艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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25話 タマゴの悩み(3)

隣の格納庫では、既に型が出来上がっていた機体があった

 

「これは…」

 

”喜べ提督‼︎ジェットエンジンの機体や‼︎”

 

「おぉ‼︎」

 

私はまだ型だけの機体に心奪われた

 

”…”

 

この時、数人の妖精は不安を抱いていた

 

最近、提督が空に出る回数が多い

 

不安は大きく分けて二つ

 

撃墜されてしまうのではないか…

 

これは、戦闘機乗りとしていつも隣り合わせにある

 

もう一つの方が大きかった

 

それは、空軍に帰ってしまうのではないか…

 

自分達を見捨てて、また空に還るのでは…

 

妖精達は、そんな不安でいっぱいだった

 

ましてや、今回出来る機体はジェットエンジン

 

提督が元々乗っていた機体に限りなく近い

 

”提督、空軍に行ってまうんやろか…”

 

”こら‼︎”

 

つい、一人の妖精が音を漏らした

 

「戻らないよ」

 

”ホンマか⁉︎”

 

「海軍にも機体はある。俺はそれで十分さ。”空に還る”って目標は、これで果たせてるからな」

 

”よかった…”

 

そこにいた妖精達が安堵の息を漏らした

 

「それにな…俺は空軍に戻るつもりはない」

 

”なんでや⁇空は好きやろ⁇”

 

「空は好きさ。だけど、国の命令で飛ぶ空はウンザリだ。奴等、椅子を擦り減らすだけで動かないからな」

 

”何か聞いたな、そんな話”

 

「いつでも潰してやるさ…この国に護る価値は…もうない」

 

提督が司令室がある方へ顔を向け、そっちの方に歩き始めた時、ふと顔が見えた

 

見た事がない、怒りに満ち溢れた顔…

 

初めて見る表情だった…

 

 

 

 

「さぁ‼︎風呂に入ろう‼︎」

 

「たいほうも‼︎」

 

「ボクも‼︎」

 

「私も」

 

「チビ達は任せたぞ‼︎」

 

「さぁ、行くぞ」

 

たいほう達と風呂に入り、体を洗っていると、れーべとまっくすの背中に目が行った

 

二人の背中には、たくさんのアザがあった

 

「背中、凄い⁇」

 

「柔らかい背中だな」

 

「そうかな⁇」

 

「あったかくて、スベスベしてるぞ⁇」

 

「そ、そうかな…」

 

「まっくすもあったかいな…こっちはプニプニだ」

 

「スケベ」

 

「ははは‼︎すまんすまん‼︎」

 

「パパ‼︎あたまあらって‼︎」

 

「はいよ」

 

たいほうの頭にシャンプーを付け、髪を洗う

 

「ね、れーべ」

 

「なに⁇」

 

「パパは良い人ね」

 

「うん…アザの事、言わなかったね」

 

「空で何を話したの⁇」

 

「強くなりたいって言ったよ。ボクになら出来るって」

 

「そう…」

 

「まっくすはなんて⁇」

 

「死にたいって言ったわ」

 

「え⁉︎」

 

れーべの驚いた声は浴室全体に響いた

 

「そしたら、あの急降下よ」

 

「あ…あはは。パパ、運転上手だよね」

 

「それはありがとう」

 

「パパ‼︎」

 

「さ、露天風呂に行こう」

 

露天風呂に行くと、既にたいほうが湯船に入っていた

 

「がーがーさん、がーがーさん」

 

アヒルのおもちゃを二つ浮かべ、一人で遊んでいる

 

「ガーガーサン⁇」

 

「がーがーさん‼︎たいほうのおともだち‼︎」


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