 

 

この時、俺はもっと注意深く観察するべきだった。

あるいはモンスターを舐めきっていた。

この後俺は、村に多大な迷惑をかける事態を、引き起こしてしまう……。

 

 

「グゥゥゥゥゥアァァァァ……」

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

 

ジンヤさんの右腕が血みどろになっているのを見て気を失った後、私が気づいたのは私の部屋のベッドの上だった。

外はすでに真っ暗で、星空が空一面に散らばっていた。

お母さんがそばに付き添っていてくれて、私にその後のことを教えてくれた。

 

 

右肩に怪我を負いながらも、ジンヤさんは私を抱いて村まで帰ってきた。

その時門番をしているレグルお兄ちゃん達が、問答無用で私を強引にジンヤさんから引き離したらしい。

ジンヤさんもそれに抵抗するそぶりを見せずに、肩を大けがしているにも関わらず、お父さんのところまでいって事情も釈明もせずに土下座したって……。

最初こそ困惑していたお父さんとお母さんだったけど、私が気を失って倒れていることを聞くと、困惑してしまった。

村のみんな……特にレグルお兄ちゃんは、一方的にジンヤさんが私を危険な目に遭わせたんだって、主張してた。

お父さんもお母さんも、そして長老さんもジンヤさんを庇おうとしたんだけど、言葉が通じない上に状況説明できる私が気を失っているから、庇いきれなかったみたいで、今ジンヤさんは牢屋へと入れられているって。

 

 

「そんな……ジンヤさんは私を守ってくれて……」

 

「わかっているわ。でもあまり好意的な気持ちを抱いていないみんなはやっぱりジンヤさんが怖いのよ。白状するとお母さんも、レーファ、あなたがジンヤさんがランポスを素手で倒したっていうのを聞いたときは……申し訳ないんだけど、化け物だと、思ってしまったわ」

 

 

懺悔するように、お母さんが私に本音を告げてくる。

 

 

「でもね。一週間近くジンヤさんと一緒に生活したけど、ジンヤさんは化け物なんかじゃない。とても優しい人だってことは、私もお父さんも知っていることよ。だからそのことにみんなが早く気づくように、私たちは行動するべきじゃないかしら?」

 

 

私の手を優しく握りしめながら、お母さんは優しく告げてきてくれた。

 

 

出会ってからまだ一週間しか経ってないけれど……私はどれほど多くのことをジンヤさんからもらったんだろう?

 

逆に私はどれだけのことをジンヤさんにしてあげられているんだろう?

 

ジンヤさんは二度も私の命を救ってくれた。

 

怪我を負ってまで私を助けてくれた。

 

それには遠く及ばないかもしれないけど……みんなにジンヤさんがいい人だって……優しい人だって伝えるのは……。

 

 

私にしかできない!

 

 

「ありがとう、お母さん」

 

「ふふ、どういたしまして」

 

 

その時、警鐘が真夜中の村に鳴り響いた。

 

 

「ら、ランポスの大群だ! ランポスの大群が、村を襲いに来た~!」

 

 

!?

 

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

あのむかつく男、レグルに一歩的に罵声を浴びせられて、あげく罪人のように俺は今牢屋へと閉じこめられていた。

 

 

直径約五センチほどの鉄棒が格子状に組まれている特注品ともいえる牢屋……というよりもこれ大型モンスターの檻じゃね~のか?

 

 

 

相当嫌われているらしい。

今も俺の動作を一つたりとも逃さないと言わんばかりに、こちらをきつく睨みつけている。

 

 

真夜中なのにご苦労なこった

 

 

俺は呆れ半分、感心半分で俺はレグルに対して溜め息を吐いた。

それがわかったわけでもないだろうが、レグルは何事か俺に怒鳴り散らしてくる。

言っていることが全くわからなかったが、俺はただ静かにその罵声を受け入れていた。

 

 

レーファ……

 

 

先ほど失神させてしまった少女のことを思う。

あまりにも未熟。

じいさんがいたら介錯を頼みたくなるほどの失態だった。

 

 

外傷らしい外傷がないからリオスさん、ラーファさん、村長さんも俺を庇ってくれたが、レーファが事情を説明したら一気に俺は血祭りに上げられるだろう。

特に不器用だが、娘を心底愛しているリオスさんには……。

 

 

昼の失敗を思い返すと、肩の傷がうずいた。

修行不足を痛感させられる。

 

 

そうしてしばらくたっただろうか。

突然金属を叩いたようなけたたましい音が、村中に鳴り響いたのは。

 

 

……警鐘…か?

