リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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ごめんなさい……。
約束を破りました……。
しかも自分から宣言したというのに……。
本当にすいません。
詳しくは、決戦の砦 後編 の後書きをお読み下されば

あぁこのことか

とわかっていただけるかと思います……



終末

地面へと着地する……煌黒邪神。

俺は先に着地していたのでそれを……見上げながら見届けていた。

圧倒的な穢れた魔の黒い靄を纏い……それは神域の地面へと……降り立つ。

 

 

 

 

【……現界の空気に触れるのは、果たしていつ振りだろうか】

 

 

 

 

先ほどまでの高圧的な態度とは違い……どこか懐かしく思いをはせるように……どこか遠くを見つめていた。

その姿は、どこか思い出の場所に立ち、その思い出を回想しているように……佇んでいる、そんな感じだった。

その姿に悪意も殺意もなく……ただ、思い出に浸っていた……そう思えてしまう。

 

 

 

 

だが、それもすぐに終わる……

 

 

 

 

敵がこちらを……恐ろしい殺意と供に向き直る……

 

その瞬間に、今まで制止していた黒い靄の穢れた魔力が……一斉に流動を始める……

 

今までの攻撃が……雷、炎、氷……それら全てが今まで相手をしてきたそれぞれの属性に特化した古龍種の攻撃が、かわいく思えるくらいに、その攻撃は……威力を誇り……

 

 

……濃密な悪意を内包している……

 

 

それが一斉に鎌首を向けて……俺へと向き直った……

 

 

 

 

【どうやら、さすがに古龍種の力を有しているだけあって、貴様もただの人間ではないようだな……】

 

 

 

 

こちらを見ながら……敵が……煌黒邪神がそう思念を送ってくる……

 

 

 

 

それに返答するほどの余裕が……俺にはなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

【煌黒邪神、アルバトリオン。貴様を敵と認め、改めて、その力をもらい受けよう……】

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に呼応するように……黒い靄が……穢れた魔が俺へと襲いかかってくる……

 

俺はそれを避けた……

 

避けなければ……間違いなく死んでいた……

 

 

 

 

……悪い冗談だ

 

 

 

 

今まで相手してきた古龍種……オオナズチ、キリン、クシャルダオラ、ナナテスカトリ、テオテスカトル、そして神、老山龍ラオシャンロンと、荒天神龍アマツマガツチ……それら全てが本当に……雑魚に思えてしまう……

 

さきほどの状況ですら凄まじく苦戦したというのに……

 

 

 

 

勝てるのか?

 

 

 

 

俺は……この怪物に……

 

 

 

 

だがその疑問に答えてくれる者はおらず……開戦された……

 

 

 

 

俺の死が……そして……世界の終末が……

 

 

 

 

~ジャンボ村~

 

 

「む、何だ?」

 

 

ラティオ活火山に近い村である……ジャンボ村。

近いと言っても海を越えたその先に火山があり、天気のいい日は肉眼で火山を拝むことが出来る、という程度の距離はある近さである。

だが、この火山にもっとも近いのは間違いなくこの村だった……。

 

 

 

 

それが、一つの悲劇を生む……

 

 

 

 

「……黒い靄?」

 

 

始まりは一人の漁師が、海に出ている時……。

暗雲の雲に包まれてしまった中でも、生きるために食物の確保をしないといけない。

そのために、荒れ狂う天候の中、勇気を振り絞って一人漁に出ていたその漁師が……最初の犠牲者となった。

 

 

 

 

ドクン

 

 

 

 

「ぐっ!?」

 

 

 

 

その靄がそばに来たと同時に……その変調が訪れる。

先ほどまで健康その物だった体に異変が生じ……呼吸をするのさえも困難に陥った。

掴んでいた網を手放し、崩れ落ちる。

 

 

「な……に……がぁ」

 

 

まともに声を発することすら叶わない。

そしてその状態でまともに舵が出来るはずもなく……荒れる天気で発生した波に船ごと呑まれ……その日、その漁師は海へと帰った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

暗雲より降りてきた、黒い靄によって……大陸中の村が、国が……一時パニックになりかけたが……それも直ぐに沈静化した。

否……死んだように、街が静まりかえってしまった。

 

 

「く、くるしぃ……」

 

「な、なん……」

 

 

地面へと倒れた人々は、口々に苦悶の声を上げて、誰かに助けを求めるが……それに応えられる者は誰一人としていなかった。

等しく皆苦しみ……倒れている。

子供も、大人も関係がない……。

人間か……竜人族であることすらも、関係がない。

 

 

 

 

そしてそれは当然……人か……モンスターかも関係がなかった……

 

 

 

 

「クォォォォ」

 

「クァ」

 

「ピギィィィ」

 

 

 

 

大陸中の命が……全ての生命が苦しんでいた。

植物や虫、小動物といった類の小型動物は虫の息で、それよりも大きな中型動物もほとんど動けず……大型生物であるモンスターなども、何も行動を起こすことが出来ず……横たえることしかできなかった……。

別段、この黒い靄に、命を吸われているわけでもなく……体のどこかが異常を来したわけでもない……。

だが、この黒い靄は、その凄まじい穢れによって、生命の精神を、魂を……蝕んでいく……。

仮に死体が出たとして、それを調べても何の異常も見つからないだろう。

 

 

 

 

仮に調べることの出来る人間がいれば……だが……

 

 

 

 

この黒い靄は……そういうものだった。

だがこのまま行けば、間違いなく……死に絶えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

今……間違いなく全ての生命が……苦悶し、そして……息絶えようとしていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

……これは

 

 

高台より降り立った、煌黒邪神、アルバトリオン。

黒い靄を携えて……雄弁に立つその姿は……。

 

 

煌だろうと、黒だろうと、邪だろうと、関係がない……

 

 

 

 

紛れもなく神……

 

 

 

 

黒い悪意に満ちた穢れた魔を纏うその姿は紛れもなく……

 

 

 

 

邪神

 

 

 

 

だった……。

 

 

【どうした? 人間?】

 

 

絶好のチャンスであったにも関わらず、敵は俺を攻撃するどころか、ただその巨躯から見下ろしてくるだけで……。

その思念でようやく俺は固まっていた……停止していた思考を再び動かすことに成功する。

弛緩していた体に力を込めて……龍刀【朧火】を、油断無く敵へと構えた。

 

 

 

 

だが構えて……どうすればいい?

