リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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過去編~~~~~~~~

大体の物語にはつきものの過去編。
一応友人であり編集者にして大先生! HM氏に読了していただいたので……最低限のレベルには達していると思う……



過去編

~レーファ~

 

 

人を殺したいほど憎いと…………思った事はあるか?

 

 

今聞いた……ジンヤさんのこの言葉が、寂しげな表情が、私の頭から離れなかった。

 

ジンヤさんに告白して返ってきたのは、私の告白に対する返事ではなく、ジンヤさんの質問の言葉だった。

それを聞いた私は、あまりにも意外で……その言葉の恐ろしさに、頭が真っ白になってしまった。

 

 

「ふむ。まぁ、驚くよな。とりあえず今日はもう帰って寝ろ」

 

「え……でも……」

 

「手前勝手ですまないが、お前の返事は俺の質問に答えてからにしてほしい。それに……」

 

 

さっきまでとは違う、優しげに苦笑しながら、ジンヤさんが私の手に持ったそれを、指さしながらこう言った。

 

 

「酒が入った状況じゃうまく考えられないだろう? 一日時間をやるから……少し俺が言った意味を、考えてきてくれ」

 

 

そう言って、私のことを優しく立たせてくれて……家まで送ってくれた。

お酒のせいか……もしくはジンヤさんの話のせいなのか分からなかったけど……ふらつきながら夜道を歩いて、家に入ると、私はベッドに身を投げ出していた。

 

 

 

そして一夜が明けた今。

私は何となく寝付けないまま、ただひたすらに、昨夜ジンヤさんが言った言葉を反芻して、考えていた。

 

 

あれは……いったいどういう意味だったの?

 

 

ジンヤさんの言葉の意味を考える。

 

 

人を、殺すという行為……

 

 

常時、モンスターの危機にさらされているこの世界において、人殺しというのは最大の禁忌であり、もしも人を殺してしまった場合、それが故意でなくてもとても重い処罰が下される。

それこそいっそ処刑されたほうが楽なほどの苦痛を与えられるって、聞いたことがあった。

私は今まで村からあまり出たことがなくて、それに特に悪いこともせずに育ってきたので、話程度しかそういった刑罰のことは知らなかった。

 

 

ううん……今はそんなことどうでもいい

 

 

刑罰について知りたいわけじゃない。

ずれていた思考を元に戻して、私は再度考える。

 

 

人を殺したいほど……憎いと思ったことはあるか?

 

 

そう聞いてくるってことは……それはつまり、ジンヤさんはそれほどまでに憎いと思ったことがある……ってことだよね?

 

 

そして……ジンヤさんの口ぶりと表情を鑑みれば……ただ憎いと思った、それだけで終わらなかった可能性は非常に高い……。

そうでなければ、あの状況でそんなことを聞いてくるはずはない。

私が……告白したあの時に……。

 

 

……何の関係があるのかな?

 

 

普通なら、人生で三度目……しかも全部同じ人相手に告白したことに、胸が苦しい思いをしているはずなのに……。

 

 

でも……

 

 

人を殺したいほど……

 

 

あのとき見せたジンヤさんの寂しげな表情。

それに何より、ジンヤさんが自分のことを話そうとするのは初めてだった。

前にも思ったことだけど、私はジンヤさんのことを何も知らない。

だから今回の件で、ジンヤさんが自分のことを話してくれるのはすごく嬉しかったけど、素直に喜ぶ事が出来なかった。

告白の返事が聞けないって言うのもあるけど……でもそれ以上に、ジンヤさんが傷ついているのが容易に想像できて……それが悲しかった。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

ゴト

 

 

朝露が滴りそうな……日が出たばかりの時間。

俺は手にしたとっくりを床に置き、一人静かに酒を飲んでいた。

非常に申し訳ないと思ったが、レーファと話をする都合上、今日もグラハムとジャスパーには和食屋で寝泊まりするようにお願いしていた。

 

 

あまり人に言いふらすような話でもないしな……

 

 

昨日の古の魔龍、霞龍オオナズチという古龍と戦って受けた傷を癒すために、俺は何もせずに家に閉じこもっていた。

姿が見えない状態で攻撃された……おそらく前足の爪による攻撃で受けた傷がまだ完治していなかった。

特に腐食液でもかぶったと思われる肌の損傷は甚大だった。

しかしそれでも負傷具合としては、今まで苦戦した中ではもっとも軽いだろう。

敵の攻撃は直接的な損傷よりも、副次的……毒や腐食爪による状態以上に重きを置いている。

普段ならば、この程度の傷など気にせずに和食屋に行って仕事をしているのだが……そんな気分にはなれなかった。

 

 

……人を殺したいほど憎いと、思った事はある……か? ……ねぇ

 

 

昨夜自分がレーファに問いかけた言葉を頭の中で反芻した。

最近いろいろとありすぎて感傷的になっていたのかもしれない。

ラオ討伐、パーティー、悪夢、この世界の刀の鍛造、飛竜が逃げ出す、レーファとリーメの刀の鍛造、刀を打ってくれと言ってくる連中のあしらい……

 

 

……何このてんこもりな最近の日常

 

 

自分のここ数ヶ月の状況を改めて認識して思わず笑いそうになってしまった。

ちなみに笑うと言っても苦笑である。

 

 

この世界に来て……もうだいぶ経つな……

 

 

ドンドルマで生活していた頃から少し経つから……すでにこの世界に来て四ヶ月と二十日ほどの月日が流れようとしていた。

この世界が余りにも、俺の世界とかけ離れていて、しかも血生臭い出来事がほとんど無いために、つい忘れてしまいそうになるが……俺が現実世界でしてきた事は、紛れもない人殺しであり、そして俺は恨まれている存在なのだ。

 

 

それに何より……女の子一人守れないような半端者……か

 

 

最近よく見る悪夢……その夢に出てくる、俺が傷つけて……そしてそれを許し、俺を慕ってくれた……あの女の子。

あの日……その笑顔が永遠に失われた事を……俺は生涯絶対に忘れないだろう……。

 

 

……俺のせいで体が不自由になったにも関わらず……俺を許したあの少女

 

 

今でも悔やむ……。

あの時……あの場所で……行こうか悩んだあの時に……もしも行っていれば……何かが変わっていたのかもしれないというのに……。

だがそれはあくまで可能性の話であり……しかも過去形だ。

可能性ですらない。

俺が取った行動で今という現実がここにあるのだ。

たらればの話など、何の意味もない。

オオナズチにも、俺はそう言ってやった。

 

 

いや……だからこそか……

 

 

俺自身が強くそれを望んでいたから……どれだけ言っても過去の出来事でしかないのだから……言っても無駄だと、無意識のうちに自分に言い聞かせていたのかもしれない。

オオナズチに……言っているつもりで……。

 

 

女々しいなぁ……我ながら……

 

 

自分の阿呆さ加減に苦笑した。

それに……これは俺が思ってはいけない思いだろう。

生きている俺が……。

 

 

あの子はもう考える事も出来ない……

 

 

四肢を吹き飛ばされ、火に炙られて黒くなっていたあの体。

きっとひどい目に遭ったはずだ。

家からそう遠くないところで倒れていた彼女。

もしも俺のせいで足を不自由にしていなければ……逃げ切れたのだろうか……。

 

 

いや……他人を放っておいて逃げるような子ではないか……

 

 

命の危機に瀕しても、体が一部不自由になっても……それでも他人のために何かをしていたあの子が、村が危なくなった状況で一人で逃げるとは思えない。

だからこそ……そんな彼女だからこそ、俺もあの少女の事を尊いと、そう思ったのだから。

 

 

ジーヤさん

 

 

