艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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245話 ピンクの悪魔(8)

艦長補佐を一旦降ろし、隊長もタバコを咥えて火を点けた

 

「…歯ぁ食い縛れ」

 

隊長は膝を床に置いた艦長補佐の前髪を左手で掴み、顔を良く見える状態にした

 

「…」

 

艦長補佐は目を閉じている

 

隊長は右手でゆっくりと拳を作る…

 

そして、無言のままの艦長補佐の顔面にドギツイストレートが当たった‼︎

 

艦長補佐は一撃で気絶し、興奮収まらぬ隊長は鼻息を荒くしたまま、俺の方に振り向いた

 

「…見たか⁇」

 

「見た…」

 

見られてヒジョーに困った顔をした後、いつもの隊長の顔に戻った

 

「イタリアの野郎だからな。同じイタリアの私が喝を入れてやった方がマシだろ⁇」

 

「あんなやり方何処で…」

 

俺から見てもかなりキツイやり方だ

 

普段優しい隊長があんなやり方を何処で学んだか分からない

 

「あぁ‼︎ははは‼︎貴子のやり方さ‼︎貴子は学生時代凄かったからな‼︎」

 

俺も横須賀も固まる

 

あー…これは隊長後ろ振り向いたら死ぬな

 

スゲー殺気だ…

 

「貴子は学生時代そりゃあもうモーレツヤンキーでな。さっきみたいな殴り方なんざ日常茶飯事さ‼︎」

 

半笑いの俺達は隊長から目を反らす

 

「どうした⁇二人共」

 

「モーレツヤンキーね」

 

「はっ°‼︎」

 

「も〜えつあんき〜‼︎」

 

「たかこしゃんまじぎえ‼︎」

 

ひとみといよ達を迎えに来てくれた貴子さんが入口付近で腕を組んで真顔で立っている‼︎

 

隊長は深呼吸した後、俺達の肩に手を置いた

 

「…振り向いたら死ぬか⁇」

 

「はい…もう即死かと…」

 

「…貴子はモーレツヤンキーに戻ってるか⁇」

 

「マーカス君は良い子よね⁇」

 

睨まれて直立不動になる

 

あぁ、たいほう…たいほうがビックリしたら直立不動になるのが今分かったよ…

 

「あ、はい。いつもの優しい貴子さんです」

 

「ウィリアム⁇」

 

「ぬぉぉぉお‼︎」

 

何を思ったのか、隊長は窓に向かって走って行った‼︎

 

「ダイナミック☆‼︎」

 

バリィィィィィイン‼︎と、窓ガラスを体当たりで叩き割り、隊長は二階から降りて行った‼︎

 

「「えぇーーーっ⁉︎」」

 

俺も横須賀も流石に心配になり、別の窓から隊長の様子を見た

 

「ごめんなさぁぁぁぁぁあい‼︎」

 

隊長は喚き散らしながら貴子さんに謝り、スタコラサッサと繁華街に逃げて行った…

 

「別に怒ってないのに」

 

「雷鳥がいるとは聞いてなかった…」

 

「あら。起きたの⁇」

 

気絶していた艦長補佐が意識を取り戻した

 

「申し訳…ありませんでした‼︎」

 

急に頭を下げ始めた艦長補佐

 

「どうしたの⁇あれだけ抵抗してたのに、隊長の事でも知ってるの⁇」

 

「ウィリアム中佐はイタリアではかなり名の知れたお方です。我々の国を救った英雄として…」

 

「隊長そんな事言ってたか⁇」

 

「貴方もです。オルコット大尉」

 

「…」

 

「…」

 

周りを見渡すが、横須賀と艦長補佐しかいない

 

「あ。俺か」

 

「アンタ以外誰がいんのよ」

 

「呼ばれ慣れてねぇんだよ。ほら、大体マーカスかレイだろ⁇」

 

「言われてみればアンタの事、オルコットさん‼︎なんて呼ぶ子居ないわね⁇」

 

「てな訳だ」

 

「マーカス大尉」

 

「そそ。そっちのがしっくり来る」

 

この艦長補佐、中々話のわかる奴

 

