リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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三話の予定が……orz




終焉

~ディリート~

 

 

地面から足が離れ、ジンヤは宙へと浮いていた……

 

最初こそ目の錯覚かと思ったが双眼鏡でも確認したので間違いなかった……

 

それだけでも驚愕だったというのに……ジンヤに、さらにあり得ないような現象が起こったのだ……

 

 

 

 

何だ……あれは?

 

 

 

 

天より舞い降りる……紫に輝く、光の柱……

 

それは暗雲立ち籠める空を貫き……彼の地……神域へと降り注ぐ……

 

それは眩いながらも、暖かさと優しさを内包しているような……そんな光で……

 

それが神域へと……ジンヤへと降り注いでいく……

 

突如として出現した……左手に握られている、蒼い、蒼い……まるで澄んだ青空のような蒼穹の細長い大剣……

 

そして右手には、ジンヤが持つ、ランス並に長いその長剣を手にしている……

 

両手に一本ずつ、長く強大な剣を手にしたその姿は、強烈だった……

 

人が持つことが可能なのかと思えるほどの長剣と、細長いとはいえ決して軽くはないであろうその大剣を左右の手で持つ……双剣のスタイル……

 

およそ他の人間にはまねの出来ない……圧倒的な威圧感を放つ……

 

だが強さだけを発しているわけではなく、優しさも、弱さも、醜さも……

 

全てをさらけ出している……全てを内包している……

 

宙に浮き両手に強大な力を持ち、全てを晒け出しているように見える、その姿は……神々しかった……

 

そして、互いが互いに向き直り……静かに身構える……

 

次の瞬間……

 

 

 

 

ジンヤの姿が消え、アルバトリオンへと、突っ込んでいった……

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

吼えて、突っ込む……

 

敵へと向かってひたすらに……

 

己が最速の速さで……

 

荒天神龍の力、「風雲の羽衣」を使用しているので、俺は宙を飛んでいた……

 

両手にそれぞれ一振りずつ装備している、超野太刀 狩竜と、魔野太刀 龍刀【劫火】を存分に振るうために、顕現した力だった……

 

飛翔、滞空することの出来る能力……

 

これによって本来であれば地面に当たらないように、気をつけなければいけないこの規格外に長い二つの野太刀を、俺は縦横無尽に振るうことが出来る……

 

 

 

 

そして何よりも、左手に持った、魔野太刀 龍刀【劫火】……

 

 

 

 

命の力……魔を借りるのではなく、命が、魔が……俺を信頼し、全てを委ねてくれたことによって顕現されたこの野太刀は……圧倒的な力を誇っていた……

 

 

 

 

【舐めるな! 人間!!!!】

 

 

 

 

敵の穢れし魔が迫る……

 

あり得ないほどの濃密な穢れた魔が……憎念が、四方から俺へと迫る……

 

それを左手の魔野太刀 龍刀【劫火】を横凪に振るう……

 

 

 

 

風とは違う……何かが吹き荒れた……

 

 

 

 

それは、敵が放つ

 

 

 

 

恨みを……

 

怒りを……

 

妬みを……

 

呪いを……

 

滅びを……

 

殺意を……

 

怨念を……

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

憎しみを……

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての負を、文字通りその柔らかな暖かい物で……薙ぎ払っていた……

 

 

 

 

【ぬぅ!?】

 

 

 

 

その心地よいとも取れる、優しさとは裏腹に……

 

その力は、負に対して容赦なく、呵責なき力で迎え撃っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

敵は……数千年の時を経て、黄泉がえりし煌黒の邪神……

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は……人間にして、全ての生命の力を託された人間……

 

 

 

 

 

 

 

 

正と負……

 

 

 

 

陰と陽……

 

 

 

 

言い方は様々だが……

 

 

 

 

今この場にいる俺と敵は……

 

 

 

 

まさにその言葉通りの存在として……相手を殺すために……己を駆り立てていた……

 

 

 

 

【ゴォォォォォォ!!!!】

 

 

 

 

敵の叫びと供に……穢れし魔が、俺を襲ってくる……

 

