真・恋姫†無双~董家伝~   作:ヴィヴィオ

19 / 21
17話 反董卓連合との戦い

 

 

 風

 

 

 

 

 さて、汜水関を落としましたよ~。そして、無数の人達が汜水関には溢れております~。

 

「袁紹さん~」

「あら、なんですの?」

「兵士をお返ししますよ~後、食料も差し上げます~」

「あら感謝致しますわ。それと露払いご苦労でしたわ」

「はい~それで~風達の軍は消耗したのでここを守ってていいですか~?」

「そうですわね。すでに活躍しておりますし、構いませんわよ。ついでに劉備さん達にもそのように伝えなさい」

「ありがとうです~zzzz」

「寝ない!」

「おおう」

 

 これで風達は汜水関にいられますね~。さてさて、劉備さんの所へてくてくと~。

 

「えっと、つまりお休みって事?」

「そうですよ~。ここでのんびりお昼寝です~」

 

 永眠かも知れませんが~。

 

「それはいいね」

「桃香様!」

「ですが、確かに戦力を損耗しましたから休憩はありがたいです」

「鈴々も疲れたのだ」

「流琉がいっぱい料理してくれますよ~」

「おお、それは楽しみなのだ」

「じゃあ、兵隊さん達に伝えてくるね」

「よろしくです~」

 

 てくてくと劉備さんの所から本陣へと向かうです。我が軍の護衛の立っている部屋に滑り込むのです~。

 

「ふむ。風よ、首尾はどうだ?」

「zzzz」

「寝るなっ」

「おおう。問題ないのですよ~」

 

 椅子に座って机の上で両手を組んでいた星ちゃんに報告するのです。

 

「ならばよし。主よ、聞きましたな?」

「袁紹が出てからだな」

「はっ」

「楽しみですね~」

 

 二日後、劉備軍と趙雲軍を残して反董卓連合さん達は虎牢関へと向けて進み出しました~。風達は劉備さん達を歓迎するための宴を開催するのです。大きめの部屋に流琉と季衣、ご主人様達が急いで料理を準備しています。こちらは将軍用です。皆が準備をしている間に風は宴の間、警備する趙雲軍の確認と休みを取っている劉備軍を確認していくのです~。それが終われば地下牢へ行くのです~当然、誰にもばれないようにしたいのですが、出来ないのでおすそ分けとして大量の料理を乗せた台車を運んでいくのですよ~。

 

「何用だ」

「料理のおすそ分けなのですよ~。風達の仲間になる気はありませんか~?」

「我が主はお一人のみ」

「そうですか~。ちゃんと考えてみてくださいね~」

 

 牢屋に台車を運び込んで料理を並べてから手ぶらで帰るのです~。台車は食器を下げる時にでも回収するのですよ。

 

 

 

 倉庫に出向き、お酒に少し粉を混ぜてから兵士の人達に劉備軍の人達へと配らせるのです。それが終わられば風も宴の会場へと向かうのです。会場では既に大量の料理が用意されて劉備さんや関羽さん、張飛さん、孔明さんがいます。しかし、予想外ですね~。

 

「張飛さん、関羽さん、武器を持ってきたのですか~?」

「そうなのだ。愛紗と朱里が何かあれば困ると言ってたのだ」

「ああ。宴の席で無粋かと思うが未だ董卓軍と戦争中なのだからご容赦願いたい」

「だめでしたか?」

 

 孔明さんと関羽さんは流石ですね~。これは素早く挽回しなくてはいけませんね。

 

「いえいえ、別に構わないのですよ~。確かにそうですしね~風達も見習わせましょう~」

「ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ助かりまzzzzz」

 

 挽回完了なのです~。しかし、手早くこの二人を抑えるのは正解ですね。後は曹操さんと司馬懿さん達、孫策さん達を警戒するだけですか。ああ、袁家の強運も警戒しないといけませんね。やれやれなのですよ~。

 

「……」

 

 孔明ちゃんがこちらを熱心に見つめていますが、風は寝ているので知りませんよ~。

 

