真・恋姫†無双~董家伝~   作:ヴィヴィオ

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黄巾党も書いて欲しいとのことでしたので簡単に書きます。ついでに色々と修正。



14話 黄巾党との戦い

 

 

 

 さて、黄巾党が動く事で街を捨てる事になった。そんな訳で本格的に動くとしよう。先ずは流琉と季衣の説得だ。なので料理屋が閉めるために準備している2人に声を掛ける。

 

「二人共、私は義勇軍を立てようと思っている」

「え! 兄ちゃん、一緒に来ないの!?」

「義勇軍って危ないんじゃないですか?」

「まあ、戦いだからな。だが、民のために立ち上がらねばならない。お前達も漢王朝が腐敗している事はわかっているだろう」

「税金だけ取って何もしてくれないしね」

「はい」

「どうだ。お前達も一緒に来ないか? 仲間もすでに集めてある」

「行く!」

「私でも役に立つでしょうか?」

「大丈夫だ。流琉は強いからな」

「僕と流琉なら大丈夫だよ!」

「じゃあ、一緒に行きます」

「なら仲間を呼ぶか。そうだな、明日紹介しよう。皆に伝えてくるといい」

「は~い」

 

 店を片付けてから明日の結成式の準備をする。

 

 

 次の日、料理屋に星や風、義勇軍に入る者達が多数入ってくる。

 

「今日は奢りだ。好きなだけ飲め」

「おお、誠ですか!」

「そうだ。ほら、飲んでみろ。メンマもあるぞ」

「これはありがたい」

「星ちゃん、星ちゃん、ほどほどにしたほうがいいですよ~」

 

 料理と酒を振る舞い、星には特別な蒸留酒を振舞う。

 

「どうだ美味いか?」

「ええ、とても美味いですぞ! どれ、もう一杯!」

「駄目だ」

 

 星から酒を取り上げる。

 

「なっ、何をするのですか!?」

「何、星がお願いを聞いてくれたらいくらでもあげよう」

「なんですか!」

「実は立ち上げる義勇軍の総大将は星にしてもらいたい」

「おお?」

「実務はこちらで引き受ける。何、部隊の顔になって欲しいだけだ。星ならばその美貌と武で問題ないだろう」

「し、しかし……」

 

 星がメンマに箸を伸ばすがメンマも取り上げる。

 

「めっ、メンマ~~~!」

「なに、立ち上げるといってここに名前と拇印を押せばこれは星のものだ。そうじゃないと他の者が食べてしまうな」

「おお~悪役なのです~」

「なにか言ったか?」

「zzzzz」

「わ、わかった! 押すからくれ!」

「ああ、やろう」

 

 これで趙雲軍の完成だ。

 

「風、軍師は任せる」

「任されたのです~」

「さて、改めて流琉と季衣を紹介しよう」

「よろしくお願いします」

「よろしくね!」

「うむ、頼むぞ」

「よろしくなのです」

「ん」

 

 

 

 

 次の日、結成式を行わせる。

 

「どういう事ですかな、主殿」

「いや、私は表に出れないのでな。なので星に頼む。昨日お前も了承した」

「ぐっ。わかりもうした。この趙雲が見事大役を果たしてみせましょうぞ」

「期待している。先ずは近くに居る族から粉砕する」

「心得た」

 

 それから出陣して賊共が陣取っている砦へと向かう。

 

「季衣ちゃん、流琉ちゃんは右側に伏兵として潜んでくださいです。反対側に香風ちゃん」

「わかった」

「はい」

「任せる」

「星さんとお兄さんは囮です。引っ張ってきて三方向から攻めて殲滅するのですよ~」

「了解した」

「では道から踏み外した獣を殲滅する」

「「「おぉー!」」」

 

 義勇軍というが、内容は劉備と桁が違う。先ず騎馬隊もあるし装備もちゃんとした物だ。商人から支援を受けているからだ。それにこの義勇軍の者達はしっかりと訓練を今まで施してきたのだから統率も取れているので心配もいらない。

 

 

 私と星は砦に近づく。星が視線をやってくるので頷いてやる。

 

「銅鑼を鳴らせ」

 