 

 

このけたたましい金属音が警鐘がということにはすぐに気がついた。

レグル達が、俺の見張りもそっちのけで村の入り口の塀へと向かっていく。

だいぶ危機的状況らしい。

俺は耳を澄ましてみた。

けたたましい金属音がだいぶ厄介だが、神経を集中すると、それとは違う大量の足音が、うっすらと耳に響いてくる。

しかもこの足音……。

 

 

「ランポスの大群か?」

 

 

感覚がまだ回復しきってないので断言できないが、これほどの足音と地鳴り。

総数は……百近い!!!

 

 

それに対して、一週間この村で生活して見かけたハンター総数はわずか十名以下。

しかもその大半がまだまだ未熟な連中だ。

 

 

「最後に……ちゃんと尻ぬぐいが出来そうだな……」

 

 

自虐的にそう愚痴りながら、俺は右肩を軽く回してみた。

若干痛みが走るが、牢屋に入れられてすぐに眠りについたので、傷も七割ほど回復している。

その分体力は減っているが……。

 

 

恐竜モドキのランポスならば、庇う対象さえいなければ俺一人でおつりが出る。

誰もいなくなって好都合な状況なので、俺は左手で鉄格子の一つを掴むと、それを全力でねじり回す!

 

 

ベキャ

 

 

金属はある種の柔軟性を持っているのが特徴といえるが、万力のような力を使用して高速でねじると、曲がるのではなくちぎれる。

俺はそれを何度か繰り替えし、人一人が通れる隙間を作る。

村人達が一様に逃げ回る中を、静かに見つからないように、村の入り口、塀へと向かっていった。

 

 

 

 

~レグル~

 

 

「状況は!?」

 

 

警鐘を聞いて塀へと駆けつけると、見張り番をしていた新米ハンター、ラミアに状況を聞く。

 

 

「は、はい。双眼鏡で観察していたら、ドスランポスが坂道の上に突然現れて……。その後ろにはランポスの大群が……」

 

「数はわかるか?」

 

「暗くて断言は出来ませんが……百近いかと……」

 

 

ラミアのその発言に、その場にいる全員に動揺が走る。

 

 

「バカな、百だと!? 確かか?」

 

「前後はするかと思いますが……少なくとも七十を下回ることは……」

 

「く!」

 

 

前代未聞のランポスの大群に、俺は動揺した自分に活を入れた。

俺は皆のリーダーだ。

その俺が動揺を漏らすわけには行かない。

 

 

「裏門よりすぐに近隣の村に援護要請の使者を出せ!」

 

「しかしレグルさん、近隣の村は走っていっても一時間以上はかかります……」

 

「そんなことはわかっている! それまで持ちこたえればいいだけの話だ。リオスさんに武具をありったけ持ってきてもらうようにお願いしろ。ハンターでなくても戦闘の意志がある男を徴集! 弓もボウガンも少ないが多少は数があったはずだ! 矢と弾は村中からかき集めろ! 籠城して、耐えるしかない! ゆけ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

矢継ぎ早に指示を出し、その場にいる全ての部下を村へと走らせた。

だが、この状況は絶望的だった……。

 

 

塀と言っても木を地面に立てかけ、村を一蹴囲っただけの単純なもの。

確かにないよりはましだが、百近いランポスが押し寄せてきたらどれほど持つかわからない。

しかもこちらの戦闘員は約十名。

戦力差は十倍。

しかもこの数では表に出て迎え撃つわけにも行かない。

遠距離武器のボウガンも弓も、弾と矢には限りがある。

近隣の村は往復で二時間。

 

 

希望などいっぺんも転がっていない。

 

 

「レグルお兄ちゃん!」

 

 

塀の上で何とか知恵を絞ろうと考えていると、塀の上にレーファがやってきた。

全員を村へと向かわせたので誰も止める物がいなかったようだ。

 