その憎念を圧縮した蛇のような鞭が、俺へと襲ってくる……

 

俺はそれを……両手の野太刀で、的確に撃ち落とし……切り飛ばしていく……

 

 

 

 

「アァァァァァァァ!!!!」

 

 

 

 

宙に浮いたことにより、俺は下方……真下からも敵の攻撃を受けることになった……

 

 

 

 

だが敵の攻撃の数が増えても……

 

 

 

 

俺はそれに対処するだけの力と技があった……

 

 

 

 

「ふんっ!」

 

 

 

 

一刀両断……

 

迫り来る穢れし魔を、俺は狩竜で……龍刀【劫火】で一蹴する……

 

普段ではあり得ないほどの速さと正確さ、そして強さで……

 

俺が野太刀を振るう……

 

混ぜ合うのではなく……一つ一つに極限まで練り上げた力を付与して……

 

 

 

 

気を込めながら鍛造した狩竜には、俺のありったけの気を……

 

 

 

 

魔より出でて、魔を滅ぼす龍刀【劫火】には、命の力を全て注ぐ……

 

 

 

 

双刀の力で、俺は敵の攻撃を……

 

穿ち……

 

斬り……

 

払い……

 

飛ばし……

 

その全てを打倒……

 

敵へと迫る……

 

 

 

 

【調子に乗るなよ……】

 

 

 

 

そんな俺を見て、敵がその身を怒りに染めた……

 

その全身を漆黒の雷を纏わせる……

 

それによって、さらに敵の力が加速した……

 

 

 

 

【人間がぁ!!!!】

 

 

 

 

穢れし魔と供に……幾十の漆黒の雷が迫る……

 

穢れし魔と漆黒の雷……

 

その二つの力が俺へと襲いかかってくる……

 

もはや数えるのもバカらしくなるほどの、圧倒的な数……

 

それに込められた魔力と、憎念は……見えていないはずの苦悶に歪む顔を視覚化してしまうほどの力を持っていた……

 

俺はそれを……一つ一つ確実に斬り捨てていく……

 

白刃の閃きで……

 

蒼穹の閃きで……

 

速く、強く……

 

 

 

 

そして何よりも、鋭く……

 

 

 

 

気と魔を極限まで高めたその刀で……

 

 

 

 

大陸全土を覆いつくさんと、穢れし魔を振りまく存在へと俺は進む……

 

 

 

 

「ふっ!」

 

 

 

 

右手の狩竜で穢れし魔を払い……

 

 

 

 

左手の龍刀【劫火】で漆黒の稲妻を斬って流す……

 

 

 

 

そうしながら俺はさらに敵へと突貫する……

 

 

 

 

【ガァァァァ!!!!】

 

 

 

 

だが敵も俺に攻撃を捌かれるだけでは終わらない……

 

穢れし魔、漆黒の稲妻だけでは力不足と悟った瞬間に、さらにその体に秘めた力を解放する……

 

ごうごうと唸りを上げて、憎念が蠢き、それが俺の足下の地面へと降りる……

 

そしてそれが地面へと浸食し……下にある炎を漆黒に染め上げ、螺旋となって俺へと吹き上げる……

 

俺は明確にそれを読み取り、避ける……

 

避けている最中も無論敵の攻撃を捌くのを忘れない……

 

さらに敵の憎念が動きそれが天へと登っていく……

 

無論昇天するために登った訳ではない……

 

先ほどと同じように、大気に干渉し、窒素を液化させる……

 

そこへと潜り込み、どす黒い色をした氷柱が次々へと降り注ぐ……

 

しかも最初から俺を狙って……

 

 

 

 

面倒な!

