艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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285話 アバンギャルドな娘(3)

「ここがかぁ‼︎」

 

(きた‼︎)

 

(むっきむきのしぇいくです‼︎)

 

いよはボクサー達が飲んでいるプロテインが気になる様子

 

たまに照月が飲んでいるので、それが何となく筋肉増強の為の物だと分かっている

 

「ヒューストン先生⁇」

 

「ハローソノザキ‼︎この子はサウスダコタ。Summer Vacationなの」

 

「そうでしたか‼︎私は園崎と申します‼︎」

 

「そっか‼︎ママ、アタシ、ミスターと話がある‼︎」

 

「いいかしらソノザキ」

 

「構いませんよ」

 

「あまり迷惑かけちゃダメよ⁇」

 

「分かってるっ‼︎」

 

ヒューストンはジムから出て行く

 

(みいれす‼︎)

 

(ひだいです‼︎)

 

ひとみといよはサンドバッグにぶら下がり、トレーニングをしている人がサンドバッグを打つ度に揺れる動きで遊んでいる

 

※危険ですのでマネをしないで下さい

 

ヒューストンを見送るサウスダコタは、クルリと園崎の方を見る

 

「やっと見つけたぜ…」

 

「おわっ‼︎」

 

サウスダコタからのいきなりの右ストレートをを瞬時に受け止めた園崎だが、後ろにズリ退がる威力をそのまま受けた

 

「ど、どうされました⁉︎」

 

「アンタのせいでな‼︎パパは…パパはあんな事に‼︎」

 

「ちょっ‼︎待って下さい‼︎」

 

サウスダコタは吠えながら勇み足で園崎に寄る

 

「ぱ、パパ⁉︎」

 

「そうだ‼︎こんなに若い奴に…」

 

「あいっ」

 

「ここであ、こえつけあす」

 

いつの間にかステルスを解いたひとみといよがグローブを持って来た

 

「あぁそうだな…」

 

「だ、ダメですよ‼︎事情がないのに女性は殴らない主義です‼︎」

 

園崎は拳に誇りを持っている

 

ここに来てから二度女性に拳を向ける事があったが、一度目はフレッチャーの時で事情あり

 

二度目はイントレピッドに鍛えて貰うので事情あり

 

サウスダコタには拳を向ける理由がない

 

それに、どうやら園崎を恨んでいる様子

 

サウスダコタはそんな園崎を尻目にグローブを着け、リングに上がる

 

「来いよ‼︎ビビってんのか⁉︎」

 

「ダメな物はダメです‼︎ウエイト差もあります‼︎」

 

「アタシはパパからボクシングを習ってる。そんじょそこらじゃやられねーぞ‼︎」

 

「いよがおあいてしあす‼︎」

 

啖呵を切らしたいよがグローブを着ける

 

「いよちゃんはもっとダメです‼︎」

 

「だめですかー‼︎ぐぁー‼︎」

 

園崎はいよを抱き上げ、いよをリングから離れた場所に置いた

 

「…分かりました‼︎少々お待ちを‼︎」

 

「へへ、来いよ」

 

園崎はグローブを着け始めた

 

「すまないマッソ…今から女に手をあげる…」

 

園崎はマッソから貰ったグローブを着け、リングに上がる

 

「へぇ⁇まだ持ってたんだ⁇」

 

サウスダコタは園崎のグローブを見て、見覚えがある様な言い方をした

 

「試合を見てくれたのですか⁇」

 

「勿論‼︎アンタは強いからな‼︎行くぜーっ‼︎」

 

「すたーとれす‼︎」

 

ひとみがゴングを鳴らし、試合が始まる

 

「オラ‼︎」

 

サウスダコタの先制攻撃から始まる

 

園崎は中々必死にパンチを避ける

 

「どうしたどうしたぁ‼︎かかって来いよ‼︎」

 

「くっ…」

 

思っていた以上のサウスダコタの猛攻

 

右フックが来たコンマ数秒後には左フックが来る

 

園崎は何度も直撃のパンチが当たる

 

「うぐっ‼︎」

 

左フックが園崎のこめかみに入り、若干フラつく

 

「どうした‼︎かかって来いよ‼︎」

 

「…懐かしい」

 

「「あ」」

 

ひとみといよが気付く

 

園崎の体勢が変わった事に…

 

「ダコタ‼︎何してるの‼︎」

 

ヒューストンが戻って来た

 

異変に気付いたヒューストンはリングの外からサウスダコタを止める

 