 

「何をしている!? 警鐘が鳴ったら非戦闘員は避難する決まりだぞ! 何故ここにいる!?」

 

「で、でも……私にも何か手伝えることが……」

 

「馬鹿なことを言うな! お前がいてもただ邪魔になるだけだ!」

 

 

余裕がなかった俺は、ただ、村のために役に立ちたいという気持ちだけでここまで来てくれたレーファに怒鳴り散らしてしまった。

俺の言葉に、レーファは泣きそうになってしまう。

 

 

一週間前の出来事、そして今日のことでただでさえ精神的に参っているであろう、大事な妹のような存在の幼なじみに俺は何を怒鳴り散らして……

 

 

「先ほどまではそこそこ見事なリーダーシップを発揮していたのに、気心しれたやつが相手だと余裕をなくして怒鳴り散らすとは……。俺もそうだが、お前もまだまだだな」

 

 

そう思っていると、すぐそば……俺の後ろから何か言葉らしき物が俺の耳に届いてきた。

驚きつつも後ろを振り向くと、そこには俺が大嫌いな男……ジンヤがそこにいた。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

大量の足音は坂道から聞こえてくるのがわかったので、俺はひっそりと隠密行動をしながら、村の正面入り口の塀へとやってきた。

すると、ちょうどレーファが塀に上ってくるところだった。

あれほどショッキングな体験をしたにも関わらず、もう意識を取り戻したらしい。

 

 

少々不安になってしまうほどに頑丈な精神だな……

 

 

自分のストレスに気づかずに、心がぼろぼろになるまで頑張ってしまう類の性格のようだ。

そのストレスを与えておいて何だが、さすがに心配になってしまう。

 

 

俺は静かに、かつ素早くレグルの後ろに回り込む。

 

 

「先ほどまではそこそこ見事なリーダーシップを発揮していたのに、気心しれたやつが相手だと余裕をなくして怒鳴り散らすとは……。俺もそうだが、お前もまだまだだな」

 

 

伝わるはずもないがあえていってやった。

だが部下の前で怒鳴り散らさないだけましである。

 

 

好きになることは今のところ出来ないが、そこそこ有能ではあるようだ。

 

 

「貴様!?」

 

 

レグルが驚いている。

そらそうだろう。

普通の人間ならば、あんな檻から自力で抜け出せるわけがない。

 

 

だが今はこいつに付き合っている場合ではない。

俺はレーファの前に歩み寄った。

 

 

「ジ……」

 

「レーファ、お願いがある」

 

「……え?」

 

 

レーファが何か言う前に先手を打つ。

この子は人の話をきちんと聞く子なので、先に言わせてもらう。

 

 

「俺、ランポス、つっこむ。怪我しなかったら、森と丘、互いに気にしない、約束するか?」

 

 

ものすごく片言になってしまった。

俺は日本語へたくそな外国人か!

いやこの場合……ユクモ語? になるのか? ……なるな。

 

 

「そ、そんな!? 何馬鹿なこと言ってるんですか!?」

 

 

片言でも意味はきちんと通じたらいい。

レーファがものすごく慌て出す。

それはそうだろう。

普通に考えて、六頭相手に大けが負った男が百頭相手に勝てるわけがない。

レーファが俺の左腕を掴んで説得を試みているようだが、早い上に知らない単語が多くて何を言っているのか全くわからない。

 

 

言葉が通じなくて便利なこともあるんだな

 

 

レーファが俺に対して何を言ってくれたかわからなかった。

でもこの涙ぐみながら訴えてくれたことを考えると、聞かない方がよかったかもしれない。

俺はその涙をぬぐってやると、俺の意志を込めた真剣な目で、レーファの目を見つめた。

 

 

「……俺を……信じろ」

 

 

昼、森と丘で言ったことを再び口にした。

その後すぐに大けがを負ったのだから信じるもくそもあった門じゃない。

だが、俺の真剣な思いが伝わったのか、レーファはきつく唇を結びながらも、俺を見つめ直すと、しっかりと頷いてくれた。

 

 

「貴様、狂ったか!? レーファも何をこんな男を信じている!」

 

