艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

940 / 1086

さて、273話が終わりました

今回のお話は、ようやくパース・ピザが開店するお話です

まずはその日の午前のお話です

パースのピザ屋が開店する一報を聞いた隊長

約束通り、アトランタを連れて横須賀に向かいます


275話 ベイビーギャルと鯉

ある日の朝…

 

「レイ。パースのピザ屋がオープンしたらしい」

 

「おっ‼︎」

 

朝方の物資の供給ついでに来る、横須賀基地の報告書の束

 

通称“チラシ”

 

毎朝隊長が新聞を見る前に目を通し、その後ほとんどが子供達の遊び道具になる

 

その中に“パース・ピザ 本日オープン‼︎”と書いてあるチラシが入っていた

 

「アトランタ‼︎パパとピザ食べに行くか⁇」

 

アークの膝の上に座っていたアトランタは、隊長が持って来たチラシを見て指を差す

 

どうやら行きたいご様子

 

「よーし‼︎ママも一緒に行こうな‼︎」

 

「たまには家族でどうだ⁇」

 

「いいのか⁇」

 

「勿論さ‼︎基地は俺に任せてくれ‼︎」

 

朝ご飯を食べた後、隊長は高速艇を呼び、四人で出掛けて行った…

 

 

 

 

横須賀に着いた私達は繁華街を目指す

 

「パパとおでかけひさしぶりだね‼︎」

 

「すまんなたいほう。ずっと遊べなくて」

 

「だいじょうぶ‼︎たいほうみんなとおでかけするから‼︎」

 

今日のたいほうは久々に私の肩に乗り、アトランタは貴子に抱っこされながら繁華街を見てキョロキョロしている

 

「よしたいほう‼︎おもちゃ買ってやる‼︎」

 

「やったね‼︎」

 

「良かったわねたいほう‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

高雄の部屋に行き、たいほうをおもちゃコーナーに降ろして選ばせる

 

「ウィリアム⁇私はアトランタの帽子見て来るわ⁇」

 

「頼んだ。ちょっと日照り強いからな⁇」

 

貴子はアトランタと帽子を選びに行った

 

「みちみちにしたら、あとらんたがすてぃんぐれいになげるかな⁇」

 

「どうだろうなぁ⁇」

 

たいほうの手に握られているのは、ミチミチフィギュアシリーズの“動物シリーズ”

 

たいほうはみんなで遊べるおもちゃを選ぼうとしてくれている

 

「たいほうが欲しいのはどれだ⁇」

 

「たいほうあれほしい‼︎」

 

たいほうが指差す方向には、壁に掛かった細長い何かがある

 

「うなぎのまふらー‼︎」

 

そこにあったのはおもちゃではなく、ウナギの形をした子供用のマフラー

 

「これにするか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

ウナギマフラーとミチミチフィギュアの箱を持ち、貴子達の所に来た

 

「アトランタはどの帽子がいい⁇」

 

壁に掛かっている帽子を見て、アトランタはすぐに一つの帽子に手を伸ばして取ろうとする

 

「これ⁇」

 

貴子が手に取り、アトランタに被せてみる

 

脇に“51”と刺繍された黒い帽子だ

 

「良く似合ってるわ‼︎」

 

アトランタはこの帽子が気に入った様子で、被せた後はジッとしている

 

「よしっ、レジ行こうか‼︎」

 

四人でレジに行き、高雄の所に向かう

 

すると、レジには一人の男性が居た

 

「結構売れたな⁇」

 

「好評ですよ⁇一般の方がご購入されるのも多いです」

 

「良かったわねアレン‼︎」

 

「商談か⁇」

 

「大佐‼︎お疲れ様です‼︎」

 

レジの前に居たのは、販売するアクセサリーの商談に来たアレンと愛宕

 

「珍しい組み合わせですね⁇」

 

高雄にそう言われて気付いた

 

私とアレンの組み合わせは結構珍しい

 

アレンはエドガーかレイの横に

 

私はレイが横にいる方が圧倒的に多いからだ

 

「アレンといると、他の皆といる事が多いからな⁇」

 

「自分はレイといる事の方が多いですから…」

 

「今度暇になったら、たまには二人で横須賀で飲もう」

 

「勿論です大佐‼︎では、自分はこれで‼︎」

 

「また遊びに来てね⁇」

 

「今度またお料理教えて下さい‼︎」

 

