艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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254話 償いの朝(2)

「さっ‼︎出来たわ‼︎」

 

「「「ワーイ‼︎」」」

 

深海の子達が貴子さんに寄って行く

 

頭の上や、お腹の前に抱えたお皿に唐揚げが盛られて行く

 

「天ぷらはこっちダズル‼︎」

 

「「「ワーイ‼︎」」」

 

榛名の所にも、同じようにお皿を抱えた子達がズラリと並ぶ

 

「清霜ちゃんも食べましょうか‼︎」

 

「き〜ちゃん、貴子さんと一緒に食べる‼︎」

 

「そっかそっか‼︎なら、もうちょっとだけ私達のお手伝いお願いね⁇」

 

「はいっ‼︎」

 

「からあげ、ください」

 

最後尾に赤城が来た

 

「はいっ、どうぞっ‼︎」

 

赤城のお皿にも、唐揚げが盛られる

 

「ありがと」

 

赤城はそのまま体を横に向け、榛名の方を向いた

 

「てんぷら、ください」

 

「うぬ」

 

出来たての芋天が唐揚げの上に乗る

 

「ありがと」

 

「イッピー食うんダズルよ」

 

榛名も貴子さんも、赤城を目線で追う

 

赤城はイーサンやヌ級の居る近くに座り、ポケットから何かのケースを出した

 

「すーぷん、ふぁーく。からあげは、ふぁーく」

 

谷風のお弁当セットとよく似たケースから、持ち手がプラスチックの子供向けのフォークを取り出した

 

「いただきます」

 

赤城は相変わらず真顔で唐揚げと天ぷらを頬張り始めた

 

「案外いい子ちゃんダズル」

 

「マーカス君の子供だから大丈夫よ、ねっ⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

そう言って、貴子さんは清霜にウインクを送った

 

「あら、ラバウルのお二人さん」

 

「何やら不穏な気配がしましてね」

 

ラバウルさんは先程見ていた水平線の先を指差した

 

「あら…」

 

「ありゃあなんダズル」

 

水平線の向こうから”転がって来る”丸い何か

 

貴子さん達のいる広場に向かって、一直線に向かって来ている

 

「ぼーる」

 

「赤城ちゃん‼︎ボールじゃないわよ‼︎」

 

赤城はボールに反応して、それに向かおうとするが、貴子さんが止める

 

「止まる気はないみたいですねぇ」

 

「キャプテン、ここはお任せを」

 

健吾が前に出る

 

DMM化が可能な健吾なら止める事くらいは可能かも知れない

 

「仕方ないわね…はるちゃん‼︎」

 

「おっしゃ‼︎久々に貴子さんとやれるダズル‼︎」

 

「え⁉︎ちょっ‼︎」

 

貴子さんは軽々と健吾を持ち上げて背後に置き、榛名と共に前に出て腕を回し始めた

 

「清霜ちゃん」

 

「は、はい‼︎」

 

「戦艦の戦い方、よく見ておいてね⁇」

 

貴子さんは笑顔のまま、清霜に語り掛ける

 

「はいっ‼︎」

 

清霜に笑顔を見せた後、貴子さんは海の方を向いた

 

「ブレーキ掛けるんダズルーッ‼︎」

 

間近まで迫って来ている、丸い何か

 

勢いは治まる事なく、このまま行けば広場が大惨事になる事は目に見えている

 

「はるちゃん。それだけ言えば聞こえてるわ。行くわよ‼︎」

 

「オーケーダズル‼︎」

 

榛名は左手

 

貴子さんは右手

 

それぞれの手を構え、丸い何かが近付くのを待つ

 

そして…

 

「「うおりゃ‼︎」」

 

二人の掛け声と共に、渾身のストレートが転がって来たそれに直撃した

 

「イッタァーイ‼︎」

 

ストレートが当たった瞬間、丸い物体の中から声が聞こえた

 

「外すわよ‼︎」

 

「オーケーダズル‼︎」

 

丸い物体は何かの装甲の様で、貴子さんと榛名の腕力なら十二分にバラバラにする事が出来た

 

掴んでは投げられ、バラバラにされていく装甲

 

「アハハッ‼︎」

 

「あら…」

 

「チッセェダズル」

 

中から小さな女の子が出て来た

 

今の所、貴子さんと榛名しか見えていない

 

「ダメじゃない、こんなので転がって来ちゃ」

 

「アナタハダァレ〜⁇ワタシノテキダネ〜‼︎アハハハハ‼︎」

 

「はるちゃん‼︎離れて‼︎」

 

「危ねぇダズル‼︎」

 

少女は服の袖に砲を隠しており、それを貴子さんに向けていた

 

「健吾、ここを頼みます」

 

「キャプテン‼︎」

 

小さな女の子と聞いて、いてもたってもいられなくなったラバウルさんは、二人の脇の間から中を覗き込んだ

 

「な…」

 

中を見た瞬間、ラバウルさんは珍しく後退りした

 

「ど…どうして…貴女がここに…」

 

「アハハッ…ヤ〜ットミ〜ツケタァ‼︎」

 

「あっ‼︎コラッ‼︎」

 

「待つんダズル‼︎」

 

貴子さんと榛名の手を軽々と飛び越え、少女はラバウルさんの前に立つ

 

「う…」

 

いつもの様子では無い位、怯えた顔をしながらゆっくりと後退するラバウルさんとは裏腹に、少女は目を見開き、にこやかな顔をしながらラバウルさんにジワリジワリと歩み寄る

 

「ま…”マリナ”…どうしてここに…」


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