「レグルさん、リオスさんと村長さん、他にも何名かが援護に……貴様!?」

 

 

先ほど方々へと散っていったレグルの下っ端達が帰ってきた。

その後ろには弓とボウガンをそれぞれ抱えたリオスさんと村長の姿も見える。

 

 

俺は二人に軽く頭を下げると、レーファから離れ、塀の手すりへと飛び乗る。

 

 

「……!?」

 

 

レーファが何か言いたそうにしていたが、それでも自分の不安を押し殺して、俺を見つめてきた。

その目は、先ほどの俺の目と同様、とても意志を込めた……綺麗な瞳だった。

 

 

「私は、ジンヤさんのことが……」

 

 

何か言ってくるが、後半の単語がわからなかった。

その台詞に、レグル達も、リオスさんも村長さんも驚いている。

 

 

? なんて言ったんだ?

 

 

何か大事なことを告げられた気がする。

けどランポス達がもうすぐそこまで来ていたために、レーファのその後半の言葉は、風と足音にかき消されてしまった。

 

 

「……さらばだ…レーファ」

 

「……え?」

 

 

俺は静かにそう呟くと、塀の下、戦場へと単身赴いた。

 

 

 

 

~リオス~

 

 

新米ハンター達の頼みを聞き、私は久しぶりに愛用の弓を倉庫から出した。

手入れは怠っていないがまだ引けるかどうかわからない。

だが村の危機を黙ってみているわけにはいかない!

村長も同じ気持ちらしく、ボウガンを担ぐと新米達と一緒に塀へと向かうと、そこには檻に閉じこめられているはずのジンヤ殿と、家で寝ているはずのレーファがそこにいた。

ジンヤ殿は我らの存在に気づくと軽く頭を下げた。

その顔が何かを吹っ切ったような……諦めたかのような笑みに見えて……。

 

 

ジンヤ殿はその後塀の手すりへと飛び乗る。

レーファがそれを見て何かを言おうとしたが、それを押し殺し、ジンヤ殿ことを真剣な眼差しで見つめた。

 

 

……ラーファ?

 

 

その顔は、十数年前、妻、ラーファが私に最高の言葉を贈ってくれた時と寸分違わぬ表情だった。

 

 

「私は、ジンヤさんのことが……好きです」

 

 

ランポスの足音に消されず、それはまるで私たちに聞かせるように……ジンヤ殿には聞こえないように風が村の方へとレーファの声を押しやってきた。

 

 

ラーファ……レーファはまごう事なき、お前の娘だ……

 

 

私はとても複雑な気分だった。

十四の娘が、私に生涯を捧げると言ってくれたラーファと同じことを、同じ真剣な眼差しで告げているのだから……。

 

 

だが予想通り、ジンヤ殿には伝わらなかったらしい。

ジンヤ殿はひどく小さく呟くと、なんと何も持たずに単身村の外へと行ってしまった……。

 

 

その顔に……死相に似た何かを、浮かべながら。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

俺は塀から飛び降りると、ゆっくりと立ち上がり、正面を見据えた。

 

 

ドドドドドドドドド

 

 

もう見るのも嫌になってくるほどの青い津波が押し寄せてくる。

壁と言ってもいいかもしれない。

それぞれが鋭い牙を、爪を揺らし、剥き出しの殺意を目の前に現れた愚かな獲物である俺に向けてくる。

 

 

……かっこつけないでせめて花月だけでも持ってくるべきだったか……

 

 

敵を見てかっこつけた先ほどの自分を殴り倒したい気分になった。

いやかっこつけるためだけに得物全部置いてきた訳じゃないけどさ……。

 

 

俺は証明しなきゃならない。ランポス六頭相手にしたときは、俺が油断していただけだと言うことを……レーファのせいではないということを……

 

 

強引な上に無茶苦茶な方法だ。

百頭相手に無傷ならば、六頭相手に怪我したのは油断なんだ、っていう理屈だからね。

しかも後ろにいるのは今回は一人じゃない。

 

 

百十数人という……村人達だ

 

 

その重さが俺の双肩にのしかかる。

あるはずもない重さを感じてしまう。

かつて感じたことのない重圧が、かつてその身に受けたことがないほどの膨大な殺気が、俺の精神を蝕んでいく。

 

 

何故日本人は桜が好きなのか?