 

 

 

 

宙へと降り注ぐそれに対して、俺は龍刀【劫火】の刃先へと魔を乗せて……それを振るう……

 

 

 

 

「ぜぁっ!」

 

 

 

 

刃先よりあふれ出した、命の力が敵の氷柱の魔を吹き飛ばし、その魔によって顕現しているその氷柱は、宙に水となって文字通り霧散した……

 

 

 

 

【なっ!?】

 

 

 

 

魔を切り裂き、魔による事象を強制的に終わらせる……

 

龍刀【朧火】のその力を、さらに魔を飛ばすことによっても使用可能になった……

 

 

 

 

龍刀【劫火】

 

 

 

 

究極とも言える武器だった……

 

しかも全ての生命が、俺に力を貸してくれている……

 

ガス欠はほとんど無く、また俺自身がその膨大な命の奔流に耐える必要もない……

 

 

 

 

 

 

 

 

まさに……俺はこのとき、最強だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

【……そうか。それほどの力を身につけたか】

 

 

 

 

さすがに一筋縄ではいかないと思ったのか、敵が一旦憎念を引かせる……

 

周囲に展開していた敵の攻撃が消えたが、それで油断するわけにはいかない……

 

油断はしていなかった……

 

だが、浮かれていなかったと言えば……嘘になるのかもしれない……

 

そんな俺に対して……敵が笑う……

 

嘲るように……

 

蔑むように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【…………消えよ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その思念と供に……俺の視界が突然……闇に覆われた……

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開くと……そこは何もない……何も見えない……完全なる闇の中に俺はいた……

 

ただ両手に持った刀の確かな感触だけが、これが夢ではないと言うことを教えてくれる……

 

 

 

 

ここは?

 

 

 

 

敵の靄が俺を覆い尽くしたことは覚えていた……

 

だがそれだけだった……

 

そしてそれを認識した瞬間に……俺はそれに気づいた……

 

 

 

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圧倒的な、憎念の奔流……

 

俺はその中へと投げ込まれた小さな……それこそ宇宙にある塵芥のような存在に過ぎなかった……

 

先ほど俺が黒い穢れた魔をかぶったときよりもさらにすごい……何倍、何乗もの重圧が俺を圧する……

 

本来であれば気が狂うかのようなその憎念……

 

だが手元の武器の感触だけが……俺を正気に保ってくれていた……

 

 

 

 

結界か?

 

 

 

 

結界、というよりも憎念が集まる……つまり敵が封じ込められていたその場所へと俺が送られたかのようだった……

 

結界というか、敵が封じ込められていた場所だけあって異次元であるらしく、また現界との遮断を行っていた場所であるため、俺に流れ込んできていた魔力が一切供給を絶っていた……

 

魔力、つまり現界と断たれた俺は、実際に窮地とも言える状況に立たされたのだが、何故か焦りはなかった……

 

諦めた訳ではない……

 

だが、無意識のうちに大丈夫だと……そう思えてしまう……

 

 

 

 

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怨念がうずいている……

 

何に対して唸っているのかはわからない……

 

だがそれは俺を……魔を、命を宿した龍刀【劫火】に対して、恨みと呪詛を吐いている……

 

そしてそれだけではなく……

 

別の感情も見え隠れしている……

 

 

 

 

なんだ?

 

 

 

 

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だがそれを考える暇もなく……怨念が俺へと群がる……

 

体内に宿る魔を貪らんと……怨念が体内へと侵入しようと……

 

 

 

 

龍刀【劫火】を喰らおうと集ってくる……

 

 

 

 

だが……、俺の体内の魔も敵の数に負けないほどの圧倒的な強さを持っており、そう簡単に食い破られることはなかった……

 

だがそれはあくまでもまだ魔が体内に充溢しているがためであり、今のままでは最終的には怨念が体内へと侵入し、俺の体を乗っ取る、ないし食い尽くす……

 

龍刀【劫火】もそれがわかっているらしく、ほとんど顕現するのに必要程度の魔力しか消費していないが……

 

だが今回は媒介のない、無から有への顕現……

 

狩竜という媒介のないその顕現では、媒介のある顕現よりも消費量が多いのは当然だった……

 

動けることを確認すると……俺は直ぐさまこの中を動いてみた……

 

といっても当てがあるわけではない……

 

 

 

 

風も、匂いも、熱も、光もない……完全なる闇……

 

 

 

 

そんな中で当てになる物などあるわけがない……

 

だがこのまま立ち止まっていてもいずれ力尽きて死ぬだけだ……

 

