やはり俺の魔法科高校入学はまちがっている。   作:T・A・P

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やはり俺の魔法科高校入学はまちがっている。 弐

 

 

 調教と名の言う矯正、もといい教育が長引いたせいで三人が講堂に入った時にはすでに半分以上の席が埋まっていた。座席の指定はないので最前列に座ろうが、最後列に座ろうが真ん中に座ろうが端に座ろうが、それは自由である。

 だが、新入生の分布には、明らかな規則性があった。前半分が一科生、後ろ半分が二科生。同じ一年生、同じく今日からこの学校の生徒となる身であるながら、前と後ろでエンブレムの有無が、綺麗に分かれている。

 誰に強制されたわけでもない、にもかかわらず。

(ったく、一科生だけじゃなく二科生の方もどうにかしないといけなさそうだ)

 比企谷は二人の歩きながら周りを見渡し、いろんな意味を込めて心の中でため息をついた。目の前の一人はこの状況に少なからず気がついてはいるだろう、一度だけ比企谷の方にチラッと目線を送っていた。もう一人は無邪気に空いている席が無いかあちこちに首を動かして、偶然にも前列の端から三つほど空いているのを見つけたようだった。

「ゆきのん、ヒッキーあそこ空いてるよ!」

「そう、じゃあそこにしましょうか」

「…へいへい」

 比企谷の内心は自分だけでも後ろの方に座れないかと思っていたが、さすがに今日のところは二人の意に背く事はやらないようにしようと決めていた。決して、折檻という名の一方的言葉と物理の暴力に屈したわけではない、ホントダヨ。

 最前列の席に行くまですでに座っていた一科生の視線が自分に集まっている事に比企谷は気がついてはいた。前にいる二人に目が奪われた後、その後ろからのこのこついて行く二科生の男に気がつき不快に思っている視線だ。数人が立ち上がるのを目の端に映し、そいつらがいちゃもんをつけようとしているのか、ストーカーに天罰をという暴力の正義を振りかざそうとしているのか、毎回同じ人間しかいないのかと呆れてため息が自然にこぼれてしまった。

しかし、以外にも誰も声をかけてこないことに少しだけ後ろを確認してみると、座ってた別の一科生に止められていた。意外にも冷静な奴がいるもんだと思っていたが、どうやら闇討ちの相談をしているようだった。

「ヒッキー早く早く!」

 由比ヶ浜が大声で比企谷を呼び、さらに視線を集め慌てて二人の元へ急いだ。

「おい、大声出すな」

「え~ヒッキーが遅いのが悪いんじゃん」

「ええ、相変わらず動きが緩慢ね。蝸牛谷君」

「おい、俺を迷子の怪異みたく言うな」

 今日なん度目かのため息をつき、雪ノ下の横、一番端の席に腰をおろした。

「ふふふ」

 由比ヶ浜の向こうの席にすでに座っていた女子生徒が、三人のやり取りを見て微笑ましそうに笑っていた。

「あ、ごめんなさい。みなさんの仲が凄くよさそうに見えたから、つい」

 そのまま微笑みながら、その女生徒は光井ほのかと名乗った。その奥に座っていた光井の友人の北山雫も無表情というか表情があまり出にくいのか、続くように自己紹介を終わらせた。

「私は雪ノ下雪乃よ。これからよろしくしてもらえると嬉しいわ」

「はいはい! あたし、由比ヶ浜結衣。これからよろしく」

 落ち着いた雰囲気の雪ノ下と元気いっぱいの由比ヶ浜、挨拶だけで二人の性格を少し理解したのか光井と北山は笑いながらよろしくと手を差し出してきた。

「それはそうと、比企谷君。あなたは満足に自己紹介もできないのかしら」

「あ? 俺は別にいいだろ。この先関わる確率が低いだろうし」

 我関せずといったように、肩口を指で叩く。それは、自分にはエンブレムがないと無言で言っていた。

「はぁ、比企谷君、そんなのはどうでもいい事よ。挨拶は人として必要な事なの、ああ、あなたは人じゃなかったわね、比企谷菌」

「おい、自己紹介をやらなかっただけでそこまで言われるのかよ。つか、比企谷菌って言うな!」

 いつものやり取りに笑ってみている由比ヶ浜と、今度はポカンとして二人のやり取りを見ていた。二人の言い合いは数回続き、どうやら雪ノ下の勝利で終わったようだ。いつものように。