「はっ‼︎止めて見やがれ‼︎」

 

「ソノザキ…ごめんなさい、どうか手加減を…」

 

「手加減は要らない相手だ…はは、来いっ‼︎」

 

「だいにらうんどれす‼︎」

 

いよも二人を煽る

 

「ちんぱいいりあしぇんお」

 

「ヒトミ…」

 

何故かヒューストンは二人をリングに入って止めようとせず、ひとみといよを両脇に置いて二人の試合を見始めた

 

「強ぇえ…なんてタフな野郎だ…」

 

サウスダコタのスタミナが切れ始める

 

「まだ行けるぞ」

 

「うっ…」

 

打たれ過ぎて昔の感覚が戻っている園崎の眼光を見て、サウスダコタは怯む

 

「どうした。打って来い」

 

「何なんだ…アンタは…」

 

「君の父親の親友だ」

 

その言葉を聞き、サウスダコタはリングに膝を落とした

 

「パパと同じ事言うのか…負けたよ…」

 

「かんかんか〜ん‼︎しぅりぉ〜れす‼︎」

 

ひとみの口ゴングを聞き、ヒューストンはようやくリングに入った

 

「Thank youソノザキ‼︎貴方一度も打たなかったわ‼︎」

 

「…サウスダコタ」

 

「パパは強かったか⁇」

 

「あぁ。身も心も最強のボクサーだ」

 

「ソノザキ…貴方、マッソを知ってるのね⁇」

 

「ライバルですから」

 

このヒューストン母子、園崎がずっと言っているマッソの妻と娘

 

園崎は開始数分でサウスダコタがマッソの娘と気が付いた

 

戦い方がマッソと同じだった為、園崎は感覚を取り戻していた

 

「マッソに何かありましたか⁇」

 

「パパは…」

 

「ソノザキ‼︎俺とアメリカに行くぞ‼︎」

 

重い雰囲気を断ち切るかの様にリチャードが来た

 

「えっ⁉︎あっ、アメリカ⁉︎」

 

「ソノザキに有給が降りた。確かめに行くなら絶好のチャンスだ」

 

「しかし足が…」

 

「秋津洲‼︎長旅は覚悟出来てるな⁉︎」

 

「おっ…オーケーかもぉ‼︎」

 

リチャードに散々詰められたのか、お札とお菓子が服の至る所に詰められた秋津洲が来た

 

袖なんてパンパンになっている

 

「ヒューストンもアメリカのが良いだろう。さ、行こう‼︎」

 

「ダコタ…来たばかりだけど良いわね⁇」

 

「あぁ‼︎目的は果たしたかんな‼︎」

 

「中将、宜しくお願いします」

 

「よ〜し、出発だぁ‼︎ソノザキ、グローブ持って来いよー‼︎」

 

「あ、はい‼︎」

 

四人は本当に秋津洲タクシーに乗り、アメリカへと向かって行った…

 

 

 

 

「なにぃ⁉︎園崎と親父がアメリカに行っただぁ⁉︎」

 

執務室に呼ばれ、園崎がアメリカに行った説明を横須賀から受けていた

 

「あめいかいった‼︎」

 

「あ〜め〜いか〜あ〜ん‼︎」

 

ひとみといよが足元で歌って踊っている

 

「有給が出たのよ。それと、向こうでライバルと会うみたいよ⁇」

 

「んっ‼︎有給なら仕方ないなっ‼︎」

 

この日はゴーヤとヨナは横須賀に残り、俺とひとみといよは基地に戻った…

 

 

 

 

秋津洲タクシーの中では、リチャードとヒューストンは既に就寝

 

起きているのは秋津洲と園崎とサウスダコタ

 

サウスダコタはずっと園崎の手元を見ている

 

「そんなにパパと会うのが楽しみか⁇」

 

園崎の手元にはマッソから貰ったグローブがある

 

「楽しみです。あんなに楽しい試合はありませんでしたから…」

 

今も園崎の脳裏に残るあの試合…

 

マッソと園崎の試合は、互いに小細工等一切効かず、ただただ力と力のぶつかり合い

 

「パパも言ってた。ミスターソノザキとした試合が一番楽しい試合だったって」

 

「今でも体が震えるくらいです…」

 

園崎は武者震いしている

 

普段何に立ち向かおうが持ち前のガッツで跳ね除けていた園崎が震えるくらいの相手、マルセラ・マッソ

 

二人が再開するまで、後数時間…


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