艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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マーカス、E敗北‼︎


257話 貴子さんの遺伝子(3)

学校に着くと、今は授業中の様で誰も廊下に出ておらず、真っ直ぐ園児部に来た

 

「いたいた」

 

園児部のドアの窓から、明石の姿が見えた

 

隣に由良がおり、立って話している足元にアトランタがいる

 

ただ、目線はアトランタに行っているので、心配は無い

 

いざ園児部のドアを開け、中に入る

 

「あ‼︎ダーリン‼︎」

 

「マーカスさん‼︎」

 

「おっ‼︎よいしょっ‼︎」

 

入った途端に、ジャーヴィスと松輪が足元に抱き付いて来たので、膝を曲げて受け止める

 

「さっきネ‼︎赤ちゃん来たヨ‼︎」

 

「吹雪さんと一緒だ‼︎」

 

「あの子は貴子さんの赤ちゃんだ。ジャーヴィスも松輪も、友達になってくれるか⁇」

 

「ジャーヴィスなル‼︎」

 

「おらもなるだよ‼︎」

 

二人の頭を撫でると、互いに遊んでいた場所に戻る

 

「おっと…」

 

松輪はいつも通り吹雪の横に

 

ジャーヴィスはジャーヴィスと瓜二つの女の子の横に行く

 

そこにはジェーナスがいた

 

双子の姉妹と言われても、あの外見なら信じ込まれるだろうな…

 

ジャーヴィスとジェーナスは積み木に無夢中になっているので、そのままにしておこう

 

「マーカスさん‼︎」

 

「大尉。お疲れ様です」

 

「今日は見回りじゃないが、この子の様子を見ようと思ってなっ。何も食ってないんだろ⁇ほら」

 

「ありがとうございます‼︎」

 

「よっこらしょ…」

 

明石にたこ焼きパックを渡し、アトランタの前に座り、胡座をかく

 

アトランタは俺が目の前に座ったのを見て、ハイハイをやめ、赤ちゃん座りをして俺の方を見る

 

「おいで、アトランタ」

 

アトランタの手には、吹雪がいつも持っている柔らか素材のぬいぐるみが握られている

 

「俺にくださいな」

 

俺が手を前に出すと、アトランタは分かっているのか、ぬいぐるみを少し振る

 

「おいで。へぶっ‼︎」

 

「マーカスさん⁉︎」

 

「大尉⁉︎」

 

「だ、大丈夫だっ…」

 

いきなり顔面にぬいぐるみを投げ付けられた‼︎

 

要は、こっちに来るなとの合図だ

 

「柔らか素材で良かった…」

 

ぬいぐるみを拾って顔を上げると、アトランタがハイハイで移動しているのが見えた

 

「アトランタ…それは良くない。良くないぞ⁉︎」

 

再び赤ちゃん座りをして、俺の方を向いたアトランタの手には、プラスチック製の緑色の機関車が握られている

 

ジャーヴィスが好きなイギリスのアニメのキャラクターの”パースィー”だ

 

あれは当たると痛い

 

一回子供部屋で同じ物を踏ん付けた時があったが、死ぬ程痛かった

 

「あ、アトランタ⁇俺はパースィーが苦手なんだ。な⁇頼むよ。パースィーは良くない。良くな、ぐへぁ‼︎」

 

懇願虚しく機関車パースィーも顔面直撃‼︎

 

久々に鼻血が出た‼︎

 

「ぎ、ギブアップ…」

 

その場に大の字にうつ伏せになり、降参の体勢に入る

 

すると、アトランタがハイハイでこっちに寄って来た

 

顔だけ前を向き、アトランタの向かって来るであろう方向を見る…

 

すると、そこには赤ちゃん座りをしているであろう、アトランタのおへそ部分があった

 

恐る恐る顔を上げる…

 

「あ」

 

おしゃぶりを咥えながら、物凄いジト目で俺を見るアトランタが見えた次の瞬間

 

ゴンッ‼︎

 

「いでぁ‼︎」

 

アトランタ、渾身の頭突きが俺の額に入った

 

薄れ行く意識の中、俺は思った…

 

流石は隊長と貴子さんの娘だ…と


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