ならば行動するしかない……

 

だがむやみやたらに無駄なことをするつもりはなかった……

 

俺はただ……まるで何かに導かれるように動き……

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、それを見つける……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あった」

 

 

 

 

俺はとある場所へと来て足を……荒天の龍の力「風雲の羽衣」によって移動していた体を止める……

 

目の前には何もない……

 

何かはあるのかもしれないが、光のないこの闇の中では俺がそれを見ることは出来なかった……

 

だが知る必要はなかった……

 

知るというか、見る必要性を感じなかった……

 

とにかくここにある物に俺は用があったのだ……

 

 

 

 

「……ここが起点か」

 

 

 

 

結界であるかはどうか謎だが、こういった封じ込める物には必ず起点という物がある……

 

結界というのはそれを破壊すれば結界その物を破壊することが出来る……

 

それ故に結界に閉じこめられた場合はその起点を探せばいい……

 

だがこれ……ここは結界であって結界ではない、曖昧な空間だ……

 

ただ何かを閉じこめるために造られた空間であり、その敵を葬るような力はない……

 

もしもそんな力があるというのならば俺がここに来た時点で死んでいるだろう……

 

何故敵が俺をここに閉じこめたのかはわからない……

 

おそらく俺をこの憎念で狂わすのが目的なのだろうが……

 

 

 

 

起点というか……俺がさっき開けた穴か……

 

 

 

 

アルバトリオンを現界へと出したときに開けた穴だ……

 

一応塞がっているが、一度でも穴が開いた以上、そこが一番現界に近い場所になる……

 

それを感じることが出来たのは……

 

行く前にもらったあの手ぬぐい……

 

懐に収めたあの手ぬぐいが、教えてくれる……

 

 

 

 

ありがたいことだ……

 

 

 

 

字が読めないけども、それでも俺に渡したかったとくれた手ぬぐい……

 

今も読むことは出来ないが、みんなの思いが伝わってくる……

 

それに感謝しつつ……

 

俺は静かに、左手に握った武器、龍刀【劫火】へと、限られた魔を送る……

 

 

 

 

眩い、紫の光……

 

 

 

 

それがこの暗黒の空間を照らし、俺が今どのような状況にあるのかを教えてくれる……

 

 

 

 

俺以外に何もない……

 

 

 

 

物体としては……だが……

 

 

 

 

そこそこの光量であるにも関わらず、俺以外に映し出される物体は無かった……

 

 

 

 

あるのは……

 

 

 

 

ただ……

 

 

 

 

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夥しいまでの怨念のみ……

 

そして、ここに閉じこめられた敵のすごさに俺はようやく気づいた……

 

 

 

 

……この空間に閉じこめられてなお……自我を保つとは

 

 

 

 

光もなく、あるのは憎念のみ……

 

あの敵……煌黒邪神アルバトリオンがどれほどの時をここで過ごしたのかは不明だが……

 

それでも人が生きていられる……そんな刹那の時間でないのだけは理解できる……

 

 

 

 

人間

 

 

 

 

敵は俺と対峙したその時……俺の名を呼ばずにそう呼んだ……

 

最初は侮っていたからだと……見下していたからだと思った……

 

事実、奴は俺のことを侮蔑し、蔑んだ目をしながら見ていた……

 

間違いなく人間をバカにしている……

 

それは確かだった……

 

 

 

 

だが、今この空間を……

 

 

 

 

敵が捕らえられていたと思われるこの場所を見た後では……

 

 

 

 

 

 

 

 

わからないな……

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉の真意は……俺にはわからない……

 

だから……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……聞きに行こうか。狩竜、そして」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は左手の武器を無造作に振り上げた……

 

そして目の前……

 

何もないその空間へと向けて、振り下ろす……

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍刀【劫火】よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

【……まさか!?】

 

 

 

 

空間へと閉じこめた相手……

 

それは私が今までいたあの場所へと送り込んだ以上、この世界……現界には敵はいないはずなのだ……

 

だが今、私の感覚が敵の気配を捉える……

 

 