 

 

 

 

破壊神アカムトルム、崩壊神ウカムルバス、そして……荒天神龍アマツマガツチのとき……その全て共通していたことは、敵が圧倒的な力を有していたこと……。

特にアカムトルムは、最初に対峙した神と言うことでより巨大な存在に思えたものだった。そしてその覇と崩の力を持って対峙した、荒天神龍アマツマガツチはそれをも超えて、異様な力を持っていた。

天候を操るという能力……。

破壊神と崩壊神は、そんな特殊な力を持たない、ある意味で普通だったが、荒天神龍と、煌黒邪神は魔力の桁が違う。

 

 

 

 

そしてその桁が違う龍の中でも……目の前の敵……煌黒邪神アルバトリオンは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その格さえも……間違いなく上位だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

これは……本当に生物なのか?

 

 

 

 

古龍である……つまり魔力の塊であるために生命という概念は、あまり意味がないのかもしれない。

だが、これほどの魔を……穢れを……邪を身につけ、それを纏いながら存在していられることが……あり得ないことで……。

俺自身……対峙しているだけの俺が、今も魂がその穢れと邪で……押しつぶされそうなほどの重圧を感じているというのに……。

 

 

 

 

【どうした? 我を地上に降ろすことが出来たのだぞ? 何もしないのか?】

 

 

 

 

挑発するように、敵がそう言ってくるが、俺には何も出来ない。

いや……何をしても無駄だと……そう思えてしまう。

だが、何もしなければ当然死ぬ。

俺は……この神域という……誰も来ない場所で……一人で。

 

 

 

 

【我は祖によって葬られ、そしてこの神域に封印された】

 

 

 

 

「?」

 

 

敵が己のことを語り出す。

それも何の警戒も抱いていない、隙だらけの様相だった。

しかし何を語るのか興味が湧いた俺は……聞いてしまう。

 

 

 

 

【前回の大戦で敗れた己を怨み……祖を、紅を、黒を怨み……我は数千年眠っていた……】

 

 

 

 

その言葉と供に流れてくる……遙か過去……古の記憶……。

 

様々な神が入り乱れ……暴れ……混沌の中で、ただただ互いを殺すために……戦っている……。

 

いくつもの死闘を超え、いくつもの黄泉路をさまよい……それでもそれらは戦った……

 

そして……ついに邪が敗れ去る……

 

それより……遙か異次元の底……何もない……ただそれだけの場へと封印される……

 

そう、最初こそ何もなかった……

 

だが生命が増えるにつれ、そこに……穢れが充満する……

 

 

 

 

【ありとあらゆる憎念をこの身に宿し……ついに我は蘇った……】

 

 

 

 

憎念によって穢れたその魔が……震えている……

 

歓喜に……押さえつけられていたその憎念が解放されたことに、狂おしいほどの喜びの声を上げていた……

 

その光景は……醜悪その物で……

 

 

 

 

【しかるに、奴らから全てを奪い、私が全てを喰らうために……まず……貴様をもらう】

 

 

 

 

ついに……敵が動いた……。

その長く伸びた首を前へと伸ばし……その天を貫かんとそびえる角を俺へと向けて……。

その身に漆黒の穢れし邪の魔を纏い……。

それだけの事だというのに……それに圧倒されてしまう。

 

 

「くっ!」

 

 

恐怖で……恐ろしさで動かなくなっていた体を無理矢理動かし、俺はそのただの突進をかろうじて回避する。

キリンのように電磁による超高速でも、クシャルダオラのように空気を纏った疾さでも、テオテスカトルのように、爆発と熱気流による速さでもない……。

ただ、その身に纏った魔を使っての突進……。

それが……まるで死神が鎌をもたげたかのように……絶対に避けられないと思えてしまう威圧感を……有していた……。

 

 

【どうした、人間】

 

 

それがわかっているのだろう……。

敵は俺が攻撃を避けても慌てることなく……今だ泰然とした態度を……尊大ともとれる態度で……ゆっくりと、俺へと向き直った。

 

 

【今程度の攻撃で何を恐れている? それほどまでに……我が穢れが恐ろしいか?】

 

「……」

 

 

それに返す余裕すらもない……。

敵が動くことによって……さらにその黒き靄が……敵からあふれ出し、神域を……否……大陸を覆っていく。

 

 

……大陸?

 

 

神域だけに留まらず、その靄はこの神域を越え……火山を越え……各地へと徐々に徐々に広がっているのが……ラオシャンロンの力で感じ取ることが出来た。

そしてそこにいたってようやく俺はその靄がここから漏れ出していることに……気がついた。

その時……悲鳴が聞こえた。

 

 

 

 

……何だ?

