現在、私達は洛陽へと向かう途中にある地方都市に滞在している。現在、そこで通行止めをくらっているのだ。愚かにも私達が通行する事を拒否したのだ。
「それで如何様な理由を持って通行を禁止するのだ」
相手の当主と会談して通して貰うよう交渉に相手の城へとやって来た。最悪、相手の領地を迂回すればいいのでそこまで困っていない。むしろ、休暇がてら一部の兵達に自由時間を与えているのである意味では丁度いい。
「ですから、現在我が領内に蔓延る賊共を退治するべく、作戦行動中なのです。そこにあなた方が行動されればこちらの作戦が台無しになってしまいます。その為、当地にてしばらくお待ちください」
「では、何時終わるのだ?」
「わかりませんな。何しろこちらも資金不足でして、はい」
相手の狙いはこちらの金か。
「こちらは帝様への献上品を積んでいる。あまり待てぬ」
「そう言われれましてもこちらとしても困っておりまして……」
「ほう。では帝様や十常侍の方々にはここで無為に足止めされた為、献上品が少なくなった事を伝えるとしよう」
「なっ!? そのような事はそちらの勝手でしょう」
「事実であろう。賊如きに遅れを取って足止めさせているのだから」
このように報告すれば私達も罰せられる可能性があるが、今の献上品を先渡しとして後にもう一度送ると言えば少なくともこちらの被害はない。その場合、帝様に対する献上品のみになるだろうがな。
「で、ではそちらの部隊で賊共を倒していただけますか?」
「それはもちろん構わないが、当然無料(ただ)ではないぞ」
「そうですね。食料を少しばかり提供させていただきましょう」
「こちらが命を掛けるのに食料を少しばかりで済ますと? 少なくとも我らの部隊の全員がかかった日数三食食べられる食料と矢や武器の補充は必要だな。後はかすかばかりの報酬か」
無料で軍を動かすなど馬鹿な真似はせん。大人数を動かすだけで掛かる費用は食料だけでも莫大なのだ。ましてや危険手当も渡さねばならぬのだから。
「そんな金も物資もありませぬ」
「ではどうする? さっさと決めるといい」
「ぐっ……一旦、休憩としましょう。私も仕事が――」
そう言って相手が席を立とうとした瞬間、扉を無遠慮に押し広げて銀が飛び込んできた。
「大変! お姉ちゃんが!」
「――何事だ!」
「どうやら街で何かあったらしい。ここまでとしよう。行くぞ」
「兵を出せ!」
「はっ」
銀と伝令に来た兵士と共に走りながら事情を聞いていくと香風の失態みたいだ。幸い、今の所命に別状はないが大怪我を負ったらしい。
香風
月様と2人で街へとお菓子を買いに出た。詠と雛里は指揮官として護衛隊の下にいるし、銀様とご主人様は城へと出向いている。
「何を買いましょうか」
「甘いのならなんでもいい」
「そうですね。では蜂蜜菓子でも買いましょう」
「うん」
「あっ、あそこに売ってますね」
「本当だ」
店で色々と見ながら買うのを決めていく。護衛隊の皆にも買っていく為に沢山注文していく。沢山のお菓子が入った袋を受け取る。
「泥棒だっ!! 誰か捕まえてくれ!!」
「っ」
私は直ぐに月様を庇うように周りを警戒する。通りの奥の方で兵士が駆けつけてくるのが見えた。
「大丈夫でしょうか?」
「兵士が来た。問題な……くはないみたい」
直ぐに捕まえに入った兵士が果物がいっぱい入った籠を持つ赤髪の子に吹き飛ばされた。泥棒の子はこちらに走ってくる。
「香風ちゃん、お願いします」
「任せて」
泥棒の子の前に立ち塞がる。泥棒の子は私よりも身長が高い。でも、気を使えるような気配はしないから大丈夫。
「そこまで」
「邪魔」
殴りかかってくる泥棒の子の一撃を受け止めて関節を決める。そう思ったぜ。でも、予想以上の力で弾き飛ばされて地面を手でひっかきながら足に力を入れて吹き飛ぶ距離を最小限にしていく。でも、結構離されていく。
「押さえ込め!」
凛とした少女の声がすると複数の兵士達が泥棒の子に飛びかかる。でも、練度が低すぎる上に連携もなっていないため、あっさりと一人が掴まれて泥棒の子の馬鹿力で武器にされて周りの兵士を吹き飛ばす。
「ちっ」
命令を出した黒紙の少女は長剣を引き抜いて泥棒の子に斬りかかっていく。それに対して泥棒の子は大人の兵士をなんでもないかのように少女に向かって投げ付ける。少女はあっさりと避けてそのまま進んでいくが、避けた先には月様が…………居た。
「っ!?」
気を全開にして制動を掛けて急いで駆けつける。直ぐに隠密部隊が月様の盾になる。
「へぅっ!!」
「月様っ!」
だけど、私は間に合わず、隠密部隊は彼らごと月様に激突した。
「月様ぁぁぁぁっ!!」
直ぐに到着した私は急いで邪魔なモノを退けて月様を助け出して抱き起こす。助け出した月様はぐったりとして、方腕が変な場所で折れていた。
「あっ、あぁぁぁぁぁぁっ……」
心の底から黒いものが湧き出してくる。
――月様を守れなかった。ご主人様に命令されたのに。頼まれたのに! 私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで、私のせいで!
