艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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270話 第三居住区建設区画視察(2)

「ここだな」

 

着いた場所は鋼鉄製の扉がある、如何にも厳重に造られた研究施設

 

いざ扉に手を掛けた時、直感で何かを感じる

 

あぁ、こいつはヤバい場所だ…

 

サラの地下研究施設と同じ匂いがした…

 

腰からピストルを抜き、左手に構えながら扉を開ける…

 

ゆっくりと中に入り、後ろ手で扉を閉めた後、辺り一帯にピストルを向ける

 

どうやら人は既に出払った様だ…

 

「研究施設に人は居ない。数個の端末…後は何らかのサンプルが散乱してる」

 

急いで出た後、誰も入らなかったのだろうな…

 

《レイか。ジェミニ曰く、奴等がそこで何をしていたか知りたいらしい。何か持ち帰れそうなデータかサンプルがが残っていないか⁇》

 

通信先から聞こえて来たのはアレンの声

 

「了解した。親潮でも連れて来たら一発だったな…」

 

《待て、通信だ》

 

誰かが通話に割り込んで来た

 

《レイ君‼︎大淀さんじゃダメかね‼︎》

 

「博士か‼︎今どこにいる⁇」

 

《司令部施設の資料室だね。今から研究施設に行くよ‼︎》

 

「頼んだ。博士がいるなら解析も早い‼︎」

 

会話が終わった直後、大淀博士は走り始め、すぐに荒い息遣いが聞こえて来た

 

「そんな急がなくてもいいさ」

 

少し鼻で笑いながら、大淀博士の通話に耳を傾けつつ、目の前にある端末を弄る

 

《好きな人には走って逢いに行きたいものさレイ君‼︎》

 

《そういうもんだぞ、レイ》

 

《そうですよ、レイさん》

 

「分かりましたよ〜」

 

軽くあしらわないと、この三人は更に追い討ちをかけて来るからな…

 

大淀博士が来るまでの間、端末を弄り続ける…

 

「ほとんど削除されてるか…」

 

ふと端末の端を見ると、人影が映った

 

「ピストル向けないでくれよ⁇」

 

「もうしないさ。レイ君を倒しても良い事ないからね」

 

無音でいつの間にか俺の背後に立っていた大淀博士

 

「ささ、レイ君。端末データの復元は大淀さんにお任せあれ‼︎」

 

「手持ち無沙汰になった」

 

「奥の部屋の探検して来ていいよ‼︎」

 

大淀博士にとって、端末データの復元なんざ朝飯前

 

俺より遥かに早く的確に復元可能だ

 

きっと、ピクニック感覚で来たんだろうな…

 

奥の部屋に入り、探索を続ける

 

 

 

大淀博士のいる部屋から更に奥に行った部屋に入り、また一帯にピストルを向ける

 

研究施設の重鎮が居たのだろう

 

ここだけ執務室に近い作りになっている

 

「…」

 

今度は壁際に人影が見えた

 

白衣を身に付けているので、ここの研究員で間違いないだろう

 

「止まれ」

 

後頭部にピストルを当てると、研究員は大人しく両手を上げた

 

右手には何かが握られている

 

「何でこんな所にいる」

 

「見逃した方がいいぞ」

 

余裕がある対応をして来たこの男

 

それに対して、此方も同じ対応を返す

 

「俺の気が変わらない内に言った方がいいぞ」

 

「分かった…」

 

彼が椅子に移動した後、壁に何があるか見えた

 

鍵とかを掛けて、扉を閉められるタイプの奴だ

 

研究員が握っているのも鍵だろう

 

「此方を」

 

研究員が握っていたのはカードキーだった

 

何処のカードキーかは分からないが、とりあえず手に取った

 

「これは何処のカードキーだ⁇」

 

「地下に秘匿の研究室がある。その入り口を開ける為の物だ」

 

「…何の研究室だ」

 

「深海の研究さ」

 

「早めに言った方が身の為だぞ。あっさり引くからな」

 

今度は眉間にピストルを当てると、研究員は真顔のまま…ほんの少しだが、口角を上げつつも、冷や汗を流し始める

 

「だーっ‼︎レイ君ストップストップ‼︎」

 

大淀博士が割って入って来た

 

「大淀博士か…」

 

研究員は安堵のため息を吐く

 

「知り合いか⁇」

 

「棚町君の所の工作員さ。レイ君は初見だからね」

 

「味方か⁇」

 

「勿論です。提督に貴方方のフォローをしてくれと指令を受けましてそれで今しがたようやく地下にある秘匿研究室のカードキーを見つけた瞬間でした」

 

「すまん…」

 

「しかし、丁度良かったです。私一人では行く勇気が無くて…」

 

工作員はここに来て急に弱気になる

 

俺だって、正体不明の地下施設に足を踏み入れるのは怖い

 

現に、横須賀にあったサラの地下施設に足を踏み入れた時にもピストルを構えていたくらいだ

 

「俺だって無い」

 

「大淀さんも無いよ‼︎」

 

「まっ…少し待ってくれ」

 

アレンと健吾に連絡を繋げ直す

 

「アレン、健吾、聞こえるか⁇地下に秘匿研究室があるのが分かった」

 

《了解した。そっちで行けそうか⁇》

 

《応援に向かいましょうか⁇》

 

「そうだな。嫌な予感がするんだ」

 

《オーケー、了解した。少し待っててくれ》

 

《了解です。急行します》

 

ここで一旦通信が切れた

 

アレンと健吾が来るまでの間、大淀博士が修復したデータの内容を話し始める

 

「修復したデータだけど、どうもここは深海の艤装や生態を独自に研究、開発していた施設みたいだね。あぁ、横須賀にはもう送信してあるから大丈夫だよ‼︎」

 

「ありがとう。だからイーサンの体の爆弾も…」

 

「恐らく、爆弾の素材にアビサルケープを使ったんだろうね…」

 

「やってくれるな…」

 

「来たぞ‼︎」

 

「お待たせしました‼︎」

 

アレンと健吾が到着

 

大淀博士は二人にも事情を説明し、二人は首を縦に振った

 

「なるほど…とにかく、レイの悪い予感はよく当たる」

 

「探しましょう、その地下室を」

 

五人で地下室を探し始める…


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