 

 

 

 

ここは火山の最奥……神域。

その場所に人が来るはずもなく、辺りを見渡しても当然誰もいるはずがない。

だがどこかからか……悲鳴が……苦悶が聞こえる。

苦しみ、悶え、今にも死ぬかもしれないと思えてしまうほどの……苦痛を味わっているのだ。

そしてそれに気がつく……。

 

 

 

 

思念?

 

 

 

 

いや、それは……命の声……

 

この地上にいる全ての生命の……呪いの言葉だった……

 

 

「ま、まさか!?」

 

 

そして辺りを見渡し……愕然とした。

なんとこの靄は個々だけに留まらず、外へと漏れだし……各地へと広がっているのが感じられたからだ。

そしてその靄に苦しむ人々の思いも……生命の悲鳴を感じる。

 

 

まさか!? 先ほどのバリアは……本当に

 

 

【先ほどまで我を纏っていたのは封印の残りだ】

 

 

俺の推理を確信へと……それが真実だと、敵が後押しする。

だが言われなくてもわかることだった。

あの高台から一歩も動こうとしなかった敵。

それは動かないではなく動けなかったという事で……。

そしてその檻は、完全にこの黒い靄を封じ込めていたのだ。

 

 

この靄は穢れ……。

 

憎しみ、恨み、怒り、忌まし、呪い、滅び、殺し、怨み……。

 

全ての負の感情を内包しているのは……俺が背に装備している封龍剣【超絶一門】と同じ……。

だが当然、個人の恨みよりも……無数の負の感情の方が、圧倒的なのは当たり前のことだった……。

 

 

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もはや深すぎて……重すぎて……何も聞こえない。

ただわかることはそれはありとあらゆる存在の負の感情を混ぜ、凝縮させた物……。

拡散したことによって薄れたとはいえ、これを生命が身に受けて無事でいられるわけがない……。

 

 

『こんな……』

 

 

さしもの封龍剣【超絶一門】も驚いているようだった……。

これほどの憎念を目にすることなど普通無いのだ。

だがそれをこいつは受けた……。

そしてそれによって初めて気がついたのかもしれない……。

 

 

恨みに狂う……負の感情に支配されたそれが……どれほど醜いかと言うことを……

 

 

その驚きに……自身がどんな存在であったのかを認識した封龍剣【超絶一門】に掛ける言葉はなかった。

いや、掛ける余裕がなかった。

 

 

……どうしろと?

 

 

濃密な負の憎念。

こうしてこの場で立っているだけでも、まるで毒のように俺の体を、神経を、心を蝕む。

これがまだ敵が纏うただの靄だからこれでいられるのかもしれない。

だがもしも……あの敵が纏う、靄ではない、形をなしている黒い物体に触れた場合……その瞬間に俺の心が破壊される。

 

 

【我自身ではなく、憎念だけで十分か?】

 

 

その言葉に呼応して……敵の物体とかしている黒い憎念が……穢れし魔が、俺へと鞭のようにしなり、襲いかかってくる。

 

いつまでも呆けているわけにはいかない。

俺はすぐさま、狩竜を……龍刀【朧火】を顕現しようとしたが……さきに動かれていたその事実を覆しがたく、俺は狩竜のままその穢れし魔を、迎え撃った……

 

だが……

 

 

 

 

音がしたのか……しなかったのか……わからない

 

なにが起こったのかすら……わからなかった

 

だがそれがわからずとも結果はでた

 

 

 

 

鞭のようにしなったその黒い憎念は、俺が持っていた狩竜を弾き飛ばし、遙か上空へと飛来し、そして俺の後方……火山の地面へと突き立った。

 

 

 

 

なに?

 

 

 

 

言葉も出ない。

確かに圧倒されて、気圧されて普段通りとは言わなかったかもしれない。

だがそれでも俺は全力で敵の攻撃を……弾き飛ばしたはずなのだ。

だが弾き飛ばされたのは俺ではなく……敵の攻撃……。

 

 

 

 

恐ろしいほどの深さ、重さの憎念……

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

恨みの重さにそれ自身が耐えきれず……唸っていた。

悲鳴を上げている。

何の因果か……その黒い靄が……黒き穢れし魔を間近に見たからか……その黒い物体の奥……それを俺は見てしまった。

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

辛うじて悲鳴だけは上げなかった。

だがそれを垣間見た瞬間に……俺の心は恐怖で縛られた。

黒い靄など比べものにならない……。

圧倒的な憎念。

触れれば死ぬ……心が死ぬ……。

 

 

 

いや、そんな生やさしい物ではない……

 

 

 

これに触れれば……狂う……死ぬことすらも許されずに……

 

 

 

ぞぉ、と、縮み上がる体を、心をどうにか奮い立たせて、俺は弾かれた狩竜を放置し……得物を抜き放つ。

一番の相棒、打刀夜月。

それに気と魔を纏わせ、再び襲ってきた敵の攻撃……黒き穢れた魔を打ち払う。

 

 

 

■■■……

 

 

 

その時の感触は……よくわからなかった。

弾いたと言うよりも、その黒き穢れた魔の中へと夜月が入った……その感触は……何かはわからないがともかく、寒気がする物で……。

 

 

「……う」

 

 

そして夜月を通して流れてくる……憎念。

全てではない。

もしも全て流れ込んできていればそれだけで俺は死んでいた。

だがこの微細な……伝わってきたその憎念は、俺の神経をかきむしるには十分すぎる物だった。

 

 

ちぃ!!!

