不知火 灯の野望~姫武将に恋と遊戯を与えます~   作:騎士見習い

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伊達成実ちゃんってクールなバカって感じで可愛いよね!

奥州についてすぐ、伊達政宗ちゃんたちに会えたし、ちっぱい触れたしで良いこと尽くしだった一日。夕暮れ時に成実ちゃんと約束した昆虫採集のため起床したのが深夜三時である。成実ちゃんの登場を待つべく屋敷の扉の外で待つ。

二度寝をしたい!だが、成実ちゃんと成実ちゃんのおっぱいのためなら一週間は不眠不休でいけるぜ!

 

現代の東北に位置することだけあって、気温は他の地域と比べ低い。その分、空気が澄んでおり空に浮かぶ星が煌びやかに映えている。

 

「こんな夜遅くにどうしたの?小十郎ちゃん」

 

俺の台詞を言い終えると屋敷の庭にある不気味な彫刻から姿を表した小十郎ちゃん。

 

「気配を最大限消したつもりなんですが、さすがですね灯どの。初対面の時といい、灯どのは他の武士とは別格の気がしてたんですが……どうやら間違ってなかったようですね」

 

「俺が他の武士と別格なのは破廉恥なことに関してだな!」

 

「そうやってすぐに誤魔化す辺り、怪しいですね。灯どのは何者なんですか?もし、灯どのが姫に危害を加えると者ならば容赦なく、ボクが斬ります」

 

良い目だ。大切なものを守るために命を懸けている者にしかできない目、迷いも躊躇いも感じさせない彼女には嘘をつくことすら叶わないだろう。

 

「仮に俺が政宗ちゃんの敵だとしたら、周りにいるのも襲ってくるのかな?」

 

気配だけなら五、六人はいる。木の陰、屋敷の屋根と様々だが、一人一人は手だれの者だと気配の消した方で分かる。

 

「ますます灯どのの正体が気になってきましたよ」

 

音もなく小十郎ちゃんの脇に七人の忍が現れる。一人見落としてたか……。

 

「はぁ~分かったよ。黒脛巾組と今ここで争うのは得策とはいえないしな。

正直に言うよ。俺は忍だ、警戒しなくて大丈夫どこにも仕えてないしがない忍だから」

 

俺の言葉で納得がいったように相槌を打つ小十郎ちゃん。

 

「あなたたちは灯どのをどう判断しますか?」

 

忍にも意見を求めるあたり、頭も切れて冷静な証拠。たった一人で政宗ちゃんの身を守ってるだけあるね。こういうのとは敵として戦いたくはないものだな。

 

「そうですね、一つだけ分かったことがあります。………彼は良い人ということです」

 

代表で小十郎ちゃんの質問に答えた忍の予想もつかなかった答えに場が静まり返ってしまった。

小十郎ちゃんもポカーン開いた口が閉じていない。

 

「へ?……なんで良い人と分かるんですか?」

 

かろうじて我に帰った小十郎ちゃん。

 

「彼は、いや灯どのは我々の組織名を読めるのですよ!!片倉様ですら最初は読めずに苦笑い。他の地域にいる忍には同情をされる始末。だから、我々の組織名を読める人は良い人に決まってるんです!」

 

他の忍も各々の辛い記憶を思い出しているらしく啜り泣いている。

こんな可哀想な忍を初めて見たよ。

 

「もういいです、下がっていてください」

 

御意と皆、一瞬でその場から消える。切り替えの早さに感心する。

 

「さっきの彼らの言葉は忘れてくれて結構です。やっぱり結局はこうなるのですね」

 

そう言うと鞘から刀身を抜き出す。ありゃありゃ?これはもしかしてバトルパート突入ですか?

 

「いざ!尋常に勝負!」

 

「一体何をしてるの?喧嘩?」

 

お手製の虫あみを担ぎ、これまたお手製の虫かごを両肩に二つずつ垂らしている。どんだけ仕掛けたんだろうか……。だけどナイス登場!ヒロインは遅れてやってくるんだね!