人なつっこい笑みを浮かべながら、彼女が俺に微笑みかけてくれたのを、ふと思い出す……。

感傷的になっている自分に苦笑しつつ……俺は杯の中身を一息に呷って、床についた。

明け方だったが……それでもあの子が……レーファが今夜来る事を考えると、酔った状態では失礼だと思ったからだ。

あの子の性格上、答えが出なくても、真剣に必死になって考えてくるのは目に見えているからだ。

そんな頑張ってきたをレーファ相手に、酔いながら話すのは失礼だ。

 

 

俺に……こんな俺に告白してくれたあの子に……

 

 

「妹としてじゃなく一人の女の子として……私は、ジンヤさんのことが……好きです」

 

 

真っ赤になりながらそう言っていたレーファ。

 

 

妹と……弓と重ねていたつもりは無かったのだが……レーファがそう感じたのならば、そうなんだろうな

 

 

確かに年が近いのでそう見てしまったかもしれない。

失礼な事をしたと思って反省しつつ、俺はほろ酔い気分で今度こそ目を瞑った。

 

 

 

 

俺が目を覚ますと、すでに夕方となっていた。

俺は暗鬱に近い気分になりながら身を起こすと、ムーナにまず餌をあげた。

 

 

「ムーナ。食事だぞ」

 

「クォ」

 

 

小屋からのっそりといった感じで出てくるムーナ。

だがそれでもまだ甘えたい盛りなのか……結構甘えん坊だったりする。

今も嬉しそうに声を上げながら俺に駆け寄ってくるのだが……俺の目の前で止まると、俺の顔をじっと見つめてきた。

 

 

「? どうした?」

 

「クォルル」

 

 

なんか寂しげな声で鳴くと、俺の顔をそのでかい舌で優しく舐めてくれた。

ムーナにわかるほどに、外見的にも気分が沈んでいるように見えるみたいだった。

 

 

未熟……

 

 

いくら気を抜ける状況下だとはいえ、余り褒められた物ではない。

俺は俺に優しくしてくれたムーナの頭を軽く撫でると、餌である、肉の塊……アプトノスの生肉を地面に置いた。

それでも俺の事を心配して、ムーナは食べずに俺の事を慰めてくれようとしていたが、俺が何度か促すとやがてゆっくりと食事を始めた。

俺はそれを見届けると、俺も自分の分の夕飯を用意した。

といっても怪我をしているので、余りがっつりした物は食えないので、茹でた兜ガニの身をほぐした物を載せたご飯に、魚の骨なんかで取っただし汁を使った茶漬けと、根棒ネギ、激辛ニンジン、シモフリトマト等のサラダが本日の夕飯だ。

それをさらさらと胃の中に流し込む。

むろん流し込むと言ってもきちんと咀嚼してだが。

 

 

うん……うまい

 

 

水も空気も汚れていないこの世界での食材というのは実に調理のしがいがある。

思わず頷きながら食事を済ませた。

食事が終わってから……水を飲んでのんびりする。

そして、縁側で静かに水を飲んでいる……すると……

 

 

「ジンヤさん……いますか?」

 

「……来たか。開いてるぞ」

 

 

俺は声そして気配から誰かわかっていたので、門の前にいるであろうレーファへと声を掛ける。

 

 

ギィィィィ

 

 

門の勝手口が開き、硬い表情をしたレーファが底にいた。

そして静かに勝手口を閉めると、ゆっくりと庭を通って、俺へと近づいてくる。

 

 

「……話を聞く覚悟は出来たか?」

 

「……はい!」

 

 

そう問うと、硬いながらも屹然とした表情をして、レーファが頷いた。

俺はそれに静かに頷くと、俺の横の床をぽんぽんと叩いた。

レーファはそれに従って、俺の横に腰を下ろした。

が……

 

 

「「……」」

 

 

しばらくはお互いに話をするどころか、顔を見ることすらしなかった。

レーファはただ黙って……何か言いたそうにもじもじとしているだけだった。

俺はそんなレーファに苦笑しつつ、ただ、この子の覚悟が決まるまで……静かに待った。

 

 

「えっとその……昨夜の質問の答えなんですけど……」

 

 

やがて……完全に日が沈み始め、辺りが暗くなった頃に……ようやくレーファが話しかけてきた。

 

 

「……私は無いですけど……ジンヤさんには、その……人を…………殺したいほど憎いと思った事が……あるって言う事でいいんですよね?」

 

「……そうだ」

 

 

さすがに昨夜の問答でもそれくらいのことはわかったようだった。

まぁ確かに簡単な事かもしれないが。

それに俺は頷くと、俺は自分の右手側に置いていた、夜月を静かに手に取った。

 

 

「ここに来て……早四ヶ月ほどだな」

 

「??? そうですね?」

 

「びっくりしたぞ。変なモンスターに襲われていたレーファを見たときは」

 

「??? そう……ですか?」

 

「あぁ」

 

 

何故わざわざ今そんな話をするのか?

そんな疑問がレーファの顔にありありと浮かんでいたが、俺はそれをあえて無視して、さらに話を進めた。

 

 

「覚えているかレーファ。俺がお前にこれを預けた事を」

 

 

そう言って静かに俺は夜月を抜刀し、それを月光に照らした。

俺と同い年である相棒は、この世界の月夜においても、その輝くが曇ることなく、燦然と輝いていた。

俺その夜月を静かにレーファに差し出す。

 

 

「持ってみろ」

 

「……いいんですか?」

 

 

俺が自分の武器を大切にしている事は、俺と近しい人間ならば誰でも知っている。

それなのに武器の扱いは素人である自分に何故渡すのか? そう疑問に思いつつも、レーファはその疑問を押し殺し、俺が差し出した夜月を慎重な手つきで受け取った。

 

 

「……綺麗だろう」

 

「……そうですね」

 

 

いまいちそれを問いかける意図がわかっていないのだろう。

レーファの頭に?マーク浮かんでいる気がする。

俺はそれを確認して、少し間をおくと……こういった。

 

 

 

 

「その刀で……百人以上の人間を殺して、血に染まっているのにな……」

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

俺の言った言葉が衝撃的すぎて、意味を取り損ねたのか、レーファがきょとんとしている。

俺はそれに取り合わず、さらに言葉を紡ぐ。

 

 

「俺はそれで……俺の|世界(・・)の故郷で祖父が俺に造ってくれた俺の一番の相棒、夜月で、数多くの人間を殺してきたのだ……」

 

「世界……ですか? え? それってどういう……」

 

 

世界と言ってから直ぐに故郷といった。

だから世界が故郷というのを暗にほのめかした言葉ではないと、気づいたみたいだった。

俺はそれに頷きつつ、頭上……月を見ながらこういった……。

 

 

 

 

「俺はこの大陸の人間ってだけじゃなく、この世界の人間ですらないんだよ、レーファ」

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

……え?

 

 

言っている意味がわからなかった。

人を殺した事って言う事がものすごく衝撃的だけど……それでもある意味それ以上に言っている意味がわからない事だった。

この大陸の人間じゃない……そんな事ははっきり言ってわかりきっていた。

だって、ジンヤさんみたいな肌の色の人を見た事もないし、目の色や髪の色……そして言葉が……全く通じなかったんだから……。

でも……

 

 

世界? 別の世界って?