 ガーンと銅鑼が鳴らされると砦に居た奴等が大挙として押し寄せて来る。

 

「馬鹿ですか?」

「馬鹿だろう。さっさと下がるぞ」

「そうですな。全軍後退!」

 

 砦から出てきた烏合の衆は何の躊躇いもなく突撃してくる。目的の場所まで誘導すると右に潜んでいた季衣と流琉が突撃していき、混乱を巻き起こす。

 

「む、早いな」

「そうですな。まあ、初陣なのですから仕方ありますまい」

「だな。補助は香風がしてくれるしこちらもいいだろう」

「ですな。全軍、反転して敵を蹴散らす! 私に続け!」

「「「おおおおおおおおおおおおお!!」」」

 

 香風は季衣達が真ん中に突撃したので後方へと突撃をしてくれた。私と星も武器を引き抜いて追ってきた最前列を始末しに掛かる。刀を引き抜くと同時に念糸を飛ばして盗賊の頭を斬り飛ばす。天草正教のおっぱい聖人がやっている感じにする。

 

「主に負ける訳にもいきませぬな」

「私だけか?」

「あの子達にもですな」

 

 鉄球が乱舞し、敵が文字通り空を飛んでいく。季衣と流琉の力は凄まじい。だが、圧倒的なのは香風だ。特注の全身鎧に身を包んだ香風が戦斧を振るうだけで5人から10人近くの人間が胴体を鎧ごと切断されていくのだ。

 

「化物ですな」

「可愛い私の女だ。そう呼ぶのは許さんぞ」

「これは失礼致しましたな。どれ、私もあれほどの武を目指すとしましょう」

「私は下がる。他の者達にも戦いを経験させるべきだからな」

「了解しましたぞ」

 

 下がりながら風の下へと向かう。

 

「お兄さん、どうしましたか?」

「何問題は起きていない。おい、弓を貸せ」

「はっ」

 

 弓を受け取って弦を確かめてから戦場に向けて矢を番える。それから放ってみる。目標を少しそれた。

 

「矢を」

「どうぞなのです」

「ご苦労」

 

 矢を番えた状態で瞬時に背後を向いて遠くにある木へと矢を放って狙撃する。矢は狙い通りに目的の存在を貫いた。

 

「捕えろ」

「はっ」

 

 直ぐに隠密部隊が動いて確保に向かう。

 

「どこですか~?」

「おそらく呉だろうな。もしくは曹操か」

「消しちゃっていいんですか~?」

「構わない。これから動くのに邪魔だからな」

「なら問題ありませんね~」

「ああ」

 

 今の間に色々と暗躍する。反董卓連合は起こさせなければならないが、こちらは袁紹を焚きつければよい。それよりも武名だな。

 

「終わったようですね~」

「そうだな」

「寝ていいですか~zzz」

「もう寝ているではないか。まあよい」

 

 部隊を纏めていると流琉と季衣がやって来た。

 

「兄ちゃん、頑張ったよ」

「ごめんなさい、うまくいきませんでした」

「季衣、流琉、怪我はないか?」

「大丈夫だよ」

「はい、ありません」

「ならばよい。それとよくやった。失敗はあるが初陣にしてはいいだろう。これから気をつけるんだぞ。2人に何かあれば困るからな」

「「うん/はい」」

 

 2人の次は星と香風がやって来た。

 

「ご苦労。あとで酒を渡そう」

「それはありがたい」

「香風は今夜可愛がってやる」

「うん」

「お熱いですね~zzz」

「風も来る?」

「おおう、これは予想外のお誘いなのです~でも、遠慮するです」

「わかった」

「振られましたな」

「仕方あるまい」

 

 直ぐに部隊を整えて砦の見聞に入る。

 

「置かれていた物資はどうするです~?」

「回収だ。捕らえた賊に襲った村を吐かせろ。この物資はそこへ配れ」

「私達の分はどうしますか~?」

「取り返した代金として多少は頂く」

「よろしいのですか?」

「そっちの方が都合がいい。私は潔癖症ではない」

 

