真・恋姫†無双~董家伝~   作:ヴィヴィオ

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18話 戦後処理

 

 

 

 

 

 曹操達を捕らえた後、怪我人の救助と死体の処理を行って洛陽へと帰還した私達を待っていたのは民達の歓声だ。住民達にとって腐敗した宮中を正した董卓こそが正義で、反董卓連合こそ侵略者の悪なのだ。その為、猿轡をされて貼り付けにされ運ばれている袁紹に石が投げられたりしている。袁紹は呻いているが誰も助けない。

 

「何よこれ、全て掌の上で踊らされてたって事?」

「そうでしょうね。私達はまんまと踊らされていた麗羽に乗せられてしまったのよ。あの軍備からして予想して前々から準備されていたんでしょうね」

「してやられたか~」

 

 曹操と孫策は馬車で護送している。城へと通じる門を潜って中に入ると多数の者達が迎え入れてくれる。私達は外にある長い階段の前で整列する。月と詠が階段の上に出てきた。

 

「ちょっ、待ちなさい!」

 

 詠が止める中、月が走り出して階段を駆け下りてくる。

 

「へうっ!?」

「ゆえぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 そして転けてゴロゴロと階段を転げ落ちてしまいには宙に浮いて落ちてきた。慌てて飛び出して落ちてくる月を抱きしめて受け止める。

 

「大丈夫か?」

「いっ、痛いれす……あっ、お兄様、お帰りなさいです」

 

 顔を真っ赤にしながらそんな事を言ってくれる月を下ろす。

 

「ただいま。久しぶりだな」

「全くです。心配していたんですからね」

「それは――」

「はいはい、嬉しいのはわかっているけど、時と場所を考えようね」

「へうっ!?」

「っと、そうだな」

 

 周りを見るとほっこりとした顔をしたり、生暖かい目で見ている者達が居る。みんな笑っている。

 

「みっ、皆さん、お疲れ様でした。宴を用意していますから、まずは十分に休息を取って疲れを癒してください」

「今日は洛陽全部で飲み放題食べ放題にしたから気にせず楽しんでらっしゃい。報告書とかは明後日まででいいから楽しんできなさい」

「「「「「うぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」」」」」

「でも、他の人達に迷惑をかけたら駄目ですよ」

「「「「「はい!」」」」」

「じゃあ、親衛隊以外は解散しろ」

 

 私の命令に従って一部の兵士を残して皆がばらばらに散っていく。すぐに街中で盛大な宴が始まるだろう。

 

「残った者は捕虜を連れて来て。怪我人は隔離病棟に搬送して、護送してきた将軍は連れてきて」

「「「はっ」」」

 

 詠の指示によって移動を開始していく。袁紹や袁術達も含めて全員を連れていく。

 玉座の間に連れられて向かうとそこには一人の妙齢な女性が待っていた。そいつの姿は非常に私によく似ている。

 

「ふむ。月よ、こやつが董擢か」

「はい、その通りです」

「月、誰だ?」

「朕は帝よ」

「ほう」

 

 似ているとは思うが、始皇帝の血族なら私に似ている可能性はなくはない。

 

「驚かぬか。まあ、よい。朕は皇帝で居る事に飽いた。汝を数十年前に居なくなった朕の子と認め、帝位を譲る。あとは好きにせい」

「待てこら」

 

 この女は絶対に奴だ。

 

「断る! 面倒なのはだるいし嫌だ。我はこれより当初の予定通り自由に生きるのだ。邪魔するでない。何の為に愚か者どものさばらせたと思っている。全ては貴様におしつ――ごほん。反逆者を処置した汝等こそ天下を納めるのにふさわしい。ではさらば」

「仙人共はどうなった?」

「そんな者達はとっくに処理し――」

 

 しまったと思った表情をした女はいきなり走り出した。やはり最初に出会った女か。

 

「待てこら!」

「待てと言われて待つ者はおらんわ!」

「それはそうだが、逃がさん!」

 

 念糸を飛ばして捕獲しようとすると――

 

「我が呼び声に答えよ、項羽」

「ふん」

 

 現れた黒髪の少女に蹴散らされた。というか、どこの英霊召喚だ。

 

「それではあとは任せたぞ」

「さっさと行くぞ」

 

 恋が武器を持って突撃していくが、項羽は女を掴んで窓から逃走した。後に残されたのは呆然としている私達だけだ。そんな事を思ったら頭に衝撃があった。

 

「痛っ……なんだこれ?」

 

 金で出来た判子で龍が掘られている物と手紙。

 

「……玉璽ですね、お兄様」

「はいはい、わかったよ」

 

 手紙は自主規制をかけて玉座に月を連れて座る。直ぐに立ち直った詠達が準備を初めて行く。

 

「それではこれより彼女達の処遇を決めたいと思います」

 

