不知火 灯の野望~姫武将に恋と遊戯を与えます~ 作:騎士見習い
ついにキタキタキタキタキターー!!!越後ですよ!越後といえば、美味しい酒に米。そして越後美人であ~る!!
その中でも越後の軍神やら龍、毘沙門天の生まれ変わりと日の本で呼ばれている上杉謙信は想像を絶するほどの神聖的な雰囲気を持つ美女らしい。
「謙信ちゃんに会いたくてウズウズするね蔵人ちゃん!」
「私も同種にしないでください灯様。それに、仮にも毘沙門天の生まれ変わりですよ。手なんか出したら生きて帰れません」
「手はダメなら俺のナニは大丈夫ってこと?」
「………はぁ」
奥州を離れて一週間経つけど、蔵人ちゃんの俺への態度がだんだん悪くなってるんだけど。無言の溜息ほど傷つくものはないよ。
それよりも越後入りしてから二日。走りや馬を交互に使いながら謙信ちゃんのいる春日山城の目前である城下町のとある団子屋に入り浸っている。
運良く俺の謙信ちゃんへのラブコールが民に聞こえてない。団子屋の団子をお茶と共に味わっていると、突然、辺りが騒ぎ出した。歓声とも呼べるような騒ぎように、
「見てくださいあれを」
歓声の元となっている者を蔵人ちゃんがしめす。
そこには勇ましい顔つきの少女が猛々しい馬に乗って闊歩していた。
「……ってあれ?灯様どこですか?」
気がついたら体が動いていた。悪気はない体が勝手に動いていた。つい間がさして。数々の性犯罪者の言い訳を脳内に浮かべてしまっていた。
「君が兼続ちゃんだね!噂通り真面目そうに見えて抜けてそうな感じだね!」
馬の行く手を遮り、兼続ちゃんの前に立ちながら言ってしまっていた。蔵人ちゃんの方を見ると、頭を抱えて他人の振りを貫き通す意志がひしひしと伝わってくる。
「な、なんですか!!突然現れたと思ったら人を貶すその無礼は!!よりにもよって謙信様の懐刀である私に向かって!」
「自分で懐刀って言っちゃうなんて可愛いなぁ」
「んなっ!?まだ口が減らないと。なら刀の錆にしてくれます!」
顔を真っ赤にして斬りかかっくる兼続ちゃん。数回の会話のキャッチボールで命が絶たれてしまう状況を作る自分の才能が怖いぜ!
やっぱりこういう娘は怒らせると可愛いタイプだね。
とまぁ、そんな安心するような状況ではなく、馬の背を踏み台にし空中から振り落とされる兼続ちゃんの刀を紙一重で左側に反り避ける。
かわされても焦る様子を見せず、着地と共に横なぎの二太刀目を繰り出される。今度は避ける間もないため渋々、右の袖口から暗器の一つである忍び鎌を取り出し鎖の部分で受け止めるとカキンッと金属同士がぶつかる音が辺りに響き渡った。
「チッ、忍でしたが。ここでの戦闘は少々、部が悪いのでひとまず預けておきます。運が良かったですね」
刀を鞘へと納めふと馬に跨り、何事もなかったかのように春日山城へ進みだして行った。
「ふぅ」
「ふぅ、じゃないですよ。野次馬が集まってきたじゃないですか」
呆れに呆れているためなのか笑顔の蔵人ちゃん。言った通り、周りには騒ぎを聞きつけた野次馬や武士が増えつつある。人気のない場所に移動するべく、早着替えの術!でとある町娘とその彼氏を演じながら移動した。
「ほんっとに馬鹿なんですか?灯様は!」
「どうどう、落ち着いてよ。何も考えなしで飛び出したわけじゃないんだから、ね?」
「ほぉ、先程の欲望丸出しの行動のどこに考えがあったと?」
疑い100%でこちらを見てくる蔵人ちゃんに胸元に入れておいたモノを見せる。
「……櫛、ですか……?」
「そう。ちなみに兼続ちゃんの着物と胸当ての間にあったので盗りました」
「で、その櫛をどうすると?」
ま、来れば分かるよと言い残し、春日山城へと歩きだす。
*
「此度は私の大切な櫛を届けてくださり誠に感謝しておりま、す!!」
優しい優しい俺と蔵人ちゃんは櫛を届けに来たと称し、こうして春日山城の城内に入り、兼続ちゃんと二度目の再開をしている。
