艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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題名と話数が変わりますが、前回の続きです

アメリカへと渡ったリチャード一行

園崎はヒューストンと目的地へ向かう中、リチャードは久々に自分達の上官の元へと行きます


286話 あの日の遺産

「さー‼︎着いたかも‼︎」

 

途中、スカイラグーンで補給を済ませた後、サンフランシスコ軍港に着いた秋津洲タクシー

 

「レクター‼︎ドラ息子が帰ったぞ‼︎」

 

「うるさい奴が帰って来おったか…」

 

執務室で執務をしながら、リチャードの声を聞くレクター

 

口ではそう言っているが、顔は嬉しそうにしている

 

「迎えに行ってやってくれんか」

 

「OK‼︎Admiral‼︎」

 

元気ある声でレクターに返事をした女性は、リチャードを迎えに行く…

 

「では中将。私達はこっちへ行きます」

 

「気を付けてな‼︎ソノザキ‼︎めいっぱい楽しんで来いよ‼︎」

 

「了解です‼︎」

 

ヒューストンとサウスダコタ、そして園崎はジープを借り、ヒューストンの運転でマッソのいる場所を目指す

 

リチャードはその場に留まり、降りてくる秋津洲を待つ

 

「アメリカには中々来れないかも‼︎」

 

「良い所だぞ⁇景色は綺麗‼︎遊ぶ所もいっぱい‼︎」

 

「Hello‼︎」

 

「おっ‼︎早速お迎えだ‼︎」

 

レクターが向かわせた女性が来た

 

亜麻色の髪に、少々眠たそうな目をしているが、元気いっぱいの子だ

 

「貴方がリチャードね⁇」

 

「いかにもっ‼︎元帥の側近か⁇」

 

「はいっ‼︎アドミラルレクターの秘書の“ヘレナ”と申しまーす‼︎さぁさぁ‼︎執務室へ‼︎」

 

「秋津洲、行くぞ」

 

「了解かも‼︎」

 

レクターに会いに行く道中、ドックの近くを通る

 

「おっと…」

 

リチャードの目に入る、二隻の巨大な空母

 

「片方は横須賀のアドミラルジェミニからの依頼で、現在修復中です‼︎大きいですよね‼︎」

 

「アメリカは艦娘の開発が遅かったからな…まっ、こっちで賄う事は出来た」

 

「なんて名前かも⁇」

 

「建造中の空母にまだ名前はありませんが、修復中の空母は“アークロイヤルbis”です‼︎」

 

アークロイヤルbis…

 

ジャスティスブレイク作戦でサンダーバード隊率いる航空戦隊が応戦に入った大規模海戦で大破した空母だ

 

中にアークがセイレーンシステムとして投入されていたと聞いたが、マーカスが取り出したらしい

 

「開口一番に聞いてやらぁ‼︎」

 

「着きましたー‼︎どうぞー‼︎」

 

執務室に着き、レクターの前に通される

 

「久々じゃな、リチャード」

 

「相変わらずお元気なこった‼︎」

 

「その子は付き添いか⁇」

 

「そっ。秋津洲だ」

 

「遠路遥々ようこそアメリカへ」

 

「どうもどうもかも‼︎」

 

互いに頭を下げ合う二人

 

「ヘレナ。アキツシマさんに基地を案内してくれるか⁇」

 

「OK‼︎Admiral‼︎」

 

レクターはヘレナに何枚かのお札を渡し、秋津洲にも同じ分をくれた

 

「わぁ〜‼︎外国のお金かも〜‼︎」

 

秋津洲は初めて見るドル札をマジマジと見る

 

「お小遣いだ。さ‼︎楽しんで来なさい‼︎」

 

「行って来ます‼︎」

 

「行って来ますかも‼︎」

 

ヘレナと秋津洲が執務室から出て、リチャードとレクターは対面のソファーに座る

 

「俺には小遣いなしですか‼︎えぇ⁉︎」

 

「葉巻があるが、どうだ⁇高級品だ。ヘレナの太ももで巻いたな」

 

レクターは葉巻を咥えながらニヤついている

 

高級な葉巻ではあるが、ヘレナの太ももで巻いた訳ではない

 

「これはこれは。ありがたく頂戴します…」

 

葉巻に火を点けつつ、リチャードの目付きが変わる…

 

「アークロイヤルbisがいた」

 

「気になるか⁇」

 

「ありがとう」

 

「ほぅ。お前の口から感謝の言葉が出るとはの」

 

「感謝は万国共通だ」

 

二人して鼻で笑いつつ、窓からアークロイヤルbisを眺める

 

「こっちが貰い受けるのか⁇」

 

「いや。横須賀に渡す。通常以上の資金を横須賀から頂戴している」

 

「艦長は誰が⁇」

 

すると、レクターは葉巻を咥えながらリチャードの方を向いて笑う

 

「やってみるか⁇」

 

「俺はいい‼︎もっと適任がいるだろ‼︎」

 

「お前は口はうるさい、素行も最悪。だが、部下に好かれるのと指揮能力はわしが見て来た中でトップだ」

 

「褒めても艦長にはならん‼︎」

 

「まぁ、いつか艦載機にはなってやってくれ」

 

「それは喜んで‼︎」

 

レクターは分かっていたかの様に頷き、もう一隻の空母を見た

 

「本国は確かに艦娘の開発には遅れをとったな…」

 

「こっちで賄ってるからいいさ」

 

先程からリチャードが“こっちで賄ってる”と言っているのは、造船技術の事

 

アメリカは艦娘の開発が他の国より遅れている分、非常に強力な軍艦を同盟国に寄与、若しくは修復の依頼を請け負っている

 

代わりに今の横須賀とサンフランシスコの関係の様に、サンフランシスコが有事の際は、横須賀がそれらを使って応援に入ると言う関係だ

 

「あの空母の名前は⁇」

 

「“タイコンデロガ Ant”AntはAnotherの略だ」

 

「タイコンデロガAntねぇ…」

 

見た所、甲板は装甲化されており、何らかの最新鋭の技術が投入されている

 

「これで横須賀に正規空母が三隻か…」

 

「イントレピッドdau、アークロイヤルbis、タイコンデロガAnt…良い名前じゃろ⁇」

 

「良い名だっ…」

 

リチャードとレクターは今しばらく窓の外を眺めていた…


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