艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、272話が終わりました

今回のお話は一話だけですが、パースが基地に試作のピザを持って来ます


273話 パースの美味しい試作ピザ

ある日の休日

 

俺は基地のテレビの前で子供達と遊んでいた

 

今日は貴子さんと隊長は別々の理由で基地を離れている

 

貴子さんはたいほうや照月達と共にタウイタウイモールへ

 

隊長はれーべとまっくすとで第二居住区へ橘花☆マンの撮影に送って行くのと、後はお買い物だ

 

「アトランタのお昼ごはんは何だろうな⁇」

 

相変わらずアトランタはパースィーを持っているが、ここ最近投げてはいない

 

打撃武器には利用するがな…

 

「ぼっちゃんぼっちゃんぼっちゃんぼっちゃーん‼︎」

 

港から聞き覚えのあるヤバい声が走って来た

 

「アークに任せろ‼︎」

 

アークが腰を上げ、港側の窓に立つ

 

そして、窓を閉めた

 

「ぐへぇ‼︎」

 

何かを抱えたパースは、ものの見事に窓ガラスに直撃

 

しかし窓ガラスは特殊強化ガラス

 

パイロットの必須科目の“ダイナミック☆”でさえ、傷一つ付かない

 

「アーク‼︎酷いパース‼︎」

 

「子供が居るんだぞ‼︎ビビリに猛突進したら怪我をする‼︎」

 

「うぐぐ…すまんパース…」

 

「何をしに来た」

 

対応するアークの目は、物凄く冷たい

 

「ピザが出来たから、ぼっちゃんに一番最初をあげようと思って来たパース」

 

「そうか。手を洗ってから上がれ」

 

アークの誘導に従い、パースはちゃんと手洗いうがいをしてからまた食堂に来た

 

「ささ、ぼっちゃん‼︎パースのピザパース‼︎」

 

「どれどれ…」

 

パースは抱えていたカバンから紙のケースに入れたピザを3つ取り出し、食堂の机の上で開けた

 

「おぉ〜‼︎」

 

一つ目はソーセージピザ

 

二つ目はチーズたっぷりのピザ

 

最後は少し大人向けのサラミや香辛料を効かせたピザ

 

どれも美味そうだ

 

「ぼっちゃんはどれが好きパース⁇」

 

「じゃあ、まずはこの香辛料の効いたピザを」

 

「どうぞパース‼︎」

 

既にピザは食べやすいサイズに切ってあり、そこから一つ頂く

 

「頂きますっ」

 

子供達、アーク、そしてパースが見る中、ピザを口に入れる…

 

「美味いな‼︎」

 

「ふっふっふ…パースは風車造るのとピザ焼くのは上手いパース」

 

「アークはチーズだっ‼︎」

 

「とお〜いとおとお‼︎」

 

「ちぇだ〜ち〜ずれす‼︎」

 

ひとみといよの視線を受けながら、アークはチーズピザを口にする

 

「美味い…」

 

「三種類のチーズが入ってるパース。チーズは横須賀のモーモーさんのミルクを使ったパース」

 

「ほぅ…パースの分際で凝っているな⁇」

 

「分際は余計パース‼︎」

 

「しかしまぁ、これだけ美味けりゃ横須賀も納得するだろ⁇」

 

「ほうらな。うまいひな」

 

俺よりアークの方がピザを気に入っている

 

確かにパースのピザは美味い

 

「ぼっちゃん。この子達は食べれるパース⁇」

 

「あ、あぁ‼︎いよ以外は辛いのじゃなければな⁉︎」

 

「いよこえにすう‼︎」

 

いよが手に取ったピザは、やっぱり辛いピザ

 

現在、基地にいる子供は

 

ひとみ、いよ、霞、叢雲、きそ、ジャーヴィス、松輪

 

天霧と狭霧は貴子さんと一緒に出掛けている

 

ゴーヤ、はっちゃん、しおいはバンボー族村へ

 

はまかぜは夕飯の下ごしらえ中

 

母さんは母さんで親父とデート

 

なので、今執務室に座っているのはグラーフだ

 

「ジャーヴィスチーズにすル‼︎」

 

「おらもチーズにするだ‼︎」

 

ジャーヴィスと松輪、そしてボーちゃんはチーズピザ

 

「私はこれにしようかしら」

 

「ひとみもこえにすう‼︎」

 

霞とひとみはソーセージピザ

 

「僕はこれにする‼︎」

 

「じゃあお言葉に甘えて頂くわ」

 

きそと叢雲は大人向けのピザ

 

そして…

 

「おっ‼︎アトランタも食べたいな⁇」

 

子供達が食べているピザを見て、アトランタがキョロキョロし始め、ひとみの持っているピザを指差した

 

「タカコに聞いてやる。ちょっと待ってろ」

 

アークは早速貴子さんに無線を繋げる

 

「アトランタはどのピザが食べたい⁇」

 

アトランタを抱き上げ、ピザを見せる

 

一旦全部のピザの方を向いたアトランタは、ソーセージピザの方を向き、俺と交互に見始めた

 

「ママがいいよ〜って言ったら食べような⁇」

 

「是非頼むとのお達しだ」

 

アークが帰って来るのを見て、アトランタはいつものチャンピオンポーズをする

 

「おっ‼︎やったなアトランタ‼︎」

 

