艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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題名と話数は変わりますが、お話は続きです

工廠に逃げ込んだレイ

そこには、良き相談相手となった一人の“母親”がいました


264話 雷鳥の相談相手

「ぐへぇ…」

 

工廠に着いてすぐにPCの前に座り、机にうな垂れる

 

《お疲れみたいね》

 

「ヘラか…」

 

肉体的にボコボコにされた俺を見て、ヘラが労いの言葉をかけてくれた

 

冷蔵庫からコーラを取り、それを口にしながらヘラと会話を続ける

 

「数え切れない位に顔面にパースィーが来た…」

 

《ジャーヴィスが懐いたんだもの。次はアークが懐かれる番よ》

 

「それもそうだなっ」

 

ヘラが何かを調べているのか、ずっとPCが動いている

 

《パースィーにも色々あんのね。アンタが当たったのどれ》

 

「この“はじめてのパースィー”だ。おもちゃ箱に二つあった」

 

ヘラは通販サイトを開け、俺の顔面に来たパースィーを表示した

 

《もう二つ程追加しましょうか》

 

PCのカーソルが“購入”へと向かう

 

「だっ‼︎バカっ‼︎止めろっ‼︎止めて下さい‼︎」

 

自分でもビックリする位のスピードでマウスを取り、ウィンドウを閉じるボタンに向かわせる

 

《ま、いいわ。止めといてあげる》

 

「あれ以上増やされたら敵わん…今でさえこんな状態だ」

 

ヘラの感情パラメーターを見ると

 

“愉悦”

 

“興奮”

 

と表示され、そして何故か

 

“母性”

 

と表示されている

 

《甘えん坊さんよ、アトランタは。懐かないのはアンタだけよ》

 

「アトランタを見たか⁇」

 

《抱っこさせて貰ったわ。私の胸のスリットに手突っ込んでたわ⁇》

 

「それでか…」

 

何故母性と表示されていたか、すぐに分かり、少し笑う

 

《アンタがいない間、きそが大変だったのよ⁇》

 

「きそがか⁇」

 

《ほら。あの子緑色じゃない⁇髪の毛引っ張られて半泣きだったわ⁇》

 

どうやらヘラもアトランタが緑色が好きと言うのは知っている様子

 

「俺はどうすればいい⁇」

 

《そうねぇ…線路になる位なら、懐かれていない訳じゃないわ⁇だって、アンタの手から物を食べるんでしょ⁇》

 

「そうだな。さっき抹茶ムースを食べさせた」

 

《アトランタにとって、アンタは初めて倒した相手なのよ。私とアンタみたいな関係と思ってるのよ、きっと》

 

確かにそうだ

 

アトランタにとって、初めて倒した相手は俺だ

 

つまり、倒したんだから言う事を聞け‼︎と言う訳だ

 

《その内直るわ。私もアンタをよっぽどじゃない限り、犬と呼ぶのを止めたみたいにね。貴子さんとウィリアムの子よ⁇いつか分かってくれるわ。アンタが一番最初の友達ってね》

 

「ありがとう。少し楽になった」

 

ヘラの言う通りだ

 

アトランタは、きっといつか分かってくれる

 

《気が済んだら、そのコーラ飲んで線路になって来なさい》

 

「分かったよっ。ありがとうな⁇」

 

《アンタがやる事はいつだって正しいわ。行ってらっしゃい》

 

いつの間にか、ヘラは相談相手になっている

 

誰にも相談出来ない事を、ヘラはキチンと答えを返してくれる

 

そしていつも「アンタがやる事は正しい」と背中を押してくれる

 

良き相談相手を持ったな、俺は…


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