 

 

「言っている意味がわからないか?」

 

「え……えっと……はい」

 

 

言っている意味が全くわからないので、私は素直に頷いた。

 

 

『まぁそうだろうな』

 

 

それを見てジンヤさんが何かを呟いていたけど……私には何を言っているのかわからなかった。

 

 

ジンヤさんの……故郷の言葉……

 

 

時たまジンヤさんが使う……ジンヤさんの故郷の言葉……。

それが……聞いた事もなかったその言語が、ジンヤさんの言っている事を……暗に強調しているようだった。

 

 

「たとえば……そうだな。レーファ、今日の晩飯何を食べた?」

 

 

 

「………………え?」

 

 

 

突然の会話の転換に私は一瞬停止してしまった。

何を言い出すのかと思えば夕ご飯の事だなんて。

最初は冗談だと思ったんだけど……けどそれでもジンヤさんの表情が、余りにも真剣で一切茶化している感じは無くって……。

だから私は言われたとおり真剣に答えた。

 

 

「えっと……ご飯にお魚でダシを取ったおつゆを入れるオチャヅケ……でしたよね? と、お母さんのお手製のサラダに、焼き魚です」

 

 

朝はあまり寝れなかった事で、あまり元気がなかったので、軽く済ませていた。

オチャヅケというのも、ジンヤさんが教えてくれた料理の一つで、お父さんがすごく気に入っている料理の一つだった。

みんな最初こそ家畜用の餌だった米を毛嫌いしていたけど……、ジンヤさんが独自の調理方法を使ってあっという間に村の人気の食べ物になっていた。

 

 

「ほうほう。気に入ってくれたようで何よりだ」

 

「だっておいしいですし」

 

「では聞くが……オチャヅケではなく、パンを食べるという選択肢もあったよな?」

 

「? そうですけど」

 

「ならレーファが朝にパンを食っていた、|可能性(・・・)もあったわけだ」

 

 

可能性?

 

 

その言葉をジンヤさんが強調していた。

その事に私は気づきつつ、でも何故かそれを口に出す事が出来無くって、ジンヤさんの言葉を待った。

 

 

「仮に今日パンを食っていたら……レーファはここに来なかったかもしれない」

 

「な!? 何でですか!? 私が、ジンヤさんとの約束を破るなんて!!!」

 

「落ち着け。お前の事を卑下した訳じゃない。たとえばだ、パンがかびていて腹を下して床に伏せる可能性だってあるわけだ。そうするとここにはいないだろう?」

 

「……そうかもしれないですけど」

 

「もしくは、寝過ごして来なかったかもしれない。最悪ここに来る途中にモンスターに襲われていた可能性だってある」

 

「……何が言いたいんですか?」

 

 

何となく言いたい事がわかってきたけど、それでも可能性ということを何度も言うだけで、一向に話が進んでいなかった。

私はそれを目に込めてジンヤさんを見つめると、困ったようにジンヤさんが笑っていた。

 

 

「まぁちょっと無理矢理だが……つまり、可能性という事だけを考えていけば……モンスターのいない世界だってあるかもしれないんだよ」

 

「モンスターのいない世界……ですか?」

 

「そうだ。そして俺はそんな世界から何故かこの世界にやってきた人間だ」

 

 

ジンヤさんの言葉を、私は必死になって考えてみた。

可能性という言葉。

確かにジンヤさんの言うとおり、もしも私がかびていたパンを食べていれば、ここにはいなかったかもしれない。

けど、仮にパンを食べていたとしても、それがかびていなかった可能性だってあるわけで……。

 

 

でもそうすると、今と同じようにここにいたのかな?

 

 

パンを食べたという可能性の世界で、その世界での私も、果たして私はここにいる事が出来たのだろうか?

先ほど言ったように、モンスターに襲われていた事だってあり得なくもないわけで……。

 

 

でも……

 

 

「確かにそうかもしれないですけど……でもやっぱりそんなこと……」

 

「じゃあ逆に聞こう。俺がこの世界……この大陸の人間であると思える点はあるか?」

 

「……え?」

 

「髪の色や、肌の色は百歩譲っていいとしよう。だが俺の飯の食い方は? 食文化の違いは? そして……その剣の造り方……。どれをとってもレーファは知らなかったはずだ」

 

 

確かにジンヤさんの言うとおりで……私だけでなく、お父さんやお母さん、そして村のみんなも、ジンヤさんの行動には驚かされてばかりだった。

圧倒的な戦闘力も、食事の文化も、武器なんかも……正直言って想像の埒外と言ってもいいほどに違った。

でも……

 

 

「それは、ここが田舎……」

 

「ここが田舎か。確かにそうかもしれない。だがドンドルマは? この大陸随一と言ってもいいあの街に、俺と同じ事をしている人間がいるか?」

 

 

もはや想定の範囲内みたいだった。

ジンヤさんはまるですでに導き出していたかのように、私の反論に答えて見せた。

それでも、私はさらに言葉を紡ごうとするのだけれど……これ以上言い返す事が出来なかった。

そんな私に、ジンヤさんはふっと、柔らかな表情になると。

 

 

「そう難しく考えなくていいよ。つまり俺はレーファ達とは根本的に違う世界から来た人間だって事さえ把握できれば」

 

 

そう言って私の頭を撫でた。

いや正確には撫でようとした。

撫でようとして私の頭に持ってきていた手を、停止して……ひどく悲しい表情をしていた……。

 

 

「?」

 

「……話を戻そう。とりあえず俺は別世界の……モンスターのいない世界の人間であると思って話を聞いてくれ」

 

「……はい」

 

 

そう言ってくるジンヤさんの表情がどんどんと沈んで行く事で、私は何も言葉を掛けて上げる事が出来なかった。

そして私はただじっと……ジンヤさんの言葉を聞いた。

 

 

「俺の家は、武器の鍛造と……まぁ人を守ったり……悪人を殺したりするような家業を営んでいる家でな」

 

「人を……殺すんですか?」

 

「あぁ。この世界と違ってモンスターがいない。だから人工が増えまくって、俺の世界だと人間は67億人もいるんだぞ?」

 

「……オクって何ですか?」

 

「……まぁとにかくものすごくいると思ってくれ」

 

 

……なんかバカにされた気がする

 

 

「ともかくそうなるとどうしても善人、悪人と言った類の人間が出てくるわけで……。そして俺が殺していたのは、人を不幸にさせる事で自分を幸福にするような連中だ」

 

「……人を不幸にさせて自分が幸福になるって……どういう事ですか?」

 

 

言っている意味がわからなかった。

だって、人を不幸にしてどうして自分が幸福になれるのか?

罪悪感とかだってあるはずなのに……。

そんな私の心情を察したのか、ジンヤさんはおかしそうに笑った。

 

 

「そうなんだよ。罪悪感がなきゃおかしいのに……やつらは平気でひどい事をする。たとえばそうだな……自分のためなら、人を散々嬲り、死よりもひどい目にあわせて最後には殺す。もちろんそいつの家族も……いやそれどころか村一つ滅ぼす事もためらいはしない」

 

「!?」

 

 

村を一つ滅ぼす……。

そんな事はここでも普通に怒っている。

だけど……それは超常的な存在であるモンスターによってであって……。

 

 

人間が……人間が村を滅ぼす?

 

 

そんな事を聞いた事もない私には訳がわからなかった。

どうしてそんなひどい事が出来るのか。

 

 

「まぁそう言った連中の暗殺ないし殺害を、俺の家は生業の一つとしている。勘違いしないで欲しいのは、俺が罪から逃げたくてそう言ってるんじゃない。一つの事実を言っているまでだ。そして俺は人殺しの罪から逃げないし、逃げるつもりもない」

 

 

ジンヤさんが、そっと自分の手を空に……月にかざした。

そしてその手をじっと見つめている。

いや、手を見ている感じはしなかった。

その手の先に……何を見ているのか、私にはわからない。

しばらくそうしているジンヤさんを、私はただじっと待っていた。

その顔が……その雰囲気が、どんどんと沈んでいったのが、わかったから。

 

 

「まぁそんな感じで裏家業をしていて……一回俺が仕事でミスをした事があってな。近隣の村の女の子が一人、怪我をしてしまった事が……あった」

 

 

そして、語られていった……ジンヤさんの過去を……

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

今から数年前。

俺は現実世界での仕事でアジアのとある国に来ていて、そして仕事を行った。

この仕事というのは表……つまり鍛造士としての仕事ではなく、裏の仕事である、悪人殺しの方である。

そいつは裏で武器の売買、そして臓器売買に手を掛けていた人物であり、特に後者である臓器売買に関してはあくどい手法を行っていた。

手近な村なんかで人や子供をさらい、生きたまま解剖して売りさばいていた。

それを止めるために、俺はそいつの暗殺へと乗り出していた。

そしてそれは無事に成功した……かに見えた。

 

