【主人公】戦場起動【喋らない】外伝   作:アルファるふぁ/保利滝良

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始まりました前日談
主人公竜ちゃんの、訓練生時代でございます



第零章 目覚めよ鼓動と目を開き
【一歩】


 

青い空、白い雲 雲を繋ぐ飛行機雲

熱い太陽が遠慮なく紫外線を降らせ、アスファルトの上の集団をじりじり焼いている

「おーし、走り込みはここまで!各員着替えて八番ガレージへ!」

厳つい顔の教官が、腕を組みながら怒鳴り付ける

甘ったれた新兵には、キツいくらいの言葉が丁度いい 少なくとも、もっとキツい場所への耐性はできる

ここはユーロユニオン合同の訓練施設 毎年沢山の兵士を鍛え上げ、戦場へ送り出している

米露に対して開かれた戦端は、みるみる加速した 新兵器・人型機動兵器も投入され、ここではその慣熟のための訓練も行う 初陣に出る新兵一人一人が全力で戦い生き残れるように、トレーニングは熾烈さを極めた

「では一番、六番、九番、十四番、二十八番、三十六番!ウィンストーンに搭乗、模擬戦区間で待機!残りの三十人も模擬戦区間東の壁でけ見学!もたもたするなッ!!」

六機のHAMMASの前に、それぞれ一人ずつヒヨっ子が集う 彼ら全員、既にパイロットスーツへの更衣は済んでいた

ウィンストーンの背中側へ続く階段を登り、背中のハッチへと滑り込む ハッチを過ぎると、狭いコクピットがあった

シートへ座り、ベルトを絞める 操縦悍に手を、ペダルへ足を置く そして頭上にポツンと備え付いた、虎模様のボタンへと手を伸ばした

ボタンを押した瞬間、コクピットの計器が一気に全て起動する モニターも点き、ウィンストーンの頭部からの映像がくっきりと写し出された

「全機、機体のシステムは起動できたな?」

教官の声が耳を叩く これから彼の指示通りに、HAMMASに乗った訓練を行うのだ

オペレートを聞き逃したら、後で何が起こるか

「では一番の機、ルートは知っているな?模擬戦区間へウィンストーンを歩行させろ 他五機は指示があるまで待機!」

警告音と、赤ランプの明滅

一番遠いところにいるウィンストーンの前方、ガレージの大扉がスライドしていく 外部からは、関係者以外の退去命令のアナウンス

照り付ける太陽光を浴びて、訓練機は一歩を踏み出した

出口の向こうへ消える一番機

他の五機も、教官の指示通りガレージを出ていく

そして、最後の一機の番

「六番の機、出ろ」

モニターに写るのは、開放される扉 それに向かって、一歩、二歩と歩を進める

確かな歩み

二分ほどウィンストーンを歩かせると、コンクリートの塀を抜け、視界の先に広大な土地が現れた ここが、模擬戦区間である

既に他の五機は待機していた 慌てず、歩みを続けてそれに合流する これでウィンストーンが六機揃った

チラリと視界を遠くに投げると、頑丈そうな建物に無数の人影があった 見学を命じられた他の新兵であろう

「貴様ら、今回は優秀な成績の六人による模擬戦だ!」

同期達を眺める暇もなく、教官のどら声が通信機から流れ出た

「ペイント弾を三発受けたら負け!自分以外は全員敵だ!戦闘開始は一分後、それまで好きに散っていろ!始まったら敵を撃て!わかったなッ!」

ウィンストーンが走り出す 他の五機は散り散りに離れた

教官のカウントダウンがゼロとなる

「戦闘開始!!」

HAMMASは、右手に握ったアサルトライフルを構えた

 

 

 

 

 

 

 

 

模擬戦区間東の宿舎 今回の模擬戦の特等席だ

その特等席の中のさらにプレミアシート、監視塔にて二人の女性が双眼鏡片手に下を見ていた

「いいパイロットが見出だせると良いですね、バレンタイン准将」

黒髪の女性が、隣の小柄な女性に訊ねる 模擬戦だというのに、双眼鏡を通したその眼光は鋭い

「宝石の原石は、最初は醜いものよ」

一方、子供とすら言えるような体型の女性は、リクライニングにもたれている 双眼鏡越しでも、あまり模擬戦に興味を示していないのがわかる

「そうなると、原石が見付かるかは見る側の責任になるわ 頑張りなさい、サクラ少尉」

名を呼ばれた黒髪の女性は、その表情に真剣さを増した

 






戦場駆動に引き続き始まった、戦場起動前日談
まだ続きます!

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