【主人公】戦場起動【喋らない】外伝   作:アルファるふぁ/保利滝良

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実は主人公としては竜ちゃんより目立っていると思う死神君



レイク家の一日

 

朝、陽が顔を照らして眩しい時間

メリル・レイクは朝食をとって、バス停の前にいた 学校のバスは定刻どおりにやって来るので、遅刻は厳禁なのだ

ベンチに座って待つ 早寝早起きしたお陰で、今日も遅刻せずに済みそうだ メリルのしたり顔が朝日に照らされる

数分もかからずにスクールバスはやってきた 鞄を背負って乗り込む

バスの中でメリルは、朝日の当たらない席を選んで座った 眩しくて目が開けられないのが、彼女にとって嫌なことだ

バスは次のバス停で止まる 他の生徒が騒がしく乗り込んできた

その中に、メリルの友人がいた

「おはようメリル!」

「おはよう、サリー!」

挨拶を交わした二人の少女は、隣同士の席で暫く談笑した メリルの金髪とサリーの赤髪が、朝陽を透かしながら揺れる

しばらく楽しいお話をしていた二人の話題は、昨日の宿題へと移行した 鞄を開けたメリルは、自信満々に作文を取り出す

「これが、『私の大切な家族』だよ!」

「すごーい、枠一杯まで文字が入ってるー!沢山書けたんだね」

文字数の多さに驚くサリーに、メリルは照れ臭そうに笑った

「だって、本当に大切で、本当に大好きだから!」

 

 

 

 

 

 

 

昼、太陽が中空の頂点に達する時間 ミシェル・レイクはワークデスクの上にある写真に微笑みかけた

スタンド付きの透明なケースに入ったそれには、人物の幸せそうな姿があった

「ふふふ・・・思い出すなぁ、色々」

写真は二枚あった

片方は、家族全員の写真 遊園地で、係員に頼んで撮影したものだ

風船を持っているメリルの背丈に合わせて、両親はしゃがんでいる

もう片方は『大陸』で仕事をしていた、今より若い頃のミシェルとその夫の姿だ この頃二人はまだ結婚を考えるような間柄ではなく、ただの仕事上のパートナーのような雰囲気だった だがミシェルは、この頃から彼に惹かれていたのだ

そういえば、プロポーズしたのはどちらからだったろうか そんなことを考えていると、突然声をかけられた

「社長・・・レイク社長!」

「あっ、ああ、ごめんなさい つい・・・」

「いえ、やる事が無いから暇だっていうのは問題はないですけど・・・でも今からこちらをお願いします」 

ミシェルの会社の社員は、書類を置いた

ミシェルのいるここは、彼女が立ち上げた宝石の卸売業社である 『大陸』時代で築き上げた努力と根性と財力と事務処理能力を遺憾無く発揮し、ミシェル・レイクは会社を凄まじい勢いで回している

おかげで、有能すぎる彼女のペースに着いていけない社員も続出しているのは、少々の笑い話だ

「はい、わかりました すぐにやっておくわね」

書類を手に取ったミシェルは、部下が社長室を出てからまた写真に目をやった そして、家族のことを思い出し、幸せを噛み締めた

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、日が沈み始める頃 黒いパイロットスーツの男が玄関のドアを開いた

振り向いて内鍵をしっかりと閉め、両手の紙袋を揺らしながらダイニングへ入る パンパンに膨らんだ袋には、食材がたんまりと詰まっていた

食卓に紙袋を乗せ、中の食材を一つ一つ手にとって置いていく 量が量なので、落ちたりしないよう気を付けながら隙間なく置いていく

今朝家族団欒の場となっていたテーブルは、紙袋の中身によってスーパーマーケットのような有り様となった 空になった紙袋を破いて丸めて、ゴミ袋の中へ放り込んでおく ちなみに燃えるゴミ回収の日は明日なので、忘れないようにしておく

続いて冷蔵庫のドアを開き、食材を突っ込む 元々中にあった食べ物は一旦外に出し、買ってきた物をどんどん入れていった

「ふぅ、ただいまー」

その作業をしているうち、玄関が開く音がした 妻か娘かわからない 二人とも声も顔も似ている

作業の手を止めて出迎えに行く前に、夕飯の食材をキッチンに置いておく 今日一日、家族はお腹を空かせているだろう

冷蔵庫から取り出したのは、少々古くなった魚だ よく火を通しておこう

世界で一番大切な家族のために 食中毒は許さざるものだから

 

 





メリルちゃんは超母親似です

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