艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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バナナワニ園でのお仕事を終えた榛名

最後のお仕事は、金剛のバナナの叩き売り

榛名は横で金剛を眺めます


特別編 金剛のバナナの叩き売り

次の日

 

「さ〜さ〜‼︎バナナ積むDea〜th‼︎」

 

朝ごはんのバナナ多めのバナナシェイクを飲んだ後、金剛はトラックにバナナを大量に積み込み始めた

 

「誰が運転するんダズル⁇」

 

「任せるDea〜th‼︎」

 

金剛が右手の親指を立てる

 

「私は荷台で様子を見とくマイク‼︎」

 

「榛名は助手席ダズル‼︎」

 

「行ってらっしゃ〜い‼︎」

 

ポコに見送られ、バナナ満載トラックは街に向けて出発

 

その車内で榛名はまた葉巻に火を点けていた

 

「気に入ったDeathか⁇」

 

「気に入ったダズル。それと、吸ってしまわないと帰ったら吸えないダズル」

 

「赤ちゃんがいるらしいDeathね⁇」

 

「吹雪がいるダズル。そうだ。たいほうがオメェに会いたがってたダズル」

 

たいほうはずっと金剛のファンでいる

 

基地のテレビで時折流れる金剛が出演するCMを見てニコニコしているのを、榛名は見逃していなかった

 

「たいほうちゃんは可愛いままDeathか⁇」

 

「可愛いダズルよ。今も素直で優しい子ダズル」

 

「今度そっちに帰る用事があれば、お土産持って顔見せるDeath‼︎」

 

そうこうしている内に、金剛は人が集まる場所にトラックを止めた

 

「降ろして下サイ‼︎」

 

「了解マイク‼︎」

 

いつもそうしてるのか、金剛は降りてすぐに手際良く叩き売りの台を組み立てて行く

 

そこに並べられて行く、食べ頃バナナ達

 

「さーさー‼︎寄ってらっしゃい‼︎見てらっしゃい‼︎」

 

金剛はハリセンの様な物をテンポ良く机に叩きながら声を上げる

 

通行人の何人かが足を止め、金剛の前に来た

 

「今日は絶好バナナ日和‼︎バナナと言えば叩き売り‼︎最初は高いが終わりは安い‼︎高く買えば自慢が出来る‼︎安く買えば節約出来る‼︎さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい‼︎」

 

また人が集まって来た

 

「さてさてこのバナナ、生まれも育ちもここ台湾‼︎美味しくなるまで数ヶ月‼︎ようやく貴方の所へいざ参る‼︎栄養満点‼︎テストも満点‼︎これを食べれば頭も回る‼︎こいつが一房たったの100元‼︎さぁ‼︎買った買った‼︎」

 

「面白いダズル‼︎」

 

いつもの語尾のDeathが消え、饒舌にテンポ良く啖呵を切る金剛

 

榛名からすれば、そのバナナが高いかどうか分からないが、金剛の叩き売りの仕方は中々面白い

 

そんな中、一人のお客が金剛の前に来た

 

「ありがとうございマース‼︎あ、ちょっと待つDeath‼︎霧島ー‼︎」

 

「はいマイク‼︎」

 

「これ、オマケDea〜th‼︎」

 

霧島が持って来た袋の中には、二房追加でバナナが入っていた

 

「さぁさぁ一つ売れた‼︎残りはいいかな⁇今ならあれだけオマケが来るよ‼︎」

 

金剛がそう言うと、あの量でその値段は安いのか、三人程買いに来た

 

「さぁさぁ‼︎も少し安くしようじゃないか‼︎その前に少しは話を聞いとくれ‼︎」

 

買う予定の無い榛名は、値段より金剛の話の上手さに聞き入っていた

 

「さてさてこの金剛‼︎産まれはイギリス‼︎育ちは日本‼︎好きなのやっぱりここ台湾‼︎そこで出会ったこのバナナ‼︎朝食昼食夕食おやつ‼︎何処に入れてもバッチグー‼︎さぁさぁ本日お買い得‼︎こいつが一房80元‼︎さぁ‼︎買った買った‼︎」

 

「おぉ〜‼︎」

 

榛名は自然と拍手を送っていた

 

お買い得なのか、金剛の前には沢山の人が集まる

 

そして、一人一人にバナナが二房入った紙袋を渡して行く

 

「さぁ‼︎残りのバナナは後少し‼︎しかし金剛売り切りたい‼︎さぁさぁ寄ってらっしゃい‼︎最後の仕上げだ‼︎」

 