「まだなのか~」

「もうちょっと待ってください」

「そうだぞちびっ子!」

「ちびっ子いうな! お前の方が鈴々よりチビなのだ!」

「なんだと!」

「よさんか」

「あははは、元気だねえ」

「ですな~」

 

 宴の準備が整い、皆が席につきました~。もちろん、ご主人様に香風ちゃん、恋ちゃん、光璃ちゃんもです。

 

「それでは次の英気を養う為に乾杯ですぞ」

 

 皆で乾杯を行って料理を食べていくのです。どの料理も美味しくて楽しいのですよ~。

 

 

 

 

 

 

 鄧艾

 

 

 

 

 

 

 食事を食べていると見張りの兵士達に別の兵士達がやって来た。

 

「交代してやる。お前達も食べてこいよ」

「おっ、いいのか?」

「ああ。俺達は早めに食べたからな」

「助かるよ。牢屋の中から無茶苦茶美味しそうな匂いがするしよ」

「だろうな。ほら、酒もあるから行ってこい」

「ああ」

「俺はいい。お前だけいってこい」

「わかった」

 

 最初から居た見張りが一人を残して出て行く。職務に忠実なようだが、それが悪かったな。

 

「むぐっ!? なっ、なにを――」

「悪いな」

「がはっ」

 

 背中から口を押さえられ、別の男に横向きにされた短剣を正面から突き刺されて最後の見張りは死亡した。男達は直ぐに死んだ兵士を別の牢屋に入れてこちらに戻って鍵束を渡してくる。

 

「鄧艾様、お待たせしました」

「ご苦労。首尾は?」

「抜かりなく」

「わかった」

 

 手枷や足枷を外し、他の者達を外していく。外してやった者に鍵束を渡して次々と外させていく。私はその間に料理を運んできた台車の側面を外す。中には剣が沢山入れられている。別の物には劉備軍の鎧が入っている。それらを取り出して着替えていく。私も服を脱いで用意された別の物に着替えていく。自殺防止や武器の持ち込みを禁止する為に一旦脱がされて別の服を与えられていたからな。

 

「お前達はどうだ?」

 

 背後で着替えている男達に声を掛ける。

 

「まもなく」

「では、身体を解して待つとしよう」

 

 軽く柔軟体操を行い、用意された剣の感触を確かめる。他の者達も同じように行っていく。

 

「鄧艾様、準備完了しました」

「そうか。お前達、これからやる事はわかっているな?」

「はっ。趙雲軍は味方ですよね」

「そうだ。だが、襲いかかってくる場合は出来る限り気絶させろ。劉備軍はどうでもいいが、一応は気を使ってやれ」

「「「「応」」」」

 

 もっとも、殆どが眠っているだろうがな。

 

「これより我らが主の為、作戦を結構する。目的は劉備玄徳、関羽雲長、張飛益徳、諸葛亮孔明。殺しても構わんから無力化する。行くぞ」

「「「「応」」」」

 

 牢屋から出て廊下を鳴らす音を最小限に駆けていく。恋の部隊が正規の正衛兵とすれば私の部隊は隠密部隊の中でも暗殺を専門に行う者達で構成されている。香風が従えるのは情報収集を主に行う者達だ。よって、こちらに気付いて襲いかかって来ても瞬時に無力化出来る。

 

「一隊を残して散れ。残りは私と来い」

 

 私の命令に従い、劉備軍の鎧を着た者達が散っていく。見分けがつくように腕に布を巻かせているので判別は出来る。

 

「こちらです」

「ああ」

 

 案内に従って宴を開いている会場への最短距離を走る。見られたとしても私を囲んでいるのは身長の高い連中なので、外からは劉備軍にしか見えないので問題ない。

 到着した後、扉を蹴破って突入する。

 

「なっ!? 鈴々、桃香様と朱里を守れ!」

 

 こちらに気付いた関羽が青龍偃月刀をつかんで応戦しようとする。だが――

 

「わかったのだ!」

「遅い」

「なに!?」

 

 足の裏で気を爆発させて加速した私は武器を取ろうとしている関羽の首に剣を押し付け、もう片方の剣で武器を押さえ付ける。

 