「あ~比企谷八幡だ。みての通り二科生だから関わることが無いだろうから、特に憶えなくていいぞ」

 ぶっきらぼうな自己紹介に呆れてため息をついている雪ノ下だったが、そんな自己紹介にもかかわらず、

「ううん、これからよろしくね」

「よろしく」

 と、好意的に返してきて二人は比企谷の言葉に機嫌を害した様子はなかった。

 比企谷八幡は実のところ、この二人を試すためにあえてこんな事を口に出した。この二人が二科生というだけで態度を変えるのであれば、早々に切り捨てようと思っていた。自分のではなく、自分の横に座っている二人のために。まぁ、雪ノ下の被害者を減らすためってのも少しはある。

 そんな二人を見て比企谷は知らずに口角が上がっており、それに気がつきすぐ口元を手で隠した。幸いにも気がつかれた様子が無く安堵のため息をついた。雪ノ下と由比ヶ浜が二人と話している声を聞きながら、時たま振られる話に相槌を打ちながら式が始まるのを待った。

 

 

『ただ今より国立魔法大学付属第一高校入学式を始めます』

 生徒会長の声が講堂内に響いた。その声で先程まで雑談に興じていた新入生たちは雑談をやめ壇上に目を向けた。壇上には数人の見るからにお偉いさんが座っており、その一人一人からのありがたいお言葉を賜るようだった。

 そんな壇上の様子に欠伸を噛み殺して比企谷は眺めていた。どの偉い方も話しが長いくせに言っている事はほとほと同じで、『君たちは選ばれたエリートだ』だの『国のために頑張ってくれ』だの『自分の立場を忘れず勉学に励め』だの、どう聞いても一科生にだけ喋りかけていた。そのくせ耳触りのよい『平等』という言葉を巧みに紛れ込ませている事にうんざりして思考を注意すべき男子生徒に割いていた。

 

 

入学試験の当日、比企谷八幡は雪ノ下と由比ヶ浜と同じ一科生になるように言われていた。正確には雪ノ下のそばにいるように言われていたが、そこに由比ヶ浜を加えたのは比企谷自身の願いであった。

 比企谷はこの二人を護るために同じ一科生として入学する気でいたのだが、その日予想外の人物と遭遇してしまった。

魔法、魔法師の評価として採用されているのは『魔法発動速度』『魔法式の規模』『対象物の情報を書き換える強度』の三つである。しかし、比企谷はそんなことで魔法師としての実力が分かるとは思っていない。基準ではあるが、全てではなくそんなもので目を眩ませることを忌避していると言ってもいい。雪ノ下が素直にも比企谷の魔法技能を評価しているが、実際のところ比企谷の恐るべきところはそこではなく魔法とは別の所にある。比企谷は自分の使う魔法をそこまで重要視しておらず、技術として手段として信用はしているが信頼はしていない。唯一自分の中で信頼しているのが、人間観察の観察眼と勘のみである。あと加えるのなら、身体能力だろうか。

比企谷八幡の観察眼、勘、それ故の判断力は敵に回れば脅威である。この日の入学試験、危機回避能力が高くいち早く脅威を嗅ぎとる嗅覚は、一人の男子生徒を嗅ぎ分けた。

入学試験の実技はその場で結果が表示され、お世辞にも魔法技術が巧いというわけではなく周りは彼に見向きをしていなかった。(彼と同時に別のところで2位に大差をつけた少女に注目が集まっていたらしいが)しかし、彼の歩き方、体つき、立ち振る舞いからよほどに修練を積んでいるのがすぐに見て取れ、魔法行使に一切の無駄が見えなかったことからこの中で群を抜いて洗礼されている事実にたどりついた。

