艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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270話 第三居住区建設区画視察(3)

「ないな…」

 

五人で探し回るが、それらしき場所は見当たらない

 

「地下にある、とまでは大湊側でも情報を得たのですが…」

 

「仕方ない…最強のコンシェルジュに頼ろう」

 

横須賀に通信を繋げる…

 

《親潮。この基地の地図を出せるか⁇》

 

《先程、大淀博士から伝達を受けてスキャニングをしているのですが…ジャミングの影響でしょうか、その施設に地下室は見当たりません》

 

「なら別の場所か…⁇」

 

考えろ…

 

何処にある…

 

俺なら何処に地下室を置く…

 

「あ…」

 

「何か案がありましたか⁇」

 

「工廠だ」

 

サラは工廠の隅に地下室の入り口を置いていた

 

工廠なら限られた人間しか入れないし、秘匿にはうってつけだ

 

「ここに無いと言われればそれきりですものね…行ってみましょう」

 

棚町が派遣した工作員と共に、工廠を目指す

 

「そういえば、名前を聞いていなかったな」

 

「申し遅れました。小林と申します、オルコット大尉」

 

「俺の名前は知ってるのな…」

 

「職業柄、自分の素性は露見せずに相手側を調べる事が多いもので…」

 

「そうだな…その気持ちは良く分かる」

 

良く似た事を昔していたからこそ、彼の言っている事は良く分かる

 

「…少し、関係の無いお話をしても⁇」

 

「楽しいのを頼むぞ」

 

「森嶋は元気ですか⁇」

 

「お。知り合いか⁇」

 

小林は工廠に着くまでの間、森嶋の名前を出して来た

 

「彼がSPをしていた時に知り合いになりまして…私の良き理解者です」

 

何故そのタイミングで森嶋と知り合いになったか、何となく想像が出来た

 

「彼が居なければ、私は本当に今ここの研究員だったのかも知れません」

 

粗方想像と合っているだろうが、ここは詮索しないでおこう…

 

「今度、結婚と出産祝いを持って行ってやるといい」

 

「分かりました」

 

この小林、飲み込みが早い

 

「さて…」

 

いざ工廠に着くと、再び五人が集まる

 

《創造主様。聞こえますか⁇》

 

丁度集まった所で、親潮から通信が入る

 

「どうした⁇」

 

《一部分はジャミングの影響下にありますが、大凡の基地一帯のスキャニングが完了しました。やはり地下施設は工廠にある模様です》

 

「ビンゴだ。誘導出来るか⁇」

 

《畏まりました。正面の扉から、一番奥に向かって下さい》

 

親潮の誘導で、俺達は工廠の一番奥に向かう

 

「爆弾だ…」

 

大淀博士の目線の先には、工廠で作られたまま放置されていたのは、イーサンに巻き付けられたのと同型の爆弾

 

「あっちは深海の主砲です」

 

健吾の前には、深海の艤装…その中でも人が携行可能なサイズの主砲がある

 

「地獄絵図だな…」

 

そう発した直後、大淀博士が俺の左側に来た

 

「今はレイ君の“助手”になるよ‼︎」

 

《創造主様。右の角にフェンスがございませんか⁇》

 

親潮の誘導で右を見るとフェンスがあり、カードキーとパスワードを打ち込む機材があるのが見えた

 

「ある。カードキーを通せば良いか⁇」

 

「大淀さんがハッキングしよう」

 

《待って下さい。その扉は、カードキーを通した後にパスワードを打ち込まなければ解錠出来ません。それに、一度間違えるとそのカードキーでは開かないシステムになっています。創造主様、通信を切り替えますね⁇》

 

親潮に何かを言おうと思った瞬間には、もう通信が切り替わった

 

《アタシがパスワードをハッキングして打ち込んだげるわ。いい⁇ちょっとでも力で開けようとしたら、もう開かないわよ⁇》

 

「ヘラか。助かる」

 

「見ておこっと…」

 

切り替わった無線の主はヘラ

 

ヘラなら電子施錠の機材をハッキングする位簡単だ

 

大淀博士はヘラの実力を見たいのか、パスワードを打ち込む機材を見始めた

 

《カードキーを通して頂戴》

 

ヘラに言われ、カードキーを通す

 

緑のランプが点き、パスワード入力画面になる

 

「よし、通した」

 

《待ちなさい》

 

あっという間にパスワードが打ち込まれていく…

 

《さ。開いたわ。気を付けて行きなさい》

 

「ありがとう、ヘラ」

 

《これ位いつでもっ。じゃあね》

 

ヘラとの通信が切れ、大淀博士とアレンがニヤケているのが見えた

 

「ヘラちゃんの早さにも関心したけど、やっぱりレイ君の子だね〜」

 

「ちゃんと意思は継がれてるな⁇」

 

「有り難い事だ。さぁ、行こう」

 

《そのフェンスの先に、地下に続く階段があります。そこから向かって下さい》

 

「地下には何がある⁇」

 

《現状は不明です。此方でも解析は進めていますが、地下がジャミングの影響が一番強いです》

 

「未知との遭遇、だな⁇」

 

《創造主様。どうかお気をつけて…》

 

「了解した。行って来る」

 

いざ地下へと足を踏み入れる…


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