「勿論よ‼︎みんな連れていらっしゃい‼︎」

 

貴子の言葉に愛宕が反応し、アトランタとたいほうにウィンクをしながら手を振りながら店から出た後、高雄におもちゃを渡す

 

「アトランタの被ってる帽子も頼めるか⁇」

 

「畏まりました。全部で1500円です」

 

「これで」

 

財布から千円札を二枚出し、高雄にお釣りを貰う

 

「今日はお出掛けですか⁇」

 

「たまには家族でな⁇」

 

「アトランタ⁇こんにちは〜って‼︎」

 

貴子がそう言うと、アトランタは高雄に小さく手を振る

 

「ふふっ‼︎こんにちは〜‼︎」

 

アトランタに挨拶を済ませ、店を出て来た

 

パースのピザはお昼に食べるとして、たまにはたいほうと遊んでやりたい

 

「たいほうは何して遊びたい⁇」

 

「たいほうつりぼりいきたい‼︎」

 

「つりぼりか‼︎」

 

「けーひんもらえるんだって‼︎」

 

私の頭の上で、たいほうはチラシを広げている

 

たいほうの案内通りに進むと、イクの居るプールの横に、小さいながらも新しい施設が出来ていた

 

どうやらここの様子

 

「たんすいぎょがたくさんなんだって‼︎」

 

「やってみるか‼︎」

 

「アトランタはママと一緒に…」

 

「いらっしゃいませー‼︎」

 

「まりちゃんだ‼︎」

 

釣り堀に入った途端、居住区にいるはずのまりが出迎えてくれ、たいほうは頭から降りた

 

「おぉ、隊長さんじゃん‼︎今日は家族団欒⁇」

 

「久々に休暇が取れてな。たまにはたいほうと遊ぼうと思ってな」

 

「貴子さん‼︎お久しぶりです‼︎」

 

「まりちゃん‼︎久しぶりね‼︎」

 

まりは貴子を見た途端、頭を下げた

 

「私とアトランタはその辺見て来るわ⁇」

 

貴子がそう言うと、アトランタは貴子の胸を押し“戻れ‼︎”と訴えかける

 

「その子もお魚見たいんじゃないですかねぇ⁇さぁさぁ‼︎見るだけでも楽しめますからー‼︎」

 

「いいの⁇」

 

「勿論ですともー‼︎隊長さんとたいほうちゃんのおそばでごゆるりと〜‼︎」

 

「アトランタ⁇ありがとうは⁇」

 

アトランタはいつものチャンピオンポーズを取る

 

「おおっ‼︎アトランタちゃんは元気いっぱいだね‼︎」

 

まりはその後、たいほうに目線を合わせる為に前屈みになる

 

「さっ‼︎たいほうちゃん‼︎隊長さんと釣りしよっか‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

「此方へどうぞ〜‼︎」

 

まりに案内され、釣り堀の席に案内して貰う

 

「30センチを越えたら3点、30センチ未満は2点、5センチ以下なら1点、貯まった得点は後で景品と交換出来るからね⁇ほいっ、頑張ってね‼︎」

 

まりから釣竿と餌を貰い、たいほうと横並びで釣りを始める

 

「…あの〜、貴子さん⁇」

 

「ごめんなさいね…迷惑でしょ⁇」

 

「あいやいやいや‼︎とんでもない‼︎喉とか乾いてませんかね〜⁉︎ドリンクがサービスであるんですよ〜‼︎」

 

「いいの⁇」

 

「勿論ですよ‼︎何がいいですか⁇」

 

まりは貴子にメニューを見せ、貴子は一つを指差す

 

「じゃあ…これを‼︎」

 

「畏まりましたー‼︎」

 

貴子は遠慮しているが、まりは貴子に良くしてくれている

 

「まりちゃんは私の学生時代の後輩なの」

 

「そうだったな」

 

「あの頃からまりちゃんは良くしてくれるの…何故か分からないけど…」

 

「貴子さんには何度も助けられてますからね〜、はいっ‼︎どうぞ〜‼︎」

 

タイミング良く、まりがジュースを持って来てくれた

 

「ありがとう‼︎」

 

貴子はまりが持って来てくれたメロンソーダを飲み始める

 

アトランタが欲しそうにジーッと見ている…

 

「きた‼︎」

 

たいほうの竿に魚が掛かり、たいほうは引っ張り上げる

 