 

「んな!?成実どの、なぜこんな時間にここへ!?」

 

「灯と虫を採る約束してたから。帰る時に言わなかった?」

 

「あっ……!」

 

真面目そうに見えて少し抜けてるんだね。

 

「でも、良い機会です。成実どのは灯どのをどう思っているのですか?」

 

「好きだよ。とっても好き」

 

「す、すすす好き!?ボクが聞きたかったのは敵か味方かって、ことです!………えっと、好きって祝言をする方の好きってコトですか?」

 

やはり小十郎ちゃんは乙女だね。そっち方面のことは気になっちゃうお年頃なのかな。男装してるのが勿体無いぐらいだよ。

 

「私は別に灯と祝言を挙げてもかまわない」

 

「「ゲホッゲホッ!!」」

 

成実ちゃんの爆弾発言に同じタイミングでむせる俺と小十郎ちゃん。突然すぎて子供の名前を考えちゃったよ!!

 

「これで満足?じゃ、行こ!灯!」

 

手を引っ張られ走るというよりも駆けるといった方が正しいスピードで屋敷をあとにした。

後ろから覗く成実ちゃんの顔はほんのり紅に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

「ほんと分かんない人ですね。でも、敵じゃないのは確かですね」

 

突然現れて、ボクたちに足りない何かを補ってくれるような……そんな気がする。抜いてあった刀身を鞘に納め、姫が寝ている寝室へと移動するため、屋敷の中に入る。

 

「灯は我が野望を邪魔する者だったのか?小十郎よ」

 

「姫!?起きてらっしゃたのですか!」

 

扉を開けた目の前に腕を組んで立っているのは、ボクの主である伊達政宗その人である。

一時期、姫のために堺へと赴かせたのですが、たまたまそこで出会ったという尾張のうつけ姫の猿。通称、相良 良晴のせいで姫はますます南蛮の書物の影響を受けてしまわれた。逆に自分の最も嫌悪していた左眼の瞳を無事に克服し帰って来てこられました。

 

 

「突然抱き枕が消えれば不審に思って起きるのは当然であろう。それに……勝手に消えて寂しかったんだぞ!!」

 

「申し訳ありません姫!」

 

「よい、許す。それで、灯はどうなんじゃ?」

 

「ボクが思うに灯どのは敵ではありません。ですが、邪な気持ちがあるのは確かです」

 

「それなら問題ないにゃ。ふにゃぁ~、我は眠いからべっどで寝るぞ小十郎」

 

大きな欠伸を一つし目を擦っているところを見ると、限界なんですね。

 

「それだけですか?姫。ボクの意見なんかで決めてしまわれてよろしいのですか……?」

 

「何を言っておる。小十郎の意見だからこそ我はこうして、安心して眠りにつくことができるのだ。これからも信頼しておるぞ小十郎」

 

何でこういう時だけ姫はボクの心を掴むことを言うんですかね。普段は手に余ることばかりなのに……本当に卑怯な方です。だからこそ、この命を懸けて守ろうと決意できたんです。

 

「御意!」

 

 

 

 

 

 

 

駆けること5分。木々が生い茂っている林へと着いた。成実ちゃんが言うにはこの林は虫がたくさん来るらしい。暗くて足元が安定しない地面をスイスイと進む成実ちゃんを必死に追いかける。

やっぱり慣れてるなぁ~。

 

 

「ねぇねぇ成実ちゃん。仕掛けっていくつ付けたの?」

 

「一つ」

 

「ほんと?」

 

「ほんと」

 

ものすごく俺が教えた蜜を信じてくれているよ。これでもし一匹もいないような状況だったら、切腹するしかないな。

 

「ほらあれ、見えてきた」

 

周りの木よりも一回り大きい木が強い存在感を醸し出していた。物音で虫が逃げないように音をたてずにゆっくり、抜き足忍び足と近づいていく。

成実ちゃんはロウソクに火を灯し蜜を塗ったであろう箇所を照らす。

 

「「お、おぉ~~」」

 

声を殺しながら二人で感嘆の声を挙げる。

うじゃうじゃといるいる。どす黒い虫から蛍光色の虫と多種多様な虫が黄色く染まっている蜜の箇所に群がっている。

 

「さすが灯!!本当にありがとう!!」

 

感極まって成実ちゃんは俺の頭を掴み胸に埋めてくる。歳に似合わないほど成長したおっぱいは柔らかく、程よい弾力の感触が顔に伝わる。だがしかし!ホールドしてる腕の力は強く、頭蓋骨がきしみ始めている。まさに天国と地獄。

 

「いえいえどう致しまして。さっ、採集しよう」

 

「うん」

 

ホールドから解除されおっぱいの感触を惜しみつつ離れる。そして、ゆっくり虫を傷つけないように掴み、虫かごに入れていく。

 

