艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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題名は変わりますが、前回の続きです

カトリーヌのお誘いを受けた噴式仮面

踊る最中、カトリーヌから悩みを打ち明けられます




噴式仮面…マーカス君っぽい人

カトリーヌ…香取先生っぽい人


278話 カトリーヌの夜

「さて…」

 

途中で演奏を交代してやらねば

 

メッサーシュミッターもきぬらしき女の子も参加したいだろう

 

「噴式仮面さん‼︎」

 

マイクを置いて皆が踊る中に入ろうとした時、声を掛けられた

 

胸元をザックリと見せたベージュのドレスを着た女性だ

 

「これはこれはカトリーヌ。お相手をお願い出来ますか⁇」

 

「此方から宜しくお願いします」

 

差し出されたカトリーヌの手を取り、ゆっくりと踊る

 

「噴式仮面さん…私、少し好きになったお方がいるの…」

 

「ほぅ…それは一大事です…何方のお方でしょう、お呼びして参ります」

 

手を繋いだまま踊るカトリーヌが後ろを向いた時、その手が強く握られる

 

「貴方に良く似たお方です…貴方と違って口がとても悪いのですが…とても紳士的なお方です」

 

「では、今宵は私をそのお方とお思い下さい」

 

「ありがとうございます…」

 

仮面越しの向こうにいるカトリーヌは、俺の知っている口煩い教師に似ている

 

こうして見ると、カトリーヌはまだまだ若く、普段誰かがババアと言っている誰かを引っ叩いてやりたい…

 

男を落とすのに十二分な美貌の持ち主である事に、当の本人は未だに気付いていない

 

「あの…噴式仮面さん…」

 

顔を見合って手を取り合った時、カトリーヌは一人の少女に戻る…

 

「何でしょう」

 

「…私の内心を語っても構いませんか⁇」

 

「勿論です。どうか、遠慮なさらず」

 

顔を見合ったまま、小さく揺れながら、ダンスは続く

 

カトリーヌに合わせて俺が踊り

 

俺に合わせてカトリーヌが踊る

 

そんな事を繰り返し、見つめ合っている内に、ほんの少し“愛おしい”との感情を互いに抱いていた

 

「私、彼の事を鎖で縛ったりしてしまったの…酷い女でしょう⁇」

 

「…」

 

その彼に覚えがある為、少しの間口を閉じ、カトリーヌの答えを待つ

 

「私の教え子なの、その人は…だから、絶対に抱いちゃいけない感情なのです…」

 

「…気付くのが遅かった、ですか⁇」

 

泣き出しそうな顔でカトリーヌは頷く

 

「彼は許していますよ。貴方を好きでいなければ、ランチに誘ったりしないはずです」

 

それを聞いて、カトリーヌはほんの一瞬いつもの見知った教師に戻る

 

「…また誘って頂けるかしら⁇」

 

「彼に伝えておきましょう」

 

曲が終わりに近付く…

 

「ありがとう…噴式仮面さん。夢の様な時間でした…」

 

普段見ている力強い女教師はそこにはおらず、そこにいたのは一人のか弱い女性だけ

 

「此方こそ、カトリーヌ」

 

曲が終わり、カトリーヌが手から離れる…

 

カトリーヌは最後の最後まで今にも涙が零れそうな表情のまま、手から離れていった…


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