「鈴々、私に構わず……」

「愛紗、ごめんなのだ」

「ごめんねぇ~」

「はわわ、離してください~」

「駄目」

「……これはどういう事ですか?」

 

 張飛は鎧を着た香風に押し倒されている。劉備は趙雲と程昱が押さえている。諸葛亮は恋が首根っこを掴んでぶら下げ、空いている手で料理を食べている。

 

「えっと、どういう事?」

「さあ? でも、兄様が動かなくていいと言っていたから大丈夫じゃない?」

 

 2人の少女はわかっていないみたいだ。一応、武器は手にしているようだが。

 

「はわわ、う、裏切りですか!?」

「答えろ星!!」

「すまぬな愛紗。これがお主達を傷つけない為の最善策なのだ」

「……何時からですか」

「それは後にしろ。捕えろ」

「「「「はっ」」」」

 

 直ぐに私の兵が劉備玄徳、関羽雲長、張飛益徳、諸葛亮孔明の四名を縛って武装解除を行っていく。私は剣を収めて主の前に膝をつきながら手を合わせる。

 

「桂花と雛里より命じられた任務を完了致しました。これより鄧艾士載は我が主の命に従います」

「ご苦労。よくやってくれた。これ以降、よろしく頼む」

「はっ、お任せ下さい」

 

 主の斜め背後に立ち、床に縛られて座らされている四人を警戒する。

 

「どういう事だ!」

「どうもこうも、私達は元々――」

「董卓軍という事ですか」

「せっかくの台詞を取らないで頂きたい」

「まあ、微妙に違うんですけどね~」

「えっと、つまりその人が星さん達の主になるんですか?」

「そう。香風や恋達のご主人様。ふぅ、熱くて動きづらかった」

 

 香風が鎧を脱いで邪魔だと言わんばかりに投げ捨てていく。頭までしっかりと被ってい隠していたから仕方の無いかもしれないが……この状態で負けたのかと思うと切なくなるな。

 

「ご主人様は月、董卓の兄」

「そういう事だな。改めて初めまして。私の名前は董擢だ」

「死んだという噂がありましたが……偽装ですか」

「その通りだ」

「でも、なんで今まで偽装して、今……っ!? まさか、この反董卓連合って」

「その通りだ。これから起こる動乱を最小限に納める為に有力な諸侯を集めて纏めて処理する」

「ふざけるなっ!!」

「ふざけてなどいない。諸侯が好き勝手に争い出せば数万どころか、数百万の人々が死に絶える事になるぞ。それにはお前達が守りたい弱き民達から率先して死んでいく」

「確かにその通りですね」

「朱里!?」

 

 諸葛亮は流石に気付くか。今の状態で大陸をいかに早く安定させるのはどうすればいいか。

 

 

 

 

 

 

 黄泉

 

 

 

 

 

 やれやれ、ようやく包帯を取れるしもとの姿に戻れる。しかし、ここからが正念場だな。

 

「孔明、お前は私達の側に来て欲しいのだがな」

「えっと、それは……」

「まあ、考えるといい。どちらにしろ劉備にはここで消えて貰う」

「「「っ!?」」」

「私は曹操のように甘くはない。月、董卓が納める平和な世を作る障害は排除させて貰う」

「「待つのだ/待て!!」」

 

 まあ、当然そうなるか。分かってて言っているのだが。

 

「なんだ?」

「お姉ちゃんを殺すなんて駄目なのだ!」

「桃香様は仁の世を作ろうとなされているのだぞ!」

「その仁の世は作れない。少なくとも今のお前達の戦力ではな。乱を長期に渡らせてより一層の被害を出すだけだ」

「そんなもの!」

「やってみなくてはわからないのだ!」

「だからこそ、ここでご退場願う」

「ん~死ぬのは嫌だけど、その董卓さんは皆を幸せにしてくれるんだよね?」

「それは保証しよう。例え董卓が道を誤ろうとしても荀彧や鳳雛、銀が防いでくれるだろう」

「やっぱり皆、そっちいってるんですか!」

 