 曹操なら焼き払うのだろうが、そんな勿体無い事はできない。何より餓死する奴が居るかも知れないのだからこれは仕方あるまい。それに徳が必要な訳ではない。我々は義勇軍であるがどちらかといえば傭兵だからな。

 

「それに農家の人が丹精込めて作った食料だぞ。燃やすなどとんでもない」

「それはそうですね~」

「そうだよ!」

「食料を無駄にするなんて駄目です!」

 

 曹操に教育された後ならともかく流琉と季衣からしても許せないだろう。いや、魏に居た時も納得していたのかわからないが。

 

「さて、賊の死体は処理させるとしよう」

「ですね~」

「処理? 手伝おうか?」

「子供がみるものではありませんよ~」

「僕は子供じゃないよ!」

「そうですか。ならお手伝いしてもらいます。こちらに死んだ人はいませんのでみたいなら見ればいいんです~」

「まあ、別にいいけどな」

「?」

「虎達の餌」

「あ~」

「食べていいよ」

 

 香風の言葉に従って賊の死体を食べていく虎達。それを捕虜に見せる。

 

「貴様らもああなりたくなければしっかりと吐け」

「なんでも喋る! だから命だけは助けてくれ!」

「よろしい」

 

 吐かせた情報を元に食料を配り、次の場所に移動していく。ついでに月達に人を送ってもらうように連絡を入れておく。

 

 

 数ヶ月間、黄巾党退治を行っていると名声を得てくる。そうなると助けていく村から食えなくなった人達が参加したりしてくる。それに対する対策として義勇軍自体でも貿易をして資金を稼ぐという手段を取る。それに街から街への移動に商人を護衛していくのも一緒に行えばお金にはなる。

 

「さて、皆の衆。次の敵だが万を超えておる。これは困った」

 

 天幕で白虎や虎達を寝そべらせてもたれ掛かるように座りながら会議を行う。虎達の毛はもふもふで気持ちいいから流琉や季衣、香風に人気だ。

 

「僕達じゃ倒せないの?」

「今、3000でしたっけ」

「そうですね~。といっても、星ちゃんや香風ちゃん、季衣ちゃん、流琉ちゃんも居るのでどうにかなると思いますよー被害は甚大でしょうが~」

「駄目ですね」

「という訳で困っておる」

 

 季衣も流琉も理解したようだ。相手の数は万を超えているといっているが、正確には3万7千との報告が来ている。はっきり言って勝目がない。なんせ12倍だからな。

 

「という訳でどうするかだ」

「zzzzz」

「寝るな!」

「おおう。これは失礼~でも~増援がない限り無理ですよ~大人しく撤退するほうがいいかと~」

「駄目だよ! ここの街の人達が襲われるんだよ!」

「はい。撤退はなしでいきたいですね」

「だそうなので、お兄さん。増援を寄越すです~」

「まあ、呼んではいる。そういえばこの辺には私達と戦っているような奴はいないのか?」

「いますよ~」

「ならばそやつらに協力を要請するのもありだな」

 

 問題は誰か、という所だな。曹操ならある意味で当たりだが面倒だ。劉備なら戦力が低いが関羽と張飛は使える。それに上手く行っていれば諸葛亮がおらず軍師がいない可能性がある。失敗していれば諸葛亮が居るはずだ。いっそ劉備の義勇軍を吸収するか。仁の世というのはある意味では月が目指している世界でもあるのだが……いや、駄目だな。これから計画している事を知れば関羽や劉備は絶対に反対するだろう。月と違って劉備達は清濁を合わせられない。そんな為政者など邪魔にしかならない。

 

「で、誰がいる?」

「えっとですね~香風ちゃん、おねがいしまぐぅ~」

「……曹操、劉備。増援はもうすぐ、らしい」

 

 ぼーと身体を虎に背中を寄せて私にもたれかかりながら答える香風。

 

「ふむふむ。つまり、増援は来ると」

「なら、他の人達と組んで一気にやっちゃおうよ」

「それがいいと思います」

「そうだな。なら、劉備と組むぞ。少なくとも奴らなら与し易い」

「では伝令を出しましょう~」

「任せる」

 

 香風が天幕から顔を出して指示を飛ばすと直ぐに一人が馬で走り去っていく。

 