「……捕まえるなんて……せず……最初から……殺せば良かった……」
「……じょ、徐晃様」
目から液体が流しながら声の方を見ると隠密部隊の人達が起き上がっていた。私は残った理性を総動員して命令だけする。
「月様を守れ。一人は伝令」
「「「はっ」」」
「私は……アイツラヲ……殺す!」
背中に担いでいた戦斧を取り外して全力で駆けて飛び上がる。
「邪魔、するな」
「ちぃっ!?」
少女が吹き飛ばされた瞬間、上空から気を纏わせた全力の一撃で敵を攻撃する。
「くっ!?」
避けられたが、地面を粉砕して礫を全方位に無数に放ち攻撃する。
「ぐぅっ!」
礫を腕を交差させて防いでいる所に身体を回転させて全力で横殴りしてやる。
「がっ!?」
吹き飛ばされて武器屋の扉を破壊して中に消える。直ぐにそちらを見ると敵は血を流しながら起き上がって壁に設置されていた槍を持って出てきた。
「よくも、やった」
「死ね」
相手を殺す為だけに威力を重視して攻撃を放つ。互いに力の限り放つ一撃は私に部がある。だけど、相手はそれに気付くと直ぐに力をずらしたりして対応しだした。
数十回打ち合って何度も金属音を鳴らしていく。私の一撃は地面を陥没させる。相手は色んな物を盾にして防いでくる。相手の一撃は避けて物に当てて隙を作るか、戦斧で防いで押し込む。すると流されて周りを破壊する。
上段から放たれる攻撃の威力を流す為に相手が武器に力を入れた瞬間、私は武器を手放して相手の槍を掴んで思いっきり蹴りを放つ。武器を手放すとは思っていなかったようで体勢が崩れて簡単に腹を晒してくれた。
「がっはっ!?」
肺の空気を吐き出した瞬間、一瞬だけ力が弱くなり反応が鈍くなった。直ぐに槍を潜るように懐に入り込んで頭を掴んで地面に思いっきり叩きつける。無茶な体勢からしたせいで陥没まではいかなかったけれど、そのまま馬乗りになって首を絞めていく。
「死ねっ、死ねっ! 私のせいで、お前のせいで! 月様に怪我させた! 私はご主人様に捨てられる! 絶対許さない!」
「ぐぅっ、がっはっ!? ひゅっ……」
「やめんか馬鹿者が」
「きゃうんっ!? ?????」
蹴り飛ばされて周りを見る。ご主人様が凄く怒ってる。
「銀、香風を取り押さえろ。暴走されては叶わん」
「了解だよ!」
直ぐに私に抱きついてくる銀様。
「むっ。離して銀様。そいつにとどめを刺せない」
「駄目だよ」
「やだ。そいつを殺して私も死ぬ」
「もっと駄目だよ! 絶対に絶対に駄目だからね!」
「でも、月様守れなかった。ご主人様に捨てられる」
「捨てられないからね。一緒に謝ってあげるし、お姉ちゃんも許してくれるから!」
「嫌われたら……生きて……いけない……」
「大丈夫、大丈夫だから。お兄ちゃんが香風の事を嫌いになる事はないからね」
「……本当……?」
「うん、うん。だから大人しくしようね?」
「わかった。大人しくする」
ぼーとなってきた頭でご主人様の方を見る。すると敵の胸を何度も触って、何度も口付けをしてた。
「むぅ、むかむかする」
「それは確かに。でも、やりすぎたんだから仕方ない」
しばらく見ていると敵の呻き声が聞こえて、荒い呼吸音が聞こえてきた。ご主人様は腕で汗を拭って疲れた表情をしていた。
「ちっ、殺せなかった」
「黒いよ香風! 何時ものに戻って! お願いだから! 怖いのは嫌だよ!」
「ご主人様次第」
「いい子いい子」
銀様が私の頭を撫でてくる。私は大人しくご主人様の裁きを待つ。どんな裁きでも受け入れる。あの時から私の全てはご主人様のものだから。
誰かわかるかなー?
ちなみに原作より当然若いです。
一人は恋姫
もう一人は三極姫
答えは明日!