艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、282話が終わりました

今回のお話は、新しい子が出て来ます

一般開放日の日、突然現れた謎の少女

横須賀で働きたいと言うが…


283話 あたしのチャンピオン(1)

ある日の一般開放日…

 

「今日も盛況です‼︎」

 

「海開きもしたから、帰り際に寄る人も多いのよ‼︎いらっしゃいませ〜‼︎」

 

横須賀と親潮は入口付近で一般客に向けて一本100円のラムネを売っている

 

「あの」

 

「はいは〜い‼︎ラムネかしら⁇」

 

横須賀を呼んだ声は、少し様子が違った

 

「どうしたの⁇」

 

横須賀と親潮の前には、一人のボーイッシュな女の子

 

ラムネを買いに来た訳ではなさそうだ

 

「ここに来れば雇ってくれると聞いたんだ」

 

「お父さんとお母さんはなんて言ったの⁇」

 

「東京で…その…」

 

横須賀はまずい事を聞いたと直感で感じた

 

東京は地図上では存在するが、現状見ての通り水没してしまっている

 

この子の両親も恐らくそこで…

 

「そ、そっかそっか‼︎貴方お名前は⁇」

 

「“ありさ”」

 

「分かったわ。朝霜‼︎」

 

「んぁ⁇」

 

近くで露店をしていた朝霜にラムネの店をついでに任せ、ありさと呼ばれた女の子と執務室に向かう

 

「申し訳ないけど、一旦貴方の経歴を調べさせて貰うわ」

 

「分かった」

 

全身の写真を撮り、親潮と横須賀は経歴を出す

 

「ありさ様が仰っている事は全て事実のようです」

 

「そう…今までどうやって暮らしてたの⁇」

 

「親戚の家を転々として来た。だけど、向こうももう余裕が無いと言われて…」

 

ありさは目線を横須賀達からズラす

 

「そこの方々はどうされたのですか⁇」

 

「君は横須賀に行くんだ。そっちの方が幸せになれるって言われた」

 

「そう…薄情な親戚ね。良いわ、雇ってあげる。貴方には命を掛けて貰うけれど、衣食住とそれなりの給金はあげるわ」

 

「ありがとう‼︎あたし、頑張る‼︎」

 

「親潮、ありさ連れて工廠に行きましょうか」

 

「畏まりました。きそ様にご連絡致します」

 

親潮がきそに連絡を入れ、三人で工廠へと向かう

 

 

 

「あぢゅい…」

 

「クーラー入れっぞ‼︎」

 

流石のきそもへばる暑さ

 

この暑さじゃコーラ一本じゃ割に合わない

 

「ひとみちゃんといよちゃんが羨ましいよぉ…」

 

《めっちぁつえたいれす‼︎》

 

《きしぉもくうか⁇》

 

俺ときその会話を聞いていたひとみといよが無線を繋いで来た

 

「後で入ろうかな…」

 

「どうだひとみ、いよ。海は快適か⁇」

 

《かいてきれす‼︎》

 

《いじぉ〜もないです‼︎》

 

ひとみといよは海水浴場の水深の深い所に迷い込んで来た熱帯魚をつついたり追い掛けて遊んでいる

 

しかし、ひとみといよはしっかり仕事をしている

 

たまに沖に流されかけたり、溺れかけている海水浴客を見付けては砂浜に連れ戻している

 

それに、ひとみといよは人命に関わる事があればしっかり連絡を入れる

 

横須賀も俺も何も言わないのはその為だ

 

「きそ‼︎レイ‼︎」

 

「来た来た‼︎」

 

「よしっ、始めるか‼︎」

 

横須賀と親潮が連れて来た女の子の診察を始める

 

 

 

「あたし、艦娘になるのか⁇」

 

「嫌なら普通の作業を斡旋するわ⁇」

 

「いや‼︎是非なりたい‼︎」

 

横須賀が俺の顔を見る

 

横須賀が言いたい事は伝わった

 

しかし、このありさと言う女の子は何故艦娘になりたいのか…それが分からない

 

「どうして艦娘になりたいんだ⁇」

 

「どうせ帰る所もないんだ。最後に寄ったのがここだったんだ…」

 

シンプルな答えが返って来た

 

「そっか…分かった。なら、君が帰る場所は今日からここだ。だけど、一日待って欲しい。君を疑う訳じゃないが、色々調べなきゃならないんだ」

 

「分かった‼︎」

 

「横須賀、空いてる部屋あるか⁇」

 

「えぇ、あるわ。きそ、ありさを親潮の所までお願い。ちょっとだけレイと話があるの」

 

「オッケー‼︎じゃ、行こう‼︎」

 

きそがありさを連れて行き、横須賀がその場に残った

 

「何か気付いたみたいね⁇」

 

「あの気丈さは危ない。何処かを小突かれたら崩れる…」

 

「艦娘にしていいのかしら…」

 

「突然現れて艦娘になりたいだからな…もしなったにせよ、何か心の支えがあれば良いんだが…」

 

「そこは聞いてみるわ。ありがとね⁇」

 

「気にすんな。これ位いつでもっ」

 

あの子の支え、か…

 

何故か分からないが、今回は俺ではダメな気がする…


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