真・恋姫†無双~董家伝~   作:ヴィヴィオ

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12話 一旦の別れ

 

 

 

 猫耳軍師、荀彧を手に入れた。荀彧もまだ幼いので手はださないが、慣れさせる事もある。

 

「勝負よ! 私はアンタなんか認めてないんだからね!」

「いいだろう。勝ったら真名を貰おうか」

「いいわよ! じゃあ――」

 

 挑んでくる荀彧を徹底的に叩き潰してやった。

 

「私の勝ちだ」

「くぅっ……まだよ!」

「まず真名を渡すのが先だ」

「し、仕方ないわね。本当は凄く嫌だけど……特別に許してあげるわ! 私の真名は桂花。せいぜい感謝しなさい」

「私は黄泉だ。末永くよろしく頼むぞ桂花」

「お断りよ!」

「そうか。ならば契約する時間を賭けて勝負しようじゃないか。1日を1として最初は0からでお互いに同じ日数を賭けて勝負する。最後にお互いの日数で相殺しあう事でいいな」

「のった!」

 

 様々な勝負であと少しで勝てるという所で勝利し、持ち時間を計算して負けてやる。5983日分を手に入れ、桂花は5392日分を手に入れている。増加式でやっている理由は簡単だ。止めさせない為だ。

 

「では、大勝負といこう。5392日を賭けるぞ」

「うっ……」

「怖気ついたか?」

「わかったわよ! やってやるわ!」

 

 開始した勝負は当然、私が有利だ。

 

「なっ!? なんでそこに伏兵がっ!! でも、そんなの対応すれば直ぐに……」

 

 盤面から駒を動かして伏兵に対応する桂花。

 

「では、次はここだ」

 

 奇襲の札と移動力増加の札をを出して駒を盤面に出す。その場所は桂花の本陣。

 

「え? なんでそこに!!」

「それは本陣を囮にして引き寄せたからな」

 

 桂花の軍は前に釣り出されており、後ろはがら空きだ。

 

「で、でも、先に倒せば……」

「ここで水計を発動。前線を押し流す」

「味方ごとっ!?」

「勝つためには必要な事だ。特に勝たねばなる時にはな」

「ぐっ」

 

 部隊の殆どを無くした桂花になすすべは無く、私の勝ちになった。これで31年分を確保した。

 

「さて、もう一度いこうか」

「っ!? わ、わかったわよ!」

 

 勝負に乗ってきたが、結果は私の勝ちで62年契約となった。

 

「ま、まだよ! まだ勝てるわ!」

「ならば来い」

 

 124年契約となった。

 

「うわぁぁぁんっ!!」

 

 桂花は泣きながら逃げ出した。

 

「やりすぎ……?」

「問題ないだろう」

 

 ぼーと部屋の隅で日向ぼっこをしていた香風が桂花を哀れんで声をかけて来た。

 

「どうせ明日にはまた来るさ」

「それよりもこちらに来い」

「ん、わかった」

 

 香風を呼び寄せて膝の上に座らせる。香風の髪の毛から太陽の暖かい匂いと甘いような匂いがする。

 

「では勉強だ」

「ん」

 

 香風に兵法を読み聞かせていく。

 

 

 

 次の日、雛里と香風に昨日と同じように読み聞かせを行っていると扉が勢いよく開かれる。

 

「勝負よ!」

「構わないが次は何を賭けるんだ?」

「既に時間も賭けたんですよね?」

「うっ……な、なら身体よ! アンタ、私の身体も目的なんでしょ! だったら身体でいいでしょ!」

「なら、やる回数でいいぞ」

「いいわよ!」

「雛里は香風を教えていろ」

「分かりました」

「ん」

 

 直ぐに勝負を開始する。桂花は色々な勝負方法を考案してくるが、全てのもので勝利を得る。躍起になって挑んでくる桂花を徹底的に叩きのめす。まだ完成していない桂花では歴代の英雄や皇帝の知識と経験を持つ私の敵ではない。それに心理学の理論を使って桂花の意識を読めば楽に勝てる。軍師として甘い桂花はまだまだ考えている事が身体の色々な所に出て来るのだ。

 

「ま、また……まっ、負けた……うっ、うぅ……」

「ほら、落ち着け」

 

 床に四つん這いになって泣いている桂花を抱き上げて撫でてやる。桂花の身体が震えるが気にせずに撫でていく。

 

「はっ、離しなさいよ……」

「桂花はもう私のものだから却下だ」

「くっ……」

「完膚なきまで負けたのだらから諦めて認めろ」

「わっ、わかったわよ! アンタは無能じゃない。でも、アタシが無能だわ」

「ならしっかりと勉強するんだな」

「わかったわよ」

「では、雛里達と一緒に勉強をしようか」

「ええ」

 

