艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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269話 オランダからの来訪者(2)

アークの怒号を一瞬聞き、またすぐにレンガを手にした、語尾に特徴のある女の子

 

放っておくとマズイ気がする…

 

「おいコラやめろ‼︎」

 

アークが背後から羽交い締めにして、女の子はジタバタし始めるが、レンガの積み上げは一旦終わる

 

「なにするパース‼︎パースは横須賀にいっぱい風車建てるんだパース‼︎」

 

「それがいかんと言っているんだっ‼︎」

 

「まぁまぁ。アーク、ちょっとは落ち着け」

 

「マーカス‼︎このパースに風車を幾つ建てるか聞いてみろ‼︎」

 

女の子の名前はパース

 

金髪で顔立ちも良いが、語尾が全てをダメにしている

 

 

 

 

 

「ウエックショイ‼︎うぅ…にゃろう…どっかでメッチャバカにされた気がするダズル…」

 

 

 

 

 

アークに言われた通り、パースに聞いてみる

 

「パース。横須賀に風車を幾つ建てるんだ⁇」

 

「120個位パース」

 

「し、執務室に連行しろ‼︎今すぐだ‼︎」

 

「任せろ‼︎そりゃ‼︎」

 

ひ、120だぁ⁉︎

 

そんなに造られたら横須賀中風車だらけだ‼︎

 

「だーっ‼︎何でだパース‼︎正直に言ったパースゥ‼︎」

 

パースは更にジタバタするが、遂にはアークに担がれ、身動きが取れなくなった

 

「ダメだパース‼︎貴様は横須賀にしょっ引いて貰う‼︎」

 

「横須賀さんに頼まれたんだパース‼︎」

 

「一個だけだろうが‼︎アークは貴様の全てを知っているからな‼︎」

 

「うぎぎ…離すんだパース‼︎」

 

しかしアークは絶対パースを離さない

 

ガッチリホールドされたまま、パースは執務室に連れて来られた

 

執務室に着き、無線で横須賀を呼ぶ

 

「横須賀。何処にいる⁇」

 

《あらレイ‼︎今から執務室に帰る所よ⁇》

 

「大至急来い‼︎話は後だ‼︎」

 

《分かったわ‼︎》

 

無線が切れた後、後ろを振り返ると、グルグル巻きにされて床に正座させられているパースがいた

 

「パースは何も悪い事してないパース」

 

「ダメだ‼︎貴様は放っておくとすぐに風車を造る‼︎」

 

パースの前では、アークが胸の下で手を組み、パースが逃げない様に見張っている

 

「来たわよ‼︎」

 

「ただいま戻りました‼︎」

 

横須賀と親潮が帰って来た

 

「ジェミニ貴様か‼︎パースに風車を頼んだのは‼︎」

 

「えぇ…どうかしたの⁇」

 

「言ってみろ、パース。幾つ造るつもりだった」

 

アークの眼力が怖くなり、パースに向けられる

 

「たった120個位パース‼︎」

 

「ひ、120個ですって⁉︎」

 

「そんなに建てたら、横須賀の基地中風車だらけです‼︎」

 

「パースは風車造りたいんだパース‼︎離せー‼︎」

 

再びジタバタし始めるパース

 

若干だが、可哀想になって来た

 

よっぽど風車が好きなんだろうな…

 

「ジェミニよく聞くんだ。このパースはな、イギリスの盆地に山ほど風車を造って有罪になり、オランダに島流しになった奴だ‼︎」

 

「あら…」

 

「オランダも風車だらけにしてやったプァ〜ス‼︎」

 

憎たらしい顔をするパースの反対側で、親潮が何かを調べている

 

「ジェミニ様、創造主様。アーク様の言葉は本当の様です。現在、オランダでは乱立された風車の解体作業に手を焼いている様子です」

 

「パースを島流しにするからこうなるんだパース‼︎ははははは‼︎」

 

やばい奴だ…

 

そこにいた誰もがそう思っていた…

 

アーク以外は

 

「こ、の、や、ろー‼︎」

 

「ひれれひれれ‼︎アーク‼︎いらいふぁーす‼︎」

 

アークがパースの両頬を伸ばす

 

「反省したか‼︎」

 

「風車は良いパース‼︎パースは風力発電も出来る様にしてるパース‼︎」

 

「そうか。反省しないんだな」

 

「しないパース」

 

「女王陛下に直訴しよう。そうしような。言う事聞かない奴は女王陛下に言って貰って大変な目に遭ってもらう」

 

「心を入れ替えたパース‼︎」

 

「本当だな‼︎次風車造っているのを見かけたら、パンツァーシュレックで粉砕してやるからな‼︎」

 

「女王陛下はマズイパース…」

 

いきなりシュンとしたパースを見て、アークも少し言い過ぎたと感じたみたいだ

 

「そだ‼︎代わりにピザ窯を造りたいパース‼︎」

 

「一桁前半の数字を出せ」

 

「二つ造りたいパース‼︎パースはピザ焼けるパース‼︎」

 

「どうだろうかジェミニ…」

 

ようやくアークが横須賀の方を向いた

 

「いいわよ⁇それと、風車も一つだけならいいわよ⁇」

 

「やったパース‼︎これ解くパース‼︎」

 

嫌々パースの拘束を解くアーク

 

パースはどうも本気で反省している様子ではあるが、まだ素性は分からない

 

「そう言えばパース⁇貴方行き場所は⁇」

 

「ないパース。オランダから99年間入国禁止を言い渡されたパース‼︎」

 

「イギリスはどうしたんだ」

 

「オランダに島流しにされた時点で国民の権利が無くなったパース」

 

「初めてみたぞ…無国家って奴…」

 

「ど、どこから来たの⁇」

 

「オランダから来たパース。オランダから半永久的追放されて、路頭に迷ってた時にここに来たパース」

 

「…本当の様です。数週間前、オランダから出国した後の消息がありません」

 

親潮が履歴を調べてみた所、オランダから半永久的追放をされたのは間違いないみたいだ

 

「とりあえずピザを作ってみて頂戴。それから話は決めるわ」

 

「お任せパース‼︎」

 

アークに縄を解かれたパースは、一目散に牧場へ

 

「ここまで言ってなんだが、根っからの悪人では無いんだ」

 

アークが呆れ顔で口を開く


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