香風との二人旅を楽しみながら袁術の下へと向かう。呉に関しては袁術と合う必要があるからだ。それと蜂蜜を運ぶように輸送部隊を手配しておく。
今日は無事に村へと到着出来た。だが、なんだか様子が変だ。
「ご老人、どうした?」
村に居る老人に何事があったのか聞く。
「これは旅の方。実は人食い虎がかなりの数出まして。一応、領主様に連絡を送ったのですが、まだ来ておらず被害が出るばかりでして」
「ふむ」
「ご主人様、どうする?」
「そうだな。では、それを私達が倒してこよう。代わりに食事と宿を提供して欲しい」
「確かに嬉しいのですが、よろしいのですか?」
「かまわぬ。して、何処に居るのだ?」
「あの山の――」
詳しい場所を聞いていく。
「わかった。では家畜の血と縄を渡してくれ」
「わかりました」
血液の入った袋を複数貰う。
「行くぞ香風」
「了解」
香風と共に人食い虎の出る森の中へと歩きで入っていく。進んでいくと次第に木だけではなく竹に変わってくる。
「この辺でいいか。準備をしろ。それと殺さずに捕らえるぞ」
「わかった。撒く」
「ああ」
香風が血液を周りに巻いている間に鳴子を設置していく。それから少しすると鳴子が鳴り出す。
「来るぞ」
「任せて」
竹藪の中から普通の虎や白虎が多数出て来る。かなりの数が居て直ぐに襲いかかって来る。
「えい」
「ぎゃんっ!?」
飛びかかって来た虎を香風が戦斧の腹で弾き飛ばす。私も刀を抜いて峰打ちで打倒していく。香風と背中を合わせて気絶させていく。数が減っていくと逃げようとするので輪っかにした縄を投げて首を絞める。一匹とて逃がさない。
「16匹か。多いな」
「殺す?」
「いや、調教する」
数匹を起こしては2人で躾を行い、誰が上かしっかりと教え込む。特にこの群れの首領である大きな白虎は徹底的に躾ける。殺気を纏わせてやればかなり大人しくなる。それから数日間、餌を与えて調教して飼い猫にする。もちろん交代で村に戻る。
「楽しい」
「そうか」
白虎に乗って子供を膝に乗せて撫でている香風。周りにいる虎達も私達が主だと認めてくれた。
「これで完了か」
「ん」
「戻るぞ」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
虎に乗って村に戻ろうとした所で突然悲鳴が聞こえて来た。
「行くぞ」
「わかった」
虎に向かうように指示して皆で一斉に移動する。竹藪の中を走り抜いて反対側に出る。視界が開けると戦っている音が聞こえてくる。崖上から下にある道を覗くと女の子2人を守りながら戦っている兵士達と懐に動くモノを隠している何人かの男。それと彼らを囲んでいる沢山の白虎が居た。それも複数の群れみたいだ。
「ご主人様」
「ふむ。あの特徴的な桃色の髪の毛は孫家の者か」
女の子の一人は孫尚香で、もう一人は周泰だ。
「助けるか。しかし偽名を使う。真名を普通の名前として名乗る。悪いが頼む」
「ん。了解」
偽名を使う理由は簡単だ。来るべき戦いの為の布石だ。
「では……少しまて」
髪の毛を後ろで纏めてるだけで男みたいになる。既に服装は男性の物だからだ。
「よし、お前達は逃がさないように囲め」
「がるるる」
「では、参る」
「行く」
香風が白虎を走らせて飛び降りる。今にも襲い掛かりそう虎を踏みつける。
「とう」
直ぐに白虎から降りて虎を気絶させていく。
「なっ、なんだ」
「助太刀する。お前達はその者達を守っていろ」
「た、助かる!」
香風と共に殺さずに無力化していく。
「おお、凄い!」
「むっ、強いのです」
殺さずに蹴散らすと直ぐにこちらの虎達が集めていってくれる。
「増援なのか?」
「いや、大丈夫みたいだが」
「終わった」
「よし、香風は調教をしてくれ」
「ん」
私は彼らに向き直り、男達の所に向かう。
「た、助かったーー」
「寄越せ」
「ーーぶべらっ!?」
男達を殴りつけて隠していた虎の子供を回収する。他の男達が武器を抜くが直ぐに周泰が始末した。
「これが原因なの?」
「それもあるだろう」
「そっか。その子達はどうするの?」
「ふむ」
「うぅ……お猫様……」
周泰は小さな子供の虎を見つめる。私は周泰に子供の虎を渡してやる。
「わぁっ、お猫様!」
「あっ、ずるい!」
「ほら」
「ありがとう!」
もう一匹を拗ねていた孫尚香に渡してやると凄く嬉しそうだ。そんな事をしていると兵士達は男を縛っていく。香風はこちらの虎達を使いつつ説得(物理)を行っていく。
少しすると遠くから騎馬隊が駆けて来る。
「小蓮無事?」
「大丈夫だよ」
やって来たのは孫策だ。彼らは先遣隊だったのか。
「この方達に助けて頂きました」
「なるほど。アンタ達は?」
「旅の者です」
両手を合わせて頭を下げる。
「ふーん。ありがとう、感謝するわ」
「雪蓮お姉様、士官して貰わない? 凄く強いよ」
「駄目よ」
「?」
不思議そうにしている孫尚香。ちっ、これが孫策の勘か。仕方ない。内部から呉を食い荒らしてやろうと思ったが、致し方ない。別の方法を取ろう。
「それでは我らはここで失礼致します」
「ええ。その虎達はどうするのかしら?」
「飼わせて頂きます。売り物にも乗り物にもなりますので」
「そう」
「あっ、じゃあこの子欲しい!」
孫策に向けて孫尚香が子供の虎を掲げる。
「仕方ないわね。いくらかしら?」
