真・恋姫†無双~董家伝~   作:ヴィヴィオ

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準備期間
プロローグ


  

 

 

 

 真っ暗な真っ暗な場所に居て、身動きが一切できない。声も出ないし絶体絶命のピンチといえる。そもそも何故こうなった。

 

 アメリカに留学していた俺は年末に帰国して少ししたら両親に中国旅行を誘われたんだ。それから中国に行って観光を楽しんだ。どうせならと興味のあった董卓の墓に来たのだが……そうだ、思い出した。勾玉みたいな落し物が置いてあって、拾ったんだ。それから勾玉が急に光ったと思ったらこうなっていた。

 

「…………ま……に……ま…………」

 

 なんだか声が聞こえて来る。意識を向けるとどんどん聞こえて来る。

 

「……さま……お……」

 

 同時に周りの景色が明るなって身体が浮いていく。すると目の前に長い銀髪に青い瞳をした少女が上から落ちてくる。何処かに見覚えがあるその少女は俺の方を両手でがっしりと掴んできた。

 

 ――何これ!?

 

 抗おうとするが一切動けない俺はどうしようもない。

 

 ――問おう。貴方は生きたいか?

 ――そりゃもちろん!

 ――ならば私の器を与えよう。私が貴様に命じるのはただ一つ。私を今まで世話してくれた妹達を守る事だ。

 ――え? 女とか嫌なんだけど……

 ――邪魔な仙人共の残滓は私が排除してあげるから安心するといい。

 ――ちょっ、まっ!? 話を聞けよ!

 

 そのまま少女は落ちていき、俺は光に向かって浮上していった。

 

 

 霞んだ視界に知らない天井が映ると急に息が苦しくなって慌てて空気を吸い込む。しかし、うまくいかずに咳き込み、盛大に口の中に溜まっていたものを吐き出した。

 

「ごほっ、がはっ!? ゴホッ、ゴホッ」

「お姉さま!」

「お姉ちゃん!」

「奇跡だ! 息を吹き返したぞ!」

「董君雅様を呼べ!!」

 

 直ぐに仰向けからうつ伏せにされて背中を叩かれる。すると咳と一緒に大量の血を吹き出していく。次第に吐血がする事が無くなり、身体を布で綺麗にされる中、俺は意識を失った。

 

 

 鳥の鳴き声に目を開けると知らない天井が飛び込んできた。直ぐに周りを見渡して現状を確認する。すると可愛らしい小さな幼女が2人も居るではないか。

 

「……なに……これ……?」

 

 口から出た声は子供のような声だった。慌てて窓の方を見ると写っているのは俺……いや、私であろう暗闇の中で出会った少女の姿があった。

 

 ――ないない! あってたまるか!

 

 信じられない事に頭を何度か振って追い払う。だが、改めて床に座りながら寝台に頭を乗せて寝ている2人を確認する。

 

「……やっ、ぱ……ない……な……」

 

 その2人の少女はすごく見覚えがある。百歩譲ってトリップや憑依、転生はありかも知れないが、どちらか一人はありえない。

 

「月、ここに居るの……あっ、起きて大丈夫なの?」

 

 入ってきたのは緑色の髪の毛をした幼女。月と呼ばれた少女を探してきたようだ。

 

「……」

「なによ?」

「……詠……?」

「そうよ。それがどうかしたの?」

 

 名前を呼ぶとこの身体を器と呼んだ少女の記憶が蘇ってくる。まず、この少女の正体は三極姫と呼ばれるゲームの1と2に出て来る仙人たちが創造した人型の玉璽だ。英雄や帝王などの魂を取り込む器だったはずだ。

 

「へう~詠ちゃん……」

 

 そして、寝台で寝ている少女が真・恋姫†無双に出て来る董卓。原作とは違い、女の子になっていて他の董卓とは違って心優しい少女。現在は原作前なのかかなり幼い姿だ。

 詠と呼ばれたのは月の幼なじみで月のことを大事に思っている董卓軍のメガネを掛けたボクっ娘軍師、賈駆だ。この子が先程部屋に入ってきた子だな。

 この2人は恋姫のキャラなのでこの世界が恋姫ならまだわかるが、もうひとりの子が問題だ。まあ、恋姫の世界という事が真名がある時点が確定なのだが。

 

「あ、大丈夫ですか!」

「あ、ああ、だっ、大丈夫だ……」

「うにゅ……お姉ちゃん達……五月蝿い……」

 

 目を擦りながらもう一人の銀髪ツインテール幼女が起き上がった。赤い瞳をした彼女はこの身体と同じく三極姫1から3に出て来るみんなのアイドル華雄ちゃんだ。しかも、どうやら記憶を見る限りこちらの世界での名前は字が董旻。字は叔穎。真名が銀(イオ)。つまり彼女は俺と月、董卓の妹となっている。本物の三国志では弟なのだがな。つまり、華雄が2人になんてならなかった。良かった良かった。

 そして、俺、私自身は董擢。字は孟高で真名が黄泉(よみ)。つまり、父親に董君雅、母親に池陽君という事になり、長男か長女になる。俺……もう、私でいいか。私自身はお父様とお母様の間になかなか子供が出来なかった時に拾われた子のようだ。この身体は仙人の妨害もあり、身体が病弱になっていて寝台からあまり出れない。その為、後から生まれた董卓が血筋の事も考えて家督を継ぐ事になるようだ。この両親と家族は血の繋がりがない私にもしっかりと愛情を注いでくれたようだ。

 器の少女はこれから起こる事、三極姫の事として未来を知っているようで魂を器に吸われていた俺を見つけ出してくれたみたいだ。これが記憶を漁った限りの事実だ。

 

「あの、本当に大丈夫ですか?」

「ああ、もんだい……いや、少し眠い。もう少し寝かせてくれ」

「わかりました。行こ、詠ちゃん、銀ちゃん」

「は~い」

「ええ」

 

 3人が出て行った後、改めて最大の事を確認する。

 

「ごくっ……や、やるぞ……っ!!」

 

 手を服の中に入れて確認してみる。すると感触があった。

 

 ――大事な息子が、息子あったぁぁぁ!!

 

「男の娘?」

 

 ――いや、待て。記憶では女だった。つまり、性転換が行われている。つまり、これは置き土産という事か! ナイスだ! 俄然やる気がみなぎって来た。ならばやってやろうじゃないか。三極姫で呂布を除けば最高のステータスだからな。邪魔をされない限り、呂布はこちらの味方になるし……いや、邪魔をされる可能性もあるなら急いで確保するべきか。そもそも奴は何処にいる? 駄目だ。わからない。せいぜい、恋姫の新作から河東郡楊県に徐晃が居るくらいはわかるが。ああ、荀彧も欲しいな。

 

「どちらにしろ人手と金がいるな。現代知識を使って金と人手を手に入れればいい。くっくくく……大いに楽しませて貰うとしよう」

 

 まあ、先ずはリハビリだろう。いや、資金稼ぎと同時進行でいいか。せっかくお父様が太守なのだからな。

 

 

 

 

 


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