 

その時そいつの部下が逃げ込んだ先が、近隣の村で、そこが戦場と化してしまったのだ。

戦場といっても、そこまで大層な戦闘はない。

はっきり言って俺に掃討されるまで無駄に抵抗しているだけだった。

だが、村は一部が崩壊し、家が焼かれてしまった。

そして、一人の部下が放った弾丸が、少女の足を撃ち抜いてしまったのだ。

油断してはいなかった。

だが……結果的には油断していた事になるのだろう。

部下の連中の弾が当たってしまった少女。

その存在に気づかなかったのだから。

もちろん俺は直ぐにその少女の治療を行った。

だが……骨を砕いてしまったその足は、元通りに歩けるように回復する事はなかった。

切断には至らなかった物の、それでもひょこひょこと、傾きながら歩く彼女を見るたびに……俺は己を呪いたくなる気分だった。

せめてもの罪滅ぼし……いやただ俺が救われたかっただけなのかもしれない。

その子のためにあらゆる事をした。

村の復興に協力し、俺の稼ぎで村に様々な物資を買い求め、それを配ったりもした。

現地の言葉がある程度話せたので、俺は勉強を教えて上げたりもした。

そこで俺が不思議だったのは、彼女が俺を一向に恨んでいない事だった。

罵りもしない、恨みの籠もった目線も向けてこない。

なのに俺が復興に協力しているのを見て礼まで言っていた。

だから俺は聞いたのだ。

 

俺を恨んでいないのかと?

 

そこで彼女は……こう言ったのだ……。

 

 

「恨んだところで何かが変わるわけでもないし、あなたが悪いって訳じゃない。それに……私の足が怪我した事でこうしてジーヤさんがこの村にいろんな事をしてくれるのなら……私の足なんて安い物です。過去よりも……明日を見ましょう。ね?」

 

 

俺はその言葉に衝撃を受けた。

確かにこの少女は、弾丸が自分の足をえぐったときも……自分よりも幼い子供を庇ったせいで足に怪我を負ってしまったのだ。

極限状況でも、彼女は他人のために行動できるほど……優しい子だった。

それがわかって……俺はその子に心の中で心の底から詫びて、償う事をやめた。

 

 

償いではなく……この村のために、この子のために……何かをしたい

 

 

そう思った。

それから俺は償いのためではなく、ただひたすらにこの村の住人になった気持ちで様々な事を行った。

家の立て直しを手伝い、排水なんかのための土木工事、生活雑貨の織物、そして勉強の指導。

足を怪我した少女は、動けない自分の役目として、教師になる事を選んだ。

教師といってもその子は特別頭が良かった訳じゃない。

俺が事前に教えた事を、俺が昼間に力仕事をしているときに、小さな子供達に勉強を教えるという事を行っていた。

その子は勉強熱心で、とても頑張り屋だった。

だから俺もその子の気持に答えるように勉強を教えた。

しばらくそんな生活を半年ほど続け、俺は一旦家に帰った。

別の仕事が回ってきたからだ。

 

 

「……また来るな」

 

「……はい。ジーヤさんのことを、みんなで心待ちにしていますね」

 

 

いっぺんの曇りもない……笑顔でそう言ってくれた。

だからってわけじゃないが、俺はそれからもその村に足を運んだ。

海外に仕事を言った場合は、どんなに遠回りになろうとも、俺はその村に寄り道をした。

大量の土産を抱えて。

幸い、今までの貯金が大量にあるので、資金に困る事はなかった。

最初こそ、村をひどい目に遭わせた人間として、大人連中にはそこまでいい顔をされなかったが、それでも何度も足を運び、そして会話をしていると自然と村のみんなと仲良くなった。

そして、そんな村人達と仲良くしている俺を見て……彼女は嬉しそうに笑っていた……。

 

 

 

だけどそれは……唐突に終わりを告げる……

 

 

 

「裏のマフィア連中に怪しい動き?」

 

「そうだ。何か怪しげな動きをしているらしい。お前がよく行く村にも、何度か訪れたという話もある。裏の組織に先に行くか、村に行くかはお前に任せる」

 

 

仕事の話で、父にそう言われた事を覚えている。

その組織は、以前に俺があの子の村で戦闘を行った組織の上部組織であり、武器を大量に製造していた。

物が物……基本的に大量破壊兵器……グレネード、果てはミサイルなどを開発していたので、俺はそちらに急行した。

 

 

それが……全てを滅ぼす選択だった……

 

 

罠だった……。

俺をそこへおびき寄せるための。

取引の場所とされていた場所には、驚くべき事に数百人単位の人間が、重武装で俺を出迎えてくれた。

何とか切り抜けたが……その時……指揮官を殺すとき……

 

 

「お前の大事な村は、もう終わったな……」

 

 

そう言い残して死んだ。

その言葉に……俺は全身の肌が泡立った。

直ぐに最速の手段で村へと向かった。

そして……たどり着いた村は……すでに死んでいた。

 

 

家は焼かれ、人々は無惨にも銃で殺されていた。

いやそれはまだいいかもしれない。

爆発物で吹き飛んだのか、四肢や体の一部が欠損している人々が、ほとんどだった。

 

 

ジーヤは優しいねぇ

 

 

いつも俺に笑いかけてきて、いろんな話を聞かせてくれたあの老婆も……。

 

 

ジーヤ! 飯が出来たぜ! 食べながらまた話を聞かせてくれ!

 

 

人種の違う俺を受け入れて……談笑しながら食べて呑んだ……あの人も……。

 

 

ジーヤ! ジーヤの剣教えてよ! 僕もジーヤみたいになりたい!

 

 

無邪気に笑って、俺に剣を教えてくれと……縋ってきた子供達も……動かなくなっていた。

そして、俺はあの子の……俺のせいで足が不自由になったあの子の家へ……あの子とよく一緒に勉強した家へと向かって……そして見た。

彼女の死体を……。

 

 

 

「■■■■■……」

 

 

 

その子の名前を呟くが、もうとっくに死んでいたその子が、返事を返せるわけもない。

冷たくなったその体を……抱きしめる事しか、俺には……出来なかった。

 

 

 

それから俺はその村の住民達の墓を掘った。

そして全てを埋葬すると……俺は頼んでおいた情報が手に入った。

 

 

この村をこんな目に遭わせた……連中の居場所……

 

 

この村を滅ぼした理由。

それが実に虫酸の走る理由だった。

 

 

俺を苦しめるため……

 

 

普段俺に辛酸をなめさせられている復讐。

たったそれだけのために……俺が力の限りで復興に貢献した村が……あの子が……教師に……人の役に立てて嬉しいと言っていたあの笑顔を……消したのだ。

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!」

 

 

そこから先の事はよく覚えていない。

一つの感情が……俺の体を完全に支配していた。

村が滅びるのと……それに呼応するかのように……一つの組織が、この世から消えた。

 

 

 

 

このとき初めて……俺は心の底から……人が……相手が……敵が憎いと……ありとあらゆる苦しみを味あわせて……殺してやりたいと……人を殺したいほど憎いと……そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつは……乗り越えたのだろうか……

 

 

私は、縁側に座って青い空をみつめながら、ふと、そう思った。

家業とはいえ……あいつは人を殺すという仕事を、受け入れて、そして人を殺した。

悪人という事で割り切ってはいたが、それでもあいつは折れなかった。

依頼が入るたびに、悪人を殺していった。

そんなある日に……裏のマフィアが怪しい動きを見せているので調査して欲しいと、依頼があった。

私はそれをただ告げるだけで、何もしなかった。

そして、それが起こった。

あいつにとって、大切にしていた村が……焦土と化した。

それがあいつの中の何かを壊した。

それから復讐の鬼となって、あいつは初めて人を憎いと思って、殺した。

 

 

あいつならば乗り越えられると……信じているのだが……

 

 