「では虎を連れて街に入る手伝いをして頂きたい」
「それは無理よ」
「ならば街の外で待機させる許可を貰って来ては頂けませんか?」
「貰ってね。わかったわ」
「ではお譲り致します」
「ええ」
「やった! ありがとうお姉様!」
「はいはい」
それから孫策達と共に袁術が納める街まで移動する。しかし、常に孫策に警戒されていて取り入り易い孫尚香に近づく事も出来なかった。
さて、無事に袁術が納める街へと到着して孫策達と別れた。しばらくして街へと呼んだ輸送部隊と合流して着替える。虎達には首輪をつけておく。
「香風、袁術に謁見するぞ」
「この子達は?」
「問題ない。お前達に任せる」
「「「はっ」」」
傭兵に偽装した兵達に虎を任せて袁術の城へと進んでいく。今まで作った蜂蜜商品のお陰で直ぐに謁見が認められた。
「うむ。よく来たぞ」
「この度は謁見を認めて貰いありがとうございます」
「うむうむ。それで本日の商品はなんじゃ?」
「特級蜂蜜でございます」
「おおっ!!」
取り出した蜂蜜の蓋をあけて舐める。これは厳選した花の蜜によって作らせた蜂蜜でありとても美味しい。
「あっ、妾の!?」
「毒見です。とりあえず、味見をどうぞ」
「うむ」
差し出して食べさせると満面の笑顔になった。
「次はこちらをつけてお食べ下さい」
「おおう!」
「美羽様っ!!」
「ええい五月蝿いのじゃ!」
数々の商品を見せて乗り気にさせていく。
「さて、これらの商品の値段ですが」
「高すぎます!」
私が提示した値段に驚愕する張勲。かなりの金額だ。もちろん、かなり高く取っている。
「何分、輸送費が掛かりますから」
「なんとかできぬのか?」
「そうですね……」
「こちらから提案なのですが、そちらの土地に私達の店を出させて頂けるなら安く致します。輸送するのが蜂蜜だけで済みますから」
「うむ。任せるのじゃ」
これでこの土地に私の商会を根付かせる事が出来る。これは非常に重要な事だ。この地の情報を得る機会があるんだからな。
「では値段はこれくらいですね」
「まだ高いですね」
「なら店と土地も提供してください。作らせるのは孫家の方々にお願いすればいいですし」
「おお、いいですね」
土地と店を手に入れられたので、値段を少し安くする。そこから交渉を行うがそもそもがかなり高値にしてある。なのでかなり儲けが出る。
「さて、次の作業に入るか」
「何をするの?」
「義勇軍を作る人材集めだな」
「わかった」
さて、先ずは趙雲と程昱、許褚、典韋を手に入れる為に動こうか。魏には悪いが、呉の者達は奪えないし黄忠や馬超達はまだ動かせない。これはもっと後だ。今出来るのは手にれられる事がわかっている上の連中だけだ。
そういう訳で商人の情報網を使い、趙雲を探し出す。趙雲を雇うのもまた簡単だ。
「主が私を探していると聞いたが?」
「これをどうぞ」
「ふむ。これは!? 素晴らしいメンマである!」
「ほほう~これは美味しいですね~」
「まったくだ」
程昱も居たので丁度いい。私達で作り上げたメンマを渡してやったのだ。
「このメンマと報酬で我が軍の配下になっていただきたい」
「むむむ」
「お酒もつけよう。酒はこれだ」
「おお、これが噂に聞く新酒の蒸留酒か!」
「おおう」
「わかった。お世話になろう」
「うむ。配下になってくれ。私の真名は黄泉だ」
「あのメンマと酒を生み出した方に真名まで預けて頂けるとは! 私は星です。よろしくお願いします」
「香風は香風。それで貴女も来る」
「風もですか~」
香風の言葉に答える程昱。彼女は必要なんだよな。いざとなれば彼女達をこちらに呼び寄せてもいいがな。出来るだけ董卓とは離れる。商会も何個か作っているし直接取引はしていない。
「そうだ。出来る限り希望に添いたい。これからの事についても」
「ふむふむ」
これから起こる事を教えて展望を教えていく。それと董擢の名前も出す。
「いいでしょう。あそこまで民の為の街を作り上げる人なら構いませんよ」
「ああ。平和な時代を作ろう。その為に非道な事も行うし犠牲は出るが」
「それこそ軍師なのです」
それから浮浪者や食べていけない人達を集めて許褚、典韋の居る村の近くにある山に拠点を作成する。そこで兵として浮浪者を鍛えていく。街に出て2人と仲良くなっていく。仲良くなる方法は簡単だ。
「七番回鍋肉出来ました」
「こちらも14番エビチリが出来た」
典韋と共に料理屋に私が入って料理を作っているのだ。この料理屋は既に買い取ってあるので問題ない。もちろん色々な料理を考案している。
「任せて」
「はーい」
香風が料理を運んでいく。許褚と仲良くもなっている。一緒に畑仕事をしたりな。それに我が家から村へと人材を派遣して村毎移る計画を作って村長達に納得して貰う。もちろん、信頼を得てからだとはいえ普通は難色を示す。長期的にお願いする。
数年の時が経ち、孫策から派遣された密偵のせいで本国にも戻れずに大人しく許褚こと季衣と典韋こと流琉の居る村で過ごしていたが、ついに黄巾党が動き出して沢山の賊が出だした。
「皆、かねてから誘いがあった董家に世話になろうと思う」
「そうですね。隣の村も襲われたとかいいますし」
「今なら護衛して貰えますから」
派遣させた部隊が守ることでここを捨てて移動する事になった。そこで行動を起こす。