だが、それ以上に勘がささやくのを感じていた。いや、その前からだ、目の端にとらえた瞬間にどっと毛穴という毛穴から汗が噴き出る感覚が襲って来ていた。この人物から目を離してはいけないと本能で感じ取った。理性の怪物と言われたこともあったが、今ならそんなことちゃんちゃらおかしく感じる。いうなれば、囁くのさ、俺のゴー○トが。状態だろう。

比企谷八幡はその場で端末を取り出し、連絡を入れる。件の男子生徒のこと、自己判断で二科生となることを。最初は渋っていたが結果的に比企谷の判断に任せるという事になった。

ようやく比企谷の番が廻って来ると、本来の技術をコントロールしできるだけその男子生徒と同じような結果を叩きだした。

 

 

 さっきは知らない振りをしていたが、すでに裏からその男子生徒の名前と家族構成、そして入学試験筆記の成績などの情報を得ていた。

入学試験、七教科平均、百点満点中九十六点。魔法理論、魔法工学、両教科とも小論文を含めて文句のつけようがないほどに、満点。合格者の平均点が七十点に満たないのに、だ。比企谷もその小論文に目を通したが、穴が見当たらず恐ろしく頭が切れる事も理解した。

そんな彼がこんな挨拶に感銘を受けるはずがなく、自分と同じように退屈に思っているだろうと予測し、すでにこちらもマークされているだろうなと改めて心に刻んでいた。

そんなことを考えているうちに新入生代表挨拶となっていた。

『新入生 答辞』

 壇上の脇から一人の少女が真ん中まで歩いて出てきた。先程講堂入口で口論していた少女だった。

『新入生代表 司波深雪』

 司波深雪、入学試験で二位と大差をつけ合格し、比企谷が危険視している司波達也の妹。

「ねぇねぇ、ゆきのん。あの時のあの子だよね」

「ええ、そうね。司波深雪さんというのね」

 この二人でさえ司波深雪に目を奪われているのだ、周りの生徒のほとんどが少し前に乗り出すようにして少しでも近くからみようとしていた。

『この晴れの日に歓迎のお言葉をいただきまして感謝いたします』

 聞けば聞くほどに雪ノ下と声がそっくりだが、言葉づかいが同じというわけではないだろうなと少しだけ安堵し目を雪ノ下から司波深雪に戻す。

『私は新入生を代表し第一高校の一員としての誇りを持ち皆等しく! 勉学に励み魔法以外でも共に学びこの学び舎で成長することを誓います』

 そんな答辞に目を見開いて司波深雪を観察した。表情に変化はなく体の芯もぶれていない、心からそう思って言っているのが分かった。気がつかれないように周りの生徒の様子を探ってみるが気分を害している生徒はおらず、逆にアイドルに心酔しきっているファンの様になっていた。

 司波達也の成績と一緒に司波深雪の成績も得ており、それを見る限り悪くないのだがこの答辞から司波深雪はどこかしら危い感じがひしひしと伝わってきた。この兄妹はシスコンでありブラコンだろうか? と一応の判断で保留としておいた。

 つつがなく答辞も終了し、入学式を無事終える事ができた。

 式が終えると周りに座っていた一科生がすぐに立ち上がり、その場をあとにしていた。混雑が治まるまで座っていたがそこから階下が良く見え、すぐさま立ち上がった一科生は司波深雪が目当てだった事に気がついた。由比ヶ浜の横にいた二人も気がつけばおらず、どうやら彼女たちも同じだと結論を出した。

