艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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271話 Try Again With You(2)

「後は横須賀に着くまでじっとしていれば大丈夫だ」

 

「アリガトウゴザイマス…」

 

深海の子達の問診をした後、その場で治療出来る傷は手当てし、病室の全員に点滴を施して行く

 

内容物はカプセルの溶液と良く似た成分

 

体の自然治癒力を高める所までは同じだが、この点滴には精神安定の効能もある

 

「アノ、オイシャサン…」

 

「どうした⁇」

 

最後の病室にいた子が、俺がいざ出ようとした時に引き留めた

 

「イムシツニイルコ…ヒドイコトサレテタ…」

 

「今は休め。落ち着いたら、ゆっくり話を…」

 

「ミンナ、アカチャンウマサレタ…」

 

「…」

 

その言葉を聞き、言葉を失う

 

「セータイジッケン…」

 

「分かった…辛いのにありがとうな…」

 

「ウン…」

 

最後の医務室を出て、息を吐く

 

聞けば聞く程、あの基地の悪行が出て来る

 

最後に医務室にいる子の元へ行く…

 

「調子はどうだ⁇」

 

「ダイブヨクナッタ」

 

医務室にいたのは、先程写真を持っていた彼女

 

既にベッドの縁に座っており、深海特有の自然治癒力で少し肌に張りが戻り、まだ若い体をしているのがよく分かった

 

「問診と軽い診察をしよう」

 

「オネガイシマス」

 

問診を聞き、彼女が何をされたか分かった

 

耐久実験と称された、集団による暴行

 

生体実験と称された、集団による性的暴行

 

投薬実験と称された、薬物投与

 

「よしっ。問診は終わりだ」

 

聴診器を耳に掛けると、彼女はすぐに服を捲り上げた

 

特に何も思わないが、診て来た中で一番若く、張りのある体をしているのは彼女だ

 

恐らく、奴等は一番彼女を辱しめたのだろう…

 

「よしっ、ありがとう。内部機関に特に問題は無い。一応念の為、横須賀に到着次第カプセルに入ろうな⁇」

 

彼女は無言だが、少し微笑んで頷いた

 

「そうだ。もう一度写真を見せてくれないか⁇」

 

「ハイ」

 

彼女から写真を受け取る

 

先程も見たが、楽しそうな彼女と、もう一人写っている

 

「数分だけ、借りてもいいか⁇」

 

「…ウン」

 

余程大事なのだろう

 

答えと表情は真逆を示している

 

「オマケを付けて返す。必ずだ」

 

「ワカッタ。ヨコスカニツイタトキニ、カエシテホシイ」

 

「それまでに返せる。すぐに返しに来るからな」

 

彼女が無言で頷いたのを見届け、医務室を出た

 

医務室を出た後、俺は食堂に来た

 

あれから一時間…

 

涼平を呼ぶならそろそろだ

 

タブレットを取り出し、涼平に通信を繋げる

 

「涼平、食堂に来てくれ」

 

《了解です‼︎》

 

涼平が来るまでにもう一度写真を見た後、それを封筒に入れて涼平を待つ…

 

 

 

 

「お待たせしました‼︎」

 

涼平と親父が来た

 

親父は涼平と俺に手を振った後、すぐに食堂を出た

 

「ガンビアはどうだった⁇」

 

「凄く広かったです‼︎設備も凄くて、それに、中将御二方がどれだけ凄いか再認識しました‼︎」

 

「それは良かった。そうだ涼平、医務室にいる子にこれを渡して来てくれないか⁇中身は見ずにな⁇」

 

涼平に封筒を渡す

 

「あ、はい。自分が行っても大丈夫ですか⁇」

 

「横須賀に着くまで自由時間にする。彼女達をもう少し広く知れるチャンスだ」

 

「分かりました‼︎行って来ます‼︎」

 

医務室に向かう涼平の背中を見届けた後ろで、壁にもたれていた親父がいた

 

「粋な事をするじゃないの‼︎」

 

「人の恋路に踏み入っちゃいかんからなっ‼︎まっ‼︎後は涼平次第さっ‼︎」

 

「先に戻るのか⁇」

 

「あぁ。二人きりにした方がいい。これで二人の時間が戻る訳じゃないが…今は、な⁇」

 

「涼平は丁重に横須賀に送ろう。お疲れ様だな、マーカス」

 

「いつでもっ」

 

さて、俺も伊勢でアイスを食べますか‼︎


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