艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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272話 君の左腕(4)

「あ‼︎隊長‼︎」

 

「おっ‼︎涼平‼︎どうだ、上々か⁇」

 

涼平はすぐに見付かった

 

シュリや深海の子達が周りにおり、その姿は様になっている

 

「はいっ‼︎自分がやりたかったのはこれなんです‼︎」

 

いつもより更に生き生きとした涼平の目

 

隣にシュリもいる影響なのだろうな

 

しかし、気になるのは妖精

 

奴等はまとめ役がいなければ、大半言う事を聞かない奴が多いが…

 

「妖精はどうやって動かしてるんだ⁇」

 

「それが、図面を見たらすぐに動いてくれまして…集まって下さいと言っても、何人かは集まりませんし…」

 

「ふっふっふ…任せろ‼︎」

 

ようやくここに来た理由が来た

 

腕を胸の前で組み、足を開けて息を吸う

 

「野郎共‼︎集合〜‼︎」

 

俺が呼ぶと、作業をしていた妖精達は一瞬で手を止め、俺達の周りにゾロゾロと集まった

 

“なんやなんや‼︎”

 

“マーカスさんや‼︎”

 

“どないしたらえぇんや⁇”

 

「いいか‼︎居住区建設の為に集められたプロ達‼︎ここにいる涼平の言う事をしっかり聞いて作業した物には、一日の終業時にビスケットとジュースを一人分丸々贈呈しよう‼︎」

 

“おっしゃ任しとき‼︎”

 

“何でも聞いたるで‼︎”

 

“破格や破格‼︎”

 

「す、凄い…」

 

「と、まぁ後は涼平に任せた方が良いだろう‼︎」

 

「ありがとうございます‼︎よーし‼︎頑張るぞ‼︎」

 

「オイシャサン、アリガトウ‼︎」

 

「涼平を頼んだぞ⁇」

 

「ウンッ‼︎イッテキマス‼︎」

 

シュリも作業に戻り、俺と大淀博士がその場に残る

 

「レイ君、その鉄板をガントレットで掴めるかい⁇」

 

「どれっ…」

 

近くにあった鉄板を、大淀博士は持ってくれと頼んで来た

 

「よいしょっ…はは‼︎行けるぞ‼︎」

 

余裕で持ち上がる鉄板

 

それもまだまだ行けそうだ

 

「うんうん‼︎パワーもちゃんと制御出来てる‼︎レイ君‼︎もう降ろしていいよ‼︎」

 

ドガァン‼︎と鉄板を落とし、手を払う

 

「気に入ったよ‼︎これくれないか⁉︎」

 

そう言うと、大淀博士は目をキラキラさせて頷いた

 

「うんうん‼︎レイ君にあげる‼︎レイ君なら、その子を平和的に使ってくれそうだしね‼︎」

 

「博士のなら安心して使えそうだしな⁉︎はは‼︎こいつは良いや‼︎」

 

「そうそう‼︎手袋を着けても大丈夫だからね⁇」

 

「流石に風呂はマズイよな⁇」

 

「レイ君はカプセルの作業が多いからね‼︎耐水性にしてあるよ‼︎」

 

全部見透かされている気がする…

 

「さてさてレイ君、帰ろっか‼︎」

 

「そうだな。涼平はしばらくあのままの方が良さそうだしな」

 

「レイそれ何⁉︎」

 

丁度きそも帰って来た

 

やっぱり気になるのはガントレット

 

「大淀博士から貰ったんだ‼︎」

 

「カッコイイなぁ‼︎僕も欲しい‼︎」

 

「きそちゃんにはまた別のを作ってあげよう‼︎」

 

「ホント⁉︎」

 

滑走路に着くまできそを真ん中に置き、俺は左手、大淀博士は右手できそと手を繋ぐ

 

「博士、足はあるのか⁇」

 

「高速艇で来たからね。返さないと怒られちゃう‼︎」

 

「分かった。気を付けてな⁇」

 

《また来ようね‼︎》

 

「オッケー‼︎大淀さん、楽しみにしとくよ‼︎」

 

大淀博士の見送りを受け、グリフォンは第三居住区を後にする…

 

 

 

「これも家族の形だね…ふふっ‼︎」

 

大淀はきその手を握っていた手を見て微笑み、ジュラルミンケースを持って高速艇で横須賀へと戻って行った…


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