「ちょ、灯様。直井様の額に青筋が見えているのですが……」
耳元でひっそりと囁いてくる蔵人ちゃんの生暖かい息をこそばゆいと感じながら、
「どうにかなるよ」
「──分かりました。信じますからね」
そう言って離れる。
わざとらしく咳払いをして話しだす。
「いえいえ我々としては当然のことをしたまでですよ。にしても大切な櫛をなくしてしまって、さぞかし慌てられたでしょう?」
「え、ええ。どこぞの馬の骨かすら分からない貴様らのような忍のせいで、ね!」
今にも斬りかかってきそうな兼続ちゃん。だが、客室のため下手に振り回し部屋のどこかに傷の一つでも付けると、ただならぬ事態になるため我慢している。
それに、他の者から見れば俺たちは紛失したモノを届けた心優しき男女である。か擦り傷でも兼続ちゃん自身の品格の失ってしまう。
「言いたいお礼は山ほどありますが、その前に名と目的を」
怒りの目から見極める目と変化した兼続ちゃん。突然の質問だが、答えなければ切り捨てられるだろう。
「俺の名は!不知火 灯」
「私は世瀬 蔵人です」
「不知火?世瀬?聞いたことがないですね。どこの忍で?」
名が知られていないという事実を悲しむべきか、忍べていることに喜ぶべきか、微妙な気持ちにいる。
「どこにも属してない報酬さえいただければ何でもする雇われ忍です。ただいま募集中です」
「なるほど。……名乗らせてこちらが名乗らないのは無礼ですね。私の名は直江 兼続」
愛の兜で有名な部将である彼女。愛の前は義を重んじており、今では忠誠心、慈愛、友情とこの戦国の世には珍しい人物である。それに加え、知恵も武も優秀と非の打ち所がない。
「よろしく兼続ちゃん」
「気安く名を呼ぶな」
「兼続ちゃん兼続ちゃん兼続ちゃん兼続ちゃん兼続ちゃん兼続ちゃん兼続ちゃん」
届け!俺の想い!!
「申し訳ありません、うちの灯様が」
「いえ、世良どのも大変な苦労をしていると痛感します」
「「はぁ……」」
何この空気?まるで俺が悪いやつみたいじゃないか!
「騒がしいわね兼続。お客かしら?」
一切気配を感じることができず、戸が開く。部屋に入ってきたのは雪のように白い肌に見るものすべてを虜にする紅い瞳。思考するまでもなく、彼女が毘沙門天の化身。上杉 謙信、本人であると分かった。
だが、俺は不思議と彼女を毘沙門天の化身というよりも白兎という例えが頭に浮かんでしまった。
「どうかしたの?」
一体どれだけの時間が経っただろうか?彼女に魅入ってしまい体感で何分も見ていたような錯覚に陥っていた。横を向くと蔵人ちゃんも俺と同じような状態となっている。
「ど、どどどどうして謙信様がこちらに!?」
「あら、いたら迷惑だったかしら?」
「い、いえ!そんなことありません!」
ありがと、とクスクスと笑い戸を閉めた。
「は!一体私は……?」
戸を閉める音がスイッチとなったのか蔵人ちゃんはようやく我に帰った。
謙信ちゃんは洗礼された動作で兼続ちゃんの隣りに座り、今までのいきさつを身振り手振りで教える兼続ちゃんを生暖かい目で見ながら、茶菓子をリスみたい食べる蔵人ちゃんの頭を撫でながらお茶を啜る。
「兼続が迷惑をかけたわね礼を言うわ」
「いえいえ困ったらお互い様ですよ。謙信ちゃん」
「んなっ?!謙信様に向かって、け、謙信ちゃんなどと……無礼にも程があります!!」
怒りが頂点に達したらしく畳に置いていた刀を掴み取ろうとしていた。
「刀を置きなさい兼続。謙信ちゃん……初めてかしらそんな名前で呼ばれるなんて。灯、あなたの好きなように呼びなさい」
何か言いたそうな顔をしていた兼続ちゃんだが、渋々といった様子で中腰だった体勢を元の体勢に戻し、刀も言われた通り置いた。
「ついでに申しますと。ある一定期間、俺たちを雇ってくれませんか?」
「いいわよ」
