艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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284話 ヨナの方舟(3)

結局ゴーヤはヨナと色違いのアロハシャツを買った

 

ゴーヤは白色だ

 

それを着て、観艦式の会場に戻って来た

 

「創造主、ありがとうでち‼︎」

 

「また買ってやるからな⁇」

 

ゴーヤはお腹が空いていたのか、立食へと向かう

 

俺はようやく観艦式に参加、メインであるヨナを探し始める

 

「ふぁーく」

 

「ファーク」

 

「すーぷん」

 

「スープン」

 

赤城の膝の上にヨナがいた

 

赤城にフォークやら食べ方を教えて貰っている

 

「これは何ですか⁇」

 

「はんばぐー」

 

「ハンバグー。ヨナ、覚えました」

 

赤城の膝の上に座ったまま、ヨナは細切れに切って貰ったハンバーグを口にする

 

赤城は至って真面目

 

だが、何かがズレている為、実に微笑ましい光景になっている

 

「おとうさん」

 

赤城が俺に気付いた

 

「ヨナに教えてくれてるのか⁇ありがとうな⁇」

 

「よなちゃん、いいこ」

 

赤城はヨナの頭を撫でる

 

「創造主様はお食べにならないのですか⁇」

 

「俺も今から食べるよ。ヨナも赤城も、沢山食べて大きくなるんだぞ⁇」

 

「うん」

 

「はいっ、創造主様。ヨナ、大きくなります」

 

ヨナと赤城の頭を撫で、その場を離れる

 

立食のテーブルは二つに分かれている

 

片方は赤城とヨナが食べていた洋食が多いテーブル

 

横須賀、ヴィンセント、そして総理がいる

 

もう片方は和食が多いテーブル

 

今目の前で迅鯨さんがせっせこせっせこおにぎりを運んでいる

 

「しゃんしゃいおにいりれす‼︎」

 

「たくしゃんありあす‼︎」

 

聞き覚えのある舌ったらずな声が聞こえたので、和食のテーブルへと向かう

 

「待ってました‼︎」

 

「頂きます‼︎」

 

「飽きねぇんだよなぁ、これ‼︎」

 

サンダースの連中が早速山菜おにぎりに手を付ける

 

一番最初に手を出したのは、お弁当チームの、涼平、園崎、櫻井の三人

 

「来た来た‼︎」

 

「美味いんだよな、これ‼︎」

 

続いて森嶋と高垣もおにぎりを手に取る

 

「いよこえにすう‼︎」

 

「ひとみこえにすう‼︎」

 

最後にひとみといよがおにぎりを手に取り、山菜おにぎりはテーブルに着いて約20秒で全滅

 

「あっ‼︎隊長さん‼︎」

 

「隊長‼︎お疲れ様です‼︎」

 

皆が挨拶をしてくれている俺は、その噂の山菜おにぎりを手に取ろうとしていた

 

「え⁉︎もうないの⁉︎」

 

「ひとみさんといよさんも作ってくれたんです。すぐ無くなってしまいました…」

 

「おいち〜れす‼︎」

 

「あいっ‼︎ひとくちど〜じぉ‼︎」

 

「どれどれ…」

 

いよが山菜おにぎりを向けてくれたので、屈んで口にする…

 

「おいち⁇」

 

「こりゃあ美味いわ…」

 

一口食べて分かる、素朴な味

 

山菜の絶妙な味付け、シャキシャキ具合、後味にエグ味も無く、フワッと山菜独特の旨味が来る

 

あぁ、お袋の味とはこの事なんだな…と一口で理解出来た

 

「ヴィンセント中将が三つ食べて、まだ足りないと言ってた位です」

 

俺は山菜おにぎりを口にした時からボーッとしていた

 

「隊長⁇」

 

涼平が呼ぶ声で我に返る

 

「のどかな田園風景が見えてた…」

 

そこに居た全員に笑われる

 

「あっちあ、おしゃかな‼︎」

 

「もっくもくです‼︎」

 

ひとみといよに言われた方を見る

 

誰かが煙の中で必死に団扇を仰いでいる

 

「ウェーッホエッホッホ‼︎」

 

「ゴホゴホ‼︎」

 

「ゴフッゴフッ‼︎」

 

「けほけほ‼︎」

 

親父、アレン、ジョンストン、そして大鯨さんが煙に塗れて咳き込んでいる

 

「リチャード‼︎なにしてるの⁉︎」

 

俺より先にイントレピッドが来た

 

「き、来たぞ‼︎おっぱいオバケだ‼︎エッホ‼︎」

 

「これでも喰らえ‼︎ゴフッ‼︎」

 

「ちょっ、二人共っ‼︎ゲッホゲホ‼︎」

 

リチャードとジョンストンが団扇の風をイントレピッドに向けるが、その先にはアレンもいた

 

アレンは即座に煙を避ける様に横移動

 

大鯨さんも既にアレンの対面側で煙を回避中

 

「スゥゥゥゥゥ…フゥゥゥゥウ‼︎」

 

「ぐわー‼︎」

 

「ぎゃー‼︎」

 

イントレピッドの肺活量マックスの息で煙は逆行

 

親父とジョンストンは煙をモロに喰らい気絶した

 

「アレン‼︎私にもやらせて‼︎」

 

「あ、はいっ‼︎こうして、火の調整をしてですね…」

 

アレンは教えるのが上手く、イントレピッドはすぐに覚えた

 

「いいか、ジョンストン。気付かれない様に全煙をイントレピッドに向けるんだ…」

 

「オーケー、リチャード…」

 

親父とジョンストンはすぐに起き上がり、イントレピッドの対面に屈んで火を仰ぎ始めた

 

「…」

 

「…」

 

「ムッ…」

 

親父とジョンストンは真顔でイントレピッドを見ながら煙をイントレピッドに向ける

 

「…それっ‼︎」

 

イントレピッドの団扇の一撃により、全煙が一気に二人に向かう

 

「パワァ‼︎」

 

「ボワ‼︎」

 

親父、ジョンストン、再び気絶

 

「わぁ‼︎凄い‼︎とても美味しそうに焼き上がりましたよ‼︎」

 

石で円を作り、その中心で串刺しにした魚を焼いていたみたいだ

 

大鯨さんが魚を取り、テーブルへと運んで行く

 

「クソ‼︎何なんだあの威力は‼︎」

 

「強過ぎるわ…‼︎」

 

「まだまだ甘いわお二人さんっ‼︎さぁっ‼︎ここは私に任せて、食べていらっしゃい‼︎」

 

「よーし、行くかジョンストン‼︎」

 

「オーケー‼︎イントレ、サンキュー‼︎」

 

イントレピッドは団扇片手に笑顔で二人を送る

 

ここは任せた方が良さそうだ…

 

 

 

 

「おっ‼︎マーカス‼︎」

 

洋食のテーブルに戻って来ると、総理に声を掛けられた

 

「いやぁ、見事な艦だ…」

 

新型潜水艦を見ながら、総理は嬉しそうに深く息を吐く

 

「何級になるんだ⁇」

 

「搭載したAIに宿題として選ばせたんだ。中を案内するよ」

 

「本当か‼︎」

 

潜水艦の内部を見れると聞いて、総理は持っていた皿をテーブルに置く

 

「矢崎も行こう」

 

「ありがとうございます‼︎」

 

「創造主様。ヨナも参ります」

 

四人で新型潜水艦へと入る…


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