艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

917 / 1086
268話 貴子さん、大出血‼︎(2)

「うっ…」

 

ひとみといよに揺さ振られ、目を覚ます

 

ハンバーグを食べてたら、女神の鉄槌が飛んで来た所までは覚えてる

 

「ひとみ、いよ、大丈夫か⁇」

 

「たかこしゃんち〜でた‼︎」

 

「なに…」

 

まだ頭がクラクラする…

 

貴子さんが出血しただと…

 

…貴子さんが出血しただと⁉︎

 

ようやく意識を取り戻し、何とか立ち上がる

 

「わ、分かった‼︎」

 

「う〜ん…」

 

「ぱぱしゃんもおきて‼︎」

 

隊長も目を覚ます

 

「何が起こった…」

 

「貴子さんの鉄槌だ。貴子さんが出血したらしい。ちょっと見てくる」

 

「私も行こう。何か出来る事があるだろう」

 

四人で貴子さんのいる部屋に来た…

 

 

 

「貴子さん‼︎」

 

「あぁ。来てくれた…ごめんね、折角のハンバーグなのに…」

 

隊長と貴子さんの自室に入ると、貴子さんは左胸を抑えていた

 

「アトランタに噛まれて…」

 

「診てもいいか⁇」

 

無言のまま、貴子さんは手を退けた

 

左胸の先端を噛み切られたのか、出血している

 

「塗り薬は塗ったみたいだな…それには止血の効能がある。貴子さん、工廠まで歩けますか⁇」

 

「えぇ…」

 

「私が担ごう。レイ、準備出来るか⁇」

 

「すぐに取り掛かる‼︎」

 

急いで工廠に向かい、カプセルの準備に入る

 

「そこでジッとしてるんだぞ⁇」

 

いつの間にか着いて来ていたひとみといよをPCの前で待たせ、浴槽型のカプセルの準備に入る

 

「たかこしゃん、ぎぁぁぁあ‼︎いってた」

 

「なおう⁇」

 

「治るさっ‼︎あれくらいの傷ならっ‼︎こいつで一発さっ‼︎」

 

浴槽型のカプセルを準備しながら、ひとみといよに返事を返す

 

「よしっ‼︎準備完了だ‼︎」

 

「レイ‼︎準備出来たか⁉︎」

 

タイミング良く隊長が貴子さんをお姫様抱っこして来た

 

「オーケーだ‼︎ここに浸けてくれ‼︎」

 

「服脱ぐわ」

 

「おっと…服脱がなくてもそのまま浸かればいい」

 

貴子さんが服を脱ぎ始めたので、俺は後ろを向く

 

「血が付いちゃったのよ…」

 

「それはいかんな。着替えを持ってくる。レイ、貴子を頼んだ」

 

「分かった…」

 

背後で“チャプ…”と音がしたので、貴子さんが浴槽に入ったみたいだ

 

「後はそのまましばらく浸かっていれば、傷は回復する」

 

「ふぅ…ありがとうね…」

 

「此方こそ、ハンバーグありがとう」

 

後は心配する必要は無い

 

あの傷なら、このまま数十分浸かれば傷は治る

 

そのまま開けっ放しになった扉から出て、タバコに火を点ける

 

「たかこしゃん、おっぱいれっかい‼︎」

 

「おちちでう⁇」

 

「ふふっ。いっぱい出るわよ〜⁇」

 

「ははは…」

 

気を紛らわす為に、タバコを思いっきり吸う

 

いかんいかん…

 

「すまなかったな…レイ」

 

貴子さんの着替えを持って来てくれた隊長が来た

 

「後はこのまましばらく浸かっていれば大丈夫だ」

 

真面目な回答をしたはずだが、隊長の顔が笑っている

 

「お前の鼻血も治るといいな⁇」

 

「ふっふっふ…」

 

それはもう尋常じゃない位のヘモグロビンが、足元のアスファルトに滴り落ちて行く…

 

 

 

 

三十分後…

 

「んん〜っ‼︎ありがとう‼︎凄いわね⁉︎」

 

貴子さんの胸は元通りになっていた

 

「これ位いつでもっ」

 

「あらっ。ふふっ‼︎凄い鼻血‼︎」

 

「横須賀では慣れませんでした…」

 

横須賀も大概デカイが、貴子さんも相当デカイ

 

そんなたわわが、やれ柔らかいだの、やれお乳が出るだの…

 

「アトランタは俺に任せて、二人は休んでくれ」

 

「すまんレイ。今日は甘える」

 

貴子さんも流石に憔悴している

 

ここはアトランタは俺が見た方が良いだろう

 

「マーカス君こそ大丈夫なの⁇アトランタ、マーカス君に乗ったり物投げたり…」

 

「俺は大丈夫‼︎子供には慣れたさ‼︎」

 

「貴子。今日はレイに甘えよう」

 

「ん…」

 