 

 

だがそれで止まる訳にはいかない。

斬り飛ばすたびに流れてくるその憎念に神経をかき乱され、その不快感にどうにか耐えるが……どんどんと剣が鈍っていく。

それに対して、敵の憎念は俺を敵と認識した瞬間に……圧倒的な質量と数で、俺へと襲いかかる。

 

 

「アァァァァァァァァァ!!」

 

 

その光景は醜く、おぞましく……見る者を不快にさせる……恐怖させる……それだけで人が死ぬようなほどの憎悪で……

 

俺は吼えた

 

怖かった……

 

その憎念が

 

それが俺へと向かってくる……

 

恐怖に縛られて……闇雲に剣を……夜月を振るう

 

だが夜月では……打刀である夜月では、速さはあっても、その圧倒的な重さと数を持つ敵の攻撃を捌ききれない

 

ほどなくして……夜月すらも弾かれる

 

 

「くっ!?」

 

 

一番の相棒が弾かれ……何の因果か、狩竜が刺さった付近へと突き刺さる。

だがそれを見届けている場合ではない。

俺はすぐさま次の得物を……雷月を抜刀……すぐさま魔によって、鞘と刀身に電磁を纏わせる。

 

 

「磁波鍍装、蒐窮 電磁抜刀、禍!!!!」

 

 

魔と、キリンの力を借りての電磁抜刀。

過去最速のその剣速は……振り抜かれた刀身とその剣圧によって、敵の黒い穢れを吹き飛ばす。

だが……それも圧倒的な数によって押される。

 

 

ぐっ!

 

 

速度は敵の攻撃を遙かに上回るが、それでも数が足りない。

また威力も足りず、電磁抜刀が黒き穢れに触れた時少しぶれてしまった。

電磁抜刀だけでは足りないと思い、俺はすぐさま雷月と同じ、左腰に差している、火竜刀蒼月を抜刀、二刀流にて敵の攻撃を捌く。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

自分を奮い立たせるために……敵の攻撃を捌く度に流れ込んでくる憎念に押しつぶされないように、俺は吼える……。

雷月とキリンのたてがみの首飾りから電磁の力を引き出し、雷月の剣速を上げ、蒼月には魔炎を纏わせて威力を増す……。

その二刀流にて、攻撃を捌くが……数と速度は間に合ったが、威力が低く、徐々に押されていく。

 

 

まずい……

 

 

心も技も、負けてきている……。

体も……今までの戦闘でだいぶやられており……万全とは言い難い。

 

心技体

 

全てが負け始めてきている。

だがそれでも負けるわけにはいかない。

俺が死ねば大陸が、生命が死に失せる。

それがなくても死にたくない……

 

死ぬわけにも行かない

 

俺は死にたくない一心で……刀を振るう。

だが雷と炎の二刀流は、しばし拮抗したものの、直ぐに弾かれ、飛ばされて……宙を舞う。

だがそれに構っている余裕はない。

次々に……次々に……次々次々……それは俺へと襲いかかってくる。

 

そしてそれが一部……俺の体に触れる……。

 

 

 

 

その瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

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視界が真っ暗になる……

 

一部の光も無い……完全なる闇……

 

あるのはただ……何千何万何億何兆という……数え切れない負があり……

 

さらにその先に……新たに幾重にも、幾十もの何千何万何億何兆という負が溢れている……

 

 

「――――――――――!!!!」

 

 

声にならない悲鳴が……俺の口から迸る……

 

 

あまりの恐ろしさに……俺は逃げ回るように、必死になってその黒い穢れた魔から体を引きはがした。

だが直ぐに敵は俺へと鎌首をもたげ……。

 

 

「……!?」

 

 

あまりの恐ろしさに思わず声を上げそうになる。

だがそれを噛み殺し、俺は背中の装備、封龍剣【超絶一門】を抜剣する。

刀ではどうしても威力……つまり重さが足りなかった。

だが封龍剣【超絶一門】は、長さこそ打刀と同じ程度だが、サイズが圧倒的に違う。

それ故に重さも当然夜月、雷月、蒼月に勝る……。

魔を宿し……もはや発光するほどの濃密な魔を纏い、封龍剣【超絶一門】を振るう。

乾坤一擲……。

そう言っても良かった。

龍刀【朧火】は呆気にとられているうちに吹き飛ばされ、一番の相棒を吹き飛ばされ、打刀の二刀流も敗れ去った。

威力は当然狩竜と龍刀【朧火】には劣るが、それでも魔を宿した威力は俺の得物の中でもかなり強い部類に入る。

が……

 

 

「っ!!!!」

 

 

それでも押される。

それでも……負ける。

敵の穢れし魔を浴びてしまった体は震え、その深き憎悪に心は怯え……俺はもはや剣を振るうのがやっとだった……。

その剣に、心も、技も、体もない……。

 

 

素人が剣を振っている……そう言って差し支えなかった。

 

 

『仕手よ! おちつ……』

 

 

封龍剣【超絶一門】が俺へと語りかけてくるが、しかし封龍剣【超絶一門】もその憎念に取り込まれないようにするのが精一杯なのかもしれない。

俺たちは……心が折れないように……辛うじて残った意志で……戦った。

 

 

いや、それはもはや戦いとは言わない……

 

 

醜い……殺戮だった。

 

 

「オォォォォォォォ!!!!」

 

 

無我夢中に……俺は剣を振るう。

だが、それも……防がれた……。

 

 

一瞬怯んだ、その瞬間を狙われ……手に力を込めていなかったその瞬間に……手からこぼれ落ちるように……封龍剣【超絶一門】が落ち、それを黒い穢れた魔が吹き飛ばした。

 

 

 

ギィン!