「ほんと、ゆきのんにそっくりだったね。えっと、司波さん」

「私としてはよくわからないのだけれど、彼女の答辞は好きよ」

 どうやら雪ノ下も答辞の意味は分かっていたようだ。

「うん、凄く堂々としてて、ゆきのんみたいにかっこよかった」

「ええ、彼女とは一度話しをしてみたいものだわ」

「ま、今は無理だろ。てか、これからも難しいんじゃないのか? クラスが同じなら別だろうが」

「あら、あなたも彼女に言い寄ろうとしているのかしら?」

 と、取り消せない自分の言葉に絶望した。

「ヒッキーまたなの!」

「おい、俺は別にそう言う意味で言ったわけじゃねぇ!」

「なら、どんな意味で言ったのかしら?」

 妖しく光る四つの目玉に冷や汗がとまらない。

「お前らが話してみたいって言ったからだろうが。一科生同士なんだからクラスが同じになる可能性が高いだろうって事だよ」

「そうね、あなたが実力を出せずに二科生でよかったわ。彼女に伸びる魔の手が一つ減ったのだから」

「ゆきのん、それくらいにしてクラス分けに行こうよ。放課後になったら時間はいっぱいあるんだし」

「ええ、由比ヶ浜さんの言う通りだわ」

「……怖ぇよ、放課後が来るのがめちゃくちゃ怖ぇよ」

「ほら、ヒッキーも行くよ」

「まったく、今度は遅れないようにきなさい」

「へいへい、分かったよ」

 由比ヶ浜と雪ノ下を先頭に講堂を出ようとしたが、雪ノ下の固有スキル【常時迷子】が発動し、結局比企谷がIDカードを交付する窓口へと連れていった。ちなみに、由比ヶ浜の固有スキルは【破滅料理】である。

 

 

 

 この学校ではクラス割を張り出すのではなく、個別にIDカードを交付しそこで自身のクラスが分かる。そして、IDカードは後に受講登録の時に必要となる。カードはあらかじめ個人別のカードが作成されているわけではなく、個人認証をおこなってその場で学内用カードにデータを書き込む仕組みとなっているからどの窓口でも手続き可能なのだが、ここでもエンブレムの壁ができてしまっている。

 比企谷は二人のカードを先につくらせようとしていたが、由比ヶ浜が強引につれていき結局三人一緒に作成することになった。周りからの嫌悪感たっぷりな視線を、雪ノ下のにらみつける攻撃で黙らせていた。何人か息が荒くなっていたやつがいたが、モウキニシナイデオイタ。

「ゆきのんは何組だった?」

「私はA組だったわ」

「やった! 同じクラスだ!」

 オーバーリアクションの由比ヶ浜を見るにどうやら雪ノ下と由比ヶ浜は同じクラスになったようだ。ヨカッタ、ヨカッタ。

「ヒッキーは?」

「俺はE組だ」

 この学校は一学年八クラス、一クラス二十五人。こう言うところだけは平等だ。

 もっとも、二科生(ウィード)はE組からH組と決まっており、一科生(ブルーム)と同じクラスになることはないのだが。

「ねぇゆきのん、これからホームルームに行ってみる?」

 由比ヶ浜はこれから所属するクラスを見てみたいようで雪ノ下を誘ったが、

「いいえ、由比ヶ浜さん。今日はこれで帰りましょう。もう授業も連絡事項もないようだし、比企谷君への拷問も残っているわ」

「あ、そうだった。じゃあ急いで帰ろう!」

「おい待て! 拷問って何だよ! 本当、俺はなにされんだよ」

 身の危険をひしひしと感じ、すぐにでも逃げれるように身構えたが周りの騒がしさにそれどころではなくなってしまった。

「っと、あぶねぇな」

 ゾロゾロと移動する人ごみを避けるように二人の近くに戻り、その中に取り込まれないように三人で広いところへ移動した。

「なんだろうね」

「おそらく、司波さんね。彼女のあとを追って移動しているんだと思うわ。本当に迷惑な人達よ、司波さんのことも考えたらどうなのかしら」

 チラッと見えた司波深雪の表情はうんざりとしており、そんな彼女の事情など知らずに付きまとっているのがすぐに分かった。

「ま、大丈夫だろ。生徒会長の姿も見えたしそんな大事にはならないだろ」

 相変わらず学習しないというか、うかつというか。

「へぇ、あの中に生徒会長いたんだ」

「あら、比企谷君。あなたはあれほどの人ごみの中から生徒会長をすぐ見つけれるほどに生徒会長の容姿を憶えていたのかしら。変ね、そこまで記憶力があるのなら私達の調きょ、教育も憶えているはずなのだけれど」