「じゃあ僕達は――って星さんお酒飲んでる!」

「いや、暇ですし。皆に任せているゆえ」

「代表がそれでは駄目だと……」

「飾りゆえ問題ありませぬ」

 

 ぐびぐびと酒を飲み出す星。まあ、そもそも真ん中にお菓子が置かれていて、虎達は干した肉を食べているのだが。

 

「まあ、戦闘と会談だけまともにやってくれればいいさ。それさえ出来なければ――」

「わかっておりますよ」

 

 出来なければ禁酒とメンマを禁止させる。

 

「まったく、兄ちゃんは甘いんだから」

「そうですね」

「こほん。ところで増援の編成はどうなっておるのですかな?」

「騎馬隊5000」

「ぶっ!?」

「わっ、汚」

 

 吹き出したお酒が季衣にあたってしまったな。

 

「すまぬ」

「星ちゃんじゃないですが、どこの義勇軍が騎馬隊5000も持っているのですか~」

「ここだな」

 

 じと~というような目でこちらを見詰めてくる風。確かに持っているはずがないよな。だが、こちらは貿易もしながら移動しているのでどちらかといえば商人の護衛料も貰っているので傭兵なのだ。なんの問題もない。きっと多分。

 

「まったくもう~まったくもう~」

「問題ない。なにも、問題ない」

「ちなみに武装は?」

「完全武装」

「問題ありすぎですな」

「突っ込んじゃだめなのです~風は学習しました~」

「まあ、そういう訳だ。流琉、もう出来ているだろうから料理を持ってきてくれ」

「わかりました」

「僕も手伝うよ」

 

 直ぐに流琉と季衣が出ていく。それから直ぐに強烈な匂いのする鍋ともう一つの鍋を持ってきてくれる。

 

「なんですかな、これは」

「カレーと呼ばれる食べ物だ」

「かれーですか」

「美味しいぞ。とりあえず騙されたと思って食べてみろ」

「ですな。主殿と流琉が作る料理にハズレはありませぬゆえ、食べてみますか」

 

 更にお米が盛られてかれーがかけられる。その色に嫌がるかも知れないが美味そうな匂いには勝てない。

 

「「「「ぱくっ。もぐもぐ」」」」

 

 全員が一口食べると無心で食べだした。そこに福神漬けやらっきょうを取り出して与えると星が大喜びした。メンマを入れて食べだしたりもしたが大喜びだ。

 

「これは美味ですな」

「美味しいね! おかわり!」

「そうですね。炒飯にしてもいいかも知れません」

「点心の生地に混ぜるのもいいかもな」

「それは良さそうですね」

 

 流琉と料理談義で盛り上がっていく。外では兵士達も美味しそうに食べている。しばらくは食事で楽しい時間を潰していく。

 

 

 

 しばらく留まりながら罠を作ったりして待っていると劉備達が流琉と季衣に連れられてやって来た。彼らは隣で陣を張っていく。少しして劉備達が案内されてやって来た。私は包帯で顔を隠して外套を被って星の傍に座る。風も反対側に座って香風も全身鎧を着て俺のすぐ横に立つ。

 

「そなたらが劉備か?」

 

 入ってきたのは三人。桃色の髪の女性と黒髪の女性。それとちびっ子。

 

「はい。初めまして。私は劉備玄徳です。こちらが愛紗ちゃん……」

「関羽雲長です。」

「私は諸葛亮孔明です」

 

 どうやら例の懐柔は失敗したか。まあいいさ。

 

「私は趙雲だ。こちらが軍師の程昱だ」

「よろしくなのです~」

「そこの2人は……気にしなくていいぞ。とりあえず暫定的に組むだけなのだ。さっさと話を詰めようではないか」

「そうですね~まだそちらの実力もわかりませんし~」

「むっ」

「それじゃ仕方の無い事ですね。趙雲軍の皆様の強さは噂になっていますから」

「そうだね。私達の所とは全然違うよ」

「私達は商売もしながら資金を調達していますからね~」

「なるほど~」

 

 とりあえず、問題はなさそうだ。

 

「では、黄巾党の討伐についてですが~」

「風、任せるぞ」

「わかったのです~というか、お兄さんも協力してくださいね~」

「……」

 

