艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、253話が終わりました

今回のお話は、面白い半分、暗さ半分なお話です

スカイラグーンでお料理教室を開く貴子さん

その背中を見守る、彼女を”愛していた男”

そんな彼には、どうしても償いたい過去がありました


254話 償いの朝(1)

今日は久々の休暇の日

 

朝ご飯を食べ終え、ソファーに座ってコーヒーを飲みながら子供達を眺める

 

定位置である窓のすぐそばでは、小さな声で何かを話しながら顔を見合っては外を眺めるひとみといよがいる

 

「きぉ〜あ、たかこしゃんおれかけ」

 

今日は朝から貴子さんがいない

 

スカイラグーンでお料理教室があり、貴子さんが教えに行っている

 

「ひとみ、いよ。貴子の真似してくれないか⁇」

 

鬼の居ぬ間になんとやらと言うが、隊長がまさにそれだ

 

「わういこはてんぷあにすうあお‼︎」

 

「ちぉっと‼︎かああげかえちなしぁい‼︎」

 

「ははははは‼︎」

 

仕草付きで貴子さんの真似をし、隊長は爆笑する

 

「ははは‼︎貴子そっくりじゃないか‼︎」

 

貴子さんが居ない時の隊長は無敵だ…

 

一方、その頃貴子さんは…

 

 

 

 

「はるちゃん‼︎そっちはどう⁇」

 

「榛名は大丈夫ダズル‼︎」

 

「き〜ちゃんも大丈夫‼︎」

 

スカイラグーンの広場で貴子さんが榛名達と唐揚げと天ぷらを作っている

 

貴子さんの横には、お手伝いに来た清霜がいる

 

「カラアゲダッテ‼︎」

 

「エビフライハタベタコトアルヨ‼︎」

 

待っている場所には、イーサンとあのヌ級がいる

 

「カラアゲ、オイシソウネ‼︎」

 

「ハンバーガーニハサモウ‼︎」

 

貴子さん達の周りには、ヨーグルやルーナ達、ママ深海がいる

 

どの基地も子供がいる

 

その子供達のご飯を作るのは、深海、艦娘関わらずお母さんの役目

 

母親という存在に、種族は関係無い

 

母親は子供達に喜んで欲しい事に、変わりはない

 

「これ」

 

差した人差し指を小刻みに振る癖のある艦娘が来た

 

「あらっ‼︎貴方は初めてね⁇」

 

「あかぎ」

 

教えて貰った事をきちんと覚えている赤城は、貴子さんに自分から自己紹介をする

 

「ほー⁇オメェが赤城ダズルか」

 

「マーカス君から聞いたわ‼︎私は貴子、もうすぐ出来上がるからね⁇」

 

「これ」

 

指差す先には、貴子さんが唐揚げを作るどデカイ鍋がある

 

「これは唐揚げっ‼︎」

 

「これ」

 

次は榛名が作る天ぷらの鍋

 

「これは天ぷらダズル」

 

「からあげ、てんぷら。あかぎ、からあげすき」

 

「マーカス君と食べたの⁇」

 

「たべた。ふぁーくつかう」

 

「もうすぐ出来上がるからね⁇」

 

「まつ」

 

赤城は大人しくその辺に座り、貴子さん達を真顔で見始めた

 

その姿を、喫茶ルームで見守る男性が二人…

 

「おイ。コーヒーだ」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとう」

 

窓際の席に座り、潮にコーヒーを貰う、ラバウルさんと健吾

 

ラバウルさんは至って真剣な目で、貴子さんの背中を見ている

 

「いいんですか⁇行かなくて」

 

「ふふ。好きだからこそ、見守る愛もあるのですよ」

 

それを聞いて、健吾は飲みかけていたコーヒーを吹き出した

 

「何かおかしな事を⁇」

 

「キャプテン、貴子さんが好きなんですか⁉︎」

 

「えぇ」

 

この質問にも、至って真剣に返すラバウルさん

 

「意外だ…」

 

「なんですか健吾。私が真性のロリコンとでも⁇」

 

「違うんですか⁇」

 

「色々あるのですよ、色々…」

 

ラバウルさんの横顔を見ながら、健吾はコーヒーを飲み続ける

 

目はいつも通りの細目だが、何か違う

 

この目は、何かを護る目だ

 

いつも健吾やアレンを護る時に垣間見る、とても真剣な目だ

 

「貴子さんは、ウィリアムの横にいる方が似合います。それに、私の手は汚れていますからね…」

 

「それを言い出したら自分も…」

 

「健吾は大丈夫です。私が保証しますよ。降り掛かる火の粉を自力で払う方法を教えたまでです」

 

「…」

 

健吾は何も返さないまま、ラバウルさんを見続ける

 

「ロリコンじゃないキャプテンなんて…」

 

健吾がボソッと独り言を呟き、ラバウルさんは海に目を向ける

 

「…波乱が来ましたね。行きましょうか」

 

「イエス、キャプテン」

 

コーヒーを置き、二人は喫茶ルームを出た


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