 

 

 

双剣が激しく吹き飛ばされ、互いに反対方向に飛び、地面へと突き刺さる。

 

 

「!?」

 

 

そしてまた敵の黒き魔が俺の体に触れる。

いや、今度はそんなレベルではなかった。

半身を覆ったのだ。

一瞬だったが、その刹那の瞬間に、俺の心は完全に黒く塗りつぶされた。

 

 

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「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

抑えていた悲鳴が……俺の口より放たれる……

 

恐ろしくて……あまりのその憎念が、怖くて……

 

俺ははいずり回るようにしてどうにか抜け出して、後ろに刺さっていた狩竜へと歩み寄り、それを抜いた……

 

 

 

 

……最後の手段!

 

 

 

 

狩竜を握ったことで、本当にひとかけらの理性を取り戻し、俺は両手でしっかりと狩竜を握り、すぐさまそれを顕現する。

 

 

 

 

龍刀【朧火】

 

 

 

 

神器の魔を解き放つ……刃魔解放。

 

 

 

 

檻すらも突き破ったこの力で、全てを吹き飛ばす!

 

 

 

 

その時……俺は間違いなく冷静ではなかった……

 

ただ目の前のその存在……黒き穢れの魔をどうにかすることだけを考えていた……

 

そして無策に、無謀に……それを解放した……

 

 

 

 

「龍刀【朧火】、刃魔解放!」

 

 

 

 

内包していたほとんどの魔を使い、俺は眼前の全ての黒き穢れた魔を……吹き飛ばした……

 

 

 

 

「やっ……!?」

 

 

 

 

それに安堵したのも束の間……地下より躍り出た穢れた魔……その鋭くとがったその魔が……俺の腹部を串刺しにした……

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………あ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

何も感じなかった……

 

熱いとも痛いとも……それどころか今まで怯えていたあの黒き憎念すらも……全て……

 

だがそれがひどく……何故か冷たいと思ってしまった……

 

そう思ったその瞬間に……力が抜ける……

 

 

 

カクン

 

 

 

……あ………れ……?

 

 

痛くもない、熱くもない……何も感じていないはずなのに……俺の体は崩れ落ちた……

 

立ち上がるどころか指を動かすことすら……動かそうとすら思わなかった……

 

 

 

 

死ぬ……のか?

 

 

 

 

クラッ

 

 

目が……かすんできた……

 

 

それを自覚した瞬間、がくんと、まるでブレーカーを落としたみたいに、目の前が一瞬で真っ暗になった……

 

痛みはまだ感じていない……

 

いや感覚が死んでいるだけかもしれない……

 

先ほどまで、あれほど恐怖に感じていたはずの闇も……感じることはなかった……

 

 

 

 

死……

 

 

 

 

もはや思考することすら辛くなってきた……

 

 

 

 

自分の生を…

 

 

 

 

自分の死を…

 

 

 

 

この世界のこと…

 

 

 

 

自分の世界のこと…

 

 

 

 

そして……約束したことすらも……

 

 

 

 

どうでもよくなってきてしまった……

 

 

 

 

……

 

 

 

 

今まで幾十、幾百、幾千の命を奪った……

 

悪人殺し……

 

善良な人間を食い物のしている連中を殺して平和にする……

 

その大義名分で俺は今までいくつもの人間を殺し、この手を血に染めてきた……

 

それを言い訳するつもりはない……

 

俺は間違いなく自分で納得し、そして殺すと心から思って俺は殺してきたのだ……

 

その俺が……人殺しの俺が死ぬ番になった……

 

ただ、それだけのことで……

 

 

 

……ぅ

 

 

 

 

もう、……考えることすらも億劫になってきた……

 

そもそもこれは現実なのか?

 

余りにも現実離れしたこの状況……

 

煌黒邪神アルバトリオン……

 

荒天神龍アマツマガツチ……

 

崩壊神ウカムルバス……

 

破壊神アカムトルム……

 

紅炎王龍テオテスカトル……

 

紫炎妃龍ナナテスカトリ……

 

風翔龍クシャルダオラ……

 

精霊キリン……

 

霞龍オオナズチ……

 

老山龍ラオシャンロン……

 

異様中の異様……

 

現実には……俺の現実にはあり得ない生物……

 

いやもはやこれを生物と言っていいのか?

 

どれもがあり得ないほどの力を有し……俺を苦しめた……

 

いやそもそもにして、そんなのを相手に俺はどうして立ち向かえた?

 

俺は人間で……どうしようもないくらいにただの人間で……

 

そんなちっぽけな……一人では何も出来ないような生物が……何故普通では考えられないような存在に立ち向かえたのだ?

 

 

 

 

夢?

 

 

 

 

今までの事は全部夢だったのか?

 

余りにもあり得ない憎念を身に宿した黒き龍も……

 

天女のような美しさとは裏腹に……胸に秘めた荒々しい心で、天を操った白き龍も……

 

その山のような巨躯を動かし、俺を試した崩竜も……

 

圧倒的な力で俺を殺そうとした覇竜も……

 

炎を力に変えた紅炎も……

 

炎を自在に操った紫炎も……

 

風を、氷を使役していた風翔も……

 

雷そのものだった精霊も……

 

姿を全く見せなかった霞も……

 

山の巨躯に、あり得ないほどのマナを内包した老山も……

 

 

 

 

それどころか……今まで相対してきた異様な生物たち……モンスター……

 

 

 

 

そして……俺と供に過ごしてきた……知人……猟友……弟子達……そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

ジンヤさん……

 

 

 

 

 

 

 

 

あの子も……

 

あの約束すらも……

 

 

 

 

全て夢で……

 

 

 

 

この感覚のなさが……ひどく夢に似ていた……

 

俺はただ……眠っているのだと……

 

いや、このまま眠れば……全てが終わると……

 

それがひどく甘美に思えた……

 

俺は自分が出来る事を精一杯やった……

 

夢の中だったけど……俺は精一杯生きた……

 

最後の最後で……俺が持ちうる全ての力を……全ての得物を用いて戦ったが……勝てなかった……

 

だがそれも当然だ……

 

何せ相手は神なのだ……

 

紛う事なき邪神……

 

そんな存在にただの人間である俺がどうして勝てるというのだ?

