艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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270話 第三居住区建設区画視察(4)

「…」

 

地下へと続く階段を見た瞬間、生唾を飲んだ

 

そして、ピストルを構える

 

相変わらず暗い地下に足を踏み入れるのには慣れない…

 

こんな所で襲われたらひとたまりもない…

 

「オバケはまだ怖いかね」

 

「正体不明だからな…」

 

ライターで火を点けながら、ゆっくりと下に向かう…

 

《電波状…が安定…ません》

 

親潮との無線も途切れ途切れになる

 

「おっ…」

 

階段が終わる

 

《創造主……ますか⁇》

 

「辛うじてな」

 

《生…反応が……数……ます‼︎》

 

「生体反応⁇」

 

辛うじて聞こえて来た親潮の無線

 

親潮は明らかに“生体反応”と言った

 

「ブレーカーがありました‼︎点けます‼︎」

 

健吾の合図で地下に照明が点く

 

「これは…」

 

「何て事を…」

 

俺達が今まさにいる場所

 

そこは、深海を閉じ込めておく為の牢屋になっていた

 

「ダァレ…」

 

一人の深海が俺に気付く

 

「助けに来た‼︎少しだけ待っててくれ‼︎」

 

立ち上がる力も無いのか、座ったまま鉄格子を持ちながら俺に話し掛けて来たのは、まだ若い女性の深海だ

 

「タスカッタノ…⁇」

 

「あぁ‼︎すぐに出してやるからな‼︎」

 

「アァ…」

 

彼女は下を向き、安堵の溜息を吐いた

 

「ヌァァァア‼︎」

 

「大胆に行くな…」

 

俺の背後で健吾は両手をDMM化し、鉄格子の隙間を広げている

 

「レイさん達はスマートに行って下さい‼︎自分はっ‼︎これデッ‼︎」

 

「少し離れてくれ」

 

「ン…」

 

鉄格子の向こうの彼女にそう言い、鍵部分をピストルで撃ち抜く

 

「レイ君も大胆だねぇ…」

 

「よしっ。もう大丈夫だ‼︎」

 

牢屋は6つ

 

既に健吾が2つを破壊

 

もう1つは俺がピストルで破壊

 

「行きますよ‼︎」

 

「よしっ‼︎」

 

アレンと小林が協力し合い、1つの牢屋の鍵をこじ開けた

 

「ではでは大淀さんはスマートに〜」

 

大淀博士は先程上で拾った針金を使い、いとも簡単に牢屋を2つ開けた

 

「さぁ、行こう‼︎」

 

「アリガトウ…」

 

彼女に手を差し伸べ、立ち上がらせる

 

その場に居た六人の深海の子達は、大淀博士達に連れられ、一足先に上へと避難した

 

「…ん⁇」

 

先程の深海の子の牢屋の中に、何かの紙が落ちているのに気が付いた

 

何故かそれが気になり、牢屋の中に入って手に取った

 

「…」

 

手に取ったのは、一枚の写真

 

その写真を見て、息が詰まりそうになる

 

「タイセツナモノナノ…」

 

先程の深海の子が戻って来て、俺に手を差し出す

 

「あぁ。すまない…」

 

「ン…アリガトウ…」

 

彼女は愛おしそうに写真を見た後、頬擦りをし、胸ポケットにしまった

 

その写真には、見覚えのある顔が写っていた…


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