「ちょっと月が怪我をしたって聞いたんだけどっ!!」
慌てて部隊を率いて来た詠。彼女は輜重兵に含まれる衛生兵も連れてきてくれた。
「丁度いい。月は任せろ。お前達は民の救助を優先しろ」
「「「はっ」」」
「えっと、無事なのよね?」
「問題ない。お前はお前の仕事をしろ」
「わかった。じゃあ、よろしく」
「ああ」
詠に任せた後、直ぐに月の元に向かう。月は気を失っているようなので丁度いい。腕の痛みを麻痺させるツボを抑えながら気を目に集中させて月の状態を観察する。
――綺麗に折れているから問題ないな。
正常の位置へ戻し、念糸で動かないように縫い付ければ後は自然に回復するだろう。
「んんっ、おにい、さま……」
「気づいたか。怪我は治療したが出来る限り動かすな」
「……はい。それで、どうなりましたか?」
「今から聞いてくる」
「私も行きます」
「わかった」
月を抱き上げて縛り上げていた赤髪の子の所に向かう。そちらでは既に揉め事が起きていた。
「貴様が不甲斐ないからだぞ! どう責任を取る!」
「申し訳ございません」
「申し訳ございませんですむか! 貴様の命では足らぬのだぞ!!」
「っ」
黒髪の少女が当主に怒鳴りつけられて、拳を強く握り締めている。確かに他の太守の娘が訪問中に怪我をしたとしたら大事だ。しかも、原因があるとはいえ兵士によって怪我をさせられたのだから尚更だ。
「あ、あの、お兄様……」
「問題ない。私に任せろ」
「はい……全てお兄様にお任せします。ですから……」
「わかっている」
怒鳴りつけている当主の下に向かうと、あちらもこちらに気付いたのか直ぐに頭を下げてきた。
「この度は誠に申し訳なかった。全てはこちらの不手際だ」
相手からしたら自分の兵では鎮圧できず、よりによって怪我をさせた太守の兵に鎮圧させられたのだからたまったものではないだろう。こちらがかなり貸しを作った状態だ。
「それはその通りだ。だが、どうするつもりだ?」
「警備責任者と部隊の者を親類と共に処刑する。捕らえた者に関しては拷問して背後関係を吐かした上で見せしめに処刑する事になる」
「ふむ」
兵士の少女が跪く。他の兵達も同じだ。
「全ては私の責任です。どうか、他の者達には類が及ばないようにして頂きたい」
「いえ、我らが不甲斐ないからです」
「どうかお許しを……」
黒髪の少女は部下には慕われているようだ。
「ふむ」
月を下ろして椅子になりそうな場所に座らせた後、跪いている少女の顎を掴んで上を向かせる。整った顔立ちで意志の強そうな琥珀色の瞳をしている。
――私が知っている姿よりも少し若いが、買いか。
「名は?」
「鄧艾。字は士載(しさい)です」
当たりだな。こちらは三極姫の者だ。司馬懿の側近扱いだったが、こちらの手に入るならこのまま生かす。だが、入らないのならば悪いが死んでもらう。部下はどうでもいいが、政治家としても武将としても優秀な鄧艾を渡す訳にはいかない。
「気に入った。貴様が私の物になるのならば貴様の部隊ごと私が引き取って面倒を見てやろう」
「それは家族もですか?」
「そうだ」
「待て! それは困る! こちらの内情も知っているのだぞ!」
「その辺は応相談だ。なんだったら今回捕らえた者とこの者達が破壊した分も補填してやろう」
「それは……」
脳内で計算しだしているのだろう。しかし、私の言葉に悔しそうにしていた所を見るに手込めにするのを狙っていたか?