「あ、いたいた。じいさん」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

「これが俺が質問した事の回答だ……。俺はお前と違って、人を殺したいほど憎いと思い……そして殺した」

 

 

その言葉は、ひどく乾いていて……すごく空虚な感じだった。

 

 

「その組織のボスの屋敷で俺が……この剣で……」

 

 

そう言って、先ほどまで私が手にしていた剣……ジンヤさんの剣をそっと、入れ物の中へと納めていた。

 

 

「そういう人生を歩んできた。女の子一人救えない、情けない男さ」

 

 

そう言って寂しそうに微笑んでいた。

それがひどくいたい。

 

 

「さて……レーファ」

 

「は、はい……」

 

「お前の告白の答えなんだが。残念ながら俺にはレーファの申し出を受ける事は出来ない」

 

 

……え

 

 

突然の話の転換に頭が付いてこなかった。

だって……ジンヤさんが人を殺していた……つまりジンヤさんの過去の話を聞いていて突然、私の告白の答えに行く。

それがよくわからなかった。

そんな私を見て、ジンヤさんが苦笑した。

よっぽど変な顔をしていたのかもしれない。

けど、しょうがないと思う。

 

 

「り、理由は……なんですか?」

 

「……俺は今まで数多くの人間を殺してきた。おまけに善良な人間一人守れない男だ」

 

 

そう言って、少しの間ジンヤさんが目を閉じて瞑想をしていた。

何かを……思い出しているのかもしれない。

しばらくジンヤさんが何かを言ってくれるのを待っていたのだけれど……何も言ってくれないから、再度私は聞いてみた。

 

 

「……人を殺したから……女の子を……自分が好きだった女の子を守れなかったから……ですか?」

 

 

人を殺す。

私には全くわからない事だった。

人を殺すという行為も……そして、人を殺したいほど憎いと思った事も……私にはなかったから。

でも、人を好きになると言うのは……わかったから。

だから……

 

 

ジンヤさんが……その女の子の事が好きだったんじゃないかな……?

 

 

話を聞いていたそう思った。

その子の名前も、ジンヤさんは言葉に出さなかったので知らない。

だけど……

 

 

「あの子」って言うときのジンヤさん……すごい寂しい表情をしてた

 

 

だから好きだったんじゃないのかなって……思った。

確かに自分の昔の話をするときのジンヤさんは、すごい寂しそうにしていたけど……、でも「あの子」と言うときだけ……その寂しさの中にも、優しい感じが、にじみ出ていた。

だから……

 

 

「あの子」が死んでしまったから……私の告白は受け入れられないのかと思った。

 

 

 

 

「ん? いや別に好きじゃなかったぞ?」

 

 

 

 

「…………………………え?」

 

 

 

 

その言葉に、私は再度固まってしまった。

 

 

「まぁ確かに、妹とか、そう言った感情で好きだったかな? あの子も俺の事を兄として慕っていたし」

 

「そ……そうなんですか?」

 

「あぁ。あの子幼なじみがいて、その男の子との相談事をよくされたから」

 

 

…………今までの雰囲気が一変してあっけらかんとした……なんて言うか、少し深刻度が下がった気がするのは……きっと、私の気のせいじゃないと思う。

 

 

「じゃあ……どうしてですか?」

 

「……」

 

「どうして、私じゃだめなんですか……?」

 

 

ようやく、私が知りたかった……告白の答えが聞けた。

けど、どうしてだめなのかわからなかった。

あの子っていう子が好きだったから……その子が死んでしまったからその子のために私の告白が受け入れられないのかと思った。

けど、それも違った。

ならどうして……、どうしてだめなの?

 

 

「……レーファはリオスさんのこと、レミルさんのこと、大好きだよな?」

 

 

お父さんと、お母さん?

 

 

「は、はい」

 

「俺がもしも……二人を殺したらどう思う?」

 

「……ど、どう思うって……そんなの?」

 

「……憎いよな? 殺した相手が……俺が……」

 

「……はい」

 

「だから俺はお前の告白を受ける事は出来ない」

 

「な、何で……」

 

 

どうしてですか……。

どうして私じゃだめなんですか?

 

そう聞きたかった。

けど、ジンヤさんが静かに目を瞑って……瞑想しているのを見ると……言葉を待つ事しか、出来なくて……。

 

 

一つ息を吐くと、ジンヤさんは空を……月を見つめた。

 

 

「俺は……帰らなきゃいけない。俺の世界に」

 

「……ど、どうしてですか?」

 

「……悪人にも家族がいて……俺が殺してきた悪人のやつらにも当然いたはずだ。そいつらは俺を恨んでいる。だから俺はその恨みを受け止める義務がある。だから俺はその憎しみを受け止めるために、帰らなきゃいけないんだ」

 

「で、でも! そんなのって」

 

「別に受け止めると言っても、復讐に来たら黙って命を差し出す訳じゃない。返り討ちにするさ。それに俺だって家族が欲しい。自分の子供だって欲しい」

 

「……私じゃだめなんですか?」

 

「そうなると俺はこの世界に居座る事にある。復讐する事も、憎む事も出来ない状況にしておいて、自分だけが幸せになるなんて……俺自身が納得できないし、したくない」

 

 

笑顔を向けておきながら、その表情にはきっぱりと……否定の感情が浮かんでいた。

 

 

 

 

「人を殺した罪を背負い、あの子達を死なせた罪を背負い……そして俺は恨まれるために……復讐する機会を与えるために……人殺しとしての義務を果たすために……俺はなんとしても、俺の世界に帰りたい……」

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

……来ないか

 

 

翌日。

俺は自分の家で縁側に座りながらそんな事を考えていた。

俺の過去を……俺がこの世界の人間でない、そして人を殺したという事実を明かした。

昨夜それを聞いたレーファは、ショックを受けたのか、聞き終わると、何も言わずに帰ってしまったのだ。

 

 

人に好かれるような、立派な人間ではない……と

 

 

まぁいなくなるという事もそうだが、レーファの想いを振った事も事実なので、耐えられなくなってしまったのだろう。

だからなのか、レーファは今朝、俺の家に顔を出さなかった。

俺の事を恐ろしくなったのか、幻滅したのか……理由は定かではないが。

 

 

まぁ突き放すために話したんだしな

 

 

俺の最終目的が、この世界からの脱出のため誰かに好かれるわけにはいかないのだ。

俺は帰ってしまうのだから、そんな恋など、不毛すぎるのだから。

 

 

「クォ?」

 

「おはようムーナ」

 

 

起きて、俺のそばへとやってきたムーナに、俺は挨拶をする。

するとムーナは眠たそうにしていた目を何度か瞬くと、直ぐに完全に目を覚まして、俺に甘えてきた。

 

 

「クォォ」

 

 

そんなムーナの頭を撫でながら……俺はこの子の将来を心配していた。

 

 

……俺が帰った場合、この子はどうなる……いや違うな。どうするべきなのだろう?

 

 

飛竜種、火竜リオレウス 名をムーナ。

空の王者の異名を持つこのモンスターは、生半可なハンターに太刀打ちできるような生物ではない。

火球の威力は凄まじく、その巨体に宿った膂力は岩をも砕き、鱗は大概の攻撃をはじき飛ばす……。

そんなリオレウスの素材は貴重であり、また、内蔵には火炎袋もあるので、このモンスターの貴重さは今更語るまでもない。

今はこうして俺の家族……まぁ端から見たらペットか家畜だろうが……俺にとっては大事な家族だ。

いつ帰れるかはわからないが、もしもこの子がまだ生きているうちに帰る方法を見つけた場合……

 

 

俺は……どうすればいい?

 

 

ドンドルマの実質的支配者、大長老の家畜という扱いになっているが、俺という存在が絡んでいるために、このムーナに手を出せないと思っているやつはいるはずだ。

モンスターを一刀両断し、伝説に語られていたラオシャンロンを討伐した俺という存在は、一般人から見たら恐怖以外の何ものでもないだろう。

だから、もしも俺が……いや大長老が死んでもだが、どちらか片方でもいなくなったら、この子がまた危険な目に遭うかもしれない。

それになにより……

 

 

置いていけるのか……? 俺は……この子を……?