 朱里が大きな声をあげた。皆の視線がそっちに向かう。

 

「朱里ちゃん?」

「いえ、音々ちゃんを見た時点でそうなんだろうな~とか、他に桂花ちゃんや雛里ちゃん、銀ちゃんがいないのはおかしいな~と思ってたんですよね……」

「銀は私の妹だ」

「という事はあの人が董卓さんですね。なるほど……なら、交渉しましょう」

「ほう」

「朱里ちゃん?」

「まず、桃香様の質問ですが、そちらは大丈夫です。人となりはあって知ってますから」

「でも、非道を行ったって」

「その噂は反董卓連合を組織させる為の嘘ですよ、鈴々ちゃん」

「そうなのか!」

 

 とりあえず、大丈夫そうだな。最悪、本当に処理させるつもりだったが。

 

「しかし……」

「愛紗さんは少し落ち着いてください。それで交渉ですが……私と鈴々ちゃん、愛紗さんが味方になるので桃香様を助けてください」

「朱里!」

「仁の世を作る犠牲をすくなくするには確かに彼らに協力するのが一番ですが、桃香様を殺されるのは認められません。私達の戦力はかなり高いですよね?」

「いいだろう。劉備は生かしてやる。代わりにお前達の力を貸して貰おう」

「いいんですか!?」

「ああ。お前には董卓の補佐をして貰えればよりよくなるだろう。劉備、関羽達の説得をするがいい」

「わかったよ。犠牲を少なくできて皆が笑顔を浮かべて平和に過ごせるならなんでもいいからね」

「桃香様~」

 

 これで戦力は増えた。卑怯な手段という事で関羽は気に食わないかも知れないが知ったことではない。

 

「では、今日はこのまま宴を楽しめ。明日、我らも出陣して反董卓連合を挟み撃ちにする。それと悪いがしばらく劉備には人質になってもらう。これからする事に下手な事をされたら困るからな」

「わかりました!」

 

 それから宴を楽しむ。次の日、季衣と流琉、桃香を残してそれ以外を連れて全員で袁紹を追っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 桂花

 

 

 

 

 

 私の居る虎牢関に多数の兵が押し寄せている。罠とも知らずにのこのことやって来るなんて本当に無能で阿呆共よね。もう二日も攻めて来ているわ。

 

「さて、愚か者共がやってきたけれどそっちの準備は出来ているの?」

「あわわ、できています。投石機も沢山用意しましたし、投げる物も十分です……」

「崖の上はどうなのよ?」

「そっ、そっちも配置完了です。今は弓兵さん達が頑張ってくれていますから問題なっ、ないですし……」

「んじゃ、そろそろいいの?」

 

 銀様がこちらに歩いてくる。隣には霞と縛られている華雄とその部下。

 

「また突撃しようとしたの?」

「うん。だから捕らえたよ」

「は~な~せ~」

「お断りよ。計画通りならもうすぐ実行出来るはずだけど……今夜、辺かしら」

「だと思います。なので休憩していてください」

「わかったよ」

 

 それから指揮をしながらゆっくりと時を待つ。

 

 

 

 

 時間が過ぎて夜になると袁紹や袁術の陣地やその他の色々な場所から火の手が上がっていく。

 

「桂花ちゃん」

「ええ。投石機隊、放ちなさい! 馬鹿共を焼き付きしてあげなさい!」

 

 投石機から放つのは石などではなく油や蒸留酒が入った壺や乾燥させた薪よ。

 

「狙いは曹操軍と孫策軍を優先しなさい!」

「あわわ、弓兵隊の皆は火矢をうっちゃってください~」

「張遼隊は壺を下に落として取り付いている馬鹿共を燃やすんや!」

 

 今まで溜め込んだ大量の酒と矢をどんどん使っていくわ。沢山の男共がもがき苦しみ燃えていく姿は楽しいわね。

 

「ふふふ、どんどん放ちなさい! それと銀様!」

「わかってるよ。銅鑼を10回連続で鳴らして!」

「「「応!」」」

 