一匹、また一匹と順調に数を減らしていく。

数分経つとすべて採り終わり、虫かごはパンパンに膨らんでいた。

 

「こんなに採れたのは初めて!やっぱり灯はすごい!」

 

「いや~それほどでもあるよ。じゃあボチボチと帰ろっか」

 

駆けてきた方向に歩きだす。だが、足音が自分のしか聞こえないことを不自然に思い、後ろを向くと成実ちゃんは、じ~とさっきの大木の上を見ていた。

 

「どったの成実ちゃん?」

 

「あれ見て」

 

指差す箇所を見上げると立派な角を持つ鈍い光沢を放つ黒い物体がいた。それは、現代の子供なら喉から手が出るほど憧れる虫……ヘラクレスオオカブトである。

 

それにしても変である。ヘラクレスオオカブトは中央アメリカから南アメリカの熱帯に生息しているはずである。風土的に日本にいる訳が無い。

 

「ちょっと採ってくる」

 

「え、うん」

 

う~ん、南蛮船の船に紛れ込んだのか、それとも、どこぞの商人が買ったが逃げてしまったのか……分からない。

 

「採れ……きゃあぁぁぁ!!!!」

 

突然何かが地面に落ちる音が聞こえ、そっちに顔を向けると。

 

「し、し、しししし成実ちゃん!!!???」

 

考え事に集中していたために、クソっ!

 

近づこうとしたが、手で制される。

 

「大丈夫。足場を踏み間違えて落ちただ、痛っ!」

 

何事もなかったよう立ち上がるが右足から崩れ落ちる。

 

「大丈夫じゃないだろ!診せて!」

 

成実ちゃんの足を伸ばし、太腿から下に下がるように押していく。

 

「ここは?」

 

「大丈夫」

 

「じゃあここは?」

 

「痛っ!」

 

右足の足首に痛みがあるらしく、触診するとくるぶしが腫れていた。

 

「骨は折れてないよ。捻挫だね」

 

着ている着流しの袖をちぎり、足首を固定する。まぁ、無いよりはマシだな。

 

「まだ痛むでしょ?」

 

「ううん大丈夫」

 

そう言い、立ち上がろうとするが痛みに堪えられず崩れ落ちそうになるのを支える。

世話の焼ける子だよ、まったく。

 

「全然大丈夫じゃないでしょ。ほら、おんぶするから乗って」

 

成実ちゃんの目の前でしゃがみ、おんぶの体制をとる。素直に乗ってくれないだろうと思っていたけど、文句の一つも言わずに体を預けてくれた。

 

一拍おいてから立ち上がり、足首に衝撃がいかないように注意しながら歩く。

 

「……ごめんなさい」

 

「ダメ、許しません。女の子なのに危ないことをする子は許さない。でも、今後危ないことをしないって言うなら許す」

 

「約束する。だから許して」

 

「分かった許します」

 

ありがとう、と、か細い声で囁く成実ちゃん。

 

会話もなく屋敷まで半分といったところで、成実ちゃんが話し出す。

 

「私は奥州の間だと虫めづる姫って呼ばれてるんだ。確かに虫は好きだよ、でもその影響で色んな噂がある。触れれば寄生虫に寄生させるとか、村の作物が凶作だったりすると私がイナゴの群れを連れて荒らしたとか」

 

突然、語られていく伊達成実の話。あえて、感情を表に出さず静かに耳を傾ける。

 

「私は……変なんだろうか?」

 

ずっと隠していた自分の悩みを吐露する成実ちゃん。普段の成実ちゃんを知らない俺にとっては、どう返せばいいか分からない。だけど、そんなのは関係ない。今の俺の気持ちをそのまま伝えればいい。それだけ。

 

 

「成実ちゃんの歳で虫が好きっていうのは他の女の子からしたら変なのかもね」

 

でもね、と間をあけて続きを語る。

 

「自分の好きなことを我慢して着飾ってる女の子なんかよりも、自分の好きなことを目一杯してる成実ちゃん方が俺はすごく魅力的に見えるよ」

 

「……うん」

 

返事をしたあと、顔を背中に埋める成実ちゃんの体温を背中に感じつつ、夜明けに昇る太陽とともに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───灯を好きになって良かった───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




成実ちゃん無事に攻略!

次回は誰だろうか?では、また!

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