 

むしろ今まで戦えただけでもよくやったと……言えるのではないか?

 

 

 

 

……疲れた

 

 

 

 

夢を見ていただけなのに……ひどく疲れている……

 

だがそれももう終わる……

 

夢から覚めればいい……

 

いや……永遠の眠りにつけば……

 

 

 

 

何も考えない……

 

 

 

 

何も感じない……

 

 

 

 

何も…………知らない……

 

 

 

 

何も…………ない……

 

 

 

 

俺は……

 

 

 

 

自我すらも……消える……

 

全てを忘れ……全てを棄てて……俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジンヤさん!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、落ちたはずの五感の何かが、何かをとらえた……

 

 

 

 

なん……だ……

 

 

 

 

「このくそやろう! 何のんきに寝入ろうとしてるんだよ!」

 

 

 

 

……だ…れ?

 

 

 

 

「起きろジンヤ君!」

 

 

 

 

ジン……ヤ?

 

 

 

 

「私が知っている君は……そんな風に全てを放り投げてしまうような人間ではないはずだ! あの刀を作り上げた君が……だから立て!!!!!」

 

 

 

 

かたな?

 

 

 

 

「ジンヤさん! 死なないで! 僕はまだあなたに色んな事を……教わりたい!」

 

 

 

 

おしえる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジンヤ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジンヤ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は帰ってこいと……私はそう言った!!!!! お前はそれに答えた! あぁ……と。そういつものように答えた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……答えた?

 

 

 

 

 

 

 

 

「全てを諦めきって寝るな! 帰ってこい!!!! 帰ってくるんだろう!!!!! だったら……そんなところで寝ている場合じゃないだろう!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺に叫ぶその声……

 

それはまるで泣き叫んでいるかのようだった……

 

俺に対して叫ぶその声は……寒かった心に……僅かな暖かすらも感じてしまう……激しくも優しさに満ちた声で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジンヤさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いてきたその声は……俺の心の奥に……響いた……

 

全てを飲み干した……抑えつけて……それでもなお抑えきれなかったその言葉……

 

それは……

 

 

 

 

……お……前は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「約束しましたよね。絶対に帰ってくるって……。ここに……私がいる、この場所に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声と同時に流れてくる……光景……

 

それは銀の竜に守られた……家……

 

そこに……色んな人がいた……

 

随分と小柄な……真っ白な髭をたくわえた耳の長い老人……

 

喚くように声をまき散らしながら、百面相のように、表情を変える男……

 

浅黒い肌の色をした屈強な身体をした……男……

 

 

 

 

凛々しい声と、凜とした、雰囲気……

 

無造作に後ろでまとめた茶髪……

 

他のものと違って大人びていて……

 

だがその内に秘めたその情熱は……想いは誰よりも熱かった……

 

その想いに……情熱に、覚えがあった……

 

 

 

 

フィ……ア……?

 

 

 

 

敵視され……俺自身も、怒鳴っていた……

 

 

……何に?

 

 

戦闘中に……怒鳴っていた……

 

 

 

そして一緒に    に……行って……

 

 

……何処に一緒に行った?

 

 

クエスト……モンスターの討伐へと……

 

 

その後に……俺の弟子になった……

 

 

……何の弟子?

 

 

武器の……刀の使い方の弟子に……

 

 

……刀とは?

 

 

俺の生まれ故郷の……独自の武器……世界最強の……刃物……

 

 

 

 

……世界……とは?

 

 

 

 

世界……俺の世界……モンスターのいない世界……故郷が日本……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから……帰ってきて下さい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に、目の前に流れてくるその少女……

 

薄い紫に輝く、肩までかかった髪が綺麗だった……

 

童顔の顔が涙で濡れて、目元が赤く晴れていた……

 

 

 

 

その涙が……すごく……綺麗だった……

 

 

 

 

その声は、その子は……純粋に願っていた……

 

ただ俺が……無事に帰ってくることだけを……

 

他に一切の感情のない……文字通り純真無垢で、純粋な……綺麗な感情……

 

 

出会ったのだ……

 

 

……どこで?

 

 

森の中で……襲われていて……

 

 

……何に?

 

 

恐竜モドキ……ランポス……

 

 

それから村へと案内してもらって……

 

 

……村とは?

 

 

ユクモ村……俺の拠点となった村で……

 

 

それから供に過ごし……俺を励ましてくれた……

 

 

店を造ったときも……率先して手伝ってくれて……

 

 

……何の店?

 

 

俺の故郷の食い物……和食の店……

 

 

俺がギルドナイトに入って供にいれないことを気にして……無理矢理ついてきた……

 

 

……何処に?

 

 

クエストに……。そして襲われてしまった……

 

 

……何に?

 

 

古龍種……オオナズチ……

 

 

それから俺を好きと言ってくれた……

 

 

俺の過去を明かしても……そばにいてくれた子……

 

 

……過去とは?

 

 

俺の……最悪の記憶……あの子を死なせてしまった……救えなかった罪の記憶……

 

 

それを聞き、俺がその告白を断ってもなお……こいつはめげず……俺に約束をさせた……

 

 

……約束?

