艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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284話 ヨナの方舟(4)

「おぉぉぉお‼︎」

 

「これは凄い…」

 

メインモニター前に来た総理と矢崎は艦内の広さに驚く

 

「たっ、堪らん…」

 

「もっともっと狭いものだと思っていました…」

 

「この新型潜水艦は臨機応変に戦い方や行動を変えられる。ヨナ‼︎」

 

二人にウェルカムヨナナスを渡しながらヨナを呼ぶ

 

「此方をご覧下さい」

 

中心にあるデスクに、この潜水艦の全体像が立体映像で映し出される

 

「航空戦になれば無人機を射出、水上戦では、背部に備えられた機銃、短距離対艦ミサイル、対空速射ミサイル、そしてメイン装備である艦首爆雷で攻撃が可能です」

 

「正に敵無しか‼︎」

 

「潜航中は外部の景色と外殻装甲を同調し、光学迷彩に近い事が可能です」

 

「総理。これは私にも分かります。普段お世話になっていますのでね」

 

ヨナが言った光学迷彩に近い防御システムは、アルテミスに搭載されている物に非常に似ている

 

が、アルテミスはそれに特化しているので、光学迷彩だけ言えばアルテミスの方が上だ

 

それでもこの光学迷彩はかなりの意味がある

 

「もう少し内部を案内しよう。行こう‼︎」

 

「待ってくれ‼︎これ食べてから…」

 

「このヨナナスも美味しいです‼︎」

 

「気に入って頂けて幸いです。ヨナ、嬉しいです」

 

「あっ‼︎そうかぁ‼︎」

 

ここで総理が気付く

 

「君はゴーヤちゃんと同じ、この潜水艦のAIだな⁇」

 

「はいっ。ヨナはこの“スカーサハ級潜水空母1番艦”のAIです」

 

三人共、ヨナの方を向く

 

今サラッと自分の級番を言ったからだ

 

「預言者の名前か…良い名前じゃないか‼︎」

 

一番最初にヨナを褒めたのは俺ではなく総理

 

「ヨナも預言者、スカーサハも預言者の名だ。この潜水艦には相応しい名前だな‼︎」

 

俺より潜水艦の誕生を祝ってくれる総理に、ヨナは嬉しそうに微笑む

 

「行こう。見せたい物があるんだ」

 

「おっと‼︎そうだったな‼︎」

 

「お待たせしました‼︎」

 

再び四人で、とある区画をに向かう

 

 

 

「入院施設じゃないか‼︎」

 

「診察室、治療室…これは凄い…」

 

総理も矢崎も驚く

 

「ここでなら傷病人を手当て出来る。それと…」

 

最後はメインホール

 

開けた区画になっており、ここも時と場合によって臨機応変に対応が可能だ

 

「傷病人の数が多い場合は、この場所で治療をする。そうじゃない場合は…」

 

俺がヨナの顔を見て頷くと、ヨナはメインホールに目をやる

 

「おぉぉぉお‼︎」

 

床から会議用の円形テーブルと椅子が出て来た

 

「ここで会議も出来る。総理、いつかここを使う時があれば言ってくれ。スカーサハ級を出す」

 

「凄い使いたい…」

 

総理は椅子に座り、また嬉しそうに深く息を吐く

 

「マーカス。代わりにこの艦は私が責任をもって“病院艦”として皆に銘打って置こうじゃないか」

 

「それは助かる‼︎」

 

スカーサハ級が新型潜水艦となれば、好戦派が狙ってくる可能性もある

 

だか、病院艦となれば見向きもしないだろう

 

「自慢してやるんだ。俺は最高の友人を持ったとな‼︎」

 

「アメリカがタナトス級を欲しがる理由がよく分かりました…」

 

矢崎は最後まで感服しっぱなし

 

その後、総理と矢崎がスカーサハ級から降り、俺は少しだけ艦内に残った

 

「スカーサハの方を選んだか‼︎」

 

「ヨナ、最初からこっちと決めていました」

 

「今度、タナトスと一緒に基地の周りをグルッとして、ちょっとだけ装備を試そうな⁇」

 

「はい。ヨナ、楽しみにしています」

 

ヨナは艦内に残り、俺だけスカーサハから降りた

 

 

 

「スカーサハ級ね‼︎良い名前だわ‼︎」

 

洋食のテーブルに戻り、皆に報告する

 

「正直内心、あああああにされたらどうしようかと思ってたよ…」

 

「しゅか〜しぁは⁇」

 

「たあとすちがう⁇」

 

ひとみといよも早速名前を覚えてくれている

 

「あっちがタナトス級、こっちがスカーサハ級だ‼︎」

 

「創造主」

 

ゴーヤも来た

 

さっき買ったアロハシャツを着ている

 

「またタナトスに乗ってくれるでち⁇」

 

「なんだ⁇心配か⁇」

 

「一人は嫌でち…」

 

ゴーヤは、スカーサハ級が完成したから、もうタナトス級には乗ってくれないのかと心配している

 

「ゴーヤ」

 

「何でち」

 

ゴーヤの前に屈み、目線を合わせる

 

「俺が悪魔と呼ばれた時に、一番力を生かせる艦はどれだ⁇」

 

「そりゃあタナトスしかいないでち‼︎タナトスは死神でち‼︎」

 

「これからも頼むぞ⁇」

 

「分かったでち‼︎」

 

俺の肌に一番合っているのはタナトスだ

 

これからもタナトスには乗る事になる。必ず

 

「お披露目も終わったし、挨拶も済んだし、そろそろお開きにしましょうか‼︎」

 

「創造主が大して食ってないでち‼︎」

 

「後で繁華街に行きましょ‼︎ゴーヤも来なさい⁇ヨナも呼びましょ⁇」

 

「分かったでち‼︎」

 

横須賀もゴーヤの扱い方が分かって来ている

 

会場の後片付けがある程度終わった後、俺達三人は横須賀の誘いで繁華街に向かい、観艦式は幕を閉じた…


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