「捕らえた者はどうすると? 鄧艾達はともかく、捕らえた者には厳しい罰を与えねば他の者達に示しが付かぬ。それに周りの者達も納得しまい」
周りを見渡すと被害を受けた者達が手枷と口枷を嵌められて地面に押さえつけられている赤髪の少女を睨みつけている。中には香風も睨んでいる奴もいるが、そちらには何もせず少女に石を投げようとしている。
「そうだな。月はどう思う?」
「罰は必要です。ですが、殺したくはありません」
「そうか。では簡単だ」
壊された店から家畜用の首輪と鎖を取り、赤髪の少女に嵌める。
「今日からこいつは私の玩具としよう。女ならばそれなりに使い道はあるからな。私も月を傷つけられて怒っている。しっかりとお前にも傷物になって貰おうか」
少女は睨みつけてくるが無視する。人間として、女性としての尊厳を奪われるという事で他の者達は納得したようだ。
「しかし、見せしめにはなるまい」
「ならば犯す所を聞けばいいだろう。見せる気はないがな」
「だが、そやつは賊とも繋がっている可能性がある。危険では……」
「そうだな。それらの事も聞こう。そうだ。ならばいっそ、賊の退治も全てこちらで引き受けよう。ただし、条件として鄧艾とその部下と家族を差し出せ」
「それは全て無料でか? もちろん、復興も合わさってだ」
「そうだ。しかし、こちらが払い過ぎだな。賊やそれに類する者の処遇はこちらに任せて貰おう」
「……わかった。それで頼もう」
当主は破壊された周りを見渡して頷いた。
「では契約を交わそう」
「ああ。城でしようか」
「そうだな。鄧艾と言ったか。宿を取ってそこの小娘を綺麗にしておけ。香風も手伝ってやれ」
「私も?」
「そうだ。お前にもお仕置きをしてやらないとな」
「わかった。月様は銀様と一緒に戻ってもらう」
「頼む」
お仕置きされると聞いてどことなく嬉しそうに答える香風。これで香風は大丈夫だろう。裏切られない為に色々と世話をしていたが、予想以上に依存度が上がっている。いや、曹操みたいで問題ないか。春蘭化さえしなければ。
城へと戻り契約を交わす。
「では、料金の支払いを頼めるか?」
「その必要はない」
「何?」
「こちらもお金自体はあまりないのでな。兵士に直させられる所は直す。もちろん、必要な品の購入や賠償金の支払いなどはこちらの担当者にやらせる。これらも経験だから丁度いい」
「そういう事なら仕方ない。では、それまで滞在しているのだな」
「そうなる。賊の情報を集めねばならぬのでな」
「わかった。滞在期間は延長しておこう。それと街に入る税は取らないでおく」
滞在期間が伸びるだけであちら側としてはお金を落としてくれるのだからありがたいだろうし、下手に突っぱねて機嫌を損ねるよりも長く付き合った方がいいと判断したか。
「了解した。それでは失礼する」
「ああ。何かあったらまた来てくれ。それと鄧艾達には引き継ぎがさせ次第そちらに出向かせる」
「わかった」
城から出て取らせた宿屋へと向かう。
案内された部屋に入ると既に寝台には洗われて綺麗にされ、拘束された状態で裸にされた赤髪の女の子と香風、鄧艾が居た。2人も身体を洗った後なのか、髪の毛が濡れていて香油が使われている。
「鄧艾」
「はい。私が見張りをしています」
「準備できた。ご主人様、お仕置きして」
服を脱ぎながら鄧艾に命令した香風。直ぐに赤髪の子の横に立つ。
「私は身体を洗ってないぞ」
「問題ない」
「そうか。ならいいか。それと香風の身体は小さいから痛いだろうが覚悟はあるか?」
「もちろん」
「ならばいい。私も初めてだから覚悟しろよ。もちろん、責任は取ってやるが」
「大丈夫。実験台がいる」
「ふむ。そうだな」
「ふぅーっ!!」
寝台で暴れる赤髪の少女を香風に押さえさせてその身体を楽しませて貰う。
「では、悪い子の定番からいこうか」
少女のくぐもった悲鳴が宿から何度も上げさせたので他の者達も満足だろう。その後は香風にお仕置きという感じで本番はせずに可愛がってやる。流石にまだ小さいからもう少し待ってもらう。その代わり、開発はしておく。
香風がぐったりして眠りだすと、少しして少女が回復したのを見計らって口枷を外してやる。
「さて、色々と吐いてもらおうか」
「ぐっ……」
涙目でこちらを見上げてくる少女は可愛らしく、食べたくなるがまだ我慢だ。
「賊との関係は? 何故盗んだ?」
「知らない。盗んだのは……あいつが悪い」
「あいつ?」
「前の人に売ってた値段を渡したのに売ってくれなかった。だからお金を投げつけて盗った」