それは散り際が潔いからだ。まるで武士の切腹のごとく

みっともなく枯れてまで、生に執着しない

その潔さ、覚悟が……桜を好いてしまう理由ではないのかと……わしは思う

 

 

じいさんが小さいことによく俺に聞かせてくれた言葉だった。

何故かそれが今頭の中をよぎった。

 

 

今ならそれがわかる気がする……

 

 

俺は軽く深呼吸をする。

その吐息に……重圧も、敵から受ける殺気も、緊張も、気負いも全て……吐き出すように……

 

 

空を見るとすでに端の方が白くなっていた。

もう夜明けが近いのだ……。

人の生に関係なく日は巡り、夜は明ける……。

そんな当たり前のことが……何故か嬉しかった。

目を閉じると後ろにいるレーファの気配を見つける。

 

 

今度こそ!!!

 

 

一週間前の状況とは違い、武器もなく、鎧もない。

あるのはただ……やり遂げなければいけない覚悟のみ……。

それで十分だ。

 

 

「鉄刃夜………この身この体を一つの刃物とし……ただ眼前の敵を斬る……」

 

 

体の気を練り上げる。

 

強く、強く、強く

 

鋭く、鋭く、鋭く

 

そして限りなく優しく

 

 

閉じていた目を見開き、俺は目の前に来たランポス達へと突っ込んでいった。

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

ジンヤさんがランポスの大群へと突っ込んでいった瞬間、私は耐えきれずに目を瞑ってうつむいてしまった。

 

 

「……ジンヤさん」

 

 

心配で思わず泣き崩れてしまいそうになる。

 

 

信じるって言ったのに、信じるって決めたのに……!!!

 

 

「……なんだ……あれは…」

 

 

そうして必死に耐えていると、レグルお兄ちゃんのつぶやきが漏れてくる。

私はおそるおそると顔を上げた。

 

 

そこに、もう一つの月があった。

 

 

「……え?」

 

 

私は思わず目をこすった。

寝ぼけてしまっているのかと思って。

でも違った。

その月は、縦横無尽にランポスの群れの中を移動している。

そしてそれが移動するたびに、ランポスの悲鳴があがる。

ランポスが吹き飛んだり、青いはずの体が赤く染まる。

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

獣のような咆吼が、空気だけでなく、木々を、塀を、私たちの体を震わせた。

何が起きているのかはわからない。

けれど一つだけわかることがあった。

 

 

百頭のランポス相手に立ち向かってくれているのは私だけのためじゃない。

私たちのためなんだって。

お父さんも、お母さんも、村長さんも、レグルお兄ちゃん達も、村のみんなことも……。

ジンヤさんの叫び声が聞こえてくる。

魂の叫び声が。

 

 

自分はここにいるんだって……

誰かに伝えているのかもしれない……

届くはずがないと、わかっていながら…

それでも思いを伝えたいと……そう心で叫びながら……

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

命を燃やす思いで、俺は気を練り上げる。

この戦いが終わったら朽ちてしまうほどの勢いで……

 

 

だがそれも一興

 

 

迫り来るランポス達を蹴散らし、殴り飛ばし、気を流して爆発させる。

 

 

「ギャアァ!」

 

「ガァァ!」

 

 

ランポス達も死に物狂いで俺を殺しに来ている。

それもそうだろう。

すでに四分の一ほどに減っているのだから。

気配でおおざっぱな数をカウントしつつ、俺は拳を振るう。

 

 

覚悟によってかつてないほどに鮮麗され、無駄なく練り上げられた気は、まさに刃物と言ってもいいほどの力を持っていた。

 

 

斬ることのみを追求し続けてきた我が一族。

 

 

その高見に一歩近づいた感じだった。

 

 

「残り五!」

 

すぐそばのランポスの脇腹を手刀で刺し穿つ!

 

「四!」

 

拳を握りしめてランポスの首を殴り、綺麗にえぐりとばす!

 

「三!」

 

少し遠いランポスを気で強化した脚力で一歩で近づき、そのまま蹴りを放ち吹き飛ばした!