「でかいきんぎょ‼︎」

 

「2点だな⁇」

 

私が金魚の針を外した後、たいほうは基地でやっているのか、ネリエサをちゃんと付けてから釣り堀に投げた

 

「よいしょっ‼︎アトランタもお魚見てみよっか‼︎」

 

貴子が立ち上がり、釣り堀近くにアトランタを近付ける

 

「お魚さんいるかな⁇」

 

貴子がそう言うと、アトランタは指を差す

 

その方向にはそこそこのサイズの錦鯉がいた

 

「おっきな鯉さんよ⁇」

 

アトランタは次にネリエサが入ったバケツに目線を移し、指を差す

 

「ダメよアトランタ。あれはお魚さんのご飯よ⁇」

 

「貴子さん‼︎パンあげます⁇」

 

まりが持って来てくれたのは、ちぎった食パン

 

「これならアトランタちゃんが投げても大丈夫です‼︎」

 

「アトランタ⁇ありがとうは⁇」

 

アトランタはいつもの様に手を伸ばし、まりの頭を人差し指で撫でる

 

「おぉっ⁉︎」

 

「アトランタなりのありがとうみたいなの…」

 

「そっかそっか‼︎じゃあ、はいっ‼︎ポイッと‼︎投げてみよっか‼︎」

 

まりからパンくずを貰ったアトランタは、まりがやっているやり方を見た後、パンくずを投げる

 

すると、一匹の鯉が食らい付き、水飛沫を上げた

 

「全部投げていいよ‼︎」

 

「まりちゃん、ありがとね⁇」

 

「いいんですよ‼︎アトランタちゃんがこうしてくれると、隊長さんとたいほうちゃんの所に来ますし‼︎」

 

「なるほどね…」

 

「ささ‼︎隊長さんの横でっ‼︎」

 

貴子が私の横に座り、その膝の上でアトランタがパンくずを投げ続ける

 

私とたいほうは大物こそいないが、数もそこそこに釣れている

 

「コラコラ、アトランタ⁇危ないわよ⁇」

 

しばらくするとアトランタが縁に乗り出してパンくずを釣り堀に浸し始めた

 

貴子がしっかりお腹を掴んでいるが、普段のレイの様子を見ていれば分かる

 

アトランタはやりたいと思ったら言う事を聞かない

 

我が強い所はやはり貴子に似ているな…

 

アトランタがパンを水面に浸して数十秒後…

 

バシャバシャビチビチ‼︎

 

アトランタのパンに何かが食い付き、アトランタは一瞬ビクッとした

 

そして…

 

「コラ‼︎アトランタ‼︎」

 

アトランタの手には、アトランタの身長位の錦鯉の下顎が握られていた‼︎

 

自力で引き揚げたのか⁉︎

 

アトランタはゆっくりと私達の方を向き、少し上に錦鯉を突き上げる

 

どうだ‼︎デカイだろう‼︎なのか…

 

お魚取れたよ‼︎なのか…

 

ビックリしたのと私達に見て欲しい思いを目をパチクリさせながら伝えるアトランタは、私を見つめている…

 

「デカイの取れたな‼︎」

 

「おっきいのとれたね‼︎」

 

たいほうも反応し、アトランタは私の前に錦鯉を突き出す

 

デカイのが取れてないから恵んでやるよ‼︎とでも言いたそうな目に変わっている…

 

「アトランタ⁇鯉さんはお家に帰りたいよ〜って言ってるわよ⁇」

 

貴子にそう言われて、アトランタは貴子を見た後、鯉を放した

 

…私のバケツに

 

そしてアトランタは再びパンを手に取り、水面に浸す…

 

「鯉好きなのかしら…」

 

「帽子にも書いてあるしな…」

 

アトランタの帽子には“51”の数字

 

5…こ

1…い

 

とも読める…

 

「パパ、あとらんたすごいね⁇」

 

「たいほうも凄いぞ⁇私より沢山釣ってる‼︎」

 

「きんぎょたくさんだね‼︎」

 

貴子がアトランタの相手をしている横で、私はたいほうとお話をしながら釣りを続ける…




まりちゃんを知らない方へ

まりちゃんは元鈴谷です

今回はとあるウィルスのせいで学校が休校になった為、横須賀にアルバイトに来ています

何のウィルスかはよく分からないパースな

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。