艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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26話 ワタリドリ(2)

「心配しないでいい。ちょっと改装するだけさ」

 

「ん…」

 

横須賀に不安を抱きつつも、とりあえず用意された機体を見に行く

 

「歩きながらで申し訳無いですが、簡潔に作戦を説明します」

 

横須賀に一枚の資料を渡された

 

「大佐、貴方には二機、護衛を回します。空域や攻撃指定目標はこちらの基地から命令します。命令が無い場合は、とにかく航空戦力を叩いて下さい‼︎」

 

「護衛は誰だ⁇」

 

スティングレイはまだしも、あと一人が分からなかった

 

「私です。私とスティングレイ位でしょう⁇大佐に着いて行けるのは」

 

「またテメェのケツ守んのかよ‼︎」

 

「何とでも言いなさい。さ、これが大佐の機体です」

 

重いハンガーの扉が開けられる

 

「…」

 

白い迷彩の機体が鎮座している

 

美しい機体だ

 

「また…お前の世話になるんだな…」

 

「一番慣れてるでしょう⁇」

 

「あぁ…」

 

用意された機体は、フル装備のF-15S/MTD

 

Su-37の次に乗り慣れた機体であり、一番世話になった機体でもあった

 

「深海の奴等に効くのか⁇」

 

「効きます。装備は妖精が乗る機体の武装をベースにしてます。あぁ、安心して下さい。性能はそのままです」

 

「分かった…」

 

「我々はこの作戦中、アドミラル隊と名乗ります」

 

「提督隊…ね」

 

「では、機体に乗って下さい」

 

機体に乗り、昔の様に全てのスイッチをONにする

 

《こんにちは、大佐》

 

「あぁ、おはよう”マザー”」

 

そうだった

 

対話型インターフェイスも付いていたな

 

名前はマザー

 

このインターフェイスの言う事を聞いていれば、大体の事は出来る

 

《敵の戦闘機は、おおよそ100機です。今回ばかりは死にます》

 

「何処撃てばいいか、どっち避ければいいか教えてくれ。マザーの言う通りにする。それと、上空に俺の味方の電子支援機がいる。そいつとデータをリンクしてくれ」

 

《分かりました。御武運を》

 

《大佐、離陸しました‼︎》

 

「こちらイカロス。了解した」

 

無線から聞こえたのは、横須賀の声だ

 

「イカロス機、出る‼︎」

 

《パパ ハッケン シエンカイシ》

 

空に上がると同時に、スペンサーの電子支援が始まった

 

「イカロス、交戦‼︎」

 

「アドミラル2、エンゲージ‼︎」

 

「スティングレイ、交戦‼︎」

 

三機同時に交戦に入る

 

「全機、散開行動に移れ。敵にケツをとられたら俺に言え」

 

「「了解‼︎」」

 

二機が離れる

 

他にも味方部隊はいるが、どうも劣勢だ…

 

《こちら瑞鳳先発部隊‼︎やられ…》

 

《翔鶴第二部隊‼︎壊滅‼︎後が無い‼︎》

 

《飛龍爆撃隊、残り二機‼︎》

 

多方面から壊滅寸前状態の無線が入る

 

「こちらイカロス。二機目を撃墜」

 

《誰でもいい‼︎こちらはあきつ丸‼︎誰か発艦を援護してくれ‼︎》

 

無線の先から、勇ましい女性の声が聞こえた

 

「こちらアドミラル隊隊長イカロス。了解した。あきつ丸、援護する」

 

《すまない‼︎勇気ある彼等を護ってくれ‼︎》

 

「…気に入った」

 

眼下に、黒い帽子を被った艦娘が見えた

 

あれか…

 

敵機に囲まれている

 

「長距離ミサイルセット。イカロス、フォックス1‼︎」

 

四発のミサイルが敵に向かって行く

 

「今だあきつ丸‼︎発艦させろ‼︎」

 

《了解した‼︎発艦‼︎》

 

あきつ丸から数機が打ち出され、私は彼等の横に着いた

 

《ターゲット四機、撃墜。上手くなりましたね》

 

「あきつ丸の周囲に敵影は⁇」

 

《後二機。どうやら、雷装を捨てた機体です》

 

「最後まで面倒みてやろう。来い‼︎」

 

あきつ丸の戦闘機部隊から抜け、一機をすれ違い様に撃墜

 

「チョロいもんだぜ‼︎」

 

《残り一機も撃墜したみたいです》

 

「よし。あきつ丸、後は任せた。幸運を」

 

《ありがたい。何と御礼をすればいいやら…》

 

「御礼なら、敵さんを追っ払ってから考えてくれ。じゃあな‼︎」

 

白い機体が去って行く

 

海上で発艦を終えたあきつ丸は、その嵐の様な機体に目を奪われていた

 

「次はどいつ…」

 

目の前で輸送ヘリが海域を離脱して行く

 

「一般市民の避難はもう終わったのか⁉︎」

 

《まだ完全とは限りなく程遠いです》

 

「あのヘリに乗ってるのは…」

 

《国のお偉い様方ですね。リストに上がっています》

 

「アドミラル隊全機、俺の直掩に付け」

 

《了解した‼︎》

 

《了解しました‼︎》

 

あっと言う間に二機が両翼に付いた

 

「目標、前方輸送ヘリ」

 

《…へっ。了解‼︎》

 

《左は任せて下さい》

 

何も言わずとも、二人は分かっていた

 

《護衛機が来たぞ‼︎これで大丈夫だ…》

 

お偉い様の神々しい声が聞こえる

 

頼りないのな…お偉い様ってのは

 

「あんた、大臣か何かか⁉︎」

 

《あぁ。今から安全な場所に避難する。着いて来てくれるとありがたい》

 

「一般市民はどうした⁇」

 

《我々が居なければ国は動かん‼︎》

 

この瞬間、この大臣は一般市民を捨てた

 

そして、他の二機がそれぞれに当てられたヘリの背後に着く


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