 

「二!」

 

後ろから襲ってきたやつに背中を向けたままこちらから近づき、そのまま腹部に肘鉄をお見舞いした!

 

 

「……最後だ。デカ物」

 

 

赤く、大きなトサカが特徴の大型のランポスが、呆然としながら俺を見つめている。

だが、最後の一匹になったことに気づくと、一目散に逃げ出した。

 

 

「逃がさん!」

 

 

俺は敵の前方に周り込むと、刀を兜上段に構えるように腕を上げる。

ランポスもそれになんかを感じ取ったのか、警戒して動かなくなった。

油断なく俺の動作を見つめている。

 

 

「勝負」

 

 

俺がそう告げた瞬間、まるで言葉がわかっているかのようにランポスが勝負を仕掛けてきた。

 

 

「ガァァァァァア!」

 

 

口を全開にし、全速力で俺に駆けてくる。

俺はそれを静かに見据えると、自分の間合い、夜月の間合いに入ったその瞬間に、腕を振り下ろした!

 

 

キイィィィン!

 

 

互いが互いを通り抜け、すこし離れると、ランポスの首が綺麗に斜めに一刀両断した。

最後の敵の掃討確認した瞬間、まるでそれまで耐えていたかのように、俺の右肩から血が流れ出した。

 

 

傷口が開いたか……

 

 

それだけではない。

全身の感覚が全くつかめなかった。

今自分が何をしているのか、何を見ているのか、何を聞いているのかが全くわからない。

完全にガス欠だ……。

 

 

「ぐ……」

 

 

俺は全身の力を抜くとそのまま倒れ込んだ。

 

 

か……克った……

 

 

それがわかった瞬間に、全身の力が抜けていた。

そのまま地面へと倒れ込んでしまう。

しかしそれすらも今の俺にはわからなかった。

 

 

まずい、もう息を吸うのすら辛い……疲労しすぎて……消える……つも…り……が……

 

 

掃討が完了した後、密かに塀の近くに隠しておいた荷物を持って旅に出るつもりだったのだが……

そんな余力は一ミリたりとも残されてはいなかった。

 

 

 

 

 

 




すいません。力尽きました……。
22時~8時手前まで執筆……つ、疲れた……

楽しんでいただければ嬉しいです……いや長いから途中で切れるてしまった方もいらっしゃるかもしれませんが……



なんだかんだで村に住まわせてくれることになった刃夜。
それで平和に暮らせればよかったが、そうは問屋が卸さない!
○ッ○先生、森と丘に立つ!
それの討伐依頼を受ける刃夜くん。
討伐してたら「○の○者」がやってきて!?

さらに出番のなかった○にようやく出番が来るも、一瞬で砕けてしまってさぁ大変!!

そして刃夜が「空○王○」に対して復讐を誓い、鍛造士として○○の鍛造に着手して!?


次章、「産声(仮)」

次回はがんばって短くなるように努力します……
本当にすいません

11/23 夜 追記
一部の台詞の囲みを、とあるかたからの助言で変えさせていただきました。
Sさま、本当にありがとうございました。

11/27追記
ハンター

読んで字のごとし狩人。
この世界に生息する、大小様々なモンスター達を狩り、街や村の平和を担う人間達。
モンスターは主に、牙獣種、鳥竜種、飛竜種、古龍種などに分類される。
最後の古龍っていうのは伝説らしいが。


ギルドナイト

ハンター達のエリートの集まりで、そこに属するにはG級クラスのハンターでないと所属することが許されないらしい。
ランクはCから始まり、B、A、S、G、とランク付けされている。

これを↓に変更させていただきました


ハンター

読んで字のごとし狩人。
この世界に生息する、大小様々なモンスター達を狩り、街や村の平和を担う人間達。
モンスターは主に、牙獣種、鳥竜種、飛竜種、古龍種などに分類される。
最後の古龍っていうのは伝説らしいが。
ランクはCから始まり、B、A、S、G、とランク付けされている。


ギルドナイト

ハンター達のエリートの集まりで、そこに属するにはG級クラスのハンターでないと所属することが許されないらしい。

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