北郷一刀
虎牢関の地獄のような戦場で曹操達と離れた俺はどうにか他の連中と一緒に脱出出来た。脱出してからは近く山にあった洞窟に逃げ込んで生活している。
「それでどうすんだよ? 姫が処刑されるって」
「どうするって言ってもどうしようもないよ文ちゃん」
「だがよ斗詩! 姫を見捨てるってのかよ!」
「……それは……」
袁紹軍に居た2人に俺達は助けられた。しかし、彼女達の主が捕まって処刑されるらしい。曹操達の処遇は発表されていないが、彼女達もどうなるかわかったもんじゃない。
「しかし、実際にどうしようもないぞ。私達の戦力はぼろぼろだ」
偵察に出ていた公孫賛が戻ってきた。彼女はその気配を利用して偵察に出てもらっていた。
「洛陽はどうだ?」
「街全体で宴をやってるよ。しかし、警備はかなり厳しい。私達だけで抜くのは無理だ」
「なら他の連中を集めようぜ! 曹操や孫策達ならまだ戦力も残ってるだろ! もちろん、袁家にもある!」
「そうですね。今回参加していない諸侯にも協力を要請すればどうにか……」
本当にそうか? 袁紹によっていきなり結成された反董卓連合を相手するにあたって相手は万全の状態で待ち構えていた。そもそも教えられた情報からして董卓の兄はわざわざ董卓軍に参加せずに黄巾党から義勇軍を組織して戦っていた。その後、反董卓連合に参加して汜水関攻略後に裏切り、連合軍を包囲した。その間に董卓との接触はなし。どう考えても最初から計画されていたという事しか考えられない。もしかして俺と同じような奴なのかも知れない。そんな奴がこれからの準備をなにもしていないのか?
「とりあえず俺は曹仁達の所へ戻る。お前達もどうするか考えろよ」
「そうだな。私は領地に戻る」
「ちっ、しゃあねえな。あたいと斗詩は一刀についてくよ」
「今は戦力を集めないといけないしね」
急いで俺達は移動していく。
無事に帰り付いた俺達は曹洪達と会談して起こった事を話していく。
「なるほど。お姉さまは捕まって敗北したと」
「どうする?」
「心配だわ、心配だわ、心配だわ……直ぐに兵を準備しなきゃ」
はらはらと動き回る曹純。これでも精鋭を率いる子なんだがな。
「伝令!」
「どうしたの?」
曹洪が話を聞いていく。その後、直ぐに悪い顔になる。
「斗詩や一刀達は隠れてなさい。これから都からの使者と合うわ」
「わかった」
「ああ」
俺達は隠れて使者を伺う。そいつは赤色の髪の毛をした少女と緑色の髪の毛をした小さな女の子、紫色の髪の毛をした女性だった。
「っ」
「こちらは帝様よりの使者としてまいった呂奉先殿と張遼殿、そして陳宮なのです」
「わざわざご苦労様。それで確認できるものはあるかしら?」
「む」
「これ」
印鑑が押された物を見せる。
「あれは玉璽だな。ってことは本物?」
「かも」
袁家の2人が教えてくれるが、これはまずいんじゃないか?
「失礼致しました。確かに本物のようですね」
「此度の一見において帝に反逆した曹孟徳殿とその仲間についての処遇が記されておりますぞ」
「「「っ」」」
「面倒いから読んでもらいな」
「それでいい」
「恋殿! 霞殿!」
「ええやん、どうせお使いやし。てなわけで、そっちで読んでくれや。ついでにこっちが曹操から頼まれた手紙や」
軽く朝廷の印が押された書物と曹操の手紙らしいものが渡される。それを読んでいく曹洪の顔色がどんどん変わっていく。激怒からの青くなったりだ。
「ええ、わかりましたわ。これ以降、我々は帝様の意見に従わせて貰います」
「ん、わかった。恋達も協力する。だから、この辺を制圧する」
「んじゃ、春蘭や軍師連中を呼んでくるわ」
話は決まったようだが、袁家の2人の顔がやばい。
「衛兵、袁家の2人を捕らえなさい」
「やっぱりか!」
「逃げるよ!」
「おい!」
2人は窓へ向かって走っていく。
「恋殿!」
「ん、行け陳宮」
「はいです!」
緑色の髪の毛の女の子がぶん投げられて高速で逃げる2人に接近する。しかも空中で光って加速しやがった。
「くらえ、ちんきゅーきーくー!」
「ちょっ!? あぶねえ斗詩!」
「きゃあっ!!」
押しのけて2人が倒れる事によって蹴りは避けられた。そして、外れた蹴りは壁へと命中して大穴を作りだしやがった。
「ちっ、殺しきれなかったのです。でも、ここで逃がさないのですよ」
「ん、終わり」
「せやな」
いつの間にか接近していた使者の2人が武器を突きつけている。
「ちょっと、修理代は貰えるんでしょうね?」
「……陳宮が壊した」
「せやね。うちは知らんで」
「音々ですか! 支払えるとは思うのですが分割でいいですか! 今は持ち合わせが……」
「仕方ないわね」
「流石に金に汚い」
「何か言った?」
「いえ、なにも」
「とりあえず、お姉さん的には色々と聞きたいな?」
曹純の言葉で手紙の内容が語られる。最終的には曹家に天帝の血が入るという事で文句はなく、直ぐに行動を移す事になった。まずは袁家に攻め込むそうだ。
孫尚香
「姉さま、よんだ~?」
「ええ。小蓮には悪いけど……都に行ってもらうわ」
「いいけど、なんで?」
「お嫁にきなさいって」
「え? 相手は誰? シャオだって嫌な人だったら……」
「天帝。諦めなさい。これが姉様からの手紙よ」
呼んでくるとすごいことが書いてあった。
『ごめん、お姉ちゃん負けちゃった。それでシャオを差し出したら袁術の領土を半分くれるらしいわ。あとは呉の周りね。そこをシャオが生んだ子供に任せるって。そういう事でシャオには悪いけど決めちゃった。ごめんね?』
「……怒っていいよね? 怒っていいよね?」
「いいと思う」
とりあえず続きを読む。
『新しく天帝になったのはあの森で虎を貰った男の子よ。彼、帝様の血を引いてたみたい。確か、シャオは明命の部下を使ってずっと探させてたわよね。という訳で諦めて。それと周りを制圧する為に冥琳が軍を借りてそっちに向かうから、シャオは花嫁修行を終わらせて嫁入りの準備をしておくこと。じゃ、よろしく』
「明命!」
「ここにいますよ」
「都に行く準備をするよ!」
「急に乗り気になったわね」
「こっちは任せてて! よ~し、シャオが骨抜きにしてやるんだから!」
「小蓮がいいならそれでいいけど。よし、準備をしましょう」
「うん!」
ふふふ、やっと見つけた。シャオの初恋の人。お姉ちゃんには感謝してあげる。