艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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248話 水中都市(3)

「リチャード‼︎もうちょっと落ち着いて操縦してくれないか⁉︎」

 

「これが俺の方乗り方だぁ‼︎あ、ヨーグルちゃ〜ん‼︎」

 

「イラッシャイリチャード」

 

親父とヴィンセントが降り、親父がヨーグルと手を振り合う

 

俺もアレンは頭を抱え、肩を震わせる

 

うるさい男、深海と友好的…

 

言われてみれば全部当てはまり、笑いが止まらなくなった

 

「中将なら納得だな⁉︎」

 

「ははっ、確かになっ‼︎」

 

「イムヤッキー‼︎」

 

親父とヴィンセントは窓際の席に座り、ルーナが注文を取りに行った

 

「コーラとフィッシュバーガー‼︎」

 

「私はサイダーとフィッシュバーガーで」

 

「オッケー。キョウハオキャクサンオオイ」

 

「他にもいるのか⁇」

 

「オクニ」

 

笑顔でオーダーを受けたルーナが首を背後に向けた先には俺達がいた

 

「マーカス‼︎アレン‼︎」

 

「親父だったんだな、ここに連れて来てくれたの」

 

「太平洋のど真ん中で行き場を無くしてたからな。横須賀だけでも友好関係になった今、無碍にする訳にもいかなくてな」

 

「ここなら誰にも邪魔をされずに暮らせます。それに、必要限の物資は届けてます」

 

「ワタシタチハ、カワリニコレヲ」

 

ヨーグルが机の上に置いたアビサル・ケープを人差し指でコツコツと突く

 

水没都市は行き場の失った深海棲艦の楽園と化していた

 

外を見ると、物資の運搬を終えた駆逐艦達の頭に乗った人型の子達が帰って来るのが見えた

 

人型の子達は水没したビルの中で遊んだり、少し高い所から水没した部分に飛び込んだりして遊んでいる

 

「楽園…か」

 

「この街は最初からこうだったんだよ…きっと…」

 

「イムヤッキー‼︎」

 

俺と外を交互に見るイムヤッキー

 

「アソンデオイデ。イジメタラオコッテアゲルカラ」

 

「よしっ‼︎遊んでおいで‼︎」

 

「イムヤッキー‼︎」

 

開いたマジックミラーのドアからイムヤッキーは遊びに向かった

 

「フィッシュバーガーオマタセ」

 

ルーナが4つのフィッシュバーガーを持って来てくれた

 

「いただきますっ‼︎」

 

白身魚のフライ、それにタルタルソースが塗られたシンプルなフィッシュバーガー

 

親父もヴィンセントも美味そうに食っている

 

どれ、まずは一口…

 

「んっ‼︎美味い‼︎」

 

「結構サクサクしてるな⁇」

 

「ココハシンカイタチノキッサテン。メニューハチョットシカナイケド、オキャクサンハクル」

 

「確かにっ…食の憩いはっ、必要だなっ…‼︎」

 

フィッシュバーガーを食べながらもヨーグルと話す

 

水没都市の喫茶店か

 

開けっ放しになったマジックミラーの扉の下で、時々ビルにぶつかった海水がザパザパと音を立てて見え隠れしている

 

こういう普段見慣れない光景の中で物を食べるのも悪くないな…

 

「タマニハアソビニキテ。コドモガタマニクルカラ」

 

「どんな子だ⁇」

 

「タニカゼチャント、ハガギザギザノコ」

 

「朝霜か…」

 

歯がギザギザ=朝霜は良くないとは思うが、大体朝霜しかいない

 

早霜もその気があるが、多分ここは朝霜だろう

 

「アタイッテイウコ」

 

「朝霜だな」

 

「朝霜ちゃんだな」

 

歯がギザギザでアタイと言うのは朝霜しかいない

 

「ソレデ、リチャードガオムカエニクル」

 

「ありがとう、親父」

 

「んなぁ‼︎いいって事よ‼︎可愛い孫の為さ‼︎」

 

「どうせ帰りは寿司食べさすんだろ⁇子供達を食べさせに来た〜って口実で」

 

「ん〜…ヴィンセント君には全て見抜かれているな…」

 

親父とヴィンセントの話で全員が笑う

 

「ソウダ。タノミガアル」

 

思い出したかの様にヨーグルが話を切り出す

 

「何だ⁇俺に出来る事なら言ってくれ」

 

「コドモタチガ”シロイネリネリ”ヲタベタガッテイル。ソレヲツクルキザイガホシイ」

 

「…ソフトクリームか⁇」

 

「タダイマ‼︎ア‼︎マーカスサン‼︎」

 

タイミング良くイーサンが階段の方から帰って来た

 

イーサンなら分かるかもしれない

 

「おっ‼︎おかえりイーサン‼︎イーサン、白いネリネリって、何か分かるか⁇」

 

「キソチャンノソフトクリーム‼︎」

 

「なら話は早い‼︎きそに手配させておくよ。しばらく時間をくれないか⁇」

 

それを聞いて、ヨーグルの顔が明るくなった

 

「モチロン‼︎オレイモジュンビスル‼︎」

 

「配送は此方に任せて下さい」

 

「ん〜…なんたる早さ‼︎」

 

アレンもビックリのスピードで事が解決した

 

「よっし‼︎そろそろ帰って晩飯の仕度だなっ‼︎」

 

「そうか、今日はイントレピッドが休みの日か。手伝おう」

 

そう言って、親父とヴィンセントは二人して俺達を見る

 

「わーかった‼︎手伝う‼︎」

 

「ふっふっふ…レイ、俺は料理スキルを上げたぞ⁉︎」

 

噂によると、ホットケーキを作る最中に粉塵爆発を起こしたアレン

 

見るに見かねたコロちゃんが作った方がよっぽど上手かったらしい

 

「見せて貰おうじゃねぇか、その料理スキルとやらを‼︎」

 

「じゃっ、ごちそうさまでした。幾らだ⁇」

 

「イラナイ。モトモトモライモノ。ソレニ、ココデハオカネイミナイ」

 

「そっか…じゃあ、また来るよ‼︎」

 

「イツデモキテネ」

 

「バイバイ‼︎」

 

「マタキテネ、マーカスサン‼︎」

 

三人に見送られ、俺達はホバークラフトに乗る

 

「んじゃ、横須賀でな〜」

 

「今夜はステーキだぞ〜」

 

親父達が先に飛び立ち、一足先に横須賀に向かう

 

「イムヤッキー、帰っておいで‼︎」

 

インカムでイムヤッキーを呼ぶ

 

カメラを見ると、イムヤッキーはちゃんとホバークラフトに向かって来ている

 

「来た来た」

 

赤い人影が近付いて来た

 

「…何かキラキラしてないか⁇」

 

「…ホントだな」

 

イムヤッキーは太陽の光を受けて何故かキラキラしている

 

「イムヤッキー‼︎」

 

ホバークラフトに上がって来て、それはすぐに分かった

 

「おまっ‼︎どうしたんだそれ‼︎」

 

「ははははははは‼︎」

 

イムヤッキーがキラキラしていた原因…


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