 

 

幼少から育て上げた……自身の息子といってもいいほどに愛らしいこの子を……

 

 

「クォ?」

 

「……何でもないよ」

 

 

不安な表情が刻まれていたのか、ムーナが不思議そうに俺を見つめてくる。

俺はそれを意識的に笑みを浮かべて首を振った。

 

 

取らぬ狸の皮算用

 

 

そう考えて、俺は一旦この思考を断ち切った。

いずれ直面する可能性は非常に高いが、だが今すぐではないので俺はこの問題を先送りにした。

レーファと言う存在がいなくなってしまって、心細くなったのかもしれない。

命の恩人であり、愛らしいと思っていた、妹のような存在のレーファが。

 

 

女々しい女々しい

 

 

突き放しておいて寂しいと思った自分の傲慢さに呆れがでた。

レーファに話すために弟子二人を追い出しておいたのも、要因の一つかもしれない。

 

 

……俺はウサギか?

 

 

ちなみにウサギが一人で寂しいと死ぬというのはデマだ。

? 知ってた? すまん愚痴。

 

 

……普通に動くか?

 

 

魔力攻撃の弊害なのか、俺の体の傷は完治には至っていなかった。

といっても七割ほど完治しているといってもいい。

昨日丸一日休んだのが良かったのかもしれない。

 

 

仕事するかぁ……

 

 

働きたくてうずうずしていたので、俺は仕事を行う事にした。

といってもまだ激しく動く事は出来ないだろうから、和食屋で様子見として仕事を行おうと思ったのだ。

 

 

まぁ様子見といっても全力全開だが

 

 

俺は衣服を普段着の作務衣(自主制作)に着替えると、森を抜けて和食屋へと向かった。

そして開店前の店に入ると……。

 

 

 

 

「あ、ジンヤさん! お早うございます!」

 

 

 

 

そこに、ものすごく晴れやかな笑顔をしたレーファがいた。

 

 

「……はい?」

 

「? どうしたんですか? 素っ頓狂な表情して」

 

「あ、いや……。お早う?」

 

「はい! お早うございます!」

 

 

いると思っていなかったレーファがいて、思わず驚いてしまった。

驚いて一瞬固まっていたが、直ぐに持ち直すと、俺はレーファに声を掛ける。

 

 

「……何故ここにいる?」

 

「勝手なお願いでしたけど……グラハムちゃんとジャスパーちゃんにもう一度ここで働かせてくださいって、お願いしたら許してくれたんです。だから……」

 

「違う。そう言う事じゃない」

 

 

はぐらかしているのか……それとも天然か……とにかく俺の質問に見当違いな答えを返したレーファに少しきつめの声を出す。

俺が聞きたいのはそんな事ではない。

 

 

「何故だ?」

 

「……」

 

「俺は言ったはずだ。そのうちいなくなると。理解したはずだよな?」

 

「……はい」

 

「なら何故俺が来そうな場所にいるんだ? それに……俺は、お前の事を振ったんだぞ?」

 

 

それが不思議だった。

わかりづらく言ったつもりはない。

俺は確かに、この目の前の少女に。お前の思いに応えてやる事は出来ないと……きちんと言った。

なのに何故、俺の目の前に姿を見せるのか……。

 

 

「確かに……ジンヤさんの言っている事はわかりました」

 

 

俺が真剣に聞いている事がわかったのか、レーファは仕事を進める手を休めて、俺に向き直る。

そして、胸の前に手をやって……話し出した。

 

 

「ジンヤさんが……今までどんな人生を歩んできたのか……どんな思いを胸に秘めいてたのかわかりました。それを聞けただけでも、私はジンヤさんに告白した甲斐はあったと思います」

 

「ならなぜ?」

 

 

不思議でならなかった。

何故だ?

俺が振った事をきちんと理解していて……何故?

 

 

「でも……」

 

「……」

 

「どうして……私を見てくれないんですか?」

 

 

 

「……何?」

 

 

 

レーファを……見ない?

 

 

「ジンヤさんが……何を胸に秘めて戦っているのか、そしてジンヤさんが何のために戦っているのかわかりました。けど……ジンヤさんは、自分の目的のために戦っていて……未来のために戦っているだけで、今を……私を見てくれていません」

 

 

!?

 

 

「まるで、どうせいなくなるからって……自分の存在なんか……この世界にとってどうでもいいって言っているみたいで……焦っているようで……。……そんなのいやです!」

 

「……レーファ」

 

「だからきちんと私を……今を見てください! 確かに、未来だって……自分の目的だって大事です。けど、その未来に至るまでの自分の事を……もっと……大事にしてください……」

 

 

 

 

……ひどく……衝撃的だった

 

そんなつもりは無かった

 

未来だけを見ていて……今を見ていなかったつもりはなかった

 

 

 

過去よりも未来を見ましょう。ね?

 

 

 

あの子にそう言われたこと……それとはまた違ったことを目の前の少女はそう言った

 

自分の足を不自由にした原因とも言える男である俺に……そう言ったあの子

 

そして、その子を殺してしまった自分……

 

だからなのかもしれない……

 

 

焦っていたのか……俺は?

 

 

言われて初めて気づいた

 

現実世界に帰るために何かをしていたわけでもない

 

だが、誰がなんと言おうと俺の最終目標は現実世界に帰る事だった

 

それが焦りに繋がり……その焦燥が……今を見ているようで、見ていない状況にしていたのか……?

 

 

そしてそれを……

 

 

年端といってもいいような、女の子に指摘されるとは……

 

 

「く……くっくっく」

 

「……ジンヤさん?」

 

「あっっはっはっはっはっは」

 

 

俺は笑った。

 

こんな子供に自分の生き様を指摘された自分に。

 

 

まだまだ未熟だな……俺は……

 

 

戦闘面での未熟さは先日露見したが、まさか焦っている事にすら気づかないほど、大馬鹿者だったとは自分でも思わなかった。

 

 

「わかった。確かにお前の言うとおりだ」

 

「!?」

 

「きちんと今を……レーファを見る事にしよう」

 

「……約束ですよ」

 

「……あぁ」

 

 

不安そうにそう言ってくる……新たに俺に教えをくれた少女に……俺ははっきりと頷くのだった。

 

 

「か……必ず……」

 

「?」

 

 

さらに何かを言おうとしているレーファに、俺は首をかしげて見せた。

だがうつむいて何かを決心しているレーファには、見えていなかっただろう。

 

 

ガバッ!

 

 

「必ず! ジンヤさんが……ほ……惚れるような女になって見せます!!!!」

 

 

擬音すら聞こえてくるほどに大きく顔を上げたレーファが、そんなとんでもない事を言ってきた。

その余りにも意外な言葉に……俺はあんぐりと口を開けてしまった。

 

 

「ジンヤさんが、帰りたくなくなるような……もしくは連れて帰りたくなるような立派な女になって見せますから、か、覚悟していてください!」

 

 

そう言いきった。

その意外な言葉に呑まれていた俺だったが、しかしよく見るとレーファの手が震えていた。

それだけでなく、顔も真っ赤にして、若干涙ぐんでいる。

相当の覚悟を持って、今の言葉を紡いだのだと……いやでもわかった。

だから俺は、それをきちんと受け止めて……頷いて見せた。

 

 

「~~~!!!」

 

 

よほど嬉しかったのか、レーファがパッと表情を明るくした。

それを見て、自然と俺も笑みを浮かべてしまう。

そんな俺の表情を見て、レーファもさらに笑みを深くした。

だが今は開店前の忙しい時間だ。

いつまでもこうしているわけにも行かないので、俺は締めくくるように、こういった。

 

 

「よろしい。ならば……」

 

「ジンヤさんが帰るのが先か、それとも私がジンヤさんに好かれるのが先か……」

 

「了解。勝負だな」

 

「はい!」

 

 

俺が言い終える前に、レーファが俺が言いたかった事を、口にした。

それにはっきりと頷くと、俺はレーファに右拳を握って突き出した。

一瞬怪訝そうな顔をするレーファだったが、俺が目でレーファの右拳を見ると、レーファも意図がわかったらしく、右拳を突き出し、俺の拳に当たるように突き出した。

 

 

ポン

 

 

軽く音が鳴る程度に互いに互いの拳に向けて突き出す。

そうして、俺はレーファと大事な約束をした。

 

 

 

 

こうして俺は……今まで心の中ではこの世界の住民でなかったのだが……今、こうして真にこの世界の住人へと……ユクモ村の一員となったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ここは?