 頷くだけにしておく。

 

「あの、その人達は?」

「ああ、彼らは商人とその護衛の人ですよ~。支援して貰っているのです」

「わかりました」

「そうだ。関羽殿、外で1戦やりませぬか? そちらの実力を教えて頂きたい。こちらの実力を教えるのにその方が都合がよろしいでしょう」

「そうだな。確かにその方がいいか」

「劉備殿、審判になってくだされ。流琉、季衣、お前達は歓迎の食事を準備してくれ」

「わかりました」

「はい」

「了解~」

 

 直ぐに皆が出ていき、残ったのは軍師だけだ。

 

「では、先ず事前情報として敵軍が3万7千で、援軍が騎馬隊5000です」

「それはまた凄いですね。色々な意味で」

「ですね~。それとこの街道に色々な罠を仕掛けている所です。なのでここに釣ってくるのがいいかと思いますよ~」

 

 地図を出して孔明に説明していく。

 

「なるほど。援軍は何時到着するのですか?」

「お兄さん、何時ですか」

 

 私は香風の方をみると筆を取って字を書いていく。それを見せて知らせていく。

 

「なるほど。到着するまで待ちますか?」

「必要ない」

 

 声を出して伝えてやる。

 

「? そうですか。なら時期を見た方がいいですね。私達が囮になって引き連れて来ますので皆さんは伏兵をお願いします」

「いいのですか~?」

「そちらの方が練度が高いですし、その方がいいでしょう。その代わり……その、食料と武器などを別けて貰えばと……」

「構いませんよ~物資は余裕がありますよね~?」

「問題ない。補給部隊も増援と共に来る」

「だそうなので構いませんよ。では今日は英気を養って準備をしましょう」

「はい。それとお二人は何処かであった事がありますか?」

「知人ではない」

「そうですか」

 

 香風を連れて出て行く。外では互いに剣闘をたたえ合っている関羽と星がいる。私はそのまま香風と自分の天幕へと戻る。

 

 

 

 

 

 数日が経ち、黄巾党の討伐が開始される。劉備軍には食料と予備の武器を与えて予定通りに囮になってもらう。流石は関羽と張飛が率いるだけあって最小限の犠牲で撤退してくる。趙雲軍は左右に別れて森の中に潜む。しばらくして黄巾党の連中が通り過ぎると前方の方に配置した者達が地面に隠した無数の縄を引っ張り上げる。

 

「うぉっ!?」

「うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

 全力で走っていた連中は縄に引っかかって次々と転けて重なっていく。

 

「弓を放て!」

 

 星の号令により森に隠れていた者達から一斉に火矢を放つ。縄には事前に油を染みこませてあるので非常に燃える。

 

「撤退!」

 

 全員で即座に森の中へと逃げる。火刑である程度は殺せたがまだまだ数がいる。連中は急いで消火作業を開始するが、こちらが現れて矢を放っては逃げるを繰り返していく。連中は激怒して森に踏み込んでくるが、そこは罠満載の地獄の入口だ。

 

 

 

 

 

「えげつないですね~」

「これがゲリラ戦法だ」

 

 二日後、森の中にある崖の上から森に入っては地獄を味わっている者達を見下ろす。隠密部隊にとって森は庭のようなものだからな。

 

「そろそろいいですか~」

「だな」

 

 風が焚き火を上げる指示を出す。消火が終わった場所に今度は星達が突撃して蹴散らしていく。砦から黄巾党の大軍が出て来る前に直ぐ逃げる。連中は懲りずに追っていき、劉備軍に横から襲撃される。即座に星が軍を反転させて自分達も突っ込む。こうなると混戦になるのだが、黄巾党はどんどん追加してくる。

 

「次ですね~」

「砦はどうだ?」

「計画通りです」

 

 風が砦を指差すと、黄巾党が殆ど出払った砦には香風率いる隠密部隊が潜入して虐殺を繰り広げている。制圧を完了したようで星達に撤退命令を出す。即座に劉備軍を逃がし、趙雲軍が殿となる。それから上手いこと引きながら先に引いた劉備を伏兵として退路に付いてもらう。そうやって出血を強いながら後退していく。しかし、これはかなり体力も精神力も消費する戦い方だ。このままでは確実に練度の低い劉備軍が破綻する。