「ふむ。まあ、そこは後で聞いておこうか。どちらにしろ私が助けねば太守の娘を殺しかけたのだから斬首は確実だろう。幸い、怪我をしただけで済んだがな」
「……それは……」
「まあ、運がなかったと諦めろ。それと他に理由があるか? 月、お前が怪我をさせた太守の娘だが、お前を助けたがっていたから助けたのだからお前の家族もついでだから世話してやる」
「本当……?」
小首を傾げる女の子。
「ああ。それにお前はこれから私の玩具になるのだからな」
「玩具?」
「正確には愛玩動物か。それとも妾か」
「どっちもわかる。なんでもなるから皆を助けて」
「いいだろう。食料が欲しいのか?」
「それもある。でも、一番は薬」
「薬か。誰か病気なのか?」
「ねねが病気」
「どこに居る。直ぐに保護させよう」
「えっと……」
場所を教えて貰ったので、満足そうに寝ている香風を起こす。
「ふにゅ……」
「そういえば名前は?」
「呂布。字は奉先。真名は恋」
わかっていた事だ。だからこそ鄧艾が本命だと見せかけてつつ、大事な恋を隠した。
「相手はちんきゅー」
「香風、悪いが仕事だ」
「うぅ……」
少し怒った表情をしている香風を撫でながら囁いてやる。
「出来たら後でまた可愛がってやるから行ってこい」
「わかった」
「怪我をさせずに連れてこい。服を持っていったら恋がここに居る証明になるだろう」
「お願い」
「わかった」
香風が着替えて出ていったので外に立っている鄧艾を呼ぶ。
「鄧艾、兵に食料や医療品を医療兵に持ってくるように言ってくれ」
「わかりました。直ぐに戻ります」
「ああ。その後、お前も相手をしろ」
「畏まりました」
冗談のつもりで言ったがあっさりと乗ってきたな。まあ、貰えるモノは貰っておくか。
「さて、恋」
「ん。ご主人様の好きにして」
「ああ」
それから恋を拘束したまま犯し、戻ってきた鄧艾と一緒に頂く。香風はしっかりと陳宮と動物、その他の孤児達を連れて戻ってきた。当然のように兵士に治療と食事を与えさせるように命令しておいたとの事なので、本番なしで可愛がるだけ可愛がった。
溜まっていた事や初めてで自制が聞かなかった事もあり、朝日が昇る頃にようやく眠った。だが、それが悪かった。
「昨日はお楽しみでしたね」
「お楽しみ? 見えないよ?」
「あわわわ」
「子供が見るんじゃない!」
「よ、よくも恋殿をぉぉぉぉっ!」
起きた時に目に飛び込んだのは満面の笑みで笑う月と詠によって目隠しをされている雛里と銀。それに顔色が悪いのに怒っている陳宮。まあ、隣に拘束され、あられもない姿を晒して寝ている恋と香風、鄧艾がいれば仕方ない。
「お兄様、早く準備してきてくださいね」
「怒ってるのか?」
「いえ、別にそんな事はないですよ。お母様から男性はそういうモノだと聞いていましたから。ただ、なんで私じゃないんだろうかとか、全然、全然思ってませんから」
「まだ身体が小さいからだ。もう少し成長してからだな」
「へうっ!?」
「負けちゃ駄目だよ月!」
ぼんっと真っ赤になった月を励ます詠。光源氏計画は順調だな。
「んんっ、五月蝿い……」
「恋殿!」
「ねね、寝てないと駄目」
「ですが!」
「大丈夫。ご主人様が世話してくれる」
「騙されてますぞ!」
「騙されてる?」
「いや、ちゃんと世話をしてやるさ」
起きた恋を引き寄せてキスをしながら胸を揉む。恋も受け入れてくれる。
「きぃいいいいいいいいぃぃぃ――きゅう」
「やりすぎた」
「ねね、こんな所で寝たら駄目」
倒れた陳宮を恋が見当違いの事を言う。とりあえず寝台から出て陳宮を寝台に寝かせる。臭とかは我慢してもらおう。
「鄧艾、起きたか?」
「はい」
「恋の枷を外してやれ。もう大丈夫だ」
むしろ、忘れていた。まあ、そういう遊戯みたいで楽しかったのもあるが。
「わかりました」
「ん、ありがとう」
「構わない。これから同じ主に仕えるのだから」
「よろしく」
恋は陳宮を撫でながらぼーとしている。
「こほん。お兄様、色々とする事があるのでは?」
「そうだった。とりあえず着替えてから食事がてら自己紹介だ」
「わかりました」
それから食事をしながら自己紹介をする。鄧艾の真名が梨花(リーファ)というらしい。しかし、梨花……鄧艾が居るとなると司馬懿までいそうだ。まあ、私が居る時点で居るのは確定だったのだろうが。面倒だが仕方ない。先ずは盗賊退治とその前の準備と行こうか。
三極姫1から2に出て来る鄧艾さんと恋ちゃんです。
しかし、恋ちゃんって超お手軽に雇えますよね。食費だけでいいんだから。 ちなみにメイド服を着せる予定。