艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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288話 シマエナガのアルバイト日記(3)

「あらっ、お帰りなさい‼︎」

 

「たらいま‼︎」

 

「ここおいとかちてくだしゃい‼︎」

 

執務室には横須賀がいた

 

ひとみといよは荷物を置き、次の仕事先に行く前に休憩を取る

 

「ガリバルディに買って貰ったの⁇」

 

「うん‼︎」

 

「はげのちぉこえ〜と‼︎」

 

ひとみは飴玉を一つ口に放り込む

 

いよも早速世界のお坊さんカードチョコを一つ開ける

 

「…」

 

何故かガリバルディがいよのチョコレートをずっと見ている…

 

「気になるの⁇」

 

「まぁ…初めて見るチョコレートだかんな…」

 

「世界のお坊さんのカードが入ってるのよ⁇」

 

「だろうな…」

 

いよの手元で袋が開けられる

 

「へぇ⁇中々美味そうなチョコレートだな⁇」

 

中から出て来たのは、50円の割にそこそこ大きい板チョコ

 

「か〜ど‼︎」

 

いよはチョコレートを食べながら、出て来たカードを見る

 

「ちんねんです‼︎」

 

いよの手元には、本当にお坊さんの写真がプリントされているカードがある

 

「この前は“玄 白杉”だったわね⁇」

 

「げ、げんぱくすぎ⁉︎」

 

「すごいえあいはげ」

 

「へぇ〜…面白いもんだな⁇」

 

なんだかよく分からない魅力に取り憑かれつつあるガリバルディ

 

「それ、戦えるのよ⁇」

 

「戦えるだぁ⁉︎」

 

よく見ると、いよの手元にあるカードの右下に“説法力500”と書かれている

 

「その、さっき言ってた奴のパワーはなんだ⁇」

 

「玄 白杉は5500よ⁇」

 

「なるほど‼︎このパワーで偉いお坊さんかどうかが分かるのか‼︎」

 

実はこのお坊さんカードチョコ、非常に分かりやすい

 

説法力が大きい程偉大な事をしたり、現在でも由緒が続くお寺のお坊さん

 

生写真のお坊さんカードだと、現状見習いの人が多い

 

が、やはりそこはお坊さん。イケメンもいるのでなんやかんや売り上げが伸びており、製作会社の駄菓子業者がどうしていいか分からず、良い意味で頭を悩ませている

 

「おちごろいってきあす‼︎」

 

「気を付けてね⁇」

 

「いってきあ〜す‼︎」

 

ひとみといよは口を拭いた後、次の仕事に向かう為に執務室を出た

 

「ガリバルディ。ひとみちゃんといよちゃんを見ててくれない⁇」

 

「分かった‼︎行ってくるよ‼︎」

 

ガリバルディは意気揚々と二人の所へ向かう

 

「ふふっ…なんだかんだ気になるのね⁇」

 

 

 

ひとみといよが来たのは港

 

「あ。ひとみさん、いよさん、此方です‼︎」

 

港に停泊していた小さな船の上にいたのは迅鯨

 

「あましゃん⁇」

 

「う、か、い〜‼︎」

 

いよは急にその場に倒れてピクピクしだした

 

「ほらほら、お仕事だろ⁇」

 

ガリバルディに立たせてもらういよはケラケラ笑っている

 

「がいばうで〜、おしゃかなしゅき⁇」

 

「あぁ、好きだぜ‼︎」

 

「そこれあってて‼︎」

 

「楽しみにしてんぜ‼︎」

 

ひとみといよは迅鯨の船に乗り、近くの海まで移動する

 

そこはガリバルディでも目視出来る範囲であり、ガリバルディは船の方を眺める…

 

 

 

 

「れきた⁇」

 

「じぅんびできた‼︎」

 

背中に銛を背負ったひとみといよ

 

「何かありましたら、これを引っ張って下さいね⁇すぐに引き上げますから‼︎」

 

ひとみといよの体には、危険が迫った時に引くロープが巻いてある

 

普段から素潜りやら、気付かない内にライフガードをしている二人には必要の無い物だが、いざという時の体験も兼ねて今日は二人は鵜になる

 

「しぅっぱ〜つ‼︎」

 

「いってきあ〜す‼︎」

 

「お気を付けて‼︎」

 

ひとみといよが海に潜り、迅鯨は釣りを始める

 

「さてさて…」

 

迅鯨の隣には、鈴付きのロープがあり、ひとみといよの何方かがこれを引けば、迅鯨は即座に引き上げる

 

ポチャン…

 

迅鯨の釣りが始まる…

 

 

 

「くあえー‼︎」

 

「うりぁー‼︎」

 

潜って早々、銛で魚を突き始める二人

 

ひとみが一撃でウツボを仕留める後ろで、いよはクロダイを仕留める

 

二人共一度船まで上がり、銛で突いた魚を降ろす

 

「魚が来ませんね…」

 

迅鯨の方は全く動きが無く、ボーッとウキを眺めている

 

ドンッ、ゴトッ

 

ビチビチビチ‼︎

 

「ひっ‼︎」

 

何の前触れもなく、船にウツボとクロダイが投げ込まれた‼︎

 

「ビックリした…ふぅ…」

 

驚きはしたものの、迅鯨は慣れた手付きで船の中にある小さな生簀に二尾を入れた

 