 それから銀、雛里、桂花、香風、陳宮の五人に桂花の母親と共に一緒に教えていく。

 

 

 

 桂花の家に来てから数ヶ月が経ち、荀家にある資料で教える事がなくなった私は旅に出る事にした。荀家の方々には我が家と洛陽に居る家に向かって教師をして貰ったり文官になって貰う事になった。

 

「それで、どこに行くのよ?」

「更なる知識を得られる宛がある。そちらに向かうぞ」

「また勉強~?」

「あわわ、ご主人様にお考えがあるんですよ銀様」

「わかってるけど~」

「どうでもいい。香風はご主人様に着いて行くだけ」

「まったく、こいつらは……まあ、いいわ」

「ここでは音々達が少数派なのです」

 

 馬車に皆を乗せて移動していく。

 

「何この馬車っ! 凄いんだけど」

「私が作った。振動が少なくて便利だろ」

「アンタが?」

「桂花、駄目。様をつけるか、ご主人様って呼ぶ」

 

 香風が桂花に戦斧の刃を突きつけて忠告する。

 

「わ、わかったから引っ込めてよ!」

「ん。陳宮も」

「はいなのです!」

 

 ガクガクブルブルと震えながら陳宮も頷いた。

 

「じゃあ、どうせなら陳宮も真名を渡せ」

「むむむ」

「恋が悲しむぞ」

「わかったのです! 音々の真名は音々音なのです」

 

 ちょろくて助かる。しかし、裏切られないようにしっかりと轡を握らないとな。

 

「黄泉様が……」

「ご主人様にしようか、桂花」

「……この変態めっ! ごっ、ご主人様……こっ、これでいいんでしょ! だから物騒な物を仕舞わせてよ!」

「香風」

「了解」

 

 桂花の言葉に武器を構えて待ち構えていた香風は俺の命令を聞いて直ぐに武器をおいた。

 

「はぁ……それでこの馬車だけど」

「防御力も高いが馬の数が問題だ」

「そうみたいね。でも、旅が格段に便利なるわ。兵士の疲弊も軽くなるし量産したいわね。問題は馬の数でしょうが」

「涼州(りょうしゅう)から優秀な馬を沢山購入して数も増やしている。数年後にはかなりの馬が手に入る」

「そうなのね。私達はそれまで勉強?」

「そうだ」

 

 益州を手に入れたいがまだ無理だ。一応、こないだの献上品で雍州の州牧になった。お陰で支配領域もかなり増えた。前々から外交で関係はよくしていたし、民の人気取りも行っていたので問題ない。むしろありがたがられているはずだ。これで粛清を行ってから農具を配給して石高を増やす。既に隠密部隊も入れてあるし、不正の証拠は掴んでいるので暗殺してしまえばいい。文官も荀家を丸ごと味方に引き入れたので問題ない。次の手として益州と涼州、荊州にも隠密部隊を大量に動員して情報を更に収集させよう。

 

 

 

 

 

 数十日後、深い森の中にある霧が出て来る山へとやって来た。そこにはとある塾が作られている。

 

「ここがそうなの?」

「そうだ」

「ふ~ん」

 

 長い階段を登っていくと門があり、そこには金髪の小さな女の子が掃除をしていた。

 

「はわわっ、先生、お客さんです!」

「あら、これはまた大勢でいらっしゃいましたね」

「初めまして。私は董擢と申す者です。実はお願いがあって参りました」

「分かりました。中で伺いましょう」

 

 家の中に通されて、私と水鏡先生とで話していく。

 

「それでご要件はなんでしょうか」

「実はあの子達に色々と教えて欲しいのです」

「なるほど」

「もちろん、お礼は支払います。それと出来たら仕官して欲しい」

「それはお断りします」

「分かりました。また参ります」

「貴方達も勉強しますか?」

「いえ、私はやる事があるので旅を続けます」

「では今日は泊まっていってください」

「はい」

 

 教育費と食費などを含めて先生にまとまったお金を支払う。

 

「お金はまた後ほど様子を見に来た時にでもお支払いします。何かがあれば雍州の州牧をしている父親の方へお願いします」

「ええ、分かりました」

 

 食事をさせて貰い、部屋を宛てがって貰った。その部屋は一緒に旅をする香風と一緒の部屋だ。他の者達にもそれぞれ2人1部屋が与えられている。

 夜、私は桂花と雛里を呼び出す。2人は身体を綺麗にして真っ赤になってやって来た。

 