 銀様の命令で銅鑼が連続で鳴らされる。それを合図に虎牢関の近くにある崖の上に伏せていた伏兵達が一斉に薪や草の塊、油や酒を投げ、矢を放っていく。それも反董卓連合の後方を封鎖するようにしているから退路もほぼない。丸太も落としているはずだからどんどん燃えるわよ。

 

「今夜中は燃やし続けるから問題ないわね」

「そうでね……でも、駄目押しです。樽爆を放ちましょう」

「あれも使うの? かなり高いんだけど」

「構いません。お金は商会から持っています」

「そうね。効率よく殺せるからいいか。よし、放っちゃいなさい」

「この子達、まじ怖いで」

「霞、早く!」

「了解や」

 

 霞が部隊を動かして樽爆を投石機に設置して放つ。飛んでいった樽爆は火の海に飛び込み中の火薬に引火して爆発を起こし、中に入っていた金属片が爆風によって巻き散らかされていく。

 

「ああ、いいわ。これこそ阿鼻叫喚の地獄絵図ね」

「どれくらい生き残るかな?」

「計算上では2000人以下ね。一酸化炭素中毒だったかしら? それでも人は死ぬらしいから」

「そうですね」

「華雄、うちらやる事ほぼないわー」

「これが戦か? なんか違うぞ」

「せやな」

「は? これが戦に決まっているじゃない」

「そうです。殲滅戦です」

 

 何言ってるのかしら? 個人の武でどうにかできる事なんてあんまりないのよ。

 

「あわわ、そろそろ小麦粉を投げ込んでみようか」

「そうね。それが終わったら仮眠を取らせましょう」

「ですね」

 

 最後に小麦粉の袋を投げ込んでから雛里と私は詠と交代して眠りにつく。銀様や霞達も寝させる。

 

「アンタ達、やりすぎよ」

「聞こえな~い」

「です」

 

 部屋に入って一緒に眠り、明日を待つ。

 

 

 

 

 

 

 曹操

 

 

 

 

 

 

 麗羽や美羽の陣地から火の手が上がり、続いて私や孫策の陣地からも火の手が上がり、大量の火矢や様々なものが崖の下に布陣していた私達に投げ込まれてくる。

 

「なんなのよこれわ!」

「曹操様お逃げください!」

「これはもう戦にならん。撤退すべきだ孟徳」

「くっ、やってくれるわね。原因はなんなの!」

「袁紹から振舞われた酒のようです。あの酒が燃えだしました」

「ええい、早く撤退するぞ! 私が道を切り開く!」

 

 春蘭を先頭に一斉に逃げていく。しかし、相手も読んでいるのは当然で伏兵が崖の上に現れて無数の矢を放たれる。

 

「ぐっ!?」

「春蘭!」

「問題ありません! 盾を掲げて突き進む! 私に続け!!」

 

 私を庇った春蘭の瞳に矢が突き刺さったというのに彼女は私の為に頑張ってくれる。

 

「曹操無事!!」

「孫策か! 今は協力して逃げるわよ!」

「ええ!」

 

 一丸となって逃げていくが、後ろで大きな爆発音が聞こえると無数の兵士が倒れた。私も秋蘭に押し倒されてなかったら危なかった。

 

「ぐっ! ご無事ですか」

「ええ、ありがと――秋蘭!!」

「……あっ、姉者……私は……ここまでだ……」

 

 背中に多数の破片が突き刺さり、血まみれになっている秋蘭。

 

「え? うっ、嘘よね!」

「秋蘭!」

「春蘭、いけ。わかって……いるな……」

「すまん! 司馬懿!」

「離しなさい司馬懿!」

 

 司馬懿に掴まれて無理矢理連れていかれる。秋蘭は立ち上がって残った兵をまとめる。私は必死で手を伸ばす。最後に見たのは笑う秋蘭の顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我らの……命を使って……華琳様の盾に……なるぞ!!」

「「「「応」」」」

「私もお供しよう」

「そうですね。すくなくとも盾になるぐらいはできますな」

「黄蓋殿、いいのですか?」

「老骨が若者の為に盾になる。いいではないですか」

 

 

 

 

 

 

 

 孫策

 