そしてまた、釣竿の前で待つ…

 

 

 

「しぉこっ‼︎」

 

「かんがえがあまいです‼︎」

 

ひとみといよは正に水を得た魚状態であり、適材適所に来た二人は敵無し同然

 

今度はカレイを二尾仕留め、また船まで上がる

 

「エサを換え…」

 

ビチビチビチビチィ‼︎

 

「ひうっ‼︎」

 

それはもうビッタンビッタン暴れるカレイ

 

「櫻井さんが喜びそう‼︎煮付けにしましょう‼︎」

 

意気揚々とし、迅鯨は生簀にカレイを放り込む

 

「がいばうで〜あにしゅき⁇」

 

「ぷいぷいしぅいんぷ‼︎」

 

ひとみといよはガリバルディの為にデカいエビを獲る事を決意

 

「あえにすうか⁇」

 

「あえにすう‼︎」

 

二人の眼下には、舐め腐った泳ぎ方で海底を行く伊勢海老

 

「あいっ、じゃんねんですえ」

 

挙句の果てには素手で伊勢海老を掴むいよ

 

「あ〜いとえた‼︎」

 

ひとみの両手にはアワビが二つ

 

「もっかいらけすう⁇」

 

「もっかいちておわう‼︎」

 

取り敢えず手に持った獲物を船へ上げる…

 

「こんなに来ませんか…」

 

迅鯨は待てど暮らせど全く魚が来ない

 

「おいちぉ‼︎」

 

「こえもいえといてくだしゃい‼︎」

 

「あ、はい‼︎」

 

伊勢海老とアワビを船へ放り込み、最後にもう一勝負潜る…

 

「れかいのいこ‼︎」

 

「あえにすう‼︎」

 

最後はデカいのを狙う腹積もりの二人

 

いよの目の前に丁度良いサイズのハマチが来たので、いよは銛を構えて仕留めに掛かる

 

「あえにしゅる…」

 

ひとみは海底を泳ぐ生物を狙う…

 

 

 

「いつもは来るはずなのに…」

 

迅鯨は小一時間待ち惚け

 

その理由が明らかになる

 

「まてこあーーー‼︎」

 

「あ」

 

迅鯨の目線の先には、海面から飛び出て来たいよ

 

どうやら食べ頃サイズのハマチを追い掛け回しているのだが、ハマチも必死に逃げ回る

 

迅鯨は付ける餌や釣り方を間違えていた訳ではない

 

その海域にひとみといよが投入された時点で、海中生物は生きる為に必死に逃げ回り、餌を食べている場合ではなくなっているからだ‼︎

 

「くあえー‼︎」

 

いよの一撃がハマチに入った

 

「ど〜だ〜‼︎いよのかちですえ‼︎」

 

いよは銛の先にハマチを付けたまま泳ぎ、迅鯨の所に戻って来た

 

「はまちとえた‼︎」

 

「お帰りなさい‼︎激戦でしたね⁇」

 

いよが仕留めて来たのは、いよの体と同じ…下手すれば少し大きいサイズの食べ頃ハマチ

 

「たこれす‼︎」

 

ひとみも帰って来た

 

手には中くらいのタコがいる

 

「とってくらしゃい‼︎」

 

「大きなタコさんですね‼︎はいっ‼︎」

 

ひとみの手からタコが取られ、二人は船へ上がる

 

「じんげ〜しゃんつえた⁇」

 

「ん〜…今日は調子が良くないみたいです」

 

「くうくうちて‼︎」

 

ひとみに言われるがまま、迅鯨はリールを巻く

 

「まぁ‼︎」

 

釣竿の先には何故か鯖が付いていた

 

 

 

いよがハマチと激戦を繰り広げている最中…

 

「たことえた」

 

体重を掛け、急速潜行したひとみの銛はタコにクリーンヒット

 

「あ。しぁあ」

 

タコを手にしたひとみの目の前を、優雅に鯖が泳いで来た

 

「とりあしたっ」

 

ひとみは鯖を手で取り、軽く握って気絶させた

 

「ここつけとく」

 

それを迅鯨の釣竿に付けた後、ひとみはタコを手に船へ上がって来た

 

 

 

「美味しそうな鯖ですね‼︎」

 

「こえくあいにちときあすか⁇」

 

「そうですね‼︎」

 

「かえいあ〜す‼︎」

 

三人は御満悦で横須賀へと戻る…

 

 

 

 

「おかえり‼︎沢山とれたか⁉︎」

 

港ではガリバルディが待ってくれていた

 

「たことえた‼︎」

 

「はあち‼︎」

 

「そうかそうか‼︎」

 

「ただいま戻りました‼︎よいしょっ…と…」

 

迅鯨は魚を入れた小さな生簀からクーラーボックスに入れ替え、それを担いで降りて来た

 

「持つよ‼︎」

 

「ありがとうございます‼︎」

 

この日、パイロット寮の夕食は海鮮祭りとなった

 

ひとみといよは横須賀からお小遣いとタコを貰い、基地に帰って貴子さんにタコ焼きにして貰った…




世界のお坊さんチョコレート…チョコレートとお坊さんのカード

いよが好きな駄菓子の一つ

板チョコと世界各国のお坊さんの写真付きカードが入っており、何故か人気

中に入っているカードはバトルが可能であり、由緒正しいお坊さんはパワーもとい説法力が強い

1個50円

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