「…」

 

生唾をのみ、行く末を見届ける榛名

 

「誰かが買わなきゃ妹が‼︎ワニ園吊るされ妹が‼︎餌にされるぞ妹が‼︎ヒェーヒェーと鳴くけれど‼︎アンタが買わなきゃワニの餌‼︎買った買った持ってけドロボー‼︎30元デース‼︎」

 

ここでほとんどの人が金剛の前に並び始めた

 

そして、榛名は現地の人の言葉を聞き逃さなかった

 

「いつもの値段でこの量はかなり多いな‼︎」

 

「お買い得だよ‼︎」

 

「金剛さんの所のバナナは美味しいからね‼︎」

 

台湾の言葉ではあったが、バイリンガルの榛名の耳にはしっかりと入っていた

 

バナナが30元になってから、ものの10分もしない内に、トラックに積み込まれたバナナは空になった

 

「一旦戻るDeath‼︎」

 

金剛はこうして暇があれば何処かしらでゲリラ的にバナナの叩き売りをし、中々の量の小銭を集めている

 

この日、計三度バナナの叩き売りをし、全て完売した…

 

 

 

 

「そろそろ榛名達は帰るダズル」

 

「またお小遣い欲しくなったら来るDeath‼︎はい‼︎」

 

金剛からお土産のバナナが入った段ボールと、お金の入った茶封筒を渡される榛名と霧島

 

「小遣いレベルじゃないマイク…」

 

計2日間金剛バナナワニ園に応援に行った二人は、金剛からそれぞれ3万程を手渡された

 

「そうだ。お金を出すから、貴子さんの基地の分と、トラックさんの所に送るバナナ欲しいダズル」

 

「ふふふ…お金は要らないDeath‼︎持って行くDea〜th‼︎ポコー‼︎」

 

「はい、コンゴー様‼︎」

 

金剛はポコに頼み、榛名と霧島にもう一つずつバナナが入った段ボールを持たせてくれた

 

「タクシーが来たDeath‼︎」

 

「また来るダズル‼︎」

 

「バイバイマイク‼︎」

 

「ハルナ、キリシマ、また来る‼︎」

 

「ワニを頼んだダズル‼︎」

 

金剛バナナワニ園を後にし、榛名と霧島はタクシーに乗り、港を目指す…

 

 

 

「どうだった‼︎コンゴーバナナワニ園は‼︎」

 

帰りのタクシーは、勿論行きと同じタクシーのにーちゃん

 

「オメェ、暇があるならワニクルーズに行って来るダズル」

 

「ワニクルーズかぁ‼︎妹が今担当してるんでさぁ‼︎」

 

「ポコダズルか」

 

「おっ‼︎会いましたか‼︎」

 

この陽気なタクシーのにーちゃん

 

実はワニ園にいたポコのお兄さんだった

 

「結構可愛い子ダズルな」

 

「自慢の妹です‼︎後は嫁ぎ先が決まりゃあ、問題ないんすがねぇ‼︎ははは‼︎さぁ‼︎着きました‼︎」

 

多少はウザかった陽気なにーちゃんだが、いざ別れになると急に名残惜しくなる

 

「今度来た時も乗せて欲しいダズル」

 

「また来るマイク‼︎」

 

「勿論でさぁ‼︎」

 

タクシーが走り去り、榛名達は港に振り返る

 

「来た来た‼︎榛名さ〜ん‼︎霧島さ〜ん‼︎」

 

「イカさんダズル‼︎」

 

港に停泊した高速艇の前で、煙草を吸っているイカさんが手を振っている

 

迎えに来てくれたみたいだ

 

榛名達は早々に出国審査を終え、高速艇に乗り込み、帰路に着いた…

 

 

 

 

その途中、貴子さんのいる基地に寄り、たまたま居合わせた衣笠にお土産のバナナを渡し、榛名達は単冠湾へと帰って行った…




タクシーのにーちゃん…タクシーのにーちゃん

外国によくいるであろう陽気なタクシーのにーちゃん

金剛バナナワニ園に詳しく、いつもなら観光にオススメしてくれる

結構安く乗せてくれるので、人気がある



ポコ…褐色のねーちゃん

金剛バナナワニ園のワニエリアで働くお姉さん

動きがちょこちょこして可愛い

たまにワニ小屋からワニを出しちゃうのがたまにキズ

タクシーのにーちゃんとは兄弟

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