 

 

真っ暗な……何もない空間にいた。

 

いや暗闇に満たされている以上、そこに自分という存在がいるかどうかもわからない。

 

体の感触さえないのだ。

 

 

 

 

これは……

 

 

 

 

 

 

 

 

ジーヤ

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

 

夢なのか?

 

そう思ったその時、どこかからか俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

そちらへと振り返ると……

 

 

 

 

 

 

……お前は

 

 

 

 

 

 

そこにあの子が……いた。

 

真っ暗闇の中、ぼんやりと光り輝きながら。

 

そしてあの子を見たと同時に、俺にもそこで体が出来た。

 

あの子と違って、俺にはしっかりとした質感というか……実体があった。

 

何かを言おうとするが……俺の口は一向に開いてくれなかった。

 

否、言う事が……言うべき事がわからなかった。

 

何を言えばいいのか……、何と言えばいいのか……わからなかった。

 

そんな俺に、あの子は……にっこりと笑うと、俺の後方へと指をさす。

 

そちらへと目を向けると……先ほどまではなかった光の玉のような物が見えた。

 

そしてそれを見た瞬間に理解した……それが出口だと。

 

 

 

 

 

 

……行けというのか?

 

 

 

 

 

 

ニコッ

 

 

 

 

 

 

俺のその思念に……ただにこりと笑っただけだった。

 

そして……漠然と理解した。

 

ここが……生者と死者を分かつ場所だと……

 

その出口を見て、俺は今度こそ何かを言おうと……言わなければならないと思い、行く前に……その出口へと向かう前にその子に向き直った。

 

 

 

 

 

 

だけど……

 

 

 

 

 

 

それでもわからなかった。

 

 

喜ぶべきなのか? 悲しむべきなのか? 怒るべきなのか? 諦めるべきなのか? 驚くべきなのか? 恥じるべきなのか? 憎むべきなのか? 恐れるべきなのか? 愛すべきなのか? 苦しむべきなのか? 恨むべきなのか? 嫌悪すべきなのか? 空虚すべきなのか? 嫉妬すべきなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

後悔すべきなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

期待すべきなのか?

 

 

 

 

 

 

それとも……

 

 

 

.

 

 

 

 

絶望すべきなのか?

 

 

 

.

 

 

 

 

わからない。

 

俺と彼女はもう一生会う事が無く……触れる事も、言葉を交わす事すら出来ない。

 

そうしたのは俺だ。

 

 

 

 

 

 

ならば……何を言えばいい?

 

 

 

 

 

 

足を奪い、家を奪い、村を奪い……未来を……命を奪った。

 

 

 

 

 

 

そんな俺が何を言うべきなのか?

 

 

 

.

 

 

 

 

ジンヤさんの事が!

 

 

 

.

 

 

 

 

そこで脳裏に流れる……彼女の言葉……。

 

彼女はただ……自分が言いたい事を、正直に言っただけだった。

 

なら……

 

俺も……

 

 

 

 

 

 

自分が言いたい事を言うべきなのか?

 

 

 

 

 

 

ひどく抵抗があった。

 

端から見れば、傲慢とも言える行為だと思う。

 

 

だけど……

 

俺が……言いたい言葉は……

 

 

 

.

 

 

 

 

ありがとう……

 

 

 

.

 

 

 

 

謝罪でも、言い訳でもなく……、俺はお礼の言葉を……口にした。

 

 

 

.

 

 

 

 

俺と出会ってくれて……ありがとう

 

 

 

.

 

 

 

 

この子は多くの事を俺に教えてくれた。

 

そして多くの物を俺にくれた……。

 

だから……もしも最後に言葉を交わす機会があったのならば……

 

 

 

.

 

 

 

 

あぁ……そうか

 

 

 

.

 

 

 

 

俺は、お礼が……言いたかった。

 

 

 

.

 

 

 

 

ありがとう…………ようやく一歩……踏み出せそうな気がする

 

 

 

.

 

 

 

 

怖かった。

 

命を奪った相手に、そう言うのは……だけど……

 

彼女ははっきりと……頷いてくれた。

 

そして再度出口を指さし、俺を促した。

 

今度は……俺はそれにはっきりと頷いた。

 

背を向けて、出口へと歩み出す。

 

そして最後に……出口をくぐる前にもう一度彼女を見ようと、後ろを振り返った……。

 

そこには……

 

 

 

.

 

 

 

 

綺麗だった頃の村と……きちんと両の足をきちんと立たせ、ぴんと背を伸ばしているあの子が……村のみんなが……笑顔で佇んでいた。

 

 

 

.

 

 

 

 

また会いましょう……ジーヤ

 

 

 

.

 

 

 

 

笑顔であの子がそう言った。

 

俺はそれに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして俺は歩み出す

 

 

 

 

 

 

 

 

立ち止まっていた……動かすのをやめていた両の足を動かし、前へと進む

 

あの子を縛り付けていた、苦しみも、悲しさも、悔しさも、憎しみも

 

 

 

 

 

 

後悔も

 

 

 

 

 

 

全てを置いて……

 

 

 

 

 

 

妹として……あの子を愛していた

 

兄として……俺の事を好いてくれたあの子と……別れて……

 

その時……左腕が淡く光った気がした……

 

それを確かめる前に……俺の意識は沈んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うぅん」

 

 

ふと目を覚ますと、そこはいつも通りの俺の家だった。

 

 

……何か夢を見ていた気がしたんだが?

 

 

何の夢だったのか思い出せなかった。

だが……今まで感じた事がないほどに、すがすがしい気分だった。

 

 

……何でだろう?

 

 

何故こんなにもすがすがしいのかさっぱりだったが……不思議と不安よりも、安堵が胸に満ちていた。

 

 

「よく寝れたからかな?」

 

 

原因を考えてみるがわからなかった。

だが、それを考えているほど、時間に余裕は無かった。

 

 

「日の傾きから行って普段よりも寝坊したか?」

 

 

どうやら余り悠長にしている時間は無いようだった。

俺はそれを確認して、寝間着から着替えた。

 

 

「さてと……飯の準備をして、今日も一日頑張りますか」

 

 

そう呟き……俺は夜月を手に取った。

 

 

 

 

 

 

「聞いたか?」

 

「あぁ。聞いた。あの男の事だろう?」

 

 

薄暗い暗闇の中、ぼそりと……まるで他の誰かに聞かれてはまずいことを話し合うように、ひっそりと、その会話は始まった。

時間は夜。

場所はドンドルマの酒場の一角。

先日のラオシャンロンの危機から脱したドンドルマでは……どこへ行っても大騒ぎなのだが、この酒場だけは、奇妙な静けさを保っていた。

それもそのはずだ、そう言った……お祭り気分に|なれない(・・・・)人間達がこの酒場を貸し切って、皆で話し合っているのだから……。

 

 

「爆弾も大砲もバリスタも聞かなかったっていうラオシャンロンに唯一まともな攻撃をする事が出来た男らしいが……」

 

「それだけじゃない。尻尾を切り落としたらしいぞ?」

 

 