何も考える仕草をせず、即決で決める謙信ちゃん。裏切りを全く恐れていない辺りは化身としての証なのかな。
許しをこえば必ず許す、何度も何度も。繰り返すうちに敵の心が折れ、二度と戦をしようと考えなくなる。謙信ちゃん自身は善意なのだろうが、敵からしたら圧倒的な地力の差を見せつけられるだけ。
その行動一つ一つが越後内部の敵を絶やし、兵の士気を上げ未来では敵なしと謳われていたほどの大名となったのだろう。。
「兼続。あなたはこの二人とともに行動し三日後に越後へ攻めてくる武田の部隊を迎え撃ちなさい」
早速こき使う気の謙信ちゃんだが、手柄を挙げられる機会を得られたのは大きな。にしても、川中島以外でも武田と戦っていたなんてな。意外だ。
「はっ!この兼続、必ず勝利してみせます!」
返事を聞くと謙信ちゃんは一言二言残し、どこかへ行ってしまった。
「では、早速ですが……」
腰に隠し持っていたらしい短刀を一瞬にして抜き放ち、俺めがけて投げ飛ばす。至近距離、そして鍛えられた肉体によって短刀は素早い蝿をも空中で仕留めるほどの速さで額に飛んでくる。どんな
───が、それはただの手練の話である。
「──俺は遥かその上にいる」
避ける時間もない、小太刀などで守る時間もない。なら、弾けばいい。
口に含ませていた小さな鉄球を勢いよく吹き出し、短刀の刃の先端に当てると、数回転した後、畳に突き刺さった。
「灯様を舐めないでください。あなたごときが殺せるのなら私がすでに殺してます」
兼続ちゃんが短刀を投げたのと同時に兼続ちゃんの背後に回った蔵人ちゃんはとても冷たい表情で首元にクナイ突きつけている。
「参りました……」
脱力したように崩れ落ちる兼続ちゃん。交戦の意志がないと知った蔵人ちゃんはクナイをしまい、元の明るい表情に戻る。
「蔵人ちゃんは俺を殺そうとしてたのかな?」
「嫌だなぁ〜言葉の綾ですよ。一応、技術的な面では憧れてますから」
さっきの攻防で蔵人ちゃんの残酷な一面を垣間見た気がしたが、まぁいいや。
完璧なタイミングでの奇襲を破られたのが悔しいのか、俯きながら肩を震わせている兼続ちゃんに刺さりっ放しの短刀を手渡そうとすると、
「さぞかし厳しい鍛錬を積んだのでしょう!!不肖、直江 兼続御見逸れしました。先程までの無礼、深く反省しております!よろしかったらこの、わたくしめに稽古の指導をお願いします。灯先輩!」
興奮した様子で捲し立てられてしまい、聞き取るのが大変だったが。まぁ理解した。
ある程度、武を極めたと思っていたが上には上がいることを知り、益々極めたいということである。つまり、クソ真面目な娘だということ。
「さすがに無償とは言いません。周りのお手伝いぐらいはさてももらいます。」
「例えば?」
「炊事家事洗濯に買い出し、寝付けないのならば添い寝でもなんでも。……あまり体には自信がないのですがお背中を流すぐらいはできます。」
「ふっ、そこまでの情熱があるのならいいだろう!!俺の稽古は厳しいぞ兼続ちゃん!俺は案外寝付けない!!」
ん?ロリコンだって?そんなもん奥州にいた頃以前に捨てているわ!!
「……体が発達してる成実様はまだしも、年相応の体型をしている兼続どのに手を出すのわ……あれですね」
気合いに燃えた兼続ちゃんと熱く手を握り、互い意志を滾らせている時に不意に放たれる冷たい蔵人ちゃんの一言がチクッと刺さる。
「何を言ってるんだい!蔵人ちゃん!」
「いや、まぁそれを知っててお供してますけど……行き過ぎはよくないですからね」
ありがたい指摘を胸に水性ペンて刻みながら頷く。
「さぁ灯先輩!いつ稽古をします?今ですか!」
この空気の読めなさは真面目の証拠である兼続ちゃん。
「じゃ、明日からでよろしく」
「はい!!」
☆
添い寝とかお背中を流すとか……うぅ〜思い出すだけで恥ずかしいです。
兼続ちゃん可愛いんじゃぁぁー!!