余程嬉しいのか、おしゃぶりを取ってアトランタをカーペットの上に座らせても、ずっとピザや俺達を見て、今か今かと待っている

 

「よ〜し、アトランタ。これはピザだ」

 

大人や子供達よりもう少し小さく切ったピザを、アトランタに渡す

 

「こうやって、カムカムして食べるんだ」

 

俺の食べ方を見てアトランタはピザを噛み、少しだけ口に入れる

 

ちゃんとピザを口の中で噛んでいる

 

三回程噛んだ辺りで、アトランタに変化が現れる

 

「そうかそうか‼︎美味しいか‼︎」

 

カムカムは続いているが、アトランタの目がキラキラし始めた

 

アトランタは両手にピザを持ち、それはそれは美味しそうに頬張る

 

「よっぽど美味しいんだな…」

 

「それだけ美味しそうに食べてくれたら満足パース‼︎」

 

アトランタは小さいながらも三切程ピザを食べ終えた

 

ピザが気に入ったのか、まだ口の中をモゴモゴさせている

 

「ごちそうさまでした‼︎」

 

俺が手を合わせると、アトランタもちゃんと手を合わせる

 

「おくちふきふきしあ〜す‼︎」

 

「ふ〜きふ〜き‼︎」

 

いよに口元を拭いて貰い、アトランタは目をパチクリさせる

 

「あいっ‼︎れきまちた‼︎」

 

「くふふっ…」

 

口元を拭いてくれたいよの頭を、俺にするのと同じ様に人差し指でクリクリする

 

「パースはこれで帰るパース」

 

「ありがとうな⁇」

 

「ぼっちゃんがお呼びならいつでも飛んで来るパース‼︎」

 

パースは目的を果たすと、すぐに基地を出た

 

「いつもあぁなら助かるのだがな…」

 

「パースは良い奴さ。じゃなきゃ、子供達に切り分けたりしない」

 

「だと良いのだが…」

 

アークはみんなの分を入れたピザの容器を冷蔵庫に入れたり、空の容器を片付け始め、俺は再び子供達と遊ぶ…

 

 

 

 

夕方

 

「おかえりなさいウィリアム‼︎よいしょっ‼︎」

 

「ただいま。持つよ」

 

基地の港で、ほぼ同タイミングで帰って来た貴子さんと隊長がいた

 

「マーカス君が、今日はアトランタは任せてくれって言ってくれたの」

 

「ボコボコにされてない事を祈ろう…」

 

貴子さんと隊長達が工廠側の出入り口から帰って来た

 

「ただいま‼︎」

 

「おかえり‼︎ほら、アトランタ、パパとママが帰って来たぞ‼︎」

 

貴子さんと隊長が帰って来たのに、アトランタは俺の背中で何かに夢中

 

「アトランタ⁇マーカス君は作業台じゃないのよ⁇」

 

アトランタは俺の背中に乗って、いつもとは違う何かをしている

 

うつぶせになっている俺の周りには、何本かのクレヨンが落ちている

 

アトランタは初めてのお絵かきを俺の背中の上でしている様子

 

「どれっ‼︎アトランタは何描いてるんだ⁇」

 

隊長がしゃがみ込み、アトランタの描く絵を見る

 

するとアトランタは隊長に気付き、クレヨンを俺の背中に置き、絵を描いた紙を隊長の前に出した

 

「おっ‼︎アトランタはピザ食べたのか‼︎」

 

俺には見えないが、隊長にはアトランタがピザを食べたと伝えていないのに、隊長はアトランタの絵を見てピザと答えた

 

「私にも見せて‼︎」

 

「ほらっ‼︎」

 

貴子さんにも絵が見せられる

 

「あらっ‼︎上手に描けたわね‼︎」

 

貴子さんも嬉しそうに微笑む

 

「俺も見たい‼︎」

 

「はいっ‼︎」

 

貴子さんが目の前に絵を出してくれた

 

「ほんとだな‼︎」

 

アトランタが初めて描いた絵は、本当にピザだと分かった

 

茶色の円の中にあるいくつもの赤い丸、そしてその隙間を埋めるように黄色をふんだんに使ってある

 

「今度パパともピザ食べに行こうな⁇」

 

すると、アトランタは急に冷蔵庫を指差した

 

貴子さんも隊長も、そして俺も視線がそっちに行く

 

「何か入ってるの⁇」

 

貴子さんが冷蔵庫を開けに向かう

 

「なるほどなるほど…ふふっ‼︎」

 

「何があった⁇」

 

「ピザよ‼︎みんなの分って書いてあるわ‼︎」

 

あの瞬間、アトランタはひとみといよと遊んでいたはず

 

なのにアトランタは冷蔵庫に余りのピザがある事を見抜いた

 

「晩御飯食べてから、お夜食にしましょうか‼︎」

 

「アトランタも食べ…ふっ」

 

隊長が笑う

 

アトランタは既にクレヨンを片付け始めている

 

アトランタは余りのピザを食べたい訳ではなかった

 

美味しいピザが冷蔵庫にあるから、みんなも食べてね、と伝えたかった様子

 

「明日、パースに言っておくよ。アトランタのお気に入りになったって」

 

「開店したらアトランタを連れて行くって言っておいてくれ‼︎」

 

「私も行くわ‼︎」

 

後日、パースのピザ“パース・ピザ”が開店した時、親子揃って行く事になる…


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