 

 

 

 

 

「そうですか。頼みます」

「雪蓮、まだ終わらぬからな」

「そうよね。わかっているわ」

 

 黄蓋達の部隊を文字通りの肉壁として曹操と共に逃げる。すると目の前に見覚えある集団が待っていた。

 

「袁術ちゃん!!」

「孫策、助けてくれぇぇぇっ!」

「どうしたの?」

「あいつらが通さないのだ!」

 

 袁術軍を退けて前に出ると見えたのは夜明けの空に翻っている無数の旗。深紅の呂旗に緑の趙旗。それに関羽と張飛の旗。問題になるのは敵将だった黒い鄧艾の旗とその横に見慣れない徐の旗。その2つの間に掲げられている董家の旗。万を超える軍勢が道を封鎖していた。それに対してこちらは1000もいない。

 

「あいつらが、秋蘭達を……」

「曹操、落ち着くなさい」

 

 敵軍の中から歩いて来るのは四人の人間。呂布と鄧艾、わからない小さな子供。その三人に守られた見覚えある女の子。

 

「久しいな孫策、曹操」

「貴様っ!!」

「やっぱり、あの時の勘に従っていたほうがよかったのかしら?」

「どうだろうな。どちらにしろ内部から食い破っただろう。さて、投降するならば命までは取らん」

「ふざけるなっ!!」

「なりません華琳様」

「ふむ。これは孫策殿と我が軍を合わせても勝てませぬな。投降すべきかと」

「くっ……だが……」

「華琳様」

 

 あちらは投降かしら。問題は私達よね。蓮華達を念の為に置いてきたから問題ないし、どうせなら喧嘩を売っちゃおうか。

 

「やめろ、雪蓮」

「冥琳、駄目?」

「駄目だ。あちらの被害が圧倒的に少なすぎる。それに後に行われる戦いに我らは朝廷に弓を引いた逆賊となるのだ。どうしようもない」

「ちっ、完全にしてやられたって事か」

 

 これは無理って事か。こうなると孫呉の地だけはなんとしてもてにいれられないかしら。

 

「おい、貴様!」

「なんだ?」

「投降すれば華琳様の事を助けてくれるのだな!」

「ああ」

「ならばよし。私と一騎打ちをせよ。私が負ければ投降しよう。私が勝てば華琳様や孫策を見逃せ」

「だが、断る」

「なっ!?」

「私は別に全滅させても構わない。こうしている間にも負傷兵が死んでいくだけだ。どちらにしろ我が軍の勝利は変わらぬ。そして、貴様らを逃がすつもりなどない。我が手元に来ぬのならばここで朽ちよ。それこそが天下を統一する一番の近道だ。私は貴様らを過小評価するつもりはない。どうせ逃してもまた旗揚げするだけだろう」

 

 ええ、その通りね。でも馬鹿正直に答えるのは――

 

「その通りだ!」

 

 いたわね。

 

「なので却下だ。投降するのなら救助もやってやる。夏侯淵達が見えぬが、彼女達が生き残れる可能性がどんどん低くなるぞ」

「ぐっ」

「もういいわ。投降する。だから秋蘭を助けて……」

 

 曹操にとってあの子はそれだけ大切なのね。

 

「孫策」

「いいわよ。私達も投降する。その代わり、小蓮を嫁がせるから孫呉の地だけ貰えないかしら?」

「別に構わぬぞ。董卓主導で平和の世を作りたいだけだからな」

「ならばいいは。董卓ちゃんの洛陽での手腕はわかっているしね。私達も投降するわ」

「孫策! 妾達はどうなる!」

「諦めなさい。投降すればいいじゃない」

「ぐぬぬ」

「美羽さま、ここは投降しましょう。ね?」

「わかったのじゃ」

「では、武装解除してもらおう。それから救助を開始する」

 

 こうして反董卓連合は壊滅し、私達は捕虜となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦う前から勝負は決まっている。これにつきます。しっかりと準備して情報を集めておけば勝てる。何処かの偉い人がいってた。
ちなみに虎牢関には無数の投石機が設置されております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。