 

 

 

 

それは……

 

 

 

 

必ず! ジンヤさんが……ほ……惚れるような女になって見せます!!!!

 

 

 

 

ジンヤさんが、帰りたくなくなるような……もしくは連れて帰りたくなるような立派な女になって見せますから、か、覚悟していてください!

 

 

 

 

ジンヤさんが帰るのが先か、それとも私がジンヤさんに好かれるのが先か……

 

 

 

 

了解。勝負だな

 

 

 

 

はい!

 

 

 

 

その約束は……俺を……

 

 

 

 

こんな俺を前へと進ませてくれた……

 

 

 

 

あの子の……

 

 

 

 

レーファとの……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジンヤさん!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………【俺】…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……とは?

 

 

 

 

 

 

 

 

俺……俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

【我……】

 

 

 

 

【鉄を錬鉄し……】

 

 

 

 

【刃を造り……】

 

 

 

 

【刃を為す者……】

 

 

 

 

【己が刀に命を込め……】

 

 

 

 

【眼前の敵を斬り捨てる……】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は!!!!!

 

 

 

 

俺の名前は!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鉄刃夜だ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立ち上がって……俺は吼えた……

 

己を……俺を形成する……もっとも単純にして、原始……

 

それは俺が……俺……

 

 

 

 

【鉄刃夜】

 

 

 

 

であると言うこと……

 

それを……俺が俺であるということを一言で言い表す言葉……

 

それを……叫んだ……

 

 

 

 

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その俺の叫びに……追い出されたのか……逃げたのか……

 

体中に充満していた……黒い穢れが俺のその叫びから逃げるように……体外へと出て行く……

 

確固たる【個】を持った俺に……恐れをなすように……

 

そしてその黒き穢れが入っていた場を埋めるように……魔が……命が……俺へと流れ込んでくる……

 

今までと違う……俺に貸し与えてくれているのではない……

 

俺に協力し……全てを委ねてくれる……

 

 

 

 

そのため、圧倒的なその力を前にして、怯むことなく、その魔を……命を十全に使わせてもらうことが出来る……

 

 

 

 

全く不安もなく、気負いもなく……俺は立ち上がり、手にしている狩竜を握る手に力を込めた……

 

 

 

 

【……貴様】

 

 

 

 

それを見てさすがに敵も、俺を侮ることなく……俺を見つめてくる……

 

 

 

 

俺は……みんなに感謝をしつつ……敵へと向き直る……

 

 

 

 

「第二幕、開幕と行こうか」

 

 

【……ほぉ】

 

 

 

 

俺の言葉を受け、敵が意外そうに……だが今までの鼻で笑うような感じではなく……純粋に笑う……

 

 

 

 

【それでどうする? 確かに魔が十全になったようただが……我が魔を……穢れし邪をどうやって捌く?】

 

 

 

 

敵のその言葉に……一瞬怯んだように見えた敵の穢れた魔が……再び活動を開始する……

 

 

 

 

確かに敵の言うとおり……

 

魔が増えても、俺には未だに対抗策が出来ていなかった……

 

一刀流では速さは合っても威力不足で捌けず、数も足りない……

 

打刀二刀流では数と速さは合っても威力が不足……

 

封龍剣【超絶一門】では全てをある程度満たしたが……それでも威力が足りなかった……

 

狩竜で……龍刀【朧火】ようやく威力が勝るが……その代わり数が足りなくなった……

 

 

 

 

本来はこれで終わるはずだった……

 

 

 

 

俺にこれ以上、物体の得物は無いのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

だが……一つだけ……

 

 

 

 

 

 

 

まだ、試していない……戦い方があった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はそれを確認し……まず一つの能力を解放する……

 

 

 

 

「荒天、顕現……」

 

 

 

 

嵐を呼び、荒天に舞う白き龍……アマツマガツチ……

 

 

 

 

それの力を宿した……能力……

 

 

 

 

「風雲の羽衣……」

 

 

 

 

それを言うと同時に、その能力が発動する……

 

 

 

 

フォン

 

 

 

 

静かに、ゆったりと体が地面から離れ……俺は宙を舞った……

 

荒天の神、嵐龍アマツマガツチが浮いていたその力を顕現した……風雲の羽衣……

 

先にここ神域に飛び降りるときに、感じた威力の向上は、この風雲の羽衣が原因だったのだ……

 

 

 

 

生命が……命が、俺の力を教えてくれる……

 

 

 

 

俺が出来ること、出来ないこと……その双方を……

 

 

 

 

俺の背に、半透明になっている羽衣がうっすらと見えた……

 

俺はこの風雲の羽衣によって、飛翔、滞空することが可能になった……

 

だがそれはあくまでも今の俺が、俺だけの力でこれを顕現していないからだろう……

 

もしも命が全てを委ねてくれていなければ、地面からせいぜい5mくらいの高さまでしか飛ぶことが出来ないだろう……

 

だが、今はそんなことは関係ない……

 

 

 

 

準備は整った……

 

 

 

 

得物を|存分に振るう高さ(・・・・・・・・)を得た……

 

後は俺が出来るか否か……

 

 

 

 

 

魔は……命は……今俺が行おうとしていることを……

 

 

 

 

 

 

 

 

決して【無理】だとはいわなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

いや……出来る……

 

 

 

 

 

 

 

 

普段ならば不安に陥っただろう……

 

だが俺には今、魔が、命が、味方をしてくれている……

 

そしてそれだけでなく……村の連中が……

 

 

 

 

リーメが……

 

 

 

 

フィーアが……

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

レーファが……

 

 

 

 

 

 

 

 

それを……その感謝の気持ちを、形にすればいい……

 

 

 

 

 

 

 

 

バッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

両手で握っていた狩竜の柄頭から左手を離し……俺はそれを眼前へと突き出す……

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍刀……顕現……」

 

 

 

 

 

 

 

 

左手に……左腕前腕に宿ったラオシャンロンの力に……全てを注ぎ込む……

 

今俺に協力してくれている魔に、命に……

 

感謝をしつつ……

 

そして俺の帰りを待ってくれている……みんなに……

 

 

 

 

キィィィィィィィ!!!!