静かにささやき合うその声は、どこかくらい感情を秘めていて……お祭り気分に包まれているドンドルマの中ではまさに異様だった。

 

 

「ランポス百匹を素手で殺し、イャンクックの首を切り落とし、リオレウスを真っ二つにし、伝説とも言える蒼リオレウスを討伐。そして……」

 

「まごう事なき伝説のモンスター……ラオシャンロンにとどめを刺した……」

 

「どれも眉唾な話だが……噂だって何も全てが嘘であるという事はないからな……」

 

「種をまかない畑に実はならない……か」

 

 

この酒場にいるのはハンターだけでなく、他にも雑多な職業の人間が、作業のように、手にした杯の液体を……酒を飲み干す。

……酒を飲んでいないと、話せないとでも言うように……。

 

 

「撃龍槍だけはラオシャンロンに有効だったらしいが……」

 

「あれは普通の武器じゃない。それも当然だ」

 

「俺、見たんだ……」

 

 

唯一効いたという撃龍槍を話題に上げるが、それは文字通り特殊な武器であり、今の場では大して効力がなかった。

荒々しく撃龍槍を否定すると、一人の男が腕を組みながら静かに口を開いた。

 

 

「あの男……人間では考えられないような跳躍力で……20mほど飛び上がったんだ」

 

「……確かか?」

 

「俺だってハンターの端くれで、あの場にいたんだ。見間違えるものか」

 

 

自分が見た物を……自分が恐怖を抱いているそれを口にして、その時の異様な光景が浮かんだのか、そいつは一瞬顔を歪ませると、それを打ち消すように一気に杯の中身を呷った。

そして一気に中身を飲み干し、深い溜め息を吐いた。

 

 

「しかも最近では、飛竜があいつをみると逃げ出すとかいう……あり得ないと言ってもいような話も出回っている」

 

「その話、本当だぞ?」

 

「本当か?」

 

「知り合いに一人それを見たやつがいるんだ。間違いない」

 

 

 

 

「何にせよ……あの男が異常だという事に代わりはない……」

 

 

 

 

そうぼそりと、そう呟く男がいた。

ぼそりと呟いたはずなのに……その声は、明瞭にこの酒場へと響き渡っていた。

その場にいる全員が、リーダー格なのかその男……とあるハンターの周りに集まっており、全員でそいつの言葉に耳を傾けていた。

それがわかっているのか、その男はなみなみと酒の注がれた杯を受け取ると、また一気にそれを呷り……ぼそりと、こう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの男は……|あれは(・・・)…………本当に人間なのか?」

 

 

.

 

第三部……完!

 

これに随分時間掛けた~……いやぁ長かった。

何が長かったかって?

作者的にはラオシャンロンの刃夜がいない戦闘でしたね。くどいかもしれませんがw

いやぁ主人公って動かしやすいねw つくづくそう思った話だった。

この第三部はまさに佳境と呼ぶにふさわしい話でした。過去話もあったしね~。

ちなみに過去の子である「あの子」は本当にジンヤに大して恋愛感情は抱いていません。

故にジンヤは鈍感……ではないんです。設定上は……まぁもう手遅れかもしれませんがw

 

ついに魔力が本格始動。

ゲーム中で異様とも言える力を発揮していた古龍達をさらにヴァージョンアップしての起用、そして投入。

皆様のお口に合いましたか不安でしょうがないですが……この魔力による古龍の異常進化は物語初期から決まっていた設定でして……故にこのまま突っ走りますのでおつきあいいただける嬉しいですw

過去話。作者的には編集者の一人にも見てもらったおかげもあり、満足のいく出来になったと思います。

 

これ……モンハン?

 

と言われても不思議じゃない話ですよね~

というわけで……

 

近日中におまけを上げます。

おまけは本編の続きではありません。

え? 速く続きをかけ? いあいあいあいあw まぁそうおっしゃらずにw

ほとんど出来上がっているので二日後くらい?

お楽しみに~

 

 

 

 

さて……ここで皆様に是非とも聞いて欲しい事があるんです……

超重要な事です……いいですか?

 

 

言うよ?

 

 

 

言っちゃうよ!?

 

 

 

いいよね!?

 

 

 

 

 

 

…………感想を下さい……

 

 

 

 

 

 

この作品をお読み下さっている方々……つまりは読者数!

……書き始めた当初の自分にもし言ったら……

 

 

 

「? は?」

 

 

 

と呆然となる事間違いなしの読者数です。本当にありがとうございます。

多くの方が私の小説を読んで下さるというのは本当に励みになります。

が……

感想が少ない……

 

 

いつも固定の方が感想を送って下さっています。

いやもう、それだけでもありがたいなんてもんじゃないんですよ!?

いつも感想下さってる方には、もう土下座して涙流しながらお礼を言いたいくらいです!

でもね……こう……固定化されてしまうのもあまりいいとは言えないというか……

もっと多くの方からのご意見を聞かせていただきたいかなと……

あ、でも言い方はその……控えめにして下さると……

 

死ね くず カス ゴミ 

 

とか言われたら多分死ぬ……

本当は書きたくなかった……けど余りにもみなさんがツン!過ぎるから懇願してみた……

 

 

ひろやまひ○し様のお気持ちがよくわかる……

 

 

わがままで申し訳ありませんが、よろしければお願いいたします。

 

 




第三部……完!

これに随分時間掛けた~……いやぁ長かった。
何が長かったかって?
作者的にはラオシャンロンの刃夜がいない戦闘でしたね。くどいかもしれませんがw
いやぁ主人公って動かしやすいねw つくづくそう思った話だった。
この第三部はまさに佳境と呼ぶにふさわしい話でした。過去話もあったしね~。
ちなみに過去の子である「あの子」は本当にジンヤに大して恋愛感情は抱いていません。
故にジンヤは鈍感……ではないんです。設定上は……まぁもう手遅れかもしれませんがw

ついに魔力が本格始動。
ゲーム中で異様とも言える力を発揮していた古龍達をさらにヴァージョンアップしての起用、そして投入。
皆様のお口に合いましたか不安でしょうがないですが……この魔力による古龍の異常進化は物語初期から決まっていた設定でして……故にこのまま突っ走りますのでおつきあいいただける嬉しいですw
過去話。作者的には編集者の一人にも見てもらったおかげもあり、満足のいく出来になったと思います。


これ……モンハン?

と言われても不思議じゃない話ですよね~
というわけで……

近日中におまけを上げます。
おまけは本編の続きではありません。
え? 速く続きをかけ? いあいあいあいあw まぁそうおっしゃらずにw
大体出来上がっているので十日以内には上げられるように頑張りまっす!
まぁほとんどできてるしw
お楽しみに~




さて……ここで皆様に是非とも聞いて欲しい事があるんです……
超重要な事です……いいですか?


言うよ?



言っちゃうよ!?



いいよね!?






…………感想を下さい……(意見でも可です)






この作品をお読み下さっている方々……つまりは読者数!
……書き始めた当初の自分にもし言ったら……



「? は?」



と呆然となる事間違いなしの読者数です。本当にありがとうございます。
多くの方が私の小説を読んで下さるというのは本当に励みになります。
が……
感想が少ない……


いつも固定の方が感想を送って下さっています。
いやもう、それだけでもありがたいなんてもんじゃないんですよ!?
いつも感想下さってる方には、もう土下座して涙流しながらお礼を言いたいくらいです!
でもね……こう……固定化されてしまうのもあまりいいとは言えないというか……
もっと多くの方からのご意見を聞かせていただきたいかなと……
あ、でも言い方はその……控えめにして下さると……

死ね くず カス ゴミ 

とか言われたら多分死ぬ……
本当は書きたくなかった……けど余りにもみなさんがツン!過ぎるから懇願してみた……


ひろやまひ○し様のお気持ちがよくわかる……


わがままで申し訳ありませんが、よろしければお願いいたします。

最近一ヶ月に一話が定着している刀馬鹿でした。

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