「そうだよね~ヒッキーは本当に理解してくれないよね~」

 比企谷八幡は両肩を掴まれて動けない、比企谷八幡は地獄を見た。具体的には別の世界戦の自分がなぜか地獄で働いている姿を見た。

「ねぇ、君たち。もしA組なら一緒にホームルームを見に行かないかな? そのウィードなんてほっといてさ」

 数人の男子生徒が雪ノ下と由比ヶ浜に声をかけた。そのにやけた表情を見る限りどうやら話しを盗み聞きしていたようだ。だが、相手が悪かったし、間も悪かった。

「なぜあなたたちごときと行かなければならないのかしら。そもそも、初対面の人間にその態度はなんなのかしらね。本当に第一高校の人間なのかしら、ここまで生徒の質が下がっているならこなければよかったわ。なに、まだ言われ足りないのかしら、私は今すぐにどこかへ行きなさいと言っているのよ。そう、言葉が通じないのねかわいそうに今すぐ小学生からやり直した方がいいわ。ついでにそのにやけた顔も直してもらいなさい」

「うるさい!」

 雪ノ下からは罵倒、由比ヶ浜からは一言だけの拒絶。そんなやり取りは目立ち周りの生徒達がひそひそと、クスクスと笑っている声が聞こえてきた。こうなるともうテンプレである。プライドを傷つけられた男子生徒達は、

「この、下手に出りゃいい気になりやがって!」

 などと、ベタな台詞を吐いて雪ノ下と由比ヶ浜に掴みかかろうとしていた。比企谷はすぐに動こうとしたが、その必要はないと傍観に徹した。

「さて、これはどういう状況かな」

 風紀委員の腕章をつけた男装の麗人(男装はしていないが)の風紀委員長、渡辺摩利が二人に伸びた腕を掴んでいた。

「どんな理由があれ、女性に手を上げるとは」

 風紀委員長は二人の男子生徒を睨みつけ、男子生徒は一気に顔を青ざめさせた。

「さすがに今回は見逃せないだろう。では君たちも来たまえ」

 どこからともなく数人の風紀委員が現れ、声をかけてきた男子生徒達をどこかへ連れて行ってしまった。その場には風紀委員長と、三人が残った。

「まったく、君たちも災難が多いようだな」

「また助けていただき、ありがとうございます」

「ありがとうございます!」

「どうも、ありがとうございます」

「いや、なに、これが私達の仕事だ。しかし、君も気が強いのはいいが少しばかり言葉を選んだほうがいいぞ。あんな言い方をしたらああなるのは分かりきっているだろうに」

「ええ、反省はしているのですが」

「なるほど。まぁ、そこにいる君が護っているのであれば問題はないか」

 なぁ、と面白い物を見る目で比企谷を眺めた。

「ひ、比企谷君が護ってくれなくても私は自分でどうにか出来たわ」

「ヒ、ヒッキーがボディガード……」

「くくく、やはり君たちは面白い。私が暇な時に風紀委員会本部に来たまえ、お茶くらいはだそう」

 そう言って笑いながら巡回に戻っていった。

「さて、比企谷君帰りましょうか」

「うん、ヒッキーかえろ!」

「へいへい、分かったよ」

 またさっきの様なことは勘弁だ、と覚悟を決めて二人のあとを追った。

「なぜ二科生になったのか、それだけで許してあげるわ」

「うん、ちゃんと教えてね」

 どうやら渡辺先輩のおかげで罰が軽くなったようだ。まぁ、罪が軽くなってないみたいだが。それでも、比企谷は心の中で再度お礼を言った。

「分かったよ、ちゃんと教えるさ」

 こうして、比企谷八幡、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣の高校生活が始まった。

 


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