 

 

 

 

だがそれでも顕現は難しい……

 

一瞬でも気を抜けば……僅か、ほんの欠片ほどのずれがあれば……

 

完全に想像をすることが出来なくば……顕現は難しい……

 

 

 

 

だが出来ないはずがない……

 

 

 

 

狩竜に宿してきた……龍刀【朧火】……

 

すでに何度もそれを目に焼き付けた……

 

その力の異様さを目の当たりにしてきた……

 

その俺が……

 

錬鉄とは違うとはいえ……

 

 

 

 

俺が……刀を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「太刀を顕現できぬ訳がない!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィィィィィィ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

左手に徐々に、徐々に集まり、それが形をなしていく……

 

その鋭き剣先を……

 

その曇り無き蒼穹のごとき……刀身を……

 

刃先に宿った……その力を……

 

老山の力を体現した……その峰の棘を……

 

鋭き棘の……鍔を……

 

 

 

 

何よりも……それに内包された命の力を……

 

 

 

 

そしてそれが形となした……

 

 

 

 

 

 

 

 

ピィィィィィィン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

初めて龍刀【朧火】を顕現したときのように……俺に魔の、命の光の柱が、暗雲を突き抜けて、俺へと降り注ぐ……

 

 

 

 

いや、あの時と同じではない……

 

 

 

 

 

 

 

 

完全に魔と同調したその力は……龍刀【朧火】をさらなる力へと進化させた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍刀【|劫火(ごうか)】!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

より深く蒼く染まった刀身……

 

 

 

 

見た目……形状に大した変化はないものの、それに内包された魔は、まさに眼前の敵、煌黒邪神と同じと思える……神の領域……

 

 

 

 

それを……右手に狩竜を掴んだまま、眼前に突き出した左手で、龍刀【劫火】の柄頭を、強く、強く……握りしめる……

 

 

 

 

【……何ぃ?】

 

 

 

 

それは一体何に対する驚きか……

 

だが今の俺にそんなことは関係がない……

 

俺は風雲の羽衣によって浮遊しているその状態で、|両手(・・)に一振りずつ握られている……野太刀を振り下ろした……

 

 

 

 

右手に、刃渡り七尺四寸の超野太刀……打刀【夕月】が転成した狩竜……

 

 

 

 

左手に、刃渡り六尺前後の魔野太刀……龍刀【朧火】を超越した龍刀【劫火】……

 

 

 

超野太刀一刀流でもない……

 

打刀一刀流でもない……

 

打刀二刀流でもない……

 

双剣でもない……

 

 

 

 

魔野太刀一刀流でもない……

 

 

 

 

速さを、数を……そして威力を……

 

 

 

 

全てを兼ね備えた……常人では絶対にあり得ない……刀の流れ……

 

 

 

 

まだ試していなかった……戦い方……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「野太刀二刀流!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前人未踏……前代未聞の刀の流れ……

 

俺はそれを持って、敵の魔を迎え撃つ……

 

 

 

 

【どうやら……はったりではなさそうだな】

 

 

 

 

俺の覚悟を、想いを感じ取ってか……

 

敵が今までとは比べものにならない穢れし魔を……憎念を、増悪を解き放つ……

 

 

 

 

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この世界の全ての……全ての歴史の憎念を、悪意を凝縮したほどのような、濃密な悪意……

 

だがそれを見ても、先ほどよりは怖くなかった……

 

俺は風雲の羽衣によって浮いたまま……

 

 

 

 

超野太刀 狩竜

 

 

 

 

魔野太刀 龍刀【劫火】

 

 

 

 

を構えた……

 

 

 

 

今から殺し合いを再び始めるというのに……俺の心はひどく穏やかだった……

 

何故かはわからない……

 

 

 

 

喜び

 

悲しみ

 

怒り

 

諦め

 

驚き

 

 

憎しみ

 

 

苦しみ

 

恨み

 

嫌悪

 

空虚

 

嫉妬

 

 

 

 

後悔

 

 

 

 

期待

 

 

 

 

絶望

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

恐れ……

 

 

 

 

奇妙にも……全てが混ざり合い、綺麗にとけ込んで俺の胸中に合った……

 

なくなったわけではない……

 

 

 

 

先ほど黒い穢れた魔に触れられた時の恐怖は……忘れたくても忘れようがない……

 

 

 

 

だけど……

 

 

 

 

それでも恐怖で身体がすくみ上がり、動きが堅くなるような事はない……

 

 

 

 

いつも通り……いや、いつも以上にいつも通りだった……

 

 

 

 

敵も、俺と同じように静かだった……

 

ただ、穢れし魔の怨念が……耳には届かぬその怨念だけが……猛っていた……

 

 

 

 

一瞬の静止……

 

 

 

 

互いが互いを睨みあう、刹那の瞬間……

 

 

 

 

それが終わったその時……

 

 

 

 

 

 

 

 

互いに向かって突進した……

 

 

 

 

 




次章 第五部 第九話


「終焉」





2012/08/13 追加
おいおい……最終話の四部作の一話抜いてるとかドンだけ間抜けなんだ俺は!?
どうもすいませんでした!

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