艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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255話 無表情の君(4)

「お母さんは誰なんだ⁇」

 

「母様の名は蒼龍であります」

 

「森嶋か」

 

「森嶋ね」

 

蒼龍と聞いて、すぐに森嶋の名前が出て来た

 

あの二人なら有り得なくないが…

 

蒼龍は実はかなり幼いのは気にしないでおこう

 

「大尉殿」

 

「なんだ⁇」

 

「大尉殿は、深海も艦娘も診れる腕の立つ医者と聞いたであります」

 

「ある程度は診てやる。どうしたんだ⁇」

 

「母様のあの人食癖を治して欲しいであります」

 

「「ははははは‼︎」」

 

その言葉を聞き、俺と横須賀は爆笑した

 

神州丸が治して欲しい相手とは、蒼龍の人を食べる癖

 

普段トラックにいるであろう神州丸から見ても、蒼龍の癖は怖いのだろう

 

「何故笑うでありますか」

 

「神州丸は心配性の良い子ね⁉︎」

 

「あぁ‼︎神州丸、蒼龍はあのままでいいんだ‼︎」

 

「なんと…母様とも知り合いでありましたか。江風の姉様に聞いた所、大尉殿なら、母様を治せるかも、と」

 

「蒼龍はあのままで良いんだ」

 

「神州丸もいつか喰われそうであります」

 

「それは心配だな…」

 

ただでさえトラックさんや俺を食おうとしてる始末

 

娘の神州丸をちょっと齧る位なら有り得そうだ

 

「そう言えば、その大発ちゃんはどうしたんだ⁇」

 

「これは…」

 

「おっ…」

 

ようやく神州丸の顔が綻んだ

 

「これは、父様が母様の為に送った物であります。母様はまだ幼いと聞きました」

 

「父さんは優しいか⁇」

 

ここで神州丸から驚愕の事実が放たれる

 

「父様とはまだ会った事はないであります。きっと、父様は神州丸が産まれた事も知らないであります」

 

「蒼龍は言ってないの⁇」

 

「母様は、神州丸がいると父様の仕事に支障が出るといけないので黙っているであります。代わりに、爺様が神州丸を可愛がってくれるであります」

 

「爺様ってのは、トラックさんか⁇」

 

「茂爺様であります」

 

「凄い似合うわね…」

 

横須賀は笑いを堪えている

 

「…よしっ‼︎お父さんに会いに行くか‼︎」

 

「良いのでしょうか…」

 

「いいか、神州丸」

 

返事は無いが、神州丸は俺の目を見直した

 

そして、ようやく神州丸に触れる事が出来た

 

神州丸の小さな手を握り、俺も目を見返す

 

「自分の子供が嫌いな親なんていないさ。もし、森嶋が神州丸の事を嫌いだって言ったら、隊長権限で好きにさせてやるさ」

 

「やはり父様の隊長殿でありましたか…」

 

「さ、行こう‼︎赤城、横須賀と一瞬に執務室に戻れるか⁇」

 

神州丸と手を繋ごうとしたが、神州丸自身は普段からそうして貰ってるのか、両手を広げたので抱き上げる事にした

 

手を繋ごうにも、身長的に抱き上げた方が良いかもしれないな

 

「ねんね、する」

 

「今日は清霜達と一緒に絵本読みましょうね⁇」

 

「えほん、ねんねする」

 

「じゃあレイ⁇任せるわよ⁇」

 

「あぁ‼︎」

 

神州丸の事もだが、赤城が絵本と聞いた瞬間にまた嬉しそうな顔をしたのが嬉しかった

 

神州丸を抱っこしたまま、パイロット寮を目指す


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