「そういう事ではないのだが……」

「あわわ、違うって桂花ちゃん……どうしよう! 凄く恥ずかしいよ!」

「おっ、男の思考を読み間違えた!? くっ、尽く私の予想を外してくれるわね!」

「雛里、桂花の言う事、間違う可能性多い」

「聞き捨てならないわよ!」

「ご主人様に関して負け続け」

「ぐはっ!?」

「あわわ、そうでした」

「雛里までっ!?」

 

 桂花が床に四つん這いになってうちひしがられている。俗に言うorzだ。

 

「どうでもいいが話を進めるぞ」

「どうでもよくない」

「はいはい」

 

 桂花を抱き上げて寝台に寝かせる。隣に座って撫でてやると大人しく撫でられる。ここ数日、徹底的に撫で回しているお陰で私に慣れたようだ。喉を撫でるとブルブルと震えて面白い。

 

「あわわ、私もおねがいれしゅ」

「いいぞ、来い」

「はいれしゅ」

 

 2人の幼女の頭を膝に乗せて撫でると後ろから香風が抱きついてくる。可愛らしい猫達だ。

 

「それで、なんなのよ?」

「今日であった金髪の女の子が居るだろう」

「諸葛亮ね」

「あいつと仲良くなってこちらに引き入れろ。それが無理ならしっかりと思考と用いる策の傾向を覚えて対抗できるようになれ」

「そんなに凄いの?」

「ああ、そのはずだ。だが、私はお前達には期待している。しっかりと学ぶんだ」

「わ、わかりました」

「ええ。でも、なんで私達だけ?」

「銀様と音々はばらす」

 

 香風の的確な言葉に皆も納得した。あの2人は単純だからな。

 

「なるほどね」

「よろしく頼む」

「はいれしゅ!」

「わかったわ。あ、どうでもいいけど銀様は拗ねてたわよ」

「ふむ。なら2人も呼んで来い」

「いってきましゅ!」

 

 雛里が出て行ったのを見送る。

 

「香風、寝台を動かすぞ」

「ん、わかった」

 

 寝台をくっつけて大きな寝台を作る。ここは客室なので寝台の数が多い。くっつけたあと、整えたら2人もやって来た。それから皆で一緒に眠った。

 

 

 

 朝食を食べ、皆と別れる準備をしていく。ここからは香風と2人で一つの馬に乗って移動していくのだ。

 

「お兄ちゃん……」

「ここでしっかりと勉強して月や私を手伝えるようになるんだぞ。もちろん、修行も忘れるな」

「うん、わかった! 音々と一緒に頑張るね!」

「音々もなのですか!?」

「ここで戦えるの音々くらいだし」

「銀様との訓練とか音々に死ねと!?」

「あわわ、頑張ってください……です……」

「がんば」

「2人もやるのです! 音々だけなんて絶対に嫌なのです!」

「そうだな。2人ももしもの時の為に逃げれる体力と多少の武術の心得があったほうがいいだろう。銀、教えてやれ」

 

 政務のない今なら鍛えられるからな。

 

「任せて」

「「飛び火した!?」」

「ふっふっふ、音々だけ地獄を味合うのはごめんなのです。道連れにしてやるのですよ」

「おのれ!」

「あわわっ、やってくれたのです……」

「がんば」

「あんたはいいわね」

「香風はご主人様の護衛。一緒に行くのは当然」

「ずるいけど仕方ないね。ちゃんと守るんだよ」

「命に替えても守る」

 

 命にを賭けるなといいたいが、流石にかなり高い武力を得ている今の香風には言えないな。香風と私では役割が違う。銀達が成長すれば違うが、今は死ねない。

 

「ではそろそろ行く。頑張れよ」

「またね」

「またね~」

「せいぜい気をつけるのですよ」

「アタシが勝つまで死ぬんじゃないわよ!」

「当たり前だ。負けるつもりもないが」

「ぐっ」

 

 ツンデレのニャンコと可愛いニャンコ達と別れて2人で馬に乗って進んでいく。振り返れば誰かに見られている気がする。背後の山の頂上に視線を向けると小さな家があり、そこにはおぼろけながら男性と女性の人影があった。

 

「どこに行くの?」

 

 香風の言葉に前を向いて答える。

 

「袁術の所だな。後は呉だな」

「わかった」

 

 こうして俺と香風の二人旅が始まった。

 

 

 

 

 

 

「あれが董擢か。どうだ?」

「凡夫かどうかはわかりませんが、連れている子達はなかなか良さそうです」

「そうか。ならばよい。要請通り鍛えてやるがいい。これから奴等がどう動くか、楽しませて貰おう」

「そうですね。生徒達がどう世界を動かすか楽しみです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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