艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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マーカスぼっちゃん


269話 オランダからの来訪者(3)

「風車が好き過ぎるんだ。何か大罪を犯した訳では無い。いや、風車の建て過ぎの大罪は犯してはいるが…」

 

「言いたい事は分かるわ」

 

「建築のセンスはズバ抜けているんだ。そこは賞賛してやってくれ…じゃないと哀れで哀れで…」

 

アークは呆れ顔と嘘泣きを始める

 

行き場所も職も失ったパースを見て、本気で哀れに感じているのだろう

 

「よくそんなパースの事を知ってるな⁇」

 

何故かは分からないがアークはやたらパースに詳しく、またパースもアークを知っている様子

 

「そうか。マーカスは知らないな」

 

「初めて見たよ」

 

「アークが姫の侍女なのは知っているだろう⁇」

 

「知ってる」

 

「パースも同じだ」

 

「う〜む…手っ取り早い説明だ…」

 

「侍女とは言え、パースはそれはそれはポンコツでな…真面目な顔して、やる事はあんな感じだ」

 

「ちょっと気になるじゃない」

 

横須賀がパースの過去に興味を持った

 

「マーカスが産まれたての時にな、姫が授乳するだろ」

 

「するわね」

 

「あのパースは授乳と聞いて自分の乳をマーカスに飲まそうとした」

 

「う〜む…」

 

「マーカスが赤ん坊の時、アークと姫が用を済ませていた時にパースに任せるとな、マーカスそっちのけでパースは一人で積み木をしていた」

 

「う〜むマヌケだ…」

 

聞けば聞くほど、出るわ出るわパースのマヌケエピソード

 

「だがなマーカス。パースが居たからアーク達は助かった」

 

「どういう事だ⁇」

 

「パースが屋敷に残って、アーク達は脱出出来たんだ。まぁ…その後屋敷もやられて、奴は路頭に迷ったんだろう。良い所もあるんだがな…悪い部分が目立ち過ぎる」

 

「ねぇアーク、レイ。私、ちょっと考えがあるんだけど」

 

「何だ⁇」

 

横須賀の言葉に、俺は無言で顔を向ける

 

そして、横須賀の考えを聞く

 

「奴はマヌケだぞ…果たして覚えているかどうか…」

 

「恩は恩で返さなきゃ、だな⁇」

 

「そういう事っ‼︎」

 

「親潮は危険が無いように創造主様の背後で見張っていますね‼︎」

 

「オヤシオは出来た子だ。パースに見習って欲しい…あぁ言うのを本物の侍女と言うんだ」

 

「お褒め頂きありがとうございます、アーク様‼︎」

 

アークは親潮に微笑み、横須賀の言った考えを実行に移す…

 

 

 

 

「パース、パース、パース、ピザ窯造るパース」

 

牧場でせっせこピザ窯を造るパース

 

「おいパース」

 

「アーク。姫は元気パース⁇」

 

「やはり覚えていたか。一応礼は言っておく」

 

アークは今から積み立てられるレンガの山に腰掛け、膝に両肘をつき、動き回るパースを眺める

 

「パース。何故オランダであんな事をした」

 

「内緒だパース」

 

「誰かを探しているんじゃないのか」

 

アークがそう言うと、パースは一瞬手を止めた

 

「さぁ…何の事か分からんパース」

 

「オランダにいればその人は探せない。戦火がある程度収まった今なら安全にその人を探せる。違うか⁇」

 

「アークは昔から勘繰り深いパース。さ、そのレンガ使うから向こう行くパース」

 

「…最後に一つ聞いていいか」

 

「一個だけパース」

 

「もしその人がパースに命を出したら、言う事を聞くのか⁇」

 

「勿論聞くパース。姫に拾って貰ってから、あの人に仕えるのがパースの生き甲斐パース」

 

「聞いたかんな‼︎やっぱり無しはないかんな‼︎分かったかパース‼︎」

 

「これだけは嘘吐かないパース」

 

「お〜い‼︎」

 

アークに呼ばれ、二人の元に行く

 

「この人がマーカス様だ」

 

「知ってるパース」

 

「なら何故言う事を聞かん‼︎」

 

「マーカス“ぼっちゃん”の言う事は嘘偽りなく答えてるパース‼︎」

 

「ぼっちゃん…」

 

そうか…

 

赤ん坊の時に俺の面倒を見ていたとなれば、そりゃあ年上だわな…

 

「言われてみればそうだな…マーカス様が言った事には嘘偽りはない…」

 

ここに来てアークが押し負ける

 

「マーカスぼっちゃんが止めろと言えば、パースは止めるパース」

 

「いいさ。その代わり、120はダメだぞ⁇」

 

「畏まりパース‼︎ささ、ぼっちゃん‼︎パースが美味し〜ピザ焼いてあげるパース‼︎もうちょっと待ってるパース‼︎」

 

「わ、分かった…」

 

これ以上邪魔をしてはいけないと思い、アークと共に鳥小屋付近まで戻って来た

 

「マーカスぼっちゃん」

 

「…」

 

アークの顔を見ると、物凄いニヤケ顔をしている

 

「マーカスぼっちゃ〜ん」

 

「分かった。分かったよアーク」

 

「ふふふ」

 

一生言われる案件が一つ増えた…

 

パースがピザ窯を造るまで、今しばらく掛かりそうだ…

 

後は放っておいても大丈夫だろう

 

 

 

次の日…

 

「レイ…あ、いやいや、マーカスぼっちゃん‼︎」

 

「うぐぐぎぐ…」

 

横須賀にまで煽られ始める始末

 

そして何故か、俺も横須賀も視線を送るのは親潮

 

俺は歯ぎしりをしながら

 

横須賀はニヤケ顔で顔の前で手を組みながら

 

「え⁉︎えと‼︎そっ、ぞっ‼︎」

 

いつもの様に“創造主様‼︎”と言ってくれようとしているが、親潮のクライアントは横須賀

 

ここは俺の感情ではなく、横須賀の威圧の方を執行しなければならないが、親潮の良心がそれを阻んでいる

 

そして決めては、横須賀の無言ガン見攻撃

 

「まっ‼︎マーカスぼっちゃん‼︎」

 

親潮の良心は負けた

 

「良い子ね親潮」

 

「よくぞ横須賀の意思を汲み取った‼︎」

 

今しばらく言われるんだろうなぁ…




パース…風車マニアちゃん

突如として横須賀に現れたオランダからの来訪者

オランダで風車を乱立した為に半永久的に国外追放となり、横須賀に辿り着く

実は昔、アークと同じ侍女であった為、アークとも知り合い

スパイトに拾われてから赤ちゃんのマーカスの面倒をみるも、すさまじいポンコツっぷりを発揮

戦争が始まった際に散り散りになってしまったが、マーカスの面倒を見る、という使命は忘れていない

作中唯一、マーカスの事を“マーカスぼっちゃん”と呼ぶ

すごいね

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