「ありがとうな、レイ」

 

「いつでもっ」

 

貴子さんと隊長が基地に戻り、ひとみといよと俺が残る

 

「たかこしゃんなおった‼︎」

 

「ふっかつら〜‼︎」

 

「二人共、俺が気絶している間、ありがとうな⁇」

 

「ひとみといよちゃんにあ、ききあせん‼︎」

 

「ぎぁぁぁあ‼︎ききあせん‼︎」

 

俺の前で、グラーフ譲りのンフ〜で胸を張るひとみといよ

 

「ふふっ…」

 

残る問題はアトランタだ…

 

 

 

 

食堂に戻って来ると、アークと一緒にアトランタがいた

 

アークの持っているオモチャを見て、手を伸ばしているアトランタを見る限りは大人しい

 

「タカコは大丈夫か⁇」

 

「あぁ。あれくらいなら一発さ」

 

「マーカスお兄さんにありがとう、だな‼︎」

 

「よいしょっ。アトランタ、ちょっと見せてな…」

 

アトランタのおしゃぶりを取り、ひとみといよの歯を見た時と同じ、プラスチックの小さなスプーンでアトランタの唇をめくる

 

「ぐわ〜…生えたな〜」

 

既に歯が生え揃い始めたアトランタ

 

しかも、貴子さんの乳首を噛み切る強さだ

 

これで噛み癖が出たら…

 

考えたくないな…

 

「明日から離乳食だな⁇」

 

「そうだな。またタカコが噛まれる」

 

「今日はもう休…おっと…」

 

アークの手から離れたアトランタが、俺に抱っこをしろ‼︎とせがむ

 

「よいしょっ」

 

「良かったじゃないかビビリ。懐かれてる」

 

「さっ。アトランタもネンネだ」

 

貴子さんと隊長は自室にいるが、今日は二人にした方が良さそうだ

 

「ビビリ。アークは食器だけ片付ける。アトランタを頼む」

 

「分かった」

 

赤ちゃん用の布団一式を持って来て、そこにアトランタを寝かせる

 

「さ、アトランタ。ネンネだぞ…」

 

仰向けになったアトランタのお腹を、優しく叩く

 

数分もしない内に、アトランタの目はトロンとして来た…

 

「よしっ‼︎終わった‼︎ビビリ、アークが代わる。今日はお休み…」

 

いつの間にかアトランタにつられる様に、俺も眠りに就いていた

 

「お疲れ様です…マーカス様…」

 

アークは俺に毛布を被せ、今しばらく寝顔を見た後、自室に戻った…

 

 

 

 

次の日の朝

 

「おはよ〜…ふぁ…よしっ‼︎もう大丈夫よ‼︎」

 

今日はひとみといよより早く起きた貴子さん

 

昨日早めに寝たおかげでたっぷりと睡眠が取れた

 

「あらっ。マーカス君‼︎昨日はあり…」

 

貴子さんの言葉が途中で止まり、笑みがこぼれる

 

「どう足掻いてもそうしなきゃ嫌なのね⁇」

 

貴子さんの眼下には、俺とアトランタ

 

しかし、アトランタの居る場所は俺の腹の上

 

アトランタはどう足掻いても俺に乗らなきゃ気が済まないらしい

 

「マーカス君っ」

 

「んぁ…はっ、貴子さん。傷は大丈夫ですか⁇」

 

「大丈夫‼︎ありがとね⁇」

 

「アトランタは…」

 

「ふふっ‼︎そこにいるわ⁇」

 

「あぁ…」

 

気持ち良さそうに寝息を立てるアトランタ

 

「きっと、マーカス君が落ち着くのよ」

 

無言のまま背中をポンポンと軽く叩くと、アトランタは目を覚ました

 

「寝起きの顔怖いわね…」

 

「怒ってるみたいだな…」

 

アトランタの寝起きの顔は凄く怖い

 

機嫌が悪くなった時に見るあのジト目だ

 

アトランタはしばらくジト目のままその辺をハイハイで歩き回り、俺はもう少しだけ横になる事にした…

 

 

 

 

「朝ごはん出来たわ‼︎」

 

子供達が起き始めたが、皆俺を起こさずにいてくれていた

 

「アトランタ⁇マーカスお兄さん起こしてくれる⁇」

 

アトランタは今日から離乳食

 

その前にマーカスお兄さんを起こさなければ、全てがパーになる

 

アトランタは言われた事を理解したのか、ハイハイで俺に近付き、頭の上に来た

 

そして、いつもの様に人差し指で俺の頭を撫でる

 

「アトランタか…」

 

目を覚ますと、アトランタの顔がドアップで映る

 

「朝ごはん出来たわ‼︎」

 

「分かったっ‼︎よいしょっ‼︎」

 

貴子さんの言葉とアトランタのクリクリで目を覚まし、いつもの朝を迎える…


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。