 

「きましたね」

「よりによって増援はあの2人か」

「凄いんですか?」

「かなりな」

 

 戦場に突撃してくる完全武装の騎馬隊。彼らが掲げて羽ばたかせるのは深紅の呂旗。三国志では天下無双と名高き呂奉先。彼女に引き入れられる真っ赤に染められた鎧を纏う部隊はまさに一騎当千に相応しく黄巾党の軍団を蹴散らして文字通り血の川を作り出していく。

 

「……なんなのですか、あれは……」

「増援だな。戦力として私の切り札といえる者だ」

「この光景を見るとつくづくご主人様の敵にならなくてよかったと思えますね~」

「それは良かったな。彼女は味方だ」

「それが救いです~」

 

 部隊の一人一人の練度もおかしい。董家の精鋭で編成されているといっても間違いない。というか、全員が気を使って身体強化までしているし、統率も行き届いている。

 

「まるで一匹の龍ですね」

「なるほど」

 

 恋の意思によって統一され、一つの生き物(龍)として口を開いて食らっているように感じてしまう。上から見てこれなのだが、敵からしたら絶望でしかない。

 

「星さん達も反撃を開始しましたね」

 

 星達は恋の食い残しを処理しだした。

 

「孔明はよく頑張ったといえるな」

「ええ。的確に指揮していなければとっくに崩壊していましたね」

「まあ、崩壊していても被害が出るだけで問題はなかったのだが、流石にこれ以上は無理だろう」

「そうですね。あとはこちらで処理するだけです。ところで牙門旗なんて用意していいんですか?」

「あ~後で仕舞わせておく」

「そうしておきましょう」

 

 まだ趙雲軍の牙門旗は届いていないのだ。このままでは呂布軍になってしまう。いや、星は喜びそうだがな。しかし、万単位の敵をほぼ一部隊で蹴散らすとか恐ろしいな。

 

「私達も砦に入るとしよう」

「そうですね~」

 

 香風が確保した砦に入り、劉備軍や趙雲軍を向かい入れる。その直ぐ後に呂布隊が入ってくる。彼女達が入ってくると両軍共に道を開ける。その中心を恋と音々が先頭で馬で進んでくる。しかし、恋の前に音々以外の小さな子供が居るのだが、何故だ?

 

「あやつはどこですか?」

「ん。居た」

 

 2人はキョロキョロとするが、恋は直ぐに私を見つけて小さな子供を抱きながら飛び降りて走ってくる。

 

「ご主人様、居た」

「おい、危ないぞ」

「平気」

「ん」

 

 そしてそのまま抱きついてきた。小さな子供も平気そうにしている。この子の髪の毛は恋と同じ赤色だ。

 

「久しぶりだな。元気にしてたか」

「元気。それより挨拶する」

「……はじめ、まして、父様……?」

「父様?」

「ご主人様との子供」

「誰と誰の」

「恋殿とお前様に決まっているのですぞ!! 恋殿の純潔を奪っておいてまさか忘れているなんて事は許されないのですぞ!!」

「いや、そんな事はない」

「ご主人様、やればできる」

「そう、だな。そうか、娘か」

 

 抱き上げて顔をよく見ると恋の娘としてよくわかる程に似ている。しかし、その顔は戦国恋姫に出て来る武田信玄だ。

 

「名前は?」

「ひかりです」

「真名が光璃(ひかり)。名前は――」

 

 知らない間に一児の親になっていた。それに出来た子供は史実では名前がわからなかった呂布の娘だった。

 

 

 

 

 




劉備と合わせました。
呂布の子供(これは当初の予定通り)の登場。

名前を検索したら出てこないので、唯一出てきたゆーえーオリジナルの三国無双シリーズで、呂玲綺のみでした。他、候補が浮かばなかったらこれにしようと思います。姿は戦国恋姫の方ですけれど。光璃ちゃん、恋ちゃんと同じでまじ可愛いです。
なお、活動報告の方で募集します。

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