 怪我で居ない者を除いて反董卓連合に加わった者達が縛られて座らされれている。袁家の幸運力は凄まじく、2人はあの火の海から無傷で生きていた袁紹と袁術と少し怪我をした程度ですんだ張勲。袁紹お付の2人は行方不明。曹操陣営は夏侯淵は治療の為に居ない。なので曹操、夏侯惇、司馬懿。呉の陣営からは孫策と周瑜。黄蓋は夏侯淵と同じく療養中だ。劉備達も一応、座ってもらっているが、彼女達は縛られていない。

 

「「「っ」」」

 

 月の言葉で息を飲む者達と不適切に笑う者達。

 

「お兄様、お願いします」

「まず劉備達は我らに協力してくれたので武官と文官として取り入れる。これから子供達の為に全国に普及させる学園の運営を任せたいと思う」

「はい! 承ります!」

 

 すでに劉備に関しては事前に話し合っているので問題ない。平和な時代を維持する事にこそ彼女が必要なのだ。劉備の仁徳を持って子供達の思想教育を行えば平和は維持されるだろう。

 

「さて、呉は孫尚香を私の妻とし、その子供に袁術の領土を与える。その代わり、我らに従う事だ。構わないな?」

「もちろんよ」

「ああ、文句はないさ」

「妾の領地が!」

「ぶーぶー」

 

 袁術達は無視する。曹操は簡単だ。

 

「はい、書けたわよ」

「ああ。次は曹操達だ。まずは――」

「殺しなさい」

「華琳様!」

「惨めに生を続けるつもりはないわ」

「却下だ。お前が死ねば夏侯淵達は納得しまい」

「曹仁や曹洪がいるわ」

「自分の従妹に自らの負債を負わせるのか?」

「そうです! それに私達は華琳様以外に仕えません!」

「ぐっ……確かに責任は取らなくてはいけないわね。わかったわ」

「では、お前も呉と同じく私の下に来て子供を産んで貰おう」

「貴様!」

「いいわ」

「華琳様!」

「いいのよ。それで孫策達と同じように領地を貰えるのね?」

「そうだ。もっとも洛陽から出る事は基本的に許さんが」

「当然ね」

 

 曹操さえこちらで握っていれば他の連中はどうとでもなる。領地に居させると危険だろうが、こちらなら問題ない。

 

「基本的には孫策と共に隠居してもらう。そうだな、2人で趣味と実益を兼ねて酒造りとかをするといい」

「あら、いいわね」

「そうね。大歓迎よ」

「夏侯淵と夏侯惇は世話係としてつけよう」

「……」

「?」

「わかったわ」

 

 絶対に夏侯惇の事で悩んだな。その証拠にしばらく見つめていたしな。

 

「では袁家に移る。まず領地を含めて資産は全て没収する」

「ふがっ!?」

「「なっ!?」」

「袁術の領地は孫策に半分渡そう。代わりに呉の付近にいる残党を任せる。説得だろうが、武力だろうが好きにしろ」

「ええ。半分はどうするの?」

「半分も任せる」

「ちょっと待ってください! それはあんまりでは……」

「ただし、こちらで教育が終われば半分は袁術か袁術の子供に与えてやる。袁家を絶やすのは問題かもしれんしな」

 

 子供を産まして教育したほうが早いかも知れないんだよな。まあ、まだ子供だしどうにかなるか?

 

「「ほっ」」

「んん!」

「ただし、それでは孫策達の気分が悪いだろう。よって袁術を傀儡として教育し、裏で操っていた張勲をお前達に与える。好きにするがいい」

「まってくださいいいいい!!」

「ふふふ、いいわね」

「殺しても構わん」

「ななの~~~!」

「あら、袁術ちゃんが代わりに切られる? まずは爪を剥がして皮を一枚一枚……」

「ぴぃ!? わ、妾には無理じゃ~~~」

「美羽様!!」

「連れて行け」

「はっ!!」

 

 張勲が連れて行かれるのを見送って最後だ。

 

「ここまでは帝に弓を引いた者達だが、騙された事を考慮して減刑に処したが、勝手に帝の気持ちを決め付け、帝の意思として朝廷に弓を引いた反董卓連合大将袁紹の罪は明らかである。よって、反董卓連合が犯した罪を精算して貰う。市中引き回しの後、貼り付けとする。一週間の後に斬首といたす」

「!??##??!?#!?#!?」

 

 叫び声をあげるが容赦はしない。

 

「ただでさえ黄巾の乱により不安定な所にこのような騒乱を起こした罪は重い。連れて行け」

「はっ」

 

 このあとは功労賞だがぶっちゃけ武官じゃなく軍師達なんだよな。それに防衛戦だし財源も問題となる。まあ、こちらは各地を制圧する為に軍隊を送り込むから構わない。日和見な連中も増援に駆けつけなかった事を理由に処罰すればいい。これで天下は統一される。

 

 

 

 

 

 


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