 

 

人間の身に、凄まじい魔力を携えたその気配を……

 

それを感じると同時に、私の目の前の空間にひび割れた音が響いた……

 

それは徐々に大きくなり……

 

 

 

 

卵から雛が孵るように……それは当たり前のように割れた……

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

それを破ったその瞬間に、今まで漆黒だった空間にいた俺は思わず目を細めてしまう……

 

だがすぐに目が慣れて、俺はその目を、ゆっくりと敵へと向けた……

 

その驚きに満ちた態度……

 

目は僅かながらも見開かれていた……

 

その敵を俺は目を細めて見据え……

 

 

 

 

左手の太刀を、龍刀【劫火】の鋒を敵へと向ける……

 

 

 

 

「随分と面白いところにいたんだな、お前も」

 

 

 

 

その敵に斬りかかることはせず、俺はただ語りかける……

 

 

 

 

【貴様……】

 

 

 

 

「あれほどの空間にいて何故自我を保っていられた?」

 

 

 

 

そう、問うた……

 

だが敵はそれに対して何も言わない……

 

ただ静かに俺を睨み据えている……

 

 

 

 

「あれほどの空間で自我を保てた……。それだけでお前の強さを疑う余地はない」

 

 

 

 

負の念の巣窟……

 

全ての負が集まりし魔境……

 

そう言っても差し支えないほどに、濃密な闇の中に相手はいた……

 

そこで自我を保つというのは、いくら神と崇められるほどの存在とはいえ、きつい物があったはずだ……

 

だが、悠久に近いその時の中、あの中にいても敵は……煌黒邪神アルバトリオンは存在し続けた……

 

 

 

 

その理由は?

 

 

 

 

「貴様は何故あの空間で生きることを選択した? 何を望む?」

 

 

 

 

【貴様にわかるか? 人間よ?】

 

 

 

 

俺の問いに、敵が答える……

 

若干の寂しげと供に……

 

 

 

 

【大戦に敗れた我は封じられた……貴様が生まれ生きた時間など、我にとってはほんの数舜に過ぎぬ時間を……】

 

 

 

 

語るその言葉に邪念もなく、悪意もない……

 

ただ淡々と、語っている……

 

 

 

 

【幾千幾億もの憎念を身に浴びて、体を変質させ、心をも負で満たされながらも、私は自我を保ち、あり続けた……。その憎念を喰らって……】

 

 

 

 

その胸中に、何を思うのか……

 

遙かな先を見据えるその胸の内を知ることは出来ない……

 

 

 

 

だが、それも直ぐに消えた……

 

 

 

 

 

 

 

 

敵が総身に溢れる穢れし魔を全解放……否、それだけではない……

 

 

 

 

 

 

 

 

……穴?

 

 

 

 

 

 

 

 

敵の後方に、漆黒の穴が開いていた……

 

 

 

 

その穴はどんどんと膨れあがり……そこから膨大な憎念を吹き出していく……

 

 

 

 

直感した……

 

 

 

 

先ほど俺を閉じこめたその場所とこの場を繋げたのだ……

 

 

 

 

溢れんばかりの憎念が一気に溢れ出し、敵を覆う……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【我の願いはただ一つ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

憎念を浴びながら敵が吼える……

 

 

 

 

その咆吼だけで、周囲の空気が裂け、真空の刃と化して辺り一帯を切り刻んだ……

 

 

 

 

地上全ての生命の力を預かるこの俺が、思わず圧されるほどの……魔を放った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【今いるあやつらを打倒し! 天を! 地を! 全てを喰らう!!!!! そのために使者を……貴様を殺さねばならん!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漆黒を纏いて、敵が咆吼を上げる……

 

その憎念がごうごうと唸りを上げて共鳴していた……

 

俺は敵にならい、すぐさま龍刀【劫火】と狩竜の力を最大まで引き上げた……!

 

 

 

 

【最終決戦だ……人間!】

 

 

 

 

「……よかろう。俺も全力で、お前を倒す!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 




次章 第五部 十章


「願い……」



その願いは誰の……誰がための願いか……?

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