彼の話によると、自分達の企業は縮小が進み、新天地を探していた所に試射実験の話が舞い込んだ

 

横須賀ならば最初から資源も人員もある

 

そこを狙って単艦で突っ込んで来た

 

新型ミサイルを引っさげて…

 

「あの女の子にも言ったけど、貴方達には道は二つ。私達の傘下に入って艤装や兵器を提供して人間的な生活を送るか、今ここでふん縛って海にポイしてお魚の餌になるか…そのどちらかよ」

 

彼等は良い技術を持っている

 

横須賀の言いたい事は、その技術を私達に提供する代わりに、ここで普通の生活を送らせてやるとの事

 

提供しないなら全員海に沈める

 

「前者で宜しくお願い致します…」

 

選択肢があってない様な物だ

 

「裏切った場合、今度は即沈めるからな⁇」

 

「勿論でございます」

 

「じゃっ、話は終わり‼︎レイ、ガリバルディをお願い。私は彼等の寮の建設予定立てて来るわ⁇」

 

「任せなっ」

 

横須賀が出て行き、俺は艦長補佐とガリバルディの所に来た

 

「傷は癒えたか⁇」

 

《だいぶ楽んなった…ありがと》

 

ガリバルディをカプセルから出す

 

「ん〜っ‼︎助かったぁ‼︎」

 

背伸びをした瞬間、ガリバルディの胸が前に押し出される

 

何気無く艦長補佐を見ると、真剣な目で彼女を見ていた

 

「ガリバルディが上司か」

 

「そっ‼︎女艦長なんて見た事あるかい⁇」

 

「空母の艦長が一人いる。仲良くしてくれよ⁇」

 

「艦長、話は終わりました。雷鳥の補助に回りましょう」

 

「え…あの人がいんのか⁇とんでもねぇ事しちゃった…」

 

ガリバルディはガタガタブルブル震え始める

 

「心配するな。罰は彼が受けたし、今それ所じゃない」

 

 

 

 

その頃、その雷鳥は…

 

「ぴゃあ‼︎大佐、いらっしゃいませ‼︎」

 

「うぬ。バックヤードの内部監査に来た」

 

「お願いしま〜す‼︎」

 

酒匂に案内され、スーぴゃ〜マーケットのバックヤードに来た

 

「ここまて逃げりゃ大丈夫だろ…」

 

ボソッと本音が漏れたのを、酒匂は聞き逃さなかった

 

「逃げ⁇」

 

「あいやいやいや‼︎いいかっ酒匂。貴子が来ても、私を見ていないと言うんだ」

 

「わ、分かった‼︎」

 

酒匂がバックヤードからでたあと、隊長はバックヤードの隅に体育座りをしながら身を潜め始めた…

 

 

 

 

「この基地の案内は明日から少しずつ始める。ま…悪いがしばらくは独房に居てくれ。こっちのが安全だしな」

 

「分かりました」

 

「従う」

 

ガリバルディと艦長補佐を独房に入れる

 

とはいえ、三食はあるしオヤツもある

 

自由時間で読書や雑談、運動も出来る

 

独房と言えば聞こえは悪いが、短期更生施設の個室と思えば分かりやすい

 

ガリバルディの乗組員も順次送られてくるだろう

 

問題はアレンの機体だ…

 

 

 

 

隊長⁇

 

隊長はあの後貴子さんにすぐバレて担いで持って帰られたよ

 

夜中に自室から…

 

「ごめんなさい二度としません‼︎」

 

「死んじゃいますから‼︎ねぇ‼︎」

 

「もうやめて下さい‼︎貴子様‼︎」

 

とか聞こえて来たが…

 

その様子を、ひとみといよが真似するのはまた別のお話…

 

 

 

 

ガリバルディが艦隊に加わりました‼︎




ガリバルディ…ピンクミサイルちゃん

遠路遥々イタリアの企業から試射にやって来たピンクギャル

横須賀の施設が欲しいが為に謀反を起こすものの、ミサイルを操られ、自身に当てられ大破

現在は横須賀の傘下に入り、ミサイルや艤装作りに精を出す

男勝りな性格なのに、身体はお餅みたいに柔らかいらしい。凄いね

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