艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、287話が終わりました

今回のお話は、二人の鯨の所でアルバイトをするお話です

ひとみといよは普段掃除以外で、どうやって小遣いを稼いでいるのか…


288話 シマエナガのアルバイト日記(1)

ある日の横須賀、牧場エリアの隅…

 

「よし…あいつらはいねぇな…」

 

ガリバルディは牛舎の陰から牧場を確認しながら牧場エリアに足を踏み入れる…

 

「どわっ‼︎」

 

「ん⁇何か声がしたパース⁇」

 

石窯で試作のピザを焼いていたパースは声は聞こえたものの、目線はまたピザに戻る…

 

「チクショウ…何でンナ所に落とし穴があんだよ‼︎おーい‼︎」

 

ガリバルディは落とし穴にハマり、出られなくなっていた

 

それも中々深い落とし穴

 

到底ガリバルディ一人では出られそうにない

 

「おーい‼︎誰かーっ‼︎おーい‼︎」

 

比較的近くにいるパースは石窯に集中していて聞こえない

 

牛舎で搾乳作業をしている峯雲にも聞こえていない

 

「どうすりゃいいんだ…」

 

「あにちてんの⁇」

 

「がいばうで〜ばちあたた⁇」

 

「ヒトミ‼︎イヨ‼︎」

 

異変に気付いてくれたのは、ガリバルディの宿敵であるひとみといよ

 

穴の縁から顔を覗かせ、ガリバルディを見ている

 

「あなおちた⁇」

 

「そうなんだ‼︎一人で上がれないんだ‼︎」

 

「かあいしぉ〜に」

 

「がんばってくらしゃい」

 

ひとみといよは助ける素振りを微塵も見せず、煽るだけ煽り、穴から離れようとした

 

「だーっ‼︎おいおいおい‼︎助けてくれよ‼︎」

 

「たすかいたい⁇」

 

「お菓子買ってやるから‼︎なっ⁉︎」

 

「ろ〜しゅう⁇」

 

「しけてう‼︎」

 

「かえりあ〜す‼︎」

 

ひとみといよは本当に穴から離れた

 

「1000円やるから‼︎な⁉︎」

 

「しぇんえんあって」

 

「しぁ〜ないです」

 

「よし‼︎いい子だ‼︎」

 

1000円でひとみといよを買収したガリバルディは、ようやく穴から出られると安堵した

 

「お〜ぷもってくう‼︎」

 

「おねがいしあす‼︎」

 

ひとみがその場を離れ、ガリバルディを上げる為のロープを探しに行った

 

「いっひっひ…」

 

「な、何すんだよ…」

 

いよは実に悪そ〜な顔をして、ガリバルディを見る

 

「だーっ‼︎コラやめろ‼︎」

 

いよは穴の上からヨダレを垂らし、ガリバルディに向けて落とし始めた‼︎

 

「汚ねぇ‼︎やめてくれ‼︎」

 

「ほ〜え‼︎」

 

「危ねぇ‼︎」

 

ガリバルディは間一髪で避ける

 

穴に落ちても泣かなかったガリバルディだが、ヨダレ攻撃で恐怖を覚えて涙ぐむ

 

「もってきた‼︎」

 

「がいばうで〜まってて‼︎」

 

「あ、あぁ…ふぅ…」

 

いよの攻撃が終わり、準備が整うまでガリバルディは一息つける

 

「いくれ‼︎」

 

「あぁ‼︎」

 

「こ〜か〜‼︎」

 

体にロープを巻き付けたいよが降りて来た

 

「あいっ‼︎」

 

ガリバルディに安全装置を渡し、いよはロープを取る

 

「上手いもんだな⁇」

 

「たかこしゃんにおちえてもあった‼︎」

 

ひとみといよは貴子さんに降下術を教えて貰っており、人命救助の仕方もある程度覚えていた

 

ただ、相手がガリバルディなので嫌なだけである

 

「よし、付けた‼︎」

 

「だっこちて」

 

「よいしょ…」

 

ロープを付けたガリバルディは、いよを抱き上げる

 

「あげてくらしゃ〜い‼︎」

 

「いきあ〜す‼︎」

 

ロープがゆっくりと上に上がる

 

ガリバルディは思う

 

こうしていれば、いよもひとみも本当に可愛くて頼りになる

 

凶暴だけど、まだまだ抱っこして欲しい年頃なのだな…と

 

「先に上がるんだ」

 

「きってい⁇」

 

「やっぱ一緒に上がんぞ‼︎」

 

ちょっとでも可愛いと思うと、すぐに痛い目に遭う

 

助けて貰えるだけ、ガリバルディはまだマシなのだ

 

「ありがとな‼︎」

 

ガリバルディといよが穴から上がり、いよが地に降ろされる

 

「きぉ〜らけれす‼︎」

 

「つぎあ、ないです‼︎」

 

「…まぁいいさ‼︎そういや、どこ行く予定だったんだ⁇」

 

「たいげ〜しゃんのとこ‼︎」

 

「そこまで行くよ。落とし穴があると危険だかんな」

 

ひとみといよは、どうもお手伝いに行く前にガリバルディを見つけた様子

 

大鯨さんの所に着くまでに、ヒヨコでも見に来たのだろう

 

三人でパイロット寮に来ると、丁度櫻井が出て来た

 

「婿殿‼︎」

 

「むころの‼︎」

 

「むこどろ‼︎」

 

「な、何ちゅう呼ばれ方だ…」

 

三人は櫻井を追って出て来た大鯨を陰から見る

 

「今日の夕食は如何なさいますか‼︎」

 

パイロットスーツを整えながら、大鯨は今日の夕食の話をする

 

「今日は大鯨の得意なきのこの味噌汁がいいです」

 

「畏まりました‼︎」

 

「あえつくう」

 

「おこづかいもあう」

 

「アタシもやれっか⁇」

 

「よこしゅかしゃんにきいてみう‼︎」

 

「いいわよ。ガリバルディ、やってみなさい⁇」

 

「「よこしゅかしゃん‼︎」」

 

いつの間にか横須賀が背後にいた

 

「レイは婿じゃないから呼べないわね…」

 

横須賀がブツブツ何かを企む横で、ガリバルディは横須賀の横顔を見る

 

「さっき二人に助けて貰った‼︎」

 

「あらっ‼︎ガリバルディ助けてくれたの⁇」

 

「いたちかたなくれす‼︎」

 

「がいばうで〜ないてた‼︎」

 

「な、泣いてなんか…泣いてたな…」

 

「あなあいてた‼︎」

 

「がいばうで〜、おちてばちあたた‼︎」

 

「焼却炉にする為の穴ね」

 

どうやら焼却炉用にする穴に落ちていたガリバルディ

 

ひとみといよは穴を掘っておらず、別の誰かが掘ったらしい

 

「ひとみといよちゃん、あなほいちたあ、ちくちくつけあす‼︎」

 

「がいばうで〜いちげきれす‼︎」

 

「…やりかねない所が怖い」

 

ひとみといよは穴を掘ったら下に針を置くと言っている

 

「「いってきあす‼︎」」

 

「行ってらっしゃい‼︎」

 

そんな事を言いつつも、しっかりガリバルディと手を繋ぐ二人

 

決して懐いていない訳ではないのだ

 

「ひとみさん、いよさん、おはようございます‼︎」

 

寮の前にいた大鯨の所に来ると、大鯨が先に挨拶をしてくれる

 

「よおしくおねあいしあす‼︎」

 

「がんばいあす‼︎」

 

「よろしく頼みます‼︎」

 

大鯨と共に、ひとみといよとガリバルディのご飯作りが始まる…


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