艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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深海の皆と楽しく暮らし、流れて行く最高の時間

涼平は、一人の深海の事を好きだと理解します


特別編3話 彼女を好きになった日

それから半月程、皆作業を続けた

 

木を切っては運び、何かの材料を混ぜては運び、どんどん家が建って行く

 

「オフロニシマショウ‼︎」

 

「サッパリシマショウ‼︎」

 

いつの間にかプレハブで作業する事が少なくなり、建設中の家の近くにテントを張り、そこで三人と二人は作業を続けていた

 

余った材木でマサ兄と涼平は木のお風呂と衝立を作り、そこにお湯を入れて三人はシャワーをしたり湯船に浸かる

 

水は今の所タツさんが回してくれた貯水タンクから出ているが、もう少しすれば簡単な水道も引けそうだ

 

「ノゾカナイデネ‼︎」

 

「大丈夫だ。ゆっくりな」

 

「行ってらっしゃい‼︎」

 

ギャルがお風呂に向かい、マサ兄が涼平に寄る

 

「覗くなと言われたら覗くのが性じゃないのか」

 

「マサ兄…なんか変わった⁇」

 

「ちょっと丸くなったかもな。行くぞ…」

 

そっとお風呂に忍び寄り、窓から中を覗く…

 

「オリャ」

 

「ぶっ‼︎」

 

「ホリャ」

 

「ぶへぇ‼︎」

 

手で作った水鉄砲を喰らい、窓から離れる

 

「ヤッパリソコカラキタ」

 

「やるな…」

 

「カンガエガアマイ‼︎」

 

ピシャ‼︎っと締められる窓

 

結局ギャルの覗きはやめ、また資材を作り始める…

 

「もう少しでこれも完成だな⁇」

 

「ログハウスだったんだね」

 

目の前には、規模は小さいが中々立派なログハウスが出来上がりかけていた

 

「涼平。お前、恋してないか⁇」

 

「へっ⁉︎」

 

マサ兄から突然投げられた言葉に、涼平は戸惑う

 

「最近、あの子と一緒にいる事が多いからな」

 

涼平は作業をする時、ギャルと一緒にいる事が多くなっていた

 

理由は色々あるが、ギャルが涼平に聞きに来る事が多いからだ

 

ギャル自身も歳が近そうな涼平といる方が良いのだろう

 

「一緒にいると楽しいんだ。こんな気持ちになったの、初めてかも知れない…」

 

「この夏は良い思い出だな」

 

「うんっ‼︎すっごく良かった‼︎」

 

まだ夏真っ盛りだが、涼平にとって忘れられない夏となっていた…

 

 

 

 

一週間後…

 

「よっしゃ‼︎完成‼︎」

 

「ヤッタ‼︎」

 

「ワタシタチノオウチ‼︎」

 

夏も中盤の頃、ようやく彼女達の家が完成した

 

黒髪の女性二人が喜ぶ後ろで、涼平とギャルは家を見ている

 

「リョーチャン、モウコナイ⁇」

 

ギャルは寂しそうに涼平に問う

 

「君が嫌なら、もう来ないかな⁇」

 

涼平は少しのイジワルと、彼女に逃げ道を与えた答えを返す

 

「コナイノ」

 

ギャルにジト目で見られ、涼平は小さくなる

 

「き、来ます…」

 

「ヤクソクダヨ。コナイナラ、コッチカライクカラ」

 

「分かった‼︎絶対来るって約束する‼︎」

 

ギャルは微笑み、そっと涼平の手を握る

 

涼平は少し彼女を見た後、その手を握り返した…

 

お互い、見つめ合う事も無いまま、しばらく家を眺めていた…

 

 

 

その日、建築祝いに小さなパーティーが家の前で開かれた

 

そこにはタツさんもおり、マサ兄と一緒に魚介類を焼いている

 

「いやぁ‼︎隠れ家みたいでえぇな‼︎」

 

「私も気に入りました」

 

二人はようやく一息入れ、近場の椅子に座る

 

「せや。これ、マサが言ってた奴やけど…」

 

タツさんはポケットから紙を取り出した

 

「昔使ってた奴を使ってもえぇのを見付けて来た。それと、海女の許可と」

 

「何から何までありがとうございます…」

 

「あの子らはもう島の人間やろ⁇」

 

「理解がある人がいて助かります」

 

淡々と返すマサ兄だが、内心凄く感謝していた

 

「コレハナァニ⁇」

 

「カイ⁇」

 

「おっ‼︎興味あるか‼︎」

 

タツさんの周りに彼女達が集まり、説明を聞く

 

「ワタシタチニデキル⁇」

 

「ヤッテミタイ‼︎」

 

「ワタシ、アマサンシテミタイ」

 

「よっしゃ‼︎そしたら明日、場所だけ見に行こ‼︎」

 

 

 

 

 

数日後…

 

「とれましたかー‼︎」

 

「オサカナトレタワ‼︎」

 

「ワタシハアワビ‼︎」

 

黒髪の女性が一人と、ギャルが海女さんをしている

 

涼平はもうすぐ学校が始まるので色々準備をしながらもタツさんやマサ兄に教えられながら、小さなボートを運転して海女になった彼女達の手助けをしていた

 

「リョーチャン、モウスグガッコウ」

 

「ガッコウッテナァニ⁇」

 

ボートに上がって、お魚や貝を仕分けながら、二人は学校に興味津々

 

「お勉強をしたり、夢を決める所なんだ‼︎」

 

「リョーチャン、ユメナァニ⁇」

 

「この夏決めたよ」

 

「「キカセテ」」

 

二人に言われ、涼平は夢を言う

 

「みんなと一緒に家を建てた時に、図面がある程度分かる様になったんだ。だから、次は図面を描いてみたくなったんだ」

 

「オウチタテルノユメ⁇」

 

「うんっ。設計士になりたくなった」

 

「セッケーシ」

 

「そっ。いつか、自分が設計した街を見て見たいんだ‼︎」

 

「スゴイスゴイ‼︎」

 

「リッパナユメ‼︎」

 

二人に拍手を貰い、照れながらも涼平は港に戻る…


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