艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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290話 ATAGO(2)

《分かった。レイもアレンも、重荷を背負うな…》

 

「私達は、マーカス君の帰る場所に居ればいいと思うの」

 

《レイは時々帰る場所を見失うからな…まぁ、今回は大丈夫だろう》

 

「今から帰るわね」

 

貴子さんと隊長の通信が終わり、貴子さんはたいほうとアトランタを連れて高速艇に乗り込む…

 

 

 

 

高速道路をジープで走り、タバコを咥えながら考えていた

 

もし愛宕の事が知りたいならば、愛宕がいたカプセルがあった場所しかない

 

随分昔の事の様に思えるが、未だ解体作業が終わっていない研究所跡地にジープを停めた

 

「部外者は立ち入り禁止です」

 

開幕早々、検問で止められる

 

「横須賀からの使者だ」

 

「と、言われましても…」

 

「中に用事がある。通してくれ」

 

「部外者は通せません」

 

「そうか。一度やってみたかった事がある。それを今からやるが、構わないな⁇」

 

「余所でお願いします」

 

腹立たしい対応をされ、既に頭に来ている状態の俺を更に苛立たせた

 

一度ジープに戻り、エンジンを入れてタバコに火を点ける…

 

「言う事聞かねー奴にはオシオキだ…」

 

 

 

 

「お疲れ様です‼︎はい‼︎お通り下さい‼︎」

 

検問では、俺には一切しなかった応対が取られている

 

手のひらを返したかの様だ

 

「オラァ‼︎強行突破だぁ‼︎」

 

検問を猛スピードで突き破り、バーを粉砕して敷地内に入った

 

「バーカ‼︎」

 

「侵入者だ‼︎」

 

ジープを停め、ようやく研究所跡地に足を降ろす

 

「おっと…」

 

ジープを降りた途端、周りをグルリと囲まれ小銃を突き付けられる

 

「待て‼︎その人は味方だ‼︎銃を降ろせ‼︎」

 

「ようやく話の分かる奴が来たか」

 

小銃を降ろす様に命令してくれたのは、総理の補佐の矢崎

 

「申し訳ありません大尉‼︎侵入者と勘違いしまして‼︎」

 

矢崎は頭を下げる

 

「…多分俺だから気にしないでくれ。バーは弁償する」

 

「は、はぁ…」

 

「検問の担当変えた方が良いぞ。人によって態度を変えてた」

 

「すぐに手配します‼︎」

 

「少し調べたい事があるんだ。邪魔しない程度に動かせてくれないか⁇」

 

「畏まりました。B小隊‼︎オルコット大尉の護衛に着いてくれ‼︎」

 

矢崎がそう言うと、数名の隊員が俺の周りを囲んだ

 

「護衛は我々にお任せを」

 

「助かるよ。地下研究室に用事がある」

 

「先導します‼︎」

 

俺の様に言う事聞かない奴じゃなく、立派な部隊だ

 

これなら任せても安心そうだな…

 

 

 

「大尉。その…」

 

「どうした⁇」

 

「榛名さんを見た事はございますか⁇」

 

「おい。任務中だぞ」

 

隊長らしき人物が注意する

 

「気にするな。そう言う話をしてくれた方が気が楽になる。榛名は友達だ。何だ⁇榛名のファンか⁇」

 

「はいっ。一度一般開放の日に見まして…それから…」

 

「今度サインを送っといてやるよ。他はいいのか⁇」

 

全員真面目な顔をしている中、注意をした隊長が何か言いたそうな顔をする

 

「サインくらいなら頼まれる。今のお礼だ」

 

「…トラックの飛龍さんを」

 

「任せろ‼︎」

 

ボソッと言った場所が、全員の耳には届いており、皆クスクス笑う

 

「良い部隊だな⁇」

 

「えぇ。前の総理ならこうは行かなかったでしょう…今の総理なら、我々は命を掛けて守る意味が見出せますからね」

 

部隊長と話しながら、地下研究室に着いた

 

「我々にはサッパリなので、ここで待機します‼︎」

 

「んっ‼︎良い回答だっ‼︎」

 

部隊に入り口を任せ、カプセルの前に来た

 

ほぼほぼ壊れているが、内部に秘匿されていたデータを回収する位は出来そうだ

 

「どれっ…」

 

建造データを開示する…

 

建造履歴

・基地防衛機能付与型 戦艦大和

 

・侵入型情報伝達艦 駆逐艦暁

 

ここまでは理解出来た

 

そして、一番最後にここに来た理由の艦娘の名があった

 

・潜伏型情報収集艦 ATAGO

 

この個体は潜伏型情報収集艦として使用

 

マーカス・スティングレイ、若しくはアレン・マクレガーを対象とし、潜伏を試み情報の奪取を主目的に建造された個体

 

マーカス・スティングレイの場合、建造カプセルの設計図、及びタナトス級潜水艦の設計図を奪取。若しくはそれに準ずる情報を収集

 

アレン・マクレガーの場合、複合サイクルエンジンの設計図、及び重巡航管制機“妲己”の設計図を奪取。若しくはそれに準ずる情報を収集

 

実験1

我々の命令を第一遂行させる為に教育を開始

 

ATAGOは知能が低い

 

何を言っても「ぱんぱーか」と返答する為、更なる教育が必要

 

実験2

個体を残す為に生殖実験をする

 

ATAGOが身籠もる事は無い

 

実験3

教育課程が終了

 

実技として新人に情報を握らせ、ATAGOを使用して情報を吐かせる

 

三日後、ATAGOは情報を収集して帰還

 

潜伏型としては申し分無い情報量を収集

 

以降、上記2名の所在の確認が取れるまで待機とする

 

 

 

「なるほど…」

 

カプセルに残された情報をUSBに移す

 

どうやら愛宕は敵で間違いない

 

しかし愛宕が酷い扱いを受けていたのも、これで確認が取れた

 

後は愛宕に幾つか確かめたい事がある

 

一度横須賀に戻らなければ…

 

「よ〜し‼︎お仕事終了‼︎」

 

「戻りましょう、大尉」

 

帰りもB小隊に護衛されながら戻る

 

「ここは対深海の為に造られたと聞きました」

 

帰り際に隊長が聞いて来た

 

「そっ…俺の開発を悪用してなっ…」

 

「自分は…」

 

「言いたくなければ言わなくていい。誰にだって負い目はある」

 

「…ありがとうございますっ」

 

今は総理直轄の部隊だが、恐らく隊長はこの研究所と関わりがあった組織にいたのだろう

 

 

 

 

地上に上がり、ジープに乗る

 

「お気を付けて、大尉」

 

「サインは矢崎宛てに送るよ」

 

隊員達と別れ、元来た道をジープで走る…

 

その途中、横須賀に通信を入れた

 

「横須賀、俺だ」

 

《お疲れ様。どうだった⁇》

 

「横須賀に愛宕とボーちゃんを呼んでくれないか⁇」

 

《分かったわ。ボーちゃんは保育部にいるのよ。愛宕は呼ぶわね⁇》

 

「了解。少しだけ時間を置いて戻る」

 

通信を切り、ジープに乗っている最中の最後のタバコに火を点ける…


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