艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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248話 水中都市(4)

「イムヤッキー‼︎」

 

首に大量のネックレス

 

腕に大量の腕時計

 

それぞれの指全てに大量の指環

 

「キンキラキンが好きなのか⁇」

 

「イムヤッキー‼︎イムヤッキー‼︎」

 

大量の金品を身に付けてイムヤッキーは初めて嬉しそうな表情を見せてくれた

 

嬉しそうに手の平に乗せて何度も揺らしているのを見ると、本当はそのままにしてやりたい

 

が、ここは心を鬼にして教育しなければならない

 

俺はイムヤッキーの前で膝を曲げた

 

「イムヤッキーはキラキラしたのが好きなんだな⁇」

 

「イムヤッキー‼︎」

 

こんな心底嬉しそうにされたら心が揺れる

 

「でもな、イムヤッキー⁇それは拾った物だろ⁇ちゃんと返して来なさい」

 

「イムヤッキィー‼︎」

 

イムヤッキーは体をひねって”これは私の物”とでも言わんばかりに生まれて初めて反抗を見せた

 

「後で買ってやるから、今は返そうな⁇」

 

「イムヤッキィィィイ‼︎」

 

イムヤッキーはそれでも反発する

 

どうしても欲しいらしい

 

「いいか、イムヤッキー」

 

「おっ…」

 

今までアレンの前ではあまり見せなかった父親の顔を、俺はその時していたらしい

 

俺はイムヤッキーの指環まみれの手をギュッと握り、目を見つめた

 

「イムヤッキーが欲しいのは、お父さん良く分かる。キンキラキンで綺麗だよな⁇」

 

「イムヤッキー」

 

「でもな、イムヤッキー。この子達は商品なんだ。誰かに買われるのをずっと待ってるんだ」

 

「イむヤッきー‼︎」

 

一瞬、イムヤッキーの言語に変化が見られた

 

対話IFのようやく起動完了したか、AIに何らかの変化が起きたのだろうか…

 

「後でキンキラキン買ってあげるから、それは返して来てくれるか⁇」

 

「いむやっきー‼︎」

 

「おっ、行った行った」

 

俺の話を聞いてくれたのか、イムヤッキーはもう一度海に戻った

 

数分後…

 

「帰って来た‼︎」

 

「ただいま‼︎」

 

「キンキラキン返して来たか⁇」

 

「返して来た‼︎」

 

「んっ‼︎ん⁉︎」

 

イムヤッキーは何事も無かったかのようにホバークラフトの先頭に腰を下ろした

 

俺とアレンは驚き過ぎて顔を見合わせている

 

「イ、イムヤッキー⁇」

 

「はいっ‼︎」

 

イムヤッキーは返事を返した

 

「おまっ‼︎話せるようになったのか‼︎」

 

「一時的な対話IFの起動不良でした‼︎」

 

「そっかそっか‼︎はは‼︎」

 

イムヤッキーの頭をたっぷりと撫でる

 

「これからも、イムヤッキーを変わらずお使い下さい‼︎」

 

「次はキンキラキン取り放題の所に連れてってやるよ」

 

「イムヤッキー‼︎」

 

合図だけは覚えているのか、イムヤッキーは右腕を上げた

 

「では、イムヤッキーはお家に帰ります」

 

「いいんだ。帰るのはケースの中じゃない。横須賀だ」

 

「イムヤッキーは充電しないと」

 

「常に充電してるんだ。そこにいるアレンのエンジンがイムヤッキーの中には入ってるんだ」

 

「イヅナ型エンジンを入れたのか⁉︎どうやって⁉︎」

 

設計者のアレンでさえ驚いている

 

アレンのイヅナ型エンジンは大型エンジンだ

 

今まで小型化しても精々車サイズにしかならなかった

 

だからこそ、タナトスの様な大型潜水艦の動力源に似合っている

 

それが今、超小型化されてイムヤッキーの動力部分に利用されている

 

「レイ。運転頼んでいいか⁉︎」

 

「オーケー。イムヤッキーと話すか⁇」

 

「いいか⁇」

 

「お話しましょう、アレンさん‼︎」

 

帰り道、アレンはイムヤッキーに興味津々に話し続ける

 

その時のアレンの顔は、父親とエンジニアの両方の顔をしていたのを、イムヤッキーはしっかりと見ていた…

 

 

 

 

横須賀に着いた

 

俺だけが繁華街に行き、イムヤッキーとアレンは工廠で一旦待機

 

「足柄‼︎」

 

「いらっしゃい大尉‼︎」

 

「これ、貰えるか⁇」

 

「120円よ」

 

駄菓子屋である物を買い、工廠に戻って来た

 

「イムヤッキーはご飯を食べられません。ビリビリドッカンです」

 

「そうだったなっ…」

 

「ただいまっと。イムヤッキー⁇よいしょっ‼︎」

 

「わぁ〜っ‼︎」

 

イムヤッキーの首に、赤い石が付いたオモチャのネックレスを付けた

 

「ありがとう‼︎」

 

「それはオモチャなんだ。だけどな、イムヤッキー。誰に貰ったかで、些細な物でもその人にとっては宝物になるんだ。賢いイムヤッキーなら、分かってくれるな⁇」

 

「マーカスさんから貰った物は、イムヤッキーの宝物です‼︎」

 

この時、アレンは思っていた

 

コロちゃんにもこうして優しく教えれば良いのだ、と…

 

「イムヤッキーのお家はここですか⁇」

 

「イムヤッキーがここにいたいなら、ここでいい」

 

「では、いつでもお手伝い出来る様にイムヤッキーはここにいます‼︎」

 

こうして、イムヤッキーは工廠にいる事となる

 

後日、イムヤッキーは自分の充電を機材に繋ぎ、電気を送っている姿を見た…

 

 

 

 

執務室…

 

「おかえりなさい、どうだった⁉︎」

 

「今晩報告書をまとめる。晩飯の当番になったんだ」

 

「私も行くわ。親潮、しばらく頼んだわ。何かあったらすぐに言って頂戴」

 

「畏まりました、ジェミニ様」

 

横須賀と二人でパイロット寮に向かうと、既に漂う美味しい匂い…

 

「出来てんじゃない」

 

「おかしいな…」

 

「おっ‼︎来た来たマーカス‼︎さ、食え‼︎」

 

親父とヴィンセントがキッチンで肉を焼き、パイロット達やジョンストン達子供がステーキを食べている

 

「美味しそう‼︎頂いていいかしら⁇」

 

「勿論‼︎さ、座って座って‼︎」

 

「ちょっとだけ連絡して来る。すぐ戻る‼︎」

 

一旦パイロット寮を出て、タブレットを出した

 

 

 

リヒター> ソフトクリーム製造機、造れるか⁇

 

美少女剣士きそ> もう造ってあるよ。イーサン達の所に渡す奴だよね⁇

 

リヒター> 話が早いな

 

美少女剣士きそ> ちょっと前に頼まれたんだ‼︎僕の造った機械で仲良くなれたら万々歳だよ‼︎

 

リヒター> ありがとう

 

美少女剣士きそ> オッケー‼︎

 

 

 

 

きそとの通信を終え、俺もステーキにありつく事にした…

 

 

 

 

イムヤッキーが工廠に住み着きました‼︎

 

 

 

水没都市”東京”偵察報告書が開示されました




・イムヤッキーDX 3000…伊168みたいな子

マーカスが造った人型水中探査機

攻撃能力は無く、探査に特化している

キラキラした物が好きで、見かけると根刮ぎ行こうとするのが玉にきず

ちっちゃなAIが入っているので、対話も出来る

工廠の中では”イムヤさん”と呼ばれ、色々な人に可愛がって貰っている

小柄な体で小型カメラを搭載しているので、不具合が起きている部分の近くに潜り込み、工兵達に情報を送るのが得意

マーカスとアレンの影